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#18、 我が妹よ
しおりを挟む小鳥の鳴く声が聞こえる。
まぶた越しに感じる光。
緩やかに目覚めていく手足の感覚。
ああ、ようやく夢から覚めたんだ、そう思って奈々江はそっと目を開いた。
「え……」
目を疑い、言葉が出なかった。
目の前に映ったのは、ゲームの中で見た豪奢なベッドの天蓋。
(なんで……)
頭が回らない。
回りきらないその間に、突如として人影が見えた。
見知らぬ男性が突然、間近に迫ってきた。
あまりに唐突すぎて、思わず奈々江は悲鳴を上げていた。
「きゃあっ!」
すぐに、メローナとラリッサが奈々江を呼ぶ声がして、パタパタと駆け寄って来る音が聞こえた。
パニックになりそうだ。
仮にも姫の部屋に堂々と入り込んでいる目の前の男は誰なのか。
そしてなによりも、なぜ、またゲームの世界にいるのか。
「ナナエ姫様、お目覚めになられたのですか!」
「よかった、心配したのですよ!」
よくはない。
奈々江はちっともよくない。
誰か、説明して欲しい。
メローナとラリッサがいつもの調子で、奈々江の脇を固めた。
「どこかお辛いところはありませんか?」
「なにかお飲み物をご用意いたします。
あれだけ熱が出ていらしたのですから」
目の前に見知らぬ男性がいることを、メローナとラリッサはまるで当たり前のように受け入れている。
ふたりに聞かずにはいられなかった。
「ま、待って、ラリッサ、メローナ……」
「はい」
「いかがなさいましたか?」
「あの人……、誰なの?
なんでいるの?」
目を合わさないようにそっと男性を指した。
すると、男性が腕組みしたままつかつかと前に進んできた。
「ばかものが!
熱にうなされて、自分の兄の顔も忘れたのか!?」
(あ、兄!?)
目を丸くしていると、見る間に男性の額にぴくぴくとしたものが浮き上がっていく。
「ロージアスからお前が自殺騒ぎを起こしたとの連絡を受け取り心配してきてみれば、今度は失神だと!?
恥さらしもいいところだ!」
巡りの悪かった頭がようやく回り出した。
シナリオ上ほとんど登場してこない、主人公の兄。
エレンデュラ王国の第一皇太子ブランシュであるらしい。
奈々江自身とは全く似ても似つかない、波打つ茶色の髪を短く整えて、琥珀色の眼をしている。
兄妹とはいえ、ゲーム上ではその人柄や行動はほとんど触れられていない。
どんな子ども時代を過ごし、どんな関係性だったかなど、まったくといっていいほど情報がない。
それなのにいきなりこんな高圧的に怒られても、奈々江は面食らうしかなかった。
答えに詰まって黙っていると、突如ブランシュが顔をゆがめた。
「……お、おい、ナナエ」
「……」
「ナナエ、聞いているか、大丈夫か?」
「……はあ……」
「お、お前、まさか、本当に俺がわからないのか?」
「……えっと……」
正直、よくわかりません。
そう答えてもいいものだろうか。
奈々江は少しうつむいて考える。
そのとき、ブランシュが、がばっとベッドに手をつき、奈々江の視界に割り込んできた。
「ナ、ナナエェ~……」
一転、ブランシュの顔が子どもの泣き顔のように、ぐしゃっとなっていた。
あまりの変わりように、奈々江がぎょっとしていると、今度はがしっと肩を掴まれた。
「悪かったぁ~!
お兄様が悪かったよ、ナナエェ~っ!
厳しくしたのは、お前のためだと父上からいわれていたんだぁ!
本当は、俺はお前に優しくしたかったんだぞぉぉぉ~っ」
打って変って許しを請うようなブランシュの態度。
しかも、なんというか、いわゆるシスコン臭がぷんぷんする。
さっきの青筋はどこへ行ったのだ。
ただただあっけにとられていた奈々江だったが、ようやく思い出した。
(そうか、太陽のエレスチャルが装備されたままだから)
「お前が結婚したくないというんなら、わかった!
お兄様が、父上を説得してやる!
どんなことがあっても、ナナエはお兄様が守ってやるからなぁぁぁ!」
密かにこめかみを叩くと、ブランシュの親愛ゲージはマックスになっていた。
だとしても、この強烈なシスコンキャラはなんなのだ。
このままでは、猫かわいがりついでに、幼子のようにほっぺたすりすりさえされそうだ。
奈々江がすみませんと頭を下げて手をどけてもらおうとすると、今度は本当に泣き出しそうな顔をする。
「怒ったのか~?
