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#80、 束の間
しおりを挟む奈々江はぼんやりと意識の中を漂っていた。
(あれ……、ここ、いつか見た、病院……?)
薄もやの視界の先に、人影が揺れているのが見える。
(もしかして、あっちが現実なの……?)
奈々江は手を伸ばそうと試みる。
でも、体が金縛りのように動かない。
その人影のひとつが母の形をしていると気づいた。
(あっ、お母さん……!
わたし、お母さんに伝えたいことが……)
そう思うのと同時に、景色がまた遠のいていく。
(……ああ、このまままた夢の世界に戻るの……?)
奈々江の意識は湖面に浮く木の葉のように揺れて、沈んでいった。
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