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Story-3 きえた令嬢(2)

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 日を空けて、サラを連れてゼルビアへ向かうその日がやってきた。
 出立の支度を整えながら、サラとともに馬車に乗り込んでシーラは歌っていた。

「マーハリック、マリック、青いリボン~♪
 マーハリック、マリック、青いリボン~♪
 マーハリック、マリック、青いリボン~♪
 マーハリック、マリック、白い子ヤギ~♪」

 すると、突然サラがシーラを振り返った。

「シーラ?」
「はい、お嬢様」

 サラはシーラをまじまじと見ると、今度はそばによって隅から隅までシーラをじっくりと観察した。
 そして、サラははるか五年ぶりにこの言葉を口にした。

「サラお嬢様?」

 シーラは驚いた。
 だが、シーラもこのときが来るのを予想していなかったわけではなかった。

「ええ、そうよ、シーラ。久しぶり」

 次の瞬間、シーラとサラはひしと抱き合った。
 ・・・・・・



 シーラとサラ、もとい、サラとシーラは馬車を飛び降りた。
 そして従者たちに向かった叫んだ。

「行かないわ! 今日は行かない!」

 そして、ふたりは手を取り合って駆け出して行ったのだ。
 ふたりが走っていったのは、公園だった。
 ふたりはわらいながら顔を見合わせ、そしてまた笑った。

「ああ、シーラ! 記憶が戻ったのね、よかった!
 あなたに会えてうれしい、本当にうれしい!」
「お嬢様、ああ、本当にお嬢様なんですね!
 もう、どれだけ私が苦労したか、一から話しますからね。
 ああ、でも、本当にまたおあいできてうれしい! 
 この日をどれだけ待っていたか」

 とても奇妙な光景だった。
 公園のはしに腰かけた豪華なドレスを着たお嬢様が、メイドをお嬢様と呼び、メイド服の娘がお嬢様を呼び捨てにしている。
 そして二人は立ち上がり、儀式にも似た歌と踊りを踊った。

「マーハリック、マリック、私の名前~♪
 マーハリック、マリック、私の名前~♪
 マーハリック、マリック、私の名前~♪
 マーハリック、マリック、あなたの名前~♪」

 ふたりはまた高らかに笑いあった。
 そして、本当のシーラが本当のサラに言う。

「さあ、これで私たちの取り換えっこはおしまいですよ。
 今日からお嬢様はサラ様にお戻りください。
 わたしもシーラに戻ります。
 でも、戻らないものもたくさんありますね……」
「ええ、そうね。とてもつらかったわ。
 だけど、あなたまで失ったとおもっていたあの日に比べれば、ずっといいわ。
 だけど、どうしてあなた記憶を失ったりしたの?」
「お話してよろしいんですか?
 お嬢様にはお辛い話にもなりますけれど……」
「いいわ。覚悟はできてる。
 それより、あなたのほうはどこか痛かったり辛くない?
 だってさっきまで記憶がなかっのよ」
「大丈夫です。というのも、かなり前からはっきり思い出せていたんです。
 でも、本当にお嬢様かどうかの確信が持てなくて。
 ですが、さっきの歌で確信しました。
 わたしはお嬢様の青いリボンを欲しがり、お嬢様は生まれたての白いヤギを見たがった。
 このマハリクマリックを知っているのは、お嬢様しかいませんから」
「まあ、そうだったの!
 だったらわたしが早くこの歌を歌えばよかったのね」
「それに、記憶を失ったのは逆に都合がよかったんですよ。
 屋敷で火事があったあの日、わたしは頭を打って記憶を失ったんです。
 その間に連れ去られ、あの悪徳弁護士たちに軟禁されました。
 初めはぼうっとしていましたが、頭がはっきりしてからは、だんだんあの日の事件のことがわかってきました。
 こっそり新聞を読んで、旦那様と奥様が火事で亡くなり、それにサラ様までもがなくなったことにされていることもわかりました。
 辛かった……。悲しくて、悔しくて、本当につらかったです……」

