4 / 7
氷が溶けるまで
4 拒絶
しおりを挟む
「やっぱね、私が一番好きなのはミニバラなんだ!小さくて可愛いでしょ。
ミニバラは確か川沿いのところにあったはずでね」
ひたすらに困惑している逸美と、楽しそうに案内を進める陽菜。
時折、「ちょっと」「ねぇ、離して」などの声が聞こえたが、あえて無視して話を続けて約10分。
逸美は我慢の限界になったようだ。
「は・な・し・て」
耳元で大きく叫び、我武者羅に腕を振り回す逸美を、陽菜はポカンとした表情で見つめていた。
「どうかしたの」
「離して!」
言われた通りに腕を離した。
解放されるなり、逸美は咎める。
「ねぇ、どうして私と一緒に居ようとしてるの?」
元のつり目を、更に吊り上げたような顔をしている。
それ自体に迫力を感じたが、言っている質問の意味がよく理解できなかった。
「え?どうしてって、そりゃ、時雨さんと仲良くなりたいからだよ」
ありのままに答えた。しかし逸美は、ありえないものを目撃したかのような顔をしていた。
「は、はぁ?正気なの?」
「もちろん」
「冷やかしなら、帰って。間に合ってるから」
そう言って、地面にしゃがみ込んだ。
目前に咲いているのは、大輪の黄色いカーネーションだった。
いきなり冷たくあしらわれ、困惑した。
しかし、めげずに会話を続行する。
「か、カーネーションって、綺麗だよね。
ひらひらしてて」
「……」
「あっちに咲いてる、ピンクのやつも綺麗だよ?見に行かない?」
「……」
「ぇ、えっとぉ」
「ねえ」
「はい!」
顔も向けずに、声だけが陽菜に向けられた。
「私は、あなたと話すためにここに来たわけじゃない。だから余計なことはしないで、私に話しかけないで」
「え」
「分かった?」
「ぁ、うん…」
陽菜は、足早にその場を後にした。
瞳には涙を溜めて。しかし、切り替えようと大好きなバラのコーナーへ走った。
もう忘れる努力をするために。
逸美は、そんな陽菜の姿を見送っていた。
完全に見えなくなるのを確認すると、再び黄色いカーネーションへと視線を移した。
ミニバラは確か川沿いのところにあったはずでね」
ひたすらに困惑している逸美と、楽しそうに案内を進める陽菜。
時折、「ちょっと」「ねぇ、離して」などの声が聞こえたが、あえて無視して話を続けて約10分。
逸美は我慢の限界になったようだ。
「は・な・し・て」
耳元で大きく叫び、我武者羅に腕を振り回す逸美を、陽菜はポカンとした表情で見つめていた。
「どうかしたの」
「離して!」
言われた通りに腕を離した。
解放されるなり、逸美は咎める。
「ねぇ、どうして私と一緒に居ようとしてるの?」
元のつり目を、更に吊り上げたような顔をしている。
それ自体に迫力を感じたが、言っている質問の意味がよく理解できなかった。
「え?どうしてって、そりゃ、時雨さんと仲良くなりたいからだよ」
ありのままに答えた。しかし逸美は、ありえないものを目撃したかのような顔をしていた。
「は、はぁ?正気なの?」
「もちろん」
「冷やかしなら、帰って。間に合ってるから」
そう言って、地面にしゃがみ込んだ。
目前に咲いているのは、大輪の黄色いカーネーションだった。
いきなり冷たくあしらわれ、困惑した。
しかし、めげずに会話を続行する。
「か、カーネーションって、綺麗だよね。
ひらひらしてて」
「……」
「あっちに咲いてる、ピンクのやつも綺麗だよ?見に行かない?」
「……」
「ぇ、えっとぉ」
「ねえ」
「はい!」
顔も向けずに、声だけが陽菜に向けられた。
「私は、あなたと話すためにここに来たわけじゃない。だから余計なことはしないで、私に話しかけないで」
「え」
「分かった?」
「ぁ、うん…」
陽菜は、足早にその場を後にした。
瞳には涙を溜めて。しかし、切り替えようと大好きなバラのコーナーへ走った。
もう忘れる努力をするために。
逸美は、そんな陽菜の姿を見送っていた。
完全に見えなくなるのを確認すると、再び黄色いカーネーションへと視線を移した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
この『異世界転移』は実行できません
霜條
ライト文芸
どこにでもいるサラリーマン、各務堂一司《かがみどうかずあき》。
仕事ばかりの日々から離れる瞬間だけは、元の自分を取り戻すようであった。
半年ぶりに会った友人と飲みに行くと、そいつは怪我をしていた。
話しを聞けば、最近流行りの『異世界転移』に興味があるらしい。
ニュースにもなっている行方不明事件の名だが、そんなことに興味を持つなんて――。
酔って言う話ならよかったのに、本気にしているから俺は友人を止めようとした。
それだけだったはずなんだ。
※転移しない人の話です。
※ファンタジー要素ほぼなし。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
青空ベンチ ~万年ベンチのサッカー少年が本気で努力した結果こうなりました~
aozora
青春
少年サッカーでいつも試合に出れずずっとベンチからみんなを応援している小学6年生の青井空。
仲間と一緒にフィールドに立つ事を夢見て努力を続けるがなかなか上手くいかずバカにされる日々。
それでも努力は必ず報われると信じ全力で夢を追い続けた結果…。
ベンチで輝く君に
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる