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#65、 イルマラの女子会*
しおりを挟む(信じられないっ……!
ブランシュもライスも、わたしの気持ちなんてどうでもいいんだわ! 男兄弟なんて、やっぱり散々だわ!)
足早に景朴の離宮に戻ると、セレンディアスが来ていた。
「ナナエ様、ただいま戻りましてございます」
「セレンディアス……」
にこっと笑うセレンディアスを見て、高ぶった神経が緩まる。
(今日は一段とセレンディアスがかわいく見える。やっぱり頼れるのは忠誠心だわ)
よしよししてあげると、犬がしっぽを振るかのように喜ぶ。
部屋に戻って、報告を聞くことにした。
「まず、グレナンデス皇太子のいるという靴屋に行ってみたのですが、残念ながら不在でした」
「まあ、そうだったの……」
「不在というよりも、姿を消してしまったというほうが正しいようです」
「え、もしかして、探していることに気づかれたの?」
「そうかもしれません。靴屋の主たちにもどこへ行くとも告げずに、突然姿を消してしまったそうです。
もう二週間ほど前になるそうです」
「そんなに前に?」
「はい。トラバットの情報が古かったようですね。あるいは、トラバットはすでに靴屋にいないことを知っていた可能性があります」
「知っていたのだとしたら、どうして教えてくれなかったのかしら」
「あちらもすべての手の内を簡単にはさらさないということでしょう」
思っていた報告と違って、奈々江はあからさまにがっかりとした。
気をつかわし気にセレンディアスが続ける。
「町の情報屋に様子を探らせていますが、これまでの経緯から行くと簡単に行き先がわかるとは思えません。
もう一度トラバットに聞けば何かわかりそうではありますが」
「ええ、トラバットに近いうちに会ってみましょう」
「……しかたありませんね」
セレンディアスに続いて、メローナもぶすっと顔をゆがめた。
「それから、シュトラス殿下ですが、前回同様グランティア王国の様子を子細に教えてくださいました。
ビバルディ伯爵令嬢とトリステン皇女からはいよいよ婚約を迫られているらしく、もう一刻の猶予もないそうです。
特に、トリステン皇女の母国ノーザンティエスタ王国からは毎日のように確認のスモークグラムが飛んでくるそうです。
婚約者が一向に公表されないので、国民もグレナンデス皇太子は重病ではないかとか国外に行方をくらませたのは本当ではないかと噂が広まり、不安が高まっています。
それらを踏まえシュトラス殿下はお互いにどのように連携を取っていけばいいか、ナナエ様に直接お話を聞きたがっております。
それに、ナナエ様の魔力のことやEボックスのことは僕から多くを伝えられませんので、シュトラス殿下にどの程度まで話すべきかを決めておかれた方がよろしいかと」
「そうね……。わたしも会えるなら直接会ってお話ししたいわ。
でも、わたし魔力のことはシュトラス殿下に聞かれたらきっと見透かされてしまうわ。
エレスチャルを持つ者同士、その効果は半減するけれど、こちらに都合よく情報を隠せるかどうかわからないわ。
わたしとしてはいっそすべて話してしまったほうが気が楽だけれど、危険かしら?
それに、シュトラス殿下にはできるだけ思ったことを話すように心がけると約束しているし」
「呪いの仲間としての盟約はありますが、シュトラス殿下は国家のために動かざるを得ない場合もございます。
例えば、アキュラス殿下ですが、なかなか祖国へおかえりにならないので困っているそうです。
アキュラス殿下は、エドモンド陛下からグレナンデス皇太子の行方を探るようにいいつかっているようなのですが、それが、ナナエ様に再会したことによってその命令を忘れ、ブルーノ城に居座り続けています」
「え、アキュラス殿下、まだいるの……?」
「つまんで追い出すわけにもいかないのでファスタン国王陛下もお困りのようです。
エドモンド陛下とファスタン陛下との間で、今後どのような交渉がされるのかわかりませんが、国家のために動かなければならないお方が、役に立たない場合もあるということのようで」
(ほ、ほんと迷惑な人ね、アキュラス……)
「シュトラス殿下とはできるだけ早くお話しする機会を作りましょう」
「それまでに魔力のことをどれだけ伝えるかは考えてみるわ。
ひとまず、トラバットにはわたしから連絡をとってみるわね」
「はい。それと、ナナエ様のスモークグラムのサンプルができたので持ってまいりました」
「え、ほんとう!?」
セレンディアスがローブから小箱を取り出す。
木の箱を開けると、五本の紙の筒が並んでいた。
「どれがなんの香りなの?」
「せ……、僭越ながら僕がイメージするナナエ様を香りで作ってもらいました。
といっても、店主から右から、フローラル系、ウッディ系、鉱物系、ハーブ系、フルーツ系です」
「セレンディアスが選んでくれたの?」
セレンディアスがわずかに照れたように頬を染める。
一本ずつ火をつけてはすぐに消し、その香りをかいでみる。
(これは、梅みたいな香り。こっちは、檜に近いわ。これはあまり嗅いだことがないけどしっとりしたいい香り。
これはフレッシュハーブとすこし甘いスパイスの香りが混じってる。
このフルーツはリンゴとミントを混ぜたみたいなさわやかな感じだわ)
ラリッサが鼻を澄ませて尋ねる。
「ナナエ姫様、どれがお気に召しました?」
「わたし、一番初めのがいいわ」
「あら、わたくしもこれが好きですわ。初めて嗅ぎましたけれど、凛としていてとても品のある香りだと思いましたわ」
メローナが同調すると、すかさずセレンディアスがうなづいた。
「実は、僕もこれが一番ナナエ様のイメージに近いと思っていました」
「なら、これに決まりね! 品物はいつできるのかしら?」
「これからスモークグラムを焚いて発注いたしますので、明日には保安検査を通って景朴の離宮に届くでしょう」
「わあ、楽しみね! ねぇ、これ早速使ってみてもいい?」
「はい、どうぞ」
「じゃあセレンディアスに送ってみるわね」
「目の前の者に送るというのはあまり意味がありませんので、どなたか顔の見えない方に送ってみてはいかがですか?」
「あ、それもそうよね……」
「ブランシュ殿下に送られてみてはいかがですか?」
「……それは、ないわね」
珍しく奈々江が見せた嫌悪の表情に、セレンディアスが驚く。
「どうかされたのですか?」
「男兄弟と分かり合うなんてやっぱり無理なんだと思っただけ。
そうよ、イルマラさんに送ってみるわ。一番初めに送ってといわれていたのを思い出したわ!
ええと、まず先に香りをわたしのイルマラさんに知らせておく必要があるのよね」
「それなら、先日頂いたイルマラさんの香りのついた紙片がありますよね。
あれをスモークグラムを焚くときに一緒に燃やします。
その紙片に残った香りが道しるべになって、ちゃんとイルマラ殿下の元にナナエ様のスモークグラムが届くはずです」
「なるほど、そうやって最初を始めるのね」
早速、イルマラにあてて梅の花の香りがするスモークグラムを焚いてみる。
同時にイルマラがくれたハチミツのような甘さとフローラルが香る紙片に火をつける。
「イルマラさん、こんにちは。ナナエですわ。
今日スモークグラムのサンプルが来て、こちらの香りに決めましたの。
今後はスモークグラムでもやり取りができますわ」
煙がすうっと消えた後、イルマラからの返事はすぐに来た。
ナナエの手の中の水晶に、イルマラからの返事がすらすらと映し出される。
「ナナエさん、うれしいわ。
本当に一番先にわたくしに送ってくださったのね。
ナナエさんの香りは初めて嗅ぐ香りですわ。とてもいい香り。気に入りましたわ。
これからは今まで以上に親しくしましょうね。
取急ぎ、今日の午後わたくしの部屋にいらっしゃらない?
気の置けないお友達を呼んで、先日の祝賀会についてお話しますのよ。
あなたが来てくれたら、きっとみんな喜びますわ。
ご安心なさって、お友達はみんな女性ばかりよ。
婚約者選びに辟易なさっているのなら、ぜひ気晴らしに遊びにいらして」
そこでスモークグラムは終わった。
「イルマラさんから女子会に誘われたわ。なんだか、ちょっと楽しそうね」
ラリッサとメローナが瞳を輝かせた。
「イルマラ殿下のプライベートなお茶会ですわね。
きっと、素敵なお嬢様方がお見えになるに違いありませんわ」
「流行のドレスや髪型の情報を仕入れるいい機会ですわ!」
「あ、なるほど……。そうよね、女性たちはそういうところでいろいろな新しい情報を仕入れているのね」
「行きましょう、ナナエ姫様!」
「そうですわ! 研究所や修道院ばかりでは息が詰まってしまいます!」
景牧の離宮に来てからというもの、必要にも迫られず先立つものもないために、ステージ毎のお約束だったはずのアイテム商人も姿を見せなくなっていた。
本来この乙女ゲームのお茶会というのは、ゲームユーザーにとって思案のしどころであり、同時にラリッサとメローナにとっては久々の腕の見せ所なのだ。
(そっか。わたしは立体パズルが楽しかったから気にならなかったけれど、ラリッサとメローナからしたら、きっと面白くなかったわよね……。
グランディア王国ではグレナンデスが紫色のバラの庭を案内してくれたり、シュトラスが秘密の塔に入れてくれたりして、ここよりもいろんなものを見れたし)
「そうね、お伺いしましょう」
「そうと決まれば、ドレス選びですわ!」
「わたくしはやってみたい髪型がありますの!」
ふたりの侍女ががぜんとやる気を出す。
セレンディアスが口を開き、心配そうな目を向けてきた。
「あの、先ほど男兄弟と分かり合うのはやはり無理とおっしゃっていましたが、ブランシュ殿下となにかあったのですか?」
(口に出すのも腹立たしいわ……。それに、将来的にはセレンディアスを恋人にって、そんなのわたしからセレンディアスに聞かせられるわけないじゃない)
奈々江はにこっと笑みを作った。
「ううん、セレンディアスは心配しなくていいのよ。
やっぱり頼りになるのはセレンディアスだなって思ったの。
あなたは変わらずにわたしのそばにいてね」
「ナナエ様……」
答えてもらえなかったことに一抹の疑問を隠せないままセレンディアスはうなづいた。
ラリッサとメローナが久々に高揚している。
「さあ、セレンディアス様! 申し訳ありませんが外へ出ていて下さいな!」
「ここからは女性だけのお楽しみですわ!」
セレンディアスが追い出されると、ラリッサとメローナの衣装合わせ比べが始まる。
「イルマラ殿下のご友人ですと、受けがいいのはきっとこういうパターンですわ!」
「わざわざ合わせに行かなくてもいいと思うわ。ナナエ姫様は今や誰もがお近づきになりたい時の人ですもの。
少しエッジを効かせて、さすが一味違うと思わせなくては」
「なるほど、それもそうですわね! だったら、このドレスか、あるいはこちらはどうでしょうか。
手袋とリボンはこんな感じで。ほどよいこなれ感もありますわ」
「いいわね、新しい髪型にも合いそう!」
「でも、こちらのドレスにこのケープも捨てがたいですわ」
「確かにそれもいいわね。ナナエ姫様の黒髪にこのケープの抜け感が絶妙に映えますわ」
さほどファッションにセンスのない奈々江はふたりがああでもないこうでもないといろいろと考えた結果に対して、一言いうだけだ。
「ええ、それにするわ」
着るものが決まったら、今度は話題についてラリッサとメローナが顔を突き合わせた。
ナナエがきょとんとふたりを見つめる。
「話題って、前々から用意しておくものなの?」
「初めてのお茶会にお呼ばれした時には、自分からお話しできる話題をいくつか用意しておくのが安心ですわ。
今回はイルマラ殿下が仕切っていらっしゃいますし、ごく親しいお友達というニュアンスでしたから、あまり対応に困るようなことはないと思いますが、普通の女性同士の集まりでは、互いに新しい情報を共有し合えなければ、次にお誘いいただけなくなってしまいますわ」
「あるいは聞き役に徹するのもいい戦略ですわ。
基本的にみなさん自分の話をしたい方ばかりですから、なんでも愛想よく聞いてくれる方は重宝がられますわ」
「でも、それだけではナナエ姫様の存在をアピールできませんから、やはり話題作りは大事ですわ。
ナナエ様にとって目下第一の話題は音楽ですわね!
祝賀会で発表された組曲について聞かれることは間違いありませんわ」
「それは困ったわ……。修道院でもいったけれど、わたしが音楽について話せることはほとんど何もないのよ……」
「そうでございましたね。天にまします神様や音楽家の方々から音楽を押し頂いているというのは、人を選ぶ話題ですわ。お好きな方は大好きでしょうけれど。やはり建前としてご自身が作ったということにしておいた方が無難でございます」
「でもその場合、どういった発想でとか、きっかけはとか、あとやはりどんな先生のおつきになっているのか、といったことは聞かれると思いますけれど、どのようにお答えしましょうか」
ラリッサがしばらくの思案の後口を開く。
「こればっかりは仕方ありませんわ、突然ふっとわいてくるというのはどうでしょう?」
「それだと天から降ってくるのと変わりませんわ」
「いいえ、そうではなく、何かのきっかけで突然メロディがふっと湧いて出てくるのよ。
例えば、今回の組曲だったら、両陛下のなれそめを聞いて、とかそういうことですわ。
大きな古時計も、かつて実際にいらっしゃった王のお話がもとになっていらっしゃるでしょう。
そういうふうに、なにかのきっかけで突然ひらめくと言い張るしかないと思いますわ」
「ひらめく……。そうね、それが一番無難で差しさわりがない答え方になりそうね」
「でもそれだと、今日いらっしゃるご婦人の方々はみなさんおなじことをいいそうですわ」
「どういうこと?」
メローナが両の手を自分の胸のほうに向けてしなをつくる。
これでもかとばかりにパチパチと瞬きをして上目遣いにこちらを見る。
「わたくしをごらんになって、なにかひらめきはございませんか?」
「ああ~……」
奈々江とラリッサが同時に同じ声を出した。
「一曲くらいなにか用意していった方がいいかもしれませんね、ナナエ姫様」
「そ、そうね……。ごく簡単な曲ならわたしも弾けるし、一曲くらいなら何とかなると思うわ」
昼食を済ませた午後、ラリッサとメローナいち押しのドレスに身を包み、イルマラのお茶会へ向かった。
奈々江はイルマラを筆頭にすでに集まっていた面々に歓迎を受ける。
従者を交えて一通り挨拶をしたが、特に近しい従者以外、とくに男性たちは控えの部屋で待たされるのが習わしらしい。
ラリッサとメローナは同じ部屋に残れたが、セレンディアスと警備の二人はそろって別室に向かうことになり、セレンディアスの不機嫌を誘った。
イルマラの招いた客人は奈々江を覗いて三人。
オレンジ色の髪に淡いグリーンのドレスを合わせているのがエルドレン公爵家のマデラ。
髪にもドレスにもたっぷりと白のレースをあしらった甘い雰囲気のバリーモア伯爵家のサリュー。
紺色の固そうな毛質とすらっとした骨格に青が似合うクロッカス伯爵令嬢のタリル。
三人とも年が近く、魔法学校時代からの仲良しだという。
イルマラは三人の中でも一段も二段も上へ行く作り込まれた淡いイエローのドレスに身を包んでいる。
四人を前にすると、空気からしてきらきらに輝いて見えて、ここが乙女ゲームの世界だという事を改めて認識させられる。
ゲームの夢の中だし、奈々江自身中世の西洋風のスタイルにほとんど興味がないので、手の込んだ刺繍模様やタフタの産地、城下で一番のお針子の話などは全く右から左だった。
そのかわり、ラリッサとメローナがすこぶる興味深そうに熱心に耳を傾けている。
奈々江のスタイルはというと、メローナが選んでくれたベージュピンクのドレスに黒のリボンをや小物で引き締めたコーディネートが彼女たちには新鮮に映ったらしく、ラリッサが苦心した新しい髪型と共に称賛を受けた。
それはそれとして、三人の中では一番格上のマデラがつぶやいた。
ややむすっとしした態度で背後の部屋からこちらを見ているセレンディアスを今も少し気にしている。
「さすがはナナエ殿下でございますわね。噂には聞いておりましたが、実にものものしい従者をお連れですのね。
祝賀会で男性の皆様がそろいもそろってめまいと引きつけを起こした訳がわかりましたわ……」
「はあ~、本当ですわね~。本日ようやくナナエ殿下とお近づきになれたのに、我が一族の身内たちではとうてい器が及びませんわ~」
おっとりしたサリューがあきらめたようにこてんと首をかしげた。
バリーモア一族は軒並みサリューのようにおっとりした気質の者が多いのではないだろうか、そんな風に感じさせられる口ぶりだ。
目端のはしこいタリルがふうと息をついたあとに、特徴的なハスキーボイスでいう。
「本当に彼、すごい魔力量ですね。我が家は肉体派の家系だから、実際あの魔力の圧には気押されちゃいます。
剣技だったら、うちの男どもにはなかなか見所はあるんですけど、うちの兄たちじゃやっぱり駄目ですよね?」
タリルはだいぶさばけた上にくだけた性格らしい。
イルマラが腰に手をやって三人を見やった。
「ちょっと皆様。婚約者候補の話はここではなしですわ!
今ナナエさんのもとにはこの手のお話が多すぎて、いちいち相手にしていられないのですわ」
「ごもっともですわ」
「ですわよね~」
「そりゃそうですね」
三人が揃ってうなづくと、新しい話題に切り替えたのはマデラだった。
どうやらうまく場を回していくのはこの少女の役割のようだ。
「ところで、祝賀会では素晴らしい初演でございましたね。
わたくしも母主催の刺繍の会に入っておりましたから、末席で組曲の演奏を聴かせていただきましたわ。
どれも素晴らしかったですけれど、わたくしは第二番鳥の戯れが特に好きですわ」
イルマラがにこっとほほ笑んだ。
「そうでしょう、マデラ! わたしも鳥の戯れはお気に入りですの。
あなたがたはどうだった? サリュー、タリル」
「わたくしは月の瞬きが胸にじんわりと来て、まるで夢見心地でございましたわ~。
夜月を見るたびに、あの美しいメロディを思い出してしまうほどですの~。
すぐにお父様にお願いして楽譜を注文していただきたいたのですけれど、一か月待ちといわれてしまいました~」
サリューもマデラと同じ刺繍の会に属していて祝賀会に参列していたらしい。
タリルはにわかに頬をかいた。
「すみません、わたくしは父や兄たちと狩猟の会で参列していたのですが、挨拶が長すぎて飽きて途中で退席してしまって……。
でも、音楽が聞こえてきたので戻ってみると、ちょうど最後の花歌の演奏の最中でした。
あのターンターンターンタッタッラタッタッタッターンという勢いが気に入りました!」
お嬢様と一口に言っても、それぞれに個性はかなり違うらしい。
イルマラがタリルをたしなめる。
「もう、タリルったら本当に落ち着きがないんだから。あの名曲を聞き逃すなんて信じられないですわ」
「面目次第もありません。でも、楽譜が届いたら我が家でも一族総出で演奏してするつもりです。
今からあのターンターンターンタッタッラタッタッタッターンをやるのが楽しみです」
「わたくしも一刻も早く練習をしたくて、雇いの音楽教師にパート別の譜面を記譜させているところですわ。
わたくしはバイオリン、父はコントラバス、母はフルート、チェンバロは妹に譲りましたわ」
マデラはすでに楽譜を手に入れているらしい。
どうやら譜面を手に入れた後、パート別の楽譜にするのはそれぞれ手に入れた側でやるらしい。
このように細かく仕事が分かれているところを見ると、この世界における音楽の需要の高さが窺い知れる。
しかも、それを家族や一族集まって演奏して楽しむともなれば、相当な音楽教養レベルだ。
イルマラが奈々江に向かって笑いかけた。
「ナナエさん、組曲水上の音楽はご覧の通り大評判ですわ!」
「これもイルマラさんのお陰ですわ。イルマラさんがいなかったら、今日の評価は得られなかったはずですもの。
それに、みなさんも楽譜をお買いあげ頂いてありがとうございます。
わたしにとっては大事な活動資金になりますから大変ありがたいですわ」
「活動というと、ナナエ殿下はこれからもっと音楽活動を広げて行かれるということでしょうか?」
マデラが言うと、サリューとタリルもが目を輝かせた。
「あ……、いえ音楽ではなくて、わたしは今自分の魔力の研究を目下の課題としておりまして……」
「まあ~、残念ですわ~。楽団を結成なさって、御自らご演奏なさるとばかり思っておりましたわ~」
「そんなまさか……。わたしは演奏はからきしでして、そんなこと考えたこともありませんでしたわ」
「またまた! あんな心躍る音楽をお作りになれる方がどうしてそんなご謙遜なさるのですか」
またもこてんと首をかしげてため息をつくサリューと、カラッと笑うタリル。
説明しようと口を開きかけると、イルマラが代わってくれた。
「不思議と思われるでしょうけれど、それがまさになんですの。
ナナエさんは音楽を作る才能に恵まれていますけれど、どういうわけかそれに気づかないまま時を過ごしていらしたの。
実際、ピアノをお聞かせいただいたこともあるけれど、お世辞にもお上手とは言えませんわ。
そうでなければ、あれほどの名曲ご自分で演奏なさりたくないはずかありませんもの」
「まあ、そうなんですの?」
「そんな不思議なことってあるのですか……?」
「確かに、自分で演奏した方がお祝いには相応しいですけど」
三人が揃って奈々江を不思議そうに見つめる。
奈々江は苦笑した。
「わたくしのたどたどしい指運びをお見せしましょうか。そうしたら、みなさんもお分かりになりますわ」
「まあ、ナナエさん、その必要はありませんことよ。
人に苦手だとわかっていることをさせるような品のないことをわたくしたちはいたしませんわ。
人には得手不得手というもの、与えられた才能と与えられなかった才能というものがありますわ。
あまたの人がどれだけうまくピアノを弾けても、ナナエさんのように胸を打つ音楽を作ることは敵いませんもの。
ナナエさんが楽器が得意でなくても何の問題もありませんわ。
他のあまたいる楽師たちに弾かせればいいのです。
楽師たちがどれだけ束になっても、ナナエさんの代わりには決してなれませんわ」
イルマラのフォローで、へたくそなピアノを披露しなくて済んだようだ。
マデラがまた話題を変えた。
「では、一体どうやって音楽をお作りになっているのですか? どのような作曲法や構成法をお学びに?」
「どなたに支持されて音楽を勉強されたのかぜひお聞きしたいですわ~」
「確かに、音楽家がどうやって音楽を作っているのか気になりますね」
イルマラも知りたそうに瞳を輝かせている。
このあたりの質問は、ラリッサとメローナとともに想定した通りだ。
「それが、自分でも不思議なのですが、なにかのきっかけでふっとメロディを思いつくのです」
「音楽教師もそのような作曲法をしているのですか?」
「いえ、わたしはほとんど音楽の勉強をしておりません。
譜面が少し読めるの程度の知識と、簡単な曲をピアノで弾けるくらいの腕前しかありませんわ。
マデラさんのおっしゃるような手法なども、わたしにはわかりません」
「音楽を学んでいないのに、音楽を作ることができるのですか……?」
「わたしも作ろうと思ってつくっているわけではなくて、自然と音楽が湧き上がってくるんです。
今度の組曲は、両陛下のなれそめを聞いたときに、ふっとひらめいて、頭の中に音楽が湧いてきたんですわ。
それを譜面に書き起こしてもらったのが、あの水上の組曲なんですの。
期待に沿えず申し訳ありませんわ、サリューさん」
「すごい……! つまり、直感ってやつですね!」
「直観……そうですわね、タマラさんのおっしゃる通りかもしれませんわ」
三者三様の反応が見れた後、イルマラが何故か深くうなづく。
「そう、そうですわ……。つまり、これは天賦の才、神からの贈り物なんですわ」
(まあ、こういう反応になっちゃうよね……。まあ、これはもうしょうがないね)
奈々江はイルマラを見てもう一度繰り返す。
「ですから、わたしひとりでは組曲を完成させることはできませんでしたわ。
わたしには頭の中で鳴っている音楽をオーケストラ用に編曲する力などないのですから。
イルマラさんが編曲家を依頼して、オーケストラを用意してくださったからこそ、祝賀会の成功があったのですわ。
ですから、この功績はイルマラさんあってのたまものですわ」
「まあ、ナナエさんにそういわれるとうれしいですわ!」
イルマラの天使の笑顔が輝く。
三人のお嬢様がたも、奈々江の説明に納得してくれたらしい。
ここでも太陽のエレスチャルさまさまだ。
突然タリルが両の手を左右に広げた。
「でしたら、ナナエ殿下! わたくしを見てなにか感じませんか?」
(うわっ、やっぱり来た!)
「ず、ずるいですわ~。わたくしがさきにお伺いしよう思っていたのに~」
「こういうのは早い者勝ちよ。だいたい、サリューを見たらどう考えたってふわふわ甘々で脳内お花畑のイメージしかわいてこないけど、その点わたくしは狩猟で鍛えた乗馬と猟銃の腕前に、野生動物を相手にしてきた鋭い感があるでしょ。
あなたよりよっぽど想像力を掻き立てられる題材だと思うわ!」
「ひ、ひどい~。あなたみたいな野蛮な人、ナナエ殿下はきっとお好きじゃありませんわ~」
「なっ、やっ、野蛮ですって!?」
「脳内お花畑って先に悪口をいったのはあなたのほうですわ~」
おっとりしているだけと思いきや、サリューもなかなかいうようだ。
野蛮といわれたタリルが勢いよく立ち上がったものの、言い返せずに口をぱくぱくさせている。
マデラが冷静にふたりの間に入った。
「おふたりとも、両殿下の御前ですわよ。
それに、イルマラ殿下のご厚意で気の置けない集まりに参加させていただいているとはいえ、これよしとばかりにナナエ殿下に個人的なお願いを申し上げるなんて不躾ですわ」
「お願いではありませんわ、なにか感じませんかとお伺いしただけです……」
「わ、わたくしもただお伺いしたかっただけで……」
「おんなじことでしょう。ナナエ殿下、どうかお許しください」
マデラが頭を下げるとサリューとタリルが互いに顔を見合わせた後そろって頭を下げた。
イルマラが間を取り持つように顔に笑みを浮かべて奈々江を見た。
「ナナエさんはそんなことで気を悪くされたりなさいませんわ。ね、ナナエさん」
「ええ、イルマラさん」
すぐに受け答えると、少女たちがそれぞれににこりと和らぐ。
その後もなにかしら奈々江への質問が込むときにはマデラが調整し、イルマラが収める。
どうやらイルマラを頂点としたこの仲良し組はこんなふうに回っているらしい。
そのおかげか、困るような質問や要求も得なく、女子会は穏やかに終わった。
終始丁寧な態度のマデラが頭を下げる。
「本日はイルマラ殿下とナナエ殿下と素晴らしいお時間を共有できて、本当に楽しいひと時でございました。
心より感謝申し上げます」
「ナナエ殿下とお近づきになれてうれしゅうございました~」
「両殿下は本当に仲がよろしいんですね。我が家には女きょうだいがいないのでうらやましいです」
マデラに続いて、サリュー、タリルが頭を下げた。
「そうでしょう、タリル。わたくしとナナエさんは血のつながり以上に濃い姉妹の絆があるんですの。ね、ナナエさん」
「そういっていただけるとわたしもうれしいですわ。
今日はイルマラさんがお誘いくださったおかげで皆さんとお知り合いになれましたし、わたしのほうこそ皆さんにお礼申し上げますわ」
部屋を出るころには侍女同士にもなにがしの親しみや連帯感が生まれたらしく、それぞれにドレスや髪型について情報を交換し合っているようだ。
なんとも若い女性たちらしいほほ笑ましい風景だ。
三人を見送り、イルマラにお礼をいった後、奈々江も従者たちを引き連れて部屋を後にする。
イルマラの部屋を出た途端に、ラリッサとメローナがうきうきとした声でいう。
「ああ、なんて楽しい集まりですの!
サリュー様の可憐なドレスのふんわりとして刺繍のレース、とっても素敵でしたわぁ」
「マデラ様のお髪は今一番人気の編み込みなのだそうですわ。マデラ様の堅実な雰囲気とも合っていて、よくお似合いでしたわね」
「ふたりとも、良く見ているのね。
ラリッサとメローナが久しぶりに楽しんでくれたようで、わたしもよかったわ。
魔法の研究や女人禁制の修道院ばかりでは面白くないものね」
セレンディアスがきゃいきゃいと楽し気な声を間近に、小さなため息をつく。
「……僕にはよくわかりません。正直イルマラ殿下とマデラ様とサリュー様と大して区別がつきません。
タマル様は女性には珍しく精悍な感じがするので、雰囲気が違うとわかりますが」
「ええっ!? 全然違いましたわ! セレンディアス様はなにを見ていらしっしゃたのですか?」
驚くラリッサにメローナがいう。
「セレンディアス様にとってナナエ姫様以外はみんな同じなんですよ」
「なるほど、メローナのいう通りですわね」
「そ、そういうわけでは……」
セレンディアスが言い訳する前に、奈々江は思わず笑ってしまった。
確かに、グランティア王国時代は人嫌いで通ってきたセレンディアスにとっては、女たちのドレスの素材や髪型の流行などの小さな差は大した意味をなさないのだろう。
そういう意味ではセレンディアスは乙女ゲームにおいて一番攻略しがいのない相手かもしれない。
部屋に戻る途中で、回廊の先に集団が見えた。
「おや、ナナエではないか」
親子並んで歩くファスタンとブランシュだった。
ブランシュが素早くこちらの顔色を窺ったのがわかった。
奈々江は視線を受けてさっと流し、なにごともなかったかのように首を垂れた。
「お父様」
「婚約者選びのほうはどうだ?」
「……検討しているところですわ」
「そうか、クレアともよく相談して、できるだけ早く言い相手を定めることだ」
(その言い方だと、ブランシュはわたしを三番目の婚約者にするという話をまだファスタンにはしていないのかしらね)
奈々江は物分かりがいいふりをしてうなずいて見せた。
「ところで今日は王宮にはなんの用があったのだ?」
「イルマラさんにお茶会に誘っていただきました。イルマラさんのご友人と共に楽しいひと時を過ごせましたわ」
「そうか、イルマラとか。女同士の付き合いもよいが、生涯の伴侶との付き合いは人生をよりよいものにしてくれるぞ」
「……心に刻んでおきます」
再び表面だけの笑顔で、うなづいて見せた。
ブランシュがためらいながら奈々江に話しかけようと口を開きかけた。
「ナ、ナナエ……」
「それではこれにて失礼いたしますわ」
聞こえなかった振りをしてさっと首を垂れて脇によける。
なにかいいたげなブランシュの気配を完全に拒否して見せた。
ファスタンは特に変に思うこともなく、大人しく素直な様子の奈々江に満足したように、うむといいながら去っていく。
ブランシュもそれに従いついて行く。
何度かこちらを振り返り振り返り行く様子が感じられたが、決して目を合わさなかった。
セレンディアスがさすがに何かがあったのだと改めて察する。
ファスタンとブランシュとその従者たちの姿が回廊の先にすっかり消えてから、セレンディアスが口を開いた。
「兄妹げんかでございますか……?」
「ええ、悪いのは百パーセントあちらだけどね」
あまりにもさらっと返事が返ってきた。
ラリッサとメローナが間を置かずに同調する。
「なにかいいたげにしていらっしゃいましたけれど、今更なんのおつもりでしょうね」
「まったく気が知れませんわ。行きましょう、ナナエ姫様」
辛辣な態度を隠しもしない女性陣にセレンディアスは次の口を聞くのが怖くなり、開きかけた口を閉ざし、黙って主人の後について行った。
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地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
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2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
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ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
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