 シーラは言葉を切って涙ににじんた目をこすった。

「そして、悪徳弁護士が私に書類にサインをさせようとしていることもすぐにわかりました。遺産管理に関わる書類です。
 でも、わたしは記憶がなく、自分が誰かもわからないふりを続けました。
 そうすれば、彼らは私の記憶が戻るまで書類にサインさせることができないからです。ですから、わたしは記憶のないふりを続けました。
 逃げようとも思いましたが、下手に逃げようとすれば、殺さるかもしれないと思いました。
 もし下手にサインをしてしまったり、私が死ぬようなことがあれば、
 サラ様は二度とサラ様に戻れなくなってしまいます。
 それは同時にわたし自身も、二度と自分に戻ることが叶わなくなるというとです。わたしたちの秘密を守るためなら、わたしは一生記憶のないふりを続ける覚悟でした」
「ああ、シーラ! あなたって、本当に頭がいいのね!」
「お嬢様に鍛えられたんです。
 すべては、マハリクマリックのおかげです」
「ねえ、シーラ、今日は二人でずっと夜通しおしゃべりしましょうよ」
「はい、もちろんです。
 それに、サラ様が旅先で書いて送ってくださった手紙もすべて燃えてしまったんです。
 読めなくなってどれだけつらかったか。サラ様、また一からお話してください。
 今日にいたるまですっかり話してくれなくては、寝てはだめですよ」
「いいわ! シーラも、あくびなんかしてる暇ないんだから」

 ・・・・・・



 屋敷の前に留まっていた馬車から、サラとシーラが飛び出して、走り去っていった後、そこにいた者たちは慌てふためいた。
 ふたりの後を追うもの、家人を呼びに行くもの、呆れかえるもの、様々だった。
 その中で、リバエル国の三人の貴族たちは、それに気づかず、またそれとは違ったことで慌てていた。

「殿下、いつお戻りに!」
「いやあ、たった今だ。セラフ殿に大目玉くらう覚悟はできているよ」

 ハリーは飲むものも飲まず、食うものも食わずの樹海と急流を超えて、ようやくシリネラへ戻ってきたのだった。
 アリテとベリオが面目なさそうにハリーの後ろに立っていた。

「殿下、とにかくホテルでお休みになられてください」

 ベリオが勧めるのを制して、ハリーはモリスのかおを見た。
 モリスはハリーの無事に心が緩み、にかわに笑みを浮かべていた。

「ハリー様、ゆっくりお休みください。
 ハリー様のお望みの娘は、この屋敷で働いております。
 わけあって、これからゼルビアに立たねばなりませんが」

「えっ……、またゼルビア」
「大丈夫です。私が何とか待ってもらえるように話してみましょう」
「ああ頼む」

 ハリーはふうと息をつき、あははと笑った。
 その時だ。
 ドレスを着た娘が従者に支えられて戻ってきた。
 みると、少女はひどく取り乱していた。

「おねがい、今すぐ追いかけて! 行って!」
「お嬢様、落ち着いてください!」

 ハリーたちもそのただならぬ様子に集まった。
 少女は従者を振り払い、モリス、ベンジー、ケインのもとへ走った。

「お願い、お嬢様を追いかけて! あいつがお嬢様をさらったのよ!」
「サラ様、どうしたというのです……」
「わたしはサラ様じゃない! サラ様は、あのかたなのよ!
 わたしたちは交換したの! 五年前に!
 マハリクマリックで!」

 泣きながら興奮状態にある少女は、髪を乱し、息を乱し、必死の顔つきだ。
 少女のドレスにはよごれがつき、額には擦り傷があった。
 ただごとではないのはわかった。
 だが要領を得ない。
 サラは記憶を失っているはずだ。
 今なにかを思い出しかけて、混乱し、錯乱しているのではないのか。
 そこにいる誰もがそう思った。
 しかし、シーラは、あらく肩を揺らしながら言った。

「あの悪徳弁護士が、公園にいたの。
 あいつは私たちの話を全て、陰で聞いたんだわ。あいつはわたしを偽者めといって突き飛ばした。その間に、お嬢様を連れ去ったのよ。
 お願いだから、サラ様を助けて!
 わたしがシーラで、あの方がサラ様なのよ!
 私たちは、マハリクマリックの遊びで五年前に、お互いの立場を交換したの。
 私はどうしてもサラ様のもっていた青いリボンが欲しかった。
 サラ様は、私の故郷から届いた手紙で、子ヤギが生まれたことを知って、どうしても子ヤギを見たいからといって、私たちは入れ替わったの。
 だから、あの方が本当のお嬢様なのよ!」

 ぽかんとする面々の中で、もっもと早く状況を呑み込めてきたのケインだった。

「つまり、僕らがシーラだと思ってきた人物がサラ・マリ―ブラン嬢であり、君がサラ嬢のお付きの使用人シーラというわけだね」

 ケインは馬車から馬を外した。

「モリス、ベンジー、手分けしてサラ嬢を探すんだ。
 マリ―ブラン家の各々がた、今はとにかく、使用人シーラ・パンプキンソンを探し出すことに専念してください。
 ことの詳細は、シーラが見つかった後確かめればよいことです。
 手遅れにならぬ前に!
 ハリー殿下、馬上より失礼します。
 ではまたのちほど、セントラルホテルにて!」

 ケインのあとに続いて、モリス、ベンジーが馬に乗って駆け出した。
 マリ―ブランの使用人や私兵たちもわっと散った。
 ハリーも馬に乗ろうとしたが、力が入らず、思うように馬に乗れなかった。
 そのハリーをベリオがいさめた。

「部下を信じることも上に立つ者の役目。
 今の殿下は休むことこそ急務です」

 ハリーは言いかけたが、あまりの疲れと急なことのなりゆきに頭が追い付かず、ついぞ声は出なかった。

 ・・・・・・


 シリネラセントラルホテルの一室では、六人の男たちが椅子やソファに座っている。
 ハリーの前にあるテーブルには連日の新聞が置かれていた。
 ゼルビアの屋敷火災から始まった凶悪な犯罪劇は、今や国家の関心事にとどまらず、大陸中に知れわたっていた。
 死んだと思われていたザルマータ国の名門貴族マリ―ブラン家の令嬢が実は生きていたということや、記憶を失っていたということ。
 二度も誘拐されたということ、その犯人について、様々な憶測と興味を持ってかきたてられていた。
 そして、いまだサラ・マリ―ブラン嬢は見つかっておらず、事件の進展は芳しくない。



 伏せられた事実もある。
 サラが自分付きの同い年の使用人と入れ替わり、五年もの間、遊歴というのか流浪というのか、数奇な一人旅に出ていたことは公表されていない。
 その事実を知る者らは、マリ―ブラン家によって固く口を封じられた。
 とはいえ、犯人はこの事実を知って、サラをさらっていったのである。
 サラを無用な勘繰りから守りたいマリ―ブラン家の思惑に反して、それがいつまで隠し通せるのかは難しいように思われた。

 乗りかかった船として、リバエル国貴族の紳士である六人は、この情報を共有していた。
 シーラは知っていることをすっかり話すと、とにかくサラを助けてほしいと懇願し、毎日泣き続けているそうだ。
 サラがシーラに対してそうであったように、シーラのまたサラに対して主従以上の愛着を備えていた。
 しかし実際問題として、今のところシーラの証言でしか、ふたりの入れ替わりを証拠とするものがない。
 シーラが旅先のサラから受け取っていたという手紙や、交換条件として手に入れた青いリボンも、全ては灰となってしまっている。

 マリ―ブラン家の私兵や使用人の中には、シーラの証言を疑う声もあった。
 もともとサラとして救出された娘は記憶喪失であったというのは周知のことだ。
 シーラはそれは演技だったというが、それすらもシーラ一人の証言でしかない。
 サラは実は今も錯乱状態かもしれないし、あるいは、誘拐されたところでさらにべつの娘にすり替えられたということもありる話だった。
 なぜなら、サラはゼルビア暮らす間、ほとんどまったくといっていいほど社交がなく、マリ―ブラン夫妻ですら八年もの間会っていないのだ。
 それは、のちにゼルビアで暮らす何人かの農夫がシーラを見て、館に住んでいた娘に違いないと証言したことで疑惑は解消された。
 それまでは、サラは気がくるっているとか、対外的にはこれまで通りサラとしてふるまってもらえばいいなどとささやかれ、シーラはそのたびひどく傷つき、心みだされたのだった。

 シーラは自分の境遇をこう話した。
 シーラは、タルテン国ペシュトラン町のはずれの農家クリット家に生まれた。
 六人兄弟の四番目で、三つになるかならないかの歳に、ゼルビアのマリ―ブラン家のもとへやってきた。
 辺境の貴族屋敷では、子どもが生まれると近くの町や村から同じ年ごろの子供を引き取ることが多い。
 子どもの遊び相手や話し相手とするためである。
 シーラ・クリットはサラ付きの使用人として、サラと同じように育てられた。

 ふたりは気が合い、仲が良かっただけでなく、子どものころの容姿がかなり似ていた。
 はちみつ色のウェーブがかった髪。
 ブラウンとグリーンの間のような瞳の色。
 そして体つきや、声も似ているところが多く、遠目で見ると服以外ではほとんど見分けがつかなかった。
 顔つきはよくよくみると決して間違えることはないのだが、互いが互いの真似をすると、これがよく似た顔つきになった。
 一方が片方に似せるときは、すこし頬を膨らまし、その逆の場合は、頬をすぼめる。
 さらには、一方が眉を少し上げ、その逆の場合は、眉を下げる。
 そんなふうにすると、なんとなく二人の顔はちょっと見ただけではわからない感じににてくるのだった。

 同じ服を着て、同じ髪型にして、そんなふうに互いが互いに似せて寄ると、
 毎日顔を合わせる使用人たちさえも間違ってしまうことがあった。
 まだ来て日の浅い家庭教師などはあっというまに騙されて、一日中気がつかずにいたことがしばしばあった。
 あるときなど、久しぶりに帰ってきた父親のファースランは、まちがえてシーラにただいまのキスをして、サラにお茶を持ってくるようたのんだこともあった。
 ふたりを見分けるのが一番うまかったのは、やはり母親のマリラだった。
 しかし、マリラは辺境の田舎町に住む娘たちが互いしか遊び相手がないことを十分知っていたので、黙って騙されたふりをしてやっているという節もあったという。

 サラと一緒にあらゆる教育を受けたシーラは、サラと同じように文字が書けるようになると、実家に手紙を書くようになった。
 一人旅ができる歳になったら、シーラは年に一度里帰りすることを許されていた。
 それが、ふたりが十歳になった時だった。
 その年の実家からの手紙には、子ヤギが生まれたことが書かれていた。
 いつものように手紙をふたりで分かち合っていると、サラが言い出した。

「わたしいちどでいいから、ヤギのあかちゃんって、見てみたいわ。
 だって、白くて、小さくて、かわいいんでしょう?」

 三歳から故郷を離れ、七年ぶりに実家に帰られるというのに、シーラはそれほど故郷の話題に熱心にはなれなかった。
 それよりも、そのときのシーラはサラが新しく手に入れた青いリボンに夢中だったのだ。

「ねえ、シーラ。
 あなたの代わりに、私が里帰りしたらダメかしら。
 あなたは来年も行けるでしょ?」

「サラ様、でしたら、あの青いリボンと交換しませんか?」



「マーハリック、マリック、青いリボン~♪
 マーハリック、マリック、青いリボン~♪
 マーハリック、マリック、青いリボン~♪
 マーハリック、マリック、白い子ヤギ~♪」



 ふたりはいつものようにマハリクマリックを踊って、互いの持ち物を交換したのだ。

「私がもどってくるまで、シーラは風邪でも引いたといって寝ていればいいわ。
 きっと誰も気がつかない」
「そうですね。私の家族とは三歳の時別れたきりですから、ぜんぜん気がつかないと思います」

 ペシュトランの町まで、川を上り、汽車で三駅。
 駅から家までの距離は多少あるが、子供の足でも十分言って帰ってこれる距離だった。
 一人旅などしたことのないサラだったが、シーラにできることは自分にもできると思い込んでいた。
 シーラもそれを全く疑ってもいなかった。
 それほど二人は互いに同化している感覚を持っていたのだ。

 そして、五年もの間、シーラは屋敷のなかで、サラのふりを続けた。
 初めは帰ってこないサラを心配し、本当に不安で具合が悪くなってしまった。
 だが、あるときから手紙が届くようになった。
 あて先は、サラ・マリ―ブラン様。
 差出人は、シーラ・パンプキンソン。
 パンプキンソンとは、マハリクマリックを演じた芸人の性である。
 サラはちょっとした行き違いがあって、すぐに戻れなくなってしまったことを伝えてきた。
 しかも、入れ替わったことが両親にばれるとこまるから、自力で帰るまで、このままサラのふりを続けてほしいと書かれていた。
 シーラは迷ったが、手紙の文面は決して切迫した風ではなく、どこか楽しんでいる様子だったので、サラの言うとおりにすることにしたのだ。
 ただし、いざというときにはすぐに助けに迎えるように、い場所だけは知らせるようにと返信の手紙に書くことは忘れなかった。
 この入れ替わりに両親や屋敷の使用人は気がつかなかったのか。
 結論から言うと、気がつかなかった。
 実家に里帰りしたのはシーラ。
 残っているのがサラ。
 シーラのたくみな演技ぶりもあったろうが、そうした思い込みもあって、五年の間シーラはサラを演じ続けることができたのだ。

