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運命は回りだす

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「慶太よ、ちとここにきなさはれ」
少々カビ臭さの残る杉浦家一番の古部屋に、慶太の祖母、基杉浦敏江はちんまりと座っている。
朝の支度を終え、少し余裕があるものの、もう家を出ようと思っていた頃に慶太呼び止められたのだ。

廊下から、古びた襖越しに見える祖母の様子を見ると、ただごとではないみたいだった。
慶太は、仕方ないなとため息をついてから、立て付けの悪い襖を開けた。
「なんだよばあちゃん、俺もう出るとこだったんですけど?」
言葉では不満をこぼしつつ、でもちゃっかり机の上の煎餅には手をつけた。
ドスンと音を立ててあぐらをかき、固焼き煎餅を噛み締めていると、後ろ向きだった彼女はようやくこちらを向いた。
その腕には、怪しげに光る水晶を抱いている。
そこには、ぼんやりとだが少女のような顔が浮かび上がっていた。
「お前にも、きたようじゃな。この時が」
この問いに、慶太はめんどくさそうに呟いた。
「これが成功すれば、本当にいいんだよね?家業継がなくて」
「もちろんじゃぞ、そう決めたんじゃ、わしは嘘はつかん。まあ、これはわしに限った話ではないがのう。お前の母さんも父さんも「わーったから、本当にいいんだな?」
睨むような慶太の視線に、敏江はゆっくりとうなずいた。
「好きにせい、ただし、成功すればじゃがな」

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