フェティシズム

２.匂い～部屋～night①

寝室の脇にある書斎

読書をしながら寛ぐ貴方

空間は洋酒と煙草の香りが混ざる
充満した香りに目眩が襲う。

脳が判断を鈍らせるほどに
その匂いに酔いしれる。

貴方はロックグラスの
琥珀色の液体を口に含み、
そして飲み干し、揮発されたそれは
体臭と合わさり混ざり合い、
ゆらゆらと燻らせていた
煙草の香りと出会い
三位一体であるかのように主張し、
ワタシを惑わせる幻覚の幕を作り
貴方以外を見せないように覆い隠し、
目も耳も鼻も口も脳ですら支配しようと
貴方の匂いが手綱になる。


貴方は
琥珀の液体の入った
ロックグラスのフチに
右手人差し指で円を描くようになぞり
それを２周半させた時、そのまま
その指をグラスの液体に沈めた。

そしてその液体で濡れた指を
ワタシの唇に押し当て、
下唇を下へ押し下げ、
香りとアルコールで麻痺した
そのだらしない唇を二本の指で抉じ開け
腔内へと侵入してくる。

その侵入してきた指は
腔内をゆっくりと這いながら、
秘密の部屋を探るかの様に
抜き差ししながら
口角にだらしなく垂れる涎を
その指ですくい
ボンヤリと快楽に身を委ねたワタシの
頤に手を添え、唇を合わせた。


アルコールの揮発で
鼻腔にも甘い痺れを残し、
空間のその匂いだけでは飽き足らず、
この身の中にまで浸潤し
鎖骨から尾てい骨に痺れる様な
刺激が伝わった。