 事件後のマリ―ブラン家におけるシーラの立場は少々特異なものとなっていた。
 シーラの証言で行けば、シーラ・クリットは農家生まれの平民で、使用人にすぎない。
 だが、それは同時に、サラが本当にサラであることの証人となる唯一の人物であった。
 それゆえに、シーラは屋敷の中で丁重に扱われ、重い監視下に置かれることになっていた。

 ・・・・・・


 六人の男たちは膠着状態をたもっている。

「これは他国の事件です。我々が関わる余地のないこと。
 下手に関われば、外交問題にもなりましょう。
 我々はリベル王都へ帰るべきだと思います」

 アリテは先ほどから意見を変えることがない。
 ベリオもどちらかというとアリテ寄りだ。

「セラフ殿の言う一か月という期限も過ぎています。
 わたしも、一度国へおかえりいただくのが筋かと思います。
 この件は、モリスとベンジーそして、ケインに任せましょう」

 ケインはベリオに向かってうなづいた。

「僕は構いません。というより、ここまで行きがかった以上、最後まで見届けない限りには気が済みませんから」

 モリスとベンジーはだまったままハリーを見つめている。
 ハリーが口を開きかけたその時、ドアがコツコツとなった。
 ベンジーがドアを開けると、そここには付き人とともにシーラ・クリットがたっていた。

「シーラ」
「部屋まで押しかけて申し訳ありません。どうしてもお耳に入れたいことが」

 アリテは顔をしかめて、明かに歓迎をしない態度を見せたが、ハリーはかまわずシーラを部屋へ招いた。



 シーラはメイド服ではなく、シンプルなジャケットとスカート、そして清潔なブラウスを身にまとい、髪をまとめて帽子をかぶっている。
 家庭教師やコンパニオンという風情であり、まさにシーラの立場を表現するものだった。
 こうしてみると、たしかにそっくりとは言わないが、シーラとサラは背格好や雰囲気が似ている。
 シーラは先の混乱した様子はみじんも感じさせない、落ち着いた品格のある振る舞いで、ハリーの前に膝をついた。

「リバエル国王弟殿下、ハリー様にお目通り叶いまして、恐悦至極にございます」
「楽にしてくれ、シーラ。それで耳に入れたいこととは?」

 シーラは示された椅子に腰かけ、話し出した。

「ハリー殿下は、サラ様を追ってザルマータまでいらっしゃったと聞き及びました。ですから、ハリー殿下なら、なんとかサラ様をお救いくださるのではないかと思い、こうして参じました。
 わたくしがお耳に入れたいことは、サラ様をめぐる現王宮の動きについてございます」

 そのとき、アリテが素早く口をはさんだ。

「シーラ殿、それはいかなるお方の判断で、ハリー殿下にお伝えしようというのですか」

 シーラはすこしためらったが、決意の固いまなざしを返す。

「わたくしの独断でございます」
「それならば、あなたはそのまま口をつぐんですぐこの部屋を立ち去るべきです。貴国宮廷の情報を、同盟国とはいえ他国に漏らしたとあれば、あなたにどのようないわわれが降りかかるかしれません。
 そして、意図せずもその情報を得てしまったとあれば、殿下ひいてはリバエル国と貴国とは、必要ならざる緊張を強いられることになるかもしれません」
「ですが……」
「あなたは思惑はこう言うことでしょう。
 事件が一向に進展しないので、ハリー殿下の情に訴えてもサラ様をお救いしたいと願ってここへ来た。
 誘拐事件は時がたてばたつほど、生きて帰ってくることが難しいと聞きます。
 あなたの気持ちはわからなくありません。
 ですが、あなたの一言で国家間にいわれのない軋轢や問題をはらむ可能性がある以上、殿下はあなたの話を伺うことはできません」
「その通りです……。わたくしはサラ様が無事ならば、それでいいのです。
 国も、貴族も、関係ありません。わたくしにとってサラ様は唯一の主人であり、親友であり、姉妹であり、人生の一部です。
 あの方のない人生など、わたしには考えられません。ハリー様もそうではないのですか? だから、サラ様を追って、ここまでいらっしゃったのではないのですか?」