お兄様のことが嫌いになったのか、ナナエェ~!?」
「ち、違いますけど……。
は、離してくれなかったら嫌いになりそうです」
「ぐっ、ぬ……っ」
ようやくブランシュが離れてくれた。
奈々江はため息を隠しきれなかった。
この兄、攻略キャラ達よりも厄介な気がする。
それに、せっかく現実に目が覚めそうだったのに、またこっちの世界に来てしまうなんて、どういうことだろう。
やっぱりゲームをクリアしなければ、元の世界に戻れないのか。
それとも、またなにかのタイミングで現実に戻れるのか。
「ナナエ、ナナエェ」
「……」
「ナナエ、お兄様を見てくれよぉ、ナナエェ!」
視線だけブランシュに向けると、ブランシュがエサを待つかも犬のような目をして見つめ返してくる。
これも自分自身の記憶や願望なのだろうか。
奈々江にはこんな溺愛してくるような兄弟はいないし、それに近い人物もいない。
攻略キャラ達だけでも曲者ぞろいで苦労しているのに、正直こんなのにまで付き合いきれない。
思わず頭を抱えた。
(一体、なんなの、この夢……!)
そのとき、寝室のドアがノックされ新顔の女性が入ってきた。
奈々江が困惑していると、どうやら、ブランシュがエレンデュラ王国から連れてきたメイドらしい。
「別室には、国王陛下の命を受けた新たなメイドたちも控えておりますよ」
そう説明するラリッサの姿が、そういえばメイド服から侍女の姿に変わっている。
同様のメローナも嬉しそうにしている。
「そうなんです。
わたくしたち正式に、ナナエ姫様の侍女と同格になりました!
後は、グレナンデス殿下との御婚約が決まれば、晴れてわたくしたちは皇太子妃付の侍女です。
あっ、筆頭侍女は順番からいったらラリッサですよ」
「わたしが結婚して退職したら、メローナ、あなたが筆頭よ」
「うふふ、だといいです~!」
いつの間にやら、身の回りにも変化が起こっているらしい。
どうにも、外堀を固められているという感じだ。
そういえば、あのあと、グレナンデスとアキュラスは一体どうなったのだろう。
あのときは頭がぼうっとなって、途中からふたりがどんな話をしていたか、よく思い出せない。
「おい、タリンサ、メローン!
さっさと仕事をしろ!」
高圧的な響きが突然響き、奈々江はびくっと肩を揺らした。
ラリッサとメローナが、少しばかりむっと顔をこわばらせる。
どうやらブランシュが名前を間違えたのはわざとみたいだった。
「はい、ブランシュ皇太子殿下……。
それで、ルピナス、どうしたの?」
ラリッサに尋ねられた若いメイドが答えた。
「お客様がお見えです」
「どなたなの?」
「それが……」
「どうしたの、ルピナス。
はっきりおっしゃいなさい。
そんなことではナナエ姫のそばを守る者として自覚が足りませんよ」
「は、はいっ。
グレナンデス皇太子殿下と……」
「そう、そろそろお見えになるころだと思ったわ」
「それだけじゃありません……!
アキュラス王弟殿下と、魔導士カロンディアス様と、キュリオット師団長と、オズベルト王室医師と、ロージアス近衛兵長が揃って詰めかけていて……なんといいますか、にらみ合いというか、き、緊迫状態で……」
思わずぎょっと目を丸くした昇格したばかりの侍女ふたり。
奈々江も気が遠くなる思いだった。
「い、いかがしましょう、ナナエ姫様……」
「そ、そうね……。
どうしたらいいのか……」
現実に戻ったと思ったのに、またこの世界へ舞い戻ってきてしまった。
この事態に混乱と動揺が治まらない。
対処するにも心の余裕が欲しい。
それに加えて、突如現れた偏愛質な兄、身の回りの様々な変化。
状況を見定める時間がいる。
どうせ覚める夢なら、いっそもうどうなってもいいのではとも思うが、そうだとしても、自分の置かれている状況と気持ちはそれなりに整理したい。
ブランシュがふんと鼻を鳴らした。
「ナナエは気分が悪くて面会できない。
そういって帰ってもらえばいい。
それでなくとも、俺が来たからには、もう誰にもナナエを会わせる気はない」
ラリッサとメローナが困った様にブランシュを見、そして奈々江を見た。
奈々江にとっては好都合、大賛成だ。
すぐさまうなづいて見せたが、メローナは恐れ入りますがと前置きをして口を開いた。
「ブランシュ皇太子殿下がお見えになってから、そればかりです。
グレナンデス皇太子殿下をはじめ、ここへ詰めかける殿方の皆様はもう何日も何日も同じ理由で追い返されています。
このままナナエ姫様をエレンデュラ王国に連れ帰ってしまうのではないかと、不満も爆発寸前です。
ナナエ姫様が無事目覚められたことだけでもお伝えいただけませんか?
