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第2章

今後同じことがあったとしてもきっと同じように動きます

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「ごめんなさい、私……

ね、ねぇ、アンは?」

私が不安そうにそういうと、フレッドは頭をなでながら「アンは大丈夫だったよ。あの後陛下たちと一緒に帰ってきた。医師にも確認してもらったけど、刺されたはずなのに傷跡もないと驚いていたよ」と教えてくれた。
良かった……アンは生きてる。傷跡もない。ほんとうによかった……

そして変わらず頭をなでてくれながら「まだ早い。もう少し眠ろう」と言ってくれた。眠れる気なんてしなかったのに、フレッドがもう大丈夫だよ、と言ってる言葉を聞いていると安心していつの間にか眠ってしまっていて、気付いたときは明るい日差しを顔に感じた時だった。隣にフレッドの姿はなく、ボーっとしているといつもと同じようにアンが入ってきて「奥様いつまで眠っているんですか」とカーテンをシャッと開けた。

アンのその姿を見て、ボーっとしながら、冷たい物が頬をつたう感覚を感じていた。


「奥様!?涙が、旦那様を呼びますか?」


私が泣いてしまっているのを見て、アンが普段とは違いおろおろとして、涙をぬぐってくれる。その様子がおかしくてフフッと笑ってしまった。それと同時にアンの身体にぎゅっと抱きつく。

「アン……アン……。かばってくれてありがとう。でも2度とあんなことしないで。私をかばってアンが死ぬなんて絶対にいやなの。おねがい」



私が抱きつきながらそういうと、アンも私の身体をぎゅっと抱きしめてくれ、背中をさすってくれた。


「奥様、私を助けてくれたのは奥様だと聞きました。お礼を言うのは私の方です。ほんとうにありがとうございました。

でも今後同じことがあったとしてもきっと私は同じように動きます。だって私も目の前で奥様が刺されるだなんて絶対にいやですもの。だからもし次刺されてしまっても、奥様が助けて下さいね」



ふふっと笑いながらアンがそんな事を言う。そんな簡単に言うけど、私だってどうしてああなったか分かっていないのに。
そんな事を考えているとガチャリと音がして、ドアにはフレッドが立っていた。

「お嬢様たち、ほんとうはもうちょっとゆっくりしてていいよと言いたいんだけど、そうも言っていられないからね。そろそろ準備を始めて貰ってもいいかな。昨日の事を聞きたいんだ」

私たちは涙を拭き、準備を始めた。
ようやく準備を整え、応接室に向かうとそこには昨日と同じく陛下夫妻、王太子夫妻と共に、ショーン様とその脇にはショーン様とよく似た父くらいの男性と、ショーン様よりいくつか上くらいに見える男性が座っていた。彼らがカシクロン侯爵とその嫡男だと紹介があり、私とアンは昨日のことについて話してほしいと言われた。
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