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第2章

話題の演劇

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こうして約束の1年ののち私たちはようやくナシェルカ領に帰ってきた。

キュミーたちは話していた通り一緒に帰ってきてくれたけれど、全員が来たわけではなかった。話をしてイヴァンカ国の土地を守ると言ってくれた蜘蛛たちもいた。だから何かが変わったわけではない。

それでもイヴァンカ国との交流は今までよりもかなり多くなり、1年たった今でも補佐員たちの派遣は続いており、きっとこれからも続いていく。それから逆にイヴァンカ国からの補佐員もカリシャール国を訪れていた。
イヴァンカ国から潤沢に入ってくるようになった魔法石の使い方をイヴァンカ国の民から教えて貰うのだ。こうして交流を重ね、2国共に成長を続けていった。


カリシャール国でも変化があった。

私たちがイヴァンカ国から戻り、1年後、ジョージ様が即位された。

そして約束通り10年後、イヴァンカ国は属国を脱却し、正式な国として国際会議への出席も認められた。


私がいわゆる聖女としての力を発揮したのはあの1年間だけだった。
魔物が作物を食べ、浄化した土地は精霊たちが目を見張らせ、対処してくれていたので私が何かすることはなかった。


でもこれはこうした方がいいとみんなで話した結果だった。
聖女に頼り切ってしまうと、これからもし聖女が現われたらまた国が囲うべきだなんて考えの者が現われてしまう。そうならない為にも、自分たちで出来る事はしっかりと行うべきだと。そうしなければ自分の生活を守ることができないんだと理解することが大事なんだと。


こうして私たちは今のかけがえのない幸せを手にすることができているの。







「って、こんなことでいいの?」



「ええ!素晴らしいわ。
知っていることも多かったけど、やっぱり本人目線だと色々知らないこともあるのね」



「そう?
でもこんなことどうするの?」



「あのね、聖女伝説の話の本を出して欲しいって色々な所からお願いされているの。本だけでなくって、演劇の演目としてもやりたいからってお願いされててね。

サリーの話ができるなんて凄いと思わない?その話を書くのが私なんて夢みたいよ!!

絶対に素晴らしい物にするわ!誰もが魅了されるような話にしたいの」



そう興奮しながら私の目の前で話をするのはアイシャ・ベルジャン公爵夫人だった。

私が聖女という話はカリシャール国でも話題になっていた。聖女の話というのはカリシャール国でも元々色々な話で広まってはいたがそれは伝記的なものではなく、神話的な話のものだった。それが事実だったと、しかも自国の女性が聖女だったという事が聖女熱に火をつけたのだ。


「そうなの?
アイシャが本を出すのは嬉しいわ。楽しみだし絶対に読むわ。でも……それが私の話なのは……どうかしら」


「いいのよ。私がサリーの話がかけるなんて嬉しいことなんだし、楽しみな事なんだし、何より私の誇りなんだから。
ほんとうにサリーと仲良くなれてよかったって日々実感しているのよ。そんなサリーの素晴らしさを私はみんなに知ってもらいたいだけ。だからサリーは何も構えずにドンとしていたらいいのよ」


ほんとうに嬉しそうにアイシャはそう言ってくれる。
だから私は素直にその言葉に頷くことにした。


「アイシャがそう言ってくれるなら……

アイシャに任せるわ。だって私の大好きなアイシャの話だもの。どんな話だろうときっと大好きだわ。それに私こそアイシャと仲良くなれてよかったと心から思ってる。

学生時代アイシャが声をかけてくれなかったらきっとこんな関係でいれなかった。それどころかあの婚約破棄の時に私は学校も辞めていたかもしれない。そしてきっとフレッドに会う事もなかったと思う。そのすべてがアイシャが繋いでくれたものだと思っているの。

アイシャ、ほんとうにありがとう。そしてこれからもよろしくね」


アイシャは微笑みながら頷き、私の身体を力強く抱きしめてくれる。

私が今幸せを感じていれるのはこうして私を思ってくれる人が周りにいてくれるから。

聖女だからと態度を変えた人は誰一人としていなかった。

そのことがこんなにも安心できるだなんて。





それから1年後、話題の演劇を見るために、劇場前には多くの人が列をなした。


その演劇の名は



         『前代未聞の婚約破棄~彼女は聖女だった~』



                                    fin
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