氷

氷が溶けるまで

やわ

昼休み、プラプラと適当に歩いていると、若手担任教師である富田に、声をかけられた。
「おい、卯月」
「はい？」
眉間にシワが寄っており、目つきも険しく見えたので、怒られるのではと身構えたが、そうではなかったようだ。
「お前、最近時雨と仲がいいのか？」
え？
少し迷った末、ありのままに事実を答える。
「はい、そうですが何か？」
すると、富田は何故か嬉しそうな表情をしていた。
眉を潜められる、驚かれるなどの反応は予想していたが、こんな顔をされたのは初めてだったので、私が驚いてしまった。
「どうかしました？」
「いや、なんでもない。それより卯月、今日の放課後、その件について話があるんだが、予定はあるか？」
「その件って、時雨さんのことですか」
「ああ」
若干気まずそうにうなずく富田を見て、『朝比奈りこ事件』に関することなのだと悟った。