ミルクティ

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氷が溶けるまで

2 はじまり

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4月下旬、終礼の終わりを告げる予鈴が鳴った教室は、祭り前後のように騒がしい。

そして、その中でも一際大きく騒いでいる少女がいた。少女の名前は卯月 陽菜。 

天然焦げ茶色のセミロングの髪型がよく似合う、年相応な見目をした可愛らしい子だ。

彼女は、明日からゴールデンウィークであることに胸躍らせて、クラス内でも特に仲の良い2人、三島アリサと、町田祐美とともに、休日の予定を練っていた。

「やっぱ、ディズニーは外せないよね」
「うーん、でも混んでるだろうしなぁ。って、陽菜、聞いてる?」

ボケーと違う方向を見つめる陽菜、祐美は彼女と同じ方を見た。

そこには、新学期始まってからの一ヶ月間、まだ一度も話したことがない生徒、
時雨逸美が、一言も発さずに帰りの支度を進
めていた。

その姿を見て、祐美は眉を潜めた。
「時雨、よく平気な顔して学校来れるよね。
あんなことしたってのに」

いつもは温厚な祐美が怒る様を見て、陽菜は尋ねる。
「あんなことって?時雨さん何かしたの?」
「あんた知らないの?」
祐美の代わりに、アリサが答えた。 
「中3の時、朝比奈 りこっていたじゃん」
「あー、そうだっけ?」
「そうそう、超可愛くて、運動できた子。
転校しちゃったけどさ」

そう言われて、思い返してみるも、陽菜の記憶の中に朝比奈りこらしき人物はいなかった。
「そっか、それがどうしたの?」
「時雨が朝比奈さんをいじめてたんだって」
「え?」
時雨 逸美が、いじめなんて物騒なことをする姿が、想像つかなかった。

以前から、クラス内で嫌われているとは思っていたけれども、頭も良くて美人な彼女に、憧れがなかったかと言われると嘘になった。
この一ヶ月間でも、話だかけるタイミングを伺っていたこともあったくらいだ。

「あいつ、美人だけど人望なかったからさ、だから可愛くて人気者の朝比奈さんを狙ったって噂だよ」
「へー」
「そんなことでいじめられて転校なんて、朝比奈さんも大変だったよねー、怪我もさせられたららしいし、トラウマになってなきゃいいけど」

やけに盛り上がっている2人を後にもう一度、時雨の姿を確認する。
彼女は、もう支度を終えて教室を出るところだった。
去り際に、こちらを睨んだように見えたのは気のせいだったか。いや、
「ちょっと、あいつ陽菜ちゃんのこと睨んでなかった?」

と言う者が出たので、気のせいではなかったのだろう。

どんなに悪いことをしてたとしても、過去のことを蒸し返したり、噂したりするのは良くなかったかもしれない。
陽菜は少し反省して、再びおしゃべりに興じるのだった。
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