 シーラのまっ直ぐな視線に、ハリーは小さな息をはいた。

「君を見ていると、誰かを思い出すよ」

 ハリーは目の端で、モリスをみやった。

「正直に言おう。俺は、サラ嬢に会ったのは、一度しかない。
 それ以来、ずっとすれ違いや行き違いで、ここまで追いかけてきたものの、今回もまたすんでのところで会えなかったのだ。
 俺は一目ぼれするタイプの人間ではない。だから、俺はサラ嬢を愛しているわけではない。愛しているといえるほど、彼女と過ごした時間も交わした言葉も少ないからな。
 だが、サラ嬢がなぜか俺の中で引っかかる。
 樹海をさまよい歩く間、時間があったし、俺はよく考えてみた。
 考えた結果、やはり会ってみなければわからないと思ったんだ。
 美しい娘やつつましい娘、頭のいい娘ならほかにいくらでもいる。
 だが、今俺が会いたいとおもう娘は、彼女のほかにいないとはいえる。
 君が予想していたような情熱的な男でなくて申しわけないが、それが俺の本当のところだ」

 シーラは打たれたように肩を落とした。

「だから、君と同じように、サラが人生の一部かと聞かれれば、それは違う。だが、サラ嬢との追いかけっこ、これはずいぶんと愉快な気持ちにさせてくれた。
 追っても追っても、逃げられる。すぐ手に入るものなど、おもしろくない。彼女は優秀なゲームプレーヤーだ」

 シーラはぐっと口を結んだ。
 サラの命がかかっている。
 これはゲームなんかではない。
 ハリーにそう言ってやりたかったが、シーラはこらえた。
 なんとかして、ハリーにサラのために動いてもらわねばならない。
 そのためにここへきたのだから。



「それでは、ハリー様は目的のサラ様に会わずにお帰りになるのですか?
 それでは、ゲームは結局ハリー様の負けということでございますね」

 シーラは喉を震わせた。
 ハリーはシーラをしばらく見つめた後、微笑んだ。

「いいや、俺はゲームを最後まで楽しむつもりでいる。最後に見えるのはこういう風景だ。リバエル国の王宮で、俺とサラはベッドの中にいる。
 サラは俺にこれまで歌ってきたマハリクマリックの話を一から語って聞かせてくれる。ひとつ残らず、すべてをな」

 ハリーの言葉に、アリテはため息をついた。
 ベリオはあきらめに肩をすくめた。
 モリスとベンジーは互いに視線を交わした。
 ケインは驚きのまなざしでハリーを見た。
 シーラは食えない男に笑顔を見せた。
 サラ様を呼び捨てしたことは、この際大目に見てやろう。
 ハリーは部下たちをぐるりと見渡す。

「よく思い返してくれ。シーラ・パンプキンソンはサラ・マリ―ブラン嬢だったのだぞ。名門貴族出とあれば、国の重鎮たちの文句は出まい。
 それに、だてに五年もの間、世間を一人で渡ってきたわけではない。
 民のことをよく知っているし、豪胆なところも為政者としてふさわしい。
 リバエル国王弟の相手としてぴったりじゃないか」

 ハリーはからからと笑い声をあげた。

 ・・・・・・



 シーラはひとり高笑いしている男ににっこりとくぎを刺した。

「そのためにはいくつかの障害や壁を乗り越えなくてはなりませんね、ハリー様。
 まずは、サラ様の救出。
 それから、皇太子との縁談。
 そして、サラ様のお心を射止めること」
「皇太子との縁談?」

 ハリーははっとした。
 シーラはハリーがサラの心を射止める自信があることには、多少空回り感を禁じえなかったが、
 それはよこに置いて、すぐさま縁談についての話をはじめた。

「そうです。今宮廷や貴族の間では、サラ様の救出のことよりも、サラ様と皇太子さまとの縁談話に注目が集まっているのです。
 こんな話が出てしまったからには、サラ様の救出に難色を示すものも出てまいります。事実、事件はこのところ何も進展しておりません」
「なぜ急にそんな話がもちあがったんだ?」
「ザルマータ王家とマリ―ブラン家とは遠い親戚筋ということはご存じかと思います。これは古いお話です。
 その昔、王家には腹違いの兄と妹がおりました。
 名前はリュクスとソニアです。
 妾の子だったソニアはゼルビアで育ちました。
 その当時、ゼルビアは王家の管理する土地だったのです。
 年頃になって、ソニアは社交会にデビューしました。
 そこで初めて出会ったリュクスとソニアは互いに惹かれあってしまったのです。
 しかし、当然ふたりが結ばれることは許されませんでした。
 ソニアはマリ―ブラン家に嫁入りし、リュクスは他家から妻をもらいました。
 ふたりは別れるときこう約束したそうです。
 いずれ、互いに子が生まれたら、めあわせようと。
 子がだめならば、孫を。
 この約束は何代もの間、果たされませんでした。
 両家とも同性の子しか続かなかったのです。
 しかしこの約束が今、サラ様と皇太子様とで果たされようとしています」
「それが、なんだって今なのだ?
 それならば、以前に話が出ていてもおかしくないはずだが」
「それには、マリ―ブラン家の事情が絡んでおります。
 長男のファースラン様は妾の子でした。
 先代はファースラン様に家督を譲ると公言しておりましたが、ご正妻様は我が子のキューセラン様に継がせたがったのです。
 ファースラン様とそのご生母様は、いつも苦しい立場に置かれていたそうです。
 そして、先代がお亡くなりになると、ファースラン様は家督こそ継いだものの、ゼルビアの屋敷に引きこもってしまわれたのです。
 そして、事実上キューセラン様がマリ―ブランの実権を握ることになりました。
 そして、時がたち、ふたりの兄弟は妻を娶り子を持ちました。
 ファースラン様はサラ様を。
 キューセラン様は二人の男子を。
 リュクスとソニアの悲恋の契りを果たすために、王家からマリ―ブラン家に再三の申し入れがあたそうですが、
 ファースラン様はそれを断り続けました。
 ファースラン様がなぜそこまでかたくなになったのか今ではわかりませんが、聞くところによれば、この話をキューセラン様が持ち出したことで、お二人の間には決定的な溝が生まれたそうです。
 ファースラン様は自分やソニアのために、自分たちと同じようになにかに縛られるようなことがないようサラ様を守りたかったのではと思います。
 とにかく、この度の火事でファースラン様がなくなり、反対するものがいなくなりました。
 キューセラン様は、約束通り、サラ様を王室に上げるつもりでいます。
 だから、キューセラン様は、記憶喪失の治療にも熱心だったのです。
 サラ様が王室に上がれば、当然マリ―ブラン家はより王家と近しくなり、これまで以上に有利なお立場になるでしょう。
 でも、サラ様がそれでお幸せになるかどうかは話は別です」

 ハリーは記憶を巡らせた。

「ザルマータ国皇太子といえば、三人いたな」
「はい。
 ドレイク様、レイン様、アビゲール様です。
 お三方ともいまだ未婚で、お年は三十、二十五、二十です」
「まさか、ドレイク殿であるまい」
「それが、まさに論争となっているのです。
 サラ様をどの王子とめあわすのか。
 それによって、背後に控える貴族たちは身の振り方を考えねばなりません」
 ハリーはしばらく考えて、シーラに尋ねた。
「シーラ、その話はいつ知った?」
「こちらへ来てからです。ファースラン様は、そのようなことをわたくしの耳にはみじんも入れませんでした。
 ただ、お前の好きなように生きなさいと。このお言葉は、サラ様へのお言葉です。キューセラン様からこの話を聞いたとき、三人の皇太子様のお写真を見せられました。
 自分のことばかり考える愚かな人たちに腹が立ちます。
 この縁談話も、サラ様を救い出さねば、ただの空論です。そんなことをしている暇があるなら、一刻も早くサラ様を救ってほしいのに!」

 ハリーは再び、わははと声をあげて笑った。

「ああ、面白い。本当に、退屈させない娘だ」
「ハリー様、どうかサラ様を救ってください。
 こうしている間にも、サラ様のお命は危険にさらされています」
「わかった、シーラ。この件は俺に任せてくれ。
 みなと相談をするから、君は今日のところは帰りなさい。
 力を貸してほしい時には頼んでもいいかな」
「はい、もちろんです。ただし、サラ様のお心をつかむことには手を貸せませんけど」
「わははは。それは自力でやってみるとしよう」
 シーラは丁寧に礼をすると部屋を出て行った。
「さて…………」

 ハリーは深く椅子に沈んだ。

「何からするべきかな。アリテ、どう思う?」

 アリテはもはやため息もなく、ただただ頭を抱えてた。

*おせらせ*  本作は便利な「しおり」機能をご利用いただく読みやすいのでお勧めです。さらに本作を「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届きますので、こちらもぜひご活用ください。

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