きっと皆様安心なさると思います」
「わたくしもそう思います。
特にグレナンデス皇太子殿下は皇太子妃選びの継続の有無についてもナナエ姫様と話がしたいそうですし、アキュラス王弟殿下は先日の非礼をわびたいと申されています」
メローナに続いてラリッサも今の状況を説明してくれた。
ところが、ブランシュがまたも威圧的にいう。
「まったく、グランディア王国ともあろう国家が、どうしてこのような使えない侍女をナナエに寄こしたのだ!
そもそも、ナナエは城に入る前に賊に襲われている。
あろうことか、同盟国であるエレンデュラ王国の皇女が、グランディア王国の膝元でだ!
なんという不始末!
我がエレンデュラ王国であったらこんな不手際あり得ない!
聞けば、城内で、しかも王のいる謁見の間で、一度は盗賊にナナエを奪われたというではないか。
それだけではない!
アキュラス王弟殿下がナナエに洗脳魔法を放ったという事実!
ここまで無碍に見られてまで、どうして大切な我が妹を、グランディア王国に嫁がせようと思うのだ!
不満が爆発しそうなのはこちらのほうだ!」
ブランシュはよく噛まずにいえるものだと感心するくらいの早口で捲し上げた。
確かにすべて消去しようのない事実だ。
エレンデュラ王国の立場からすれば、ブランシュの怒りはもっともだといえる。
だが、もともともゲームシナリオの一部であるし、太陽のエレスチャルのバグがなければこんな状況には陥っていない。
太陽のエレスチャルが装備から外れない限り、もはやなにが正解で、なにが地雷……つまり、イベントの前倒しのきっかけやキャラクターの暴走になるのかわからない。
(だけど、このままブランシュのいう通りにしていれば、エレンデュラ王国に帰れる。
そこでなら自殺してゲーム終了は可能になるかもしれない。
……でも、今さら、さすがにそこまでしなくてもいいよね……?
わたしの体は病院にいて無事のようだったし、さっき少し目が覚めていた時に、少しだけかもしれないけど、社長にバグのことが伝わったかもしれない。
きっとわざわざ自殺なんかしなくても、体力が回復すればわたしは多分自然と目が覚めるはず。
だとしたら……。
わたしが今ここですべきことはなに?
これは”恋プレ”の夢の世界。
ゲームをクリアするために、両想いになればいい。
それが目覚めるきっかけになるかもしれないし、そうでなくても、恐らくはこの夢の中においてはゲームのシナリオから完全には離れることはきっとできない。
だとすれば、ゲームの基本に立ち戻って、普通にプレイすればいいだけよね。
だけど……。
それには、やっぱり太陽のエレスチャルを装備から外さないと。
混乱が多すぎる……。
うーん……)
奈々江はしばらく考え込んだ後、顔を上げてブランシュを見た。
「お兄様……」
兄とも思っていない相手を兄と呼ぶのは違和感しかないが、ここは設定を順守する。
「どうした、ナナエ。
お兄様にできることがあるなら、なんでもいってみろ」
「大切な話があるので、お兄様とラリッサ、メローナ以外は人払いしてもらえますか?」
「大切な話はお兄様にだけに話せばよい。
グランディア王国に押し付けられた侍女など、どうにも信用ならん」
ラリッサとメローナが不満げに口をゆがめるのが見えた。
ブランシュの立場からしたら否めないことかもしれないが、今から話すことはラリッサとメローナにも聞いてもらった方がいい。
ナナエは首を左右に振った。
「お兄様、わたしの侍女につらく当たるのはやめてください。
ふたりのお陰でわたしはこの世界でもなんとかやってこられたんです」
「しかし……」
「それと、名前はラリッサとメローナです。
今度ふたりに乱暴な口を聞いたら、お兄様であろうとも二度とこの部屋には入れません」
「なっ、じ、侍女といってもはるか格下の下級貴族の出なのだぞ!」
「お兄様!
それ以上いうとも二度と口を聞きませんから!」
「ぐっ、ぬうっ……!」
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