3 / 7
氷が溶けるまで
3 異端者
しおりを挟む
2日後、陽菜は自宅近くにある植物公園に入り浸っていた。
G短パンにTシャツと言った、涼しい装いだったが、額に汗がにじむ程度には暑い。
陽菜は、持参したペットボトルに口をつけた。
5月2日、初夏の太陽が咲き誇る花たちを、より一層輝かせている。
5月は、自然が一番輝く季節だと、陽菜は思う。
それはただ単純に、自分の好きなミニバラが咲く季節だから、という意味ではない。
常時万緑が生えそろい、ミニバラの他にもツツジや百合、紫陽花が開花して、この公園がより美しく彩られる。
なので陽菜は、毎年この時期になると、暇になるたびにここへ来ていた。
広い園内を歩き続けていると、幼稚園児くらいの子連れの親子や、同い年くらいのカップルとすれ違った。
皆、楽しそうに微笑んでいる。
それを見て、陽菜も嬉しくなった。
すると、頭上に一つの麦わら帽子が飛んでいった。手を伸ばし、ジャンプしてそれを捕まえる。
「よっ」
ツバの広い、丈夫そうなものだった。
見ているうちに、持ち主らしき少女がそばまでやってきた。
「すみません」
長い黒髪を一歩の三つ編みにして、白系統の服に身を包んだ、色白な少女。
陽菜は、彼女に見覚えがあった。
「時雨さん?」
名前を呼ばれて、ハッと目を見開く少女。
いくら話したことがないと言っても、顔くらいは覚えている。
近づいて見てみると、やっぱりそうだった。
「時雨さん花好きだったの?」
遠慮がちに首を縦に振る逸美。
「わぁ、一緒だ!私も大好きなんだ!ついでに言うと、ここの公園もね。
すごいな、嬉しいな、嬉しいな」
その場でぴょこぴょこと跳ねながら、喜びを表す陽菜。
おかしな話を聞いていたとはいえ、もともと噂を話を信じない性格なのだ。
憧れた人とこんな形で会えたのが心底嬉しいようだ。
一方で、逸美の方はそうではなかったようだ。
自分に会えて嬉しいと言う彼女に対して、まるで化け物でも見たかのような視線を向けている。
驚きと困惑、警戒が入り混じったものだった。
「どう、して?」
陽菜とは対照的に、震えた声が返ってくる。
「どうしてって?」
「いや、なんでもない。それじゃあ」
「待って」
急いで立ち去ろうとする逸美。しかし、それを遮る陽菜。
「どうかしたの?」
「時雨さん、ここに来たのは初めて?」
「ぇ、ええ」
「なら案内するよ、ここ、すごいいっぱい見所あるんだ!全部教えてあげる!
何せ私は、3歳の頃から来てるんだから」
「ちょっと」
レッツゴーと、強引に腕を引っ張って進み出す陽菜。
逸美は強い力に抗えず、渋々ついていくしかなかった。
G短パンにTシャツと言った、涼しい装いだったが、額に汗がにじむ程度には暑い。
陽菜は、持参したペットボトルに口をつけた。
5月2日、初夏の太陽が咲き誇る花たちを、より一層輝かせている。
5月は、自然が一番輝く季節だと、陽菜は思う。
それはただ単純に、自分の好きなミニバラが咲く季節だから、という意味ではない。
常時万緑が生えそろい、ミニバラの他にもツツジや百合、紫陽花が開花して、この公園がより美しく彩られる。
なので陽菜は、毎年この時期になると、暇になるたびにここへ来ていた。
広い園内を歩き続けていると、幼稚園児くらいの子連れの親子や、同い年くらいのカップルとすれ違った。
皆、楽しそうに微笑んでいる。
それを見て、陽菜も嬉しくなった。
すると、頭上に一つの麦わら帽子が飛んでいった。手を伸ばし、ジャンプしてそれを捕まえる。
「よっ」
ツバの広い、丈夫そうなものだった。
見ているうちに、持ち主らしき少女がそばまでやってきた。
「すみません」
長い黒髪を一歩の三つ編みにして、白系統の服に身を包んだ、色白な少女。
陽菜は、彼女に見覚えがあった。
「時雨さん?」
名前を呼ばれて、ハッと目を見開く少女。
いくら話したことがないと言っても、顔くらいは覚えている。
近づいて見てみると、やっぱりそうだった。
「時雨さん花好きだったの?」
遠慮がちに首を縦に振る逸美。
「わぁ、一緒だ!私も大好きなんだ!ついでに言うと、ここの公園もね。
すごいな、嬉しいな、嬉しいな」
その場でぴょこぴょこと跳ねながら、喜びを表す陽菜。
おかしな話を聞いていたとはいえ、もともと噂を話を信じない性格なのだ。
憧れた人とこんな形で会えたのが心底嬉しいようだ。
一方で、逸美の方はそうではなかったようだ。
自分に会えて嬉しいと言う彼女に対して、まるで化け物でも見たかのような視線を向けている。
驚きと困惑、警戒が入り混じったものだった。
「どう、して?」
陽菜とは対照的に、震えた声が返ってくる。
「どうしてって?」
「いや、なんでもない。それじゃあ」
「待って」
急いで立ち去ろうとする逸美。しかし、それを遮る陽菜。
「どうかしたの?」
「時雨さん、ここに来たのは初めて?」
「ぇ、ええ」
「なら案内するよ、ここ、すごいいっぱい見所あるんだ!全部教えてあげる!
何せ私は、3歳の頃から来てるんだから」
「ちょっと」
レッツゴーと、強引に腕を引っ張って進み出す陽菜。
逸美は強い力に抗えず、渋々ついていくしかなかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
青空ベンチ ~万年ベンチのサッカー少年が本気で努力した結果こうなりました~
aozora
青春
少年サッカーでいつも試合に出れずずっとベンチからみんなを応援している小学6年生の青井空。
仲間と一緒にフィールドに立つ事を夢見て努力を続けるがなかなか上手くいかずバカにされる日々。
それでも努力は必ず報われると信じ全力で夢を追い続けた結果…。
ベンチで輝く君に
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる