ミルクティ

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氷が溶けるまで

4 拒絶

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「やっぱね、私が一番好きなのはミニバラなんだ!小さくて可愛いでしょ。
ミニバラは確か川沿いのところにあったはずでね」
ひたすらに困惑している逸美と、楽しそうに案内を進める陽菜。
時折、「ちょっと」「ねぇ、離して」などの声が聞こえたが、あえて無視して話を続けて約10分。
逸美は我慢の限界になったようだ。
「は・な・し・て」
耳元で大きく叫び、我武者羅に腕を振り回す逸美を、陽菜はポカンとした表情で見つめていた。
「どうかしたの」
「離して!」
言われた通りに腕を離した。
解放されるなり、逸美は咎める。
「ねぇ、どうして私と一緒に居ようとしてるの?」
元のつり目を、更に吊り上げたような顔をしている。
それ自体に迫力を感じたが、言っている質問の意味がよく理解できなかった。
「え?どうしてって、そりゃ、時雨さんと仲良くなりたいからだよ」
ありのままに答えた。しかし逸美は、ありえないものを目撃したかのような顔をしていた。
「は、はぁ?正気なの?」
「もちろん」
「冷やかしなら、帰って。間に合ってるから」
そう言って、地面にしゃがみ込んだ。
目前に咲いているのは、大輪の黄色いカーネーションだった。

いきなり冷たくあしらわれ、困惑した。
しかし、めげずに会話を続行する。
「か、カーネーションって、綺麗だよね。
ひらひらしてて」
「……」
「あっちに咲いてる、ピンクのやつも綺麗だよ?見に行かない?」
「……」
「ぇ、えっとぉ」
「ねえ」
「はい!」
顔も向けずに、声だけが陽菜に向けられた。

「私は、あなたと話すためにここに来たわけじゃない。だから余計なことはしないで、私に話しかけないで」
「え」
「分かった?」
「ぁ、うん…」
陽菜は、足早にその場を後にした。
瞳には涙を溜めて。しかし、切り替えようと大好きなバラのコーナーへ走った。
もう忘れる努力をするために。
逸美は、そんな陽菜の姿を見送っていた。
完全に見えなくなるのを確認すると、再び黄色いカーネーションへと視線を移した。


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