上 下
368 / 491
愛し子と樹海の王

ここはどこ?

しおりを挟む
 side・レン


 え~~と。
 ここは何処でしょう?

 ざっと見まわして、天井まで15mくらいある、30m四方の、洞窟遺跡・・・かな?

 柱とか壁の装飾は、ギリシャとかローマの大理石っぽい感じです。

 外界に通じる窓も無し。
 松明や燭台がある訳でもないのに、明るいのは、天井近くで発光している魔晶石と、建材は不明ですが、壁自体が光っているからですね。

 何に邪魔されているのかは、分かりませんが、アレクさんとの念話も不通。

 ダメもとで試した、アウラ様とのボイチャは呼び出し音すら鳴りません。

 これは困りました。
 ここが何処なのか、誰が、なんのために転移させたのか、全く分かりません。

 こう言うのって、転移した先で、悪の秘密結社的な人が、怪し気なローブ姿で、手にはランタンとか、蝋燭の灯った燭台を持って、待ち構えてるものじゃないの?

 あ~もう! こんな事になるなら、ゴトフリーの王様と会うのだって、もっと気を付けたのに!!

 って、後悔は後でするから後悔なのよね。


 ◇◇


 私達は予定通り、クレイオス様に魔法陣を書き換えて貰い、結界をこじ開け、王都へ入りました。

 結界の中に入った瞬間、私とクレイオス様は、神殿から湧き出す瘴気が放つ悪臭に悩まされることになりました。

 途中で我慢しきれなくなったクレイオス様は、 ”臭過ぎてかなわん! ちょっと行って掃除しれくる故。其方達はこのまま、王城へ向かうのだ!“

 神殿に向かうクレイオス様を見送り、私達は、王城へ直行。

 アレクさん達が、場内を制圧している間、私は危険だからと言われて、アンに乗ったまま、太郎と次郎に乗った、クオンとノワールに挟まれ、更にその周りを護衛の騎士さん達にぐるりと囲まれて、王城の前で待機していました。

 予想通りと言うか、アレクさんと騎士団の皆は、あっという間に王城内を制圧してしまいましたが、アレクさんに呼ばれ、私が王城に入れたのは、陽が傾きかける頃でした。

 脚を踏み入れた城内は、装飾過多で、お世辞にも、センスが良いとは言えない建物でしたが、お金を掛けているのは分かります。

 そして、お城の中を進む私とクオン達は、アンと太郎と次郎に乗ったままなのですが、シッチンさん曰く。

「城には秘密通路があるのが常識です、何時死角か襲われるか分かりませんから、団長の所につくまでは、安全の為、フェンリルに乗ったままでいて下さい」だそうです。

 シッチンさんに案内されて、進むお城の中は、あちこちに焼け焦げと、血しぶきの痕が見えました。

 多分、迎えに来るのが遅れたのは、私に見せたくない物を、片付けてくれていたからなのだと思います。

 シッチンさんが案内してくれたのは、お城の謁見室。
 玉座の前にはアレクさんが立っていました。

 半日ぶりに見るアレクさんは、少し疲れているように見えました。
 
 それでも、私が謁見の間に入ると、足早に迎えてくれたアレクさんは、いつもの様に私を抱き上げてくれました。

 そして、これからゴトフリーの王様の話を聞くところだと言って、私を玉座に座らせてくれたのです。

 それから少しして、ゴトフリー王家の全員が、騎士さん達に引き出されて来たのですが、何と言うか、ゴトフリーと言う国では、偉い人は小太りがデフォらしいです。

 そして、この王家の人達は、大変目に優しい仕様となっておりました。


 引き出された王家の人達は、怯えて青い顔をしていましたが、一旦口を開いたら、しゃべること喋る事、しかも男の人なのに、裏返った甲高い声でピーチクパーチク。

 コケコケ、コケコケと。
 ここは養鶏場ですか?

 普段私の周りに居る人達は、イケボのイケメンばかり。

 心地良い声に慣れ過ぎてしまった私は、耳障りな王様達の声で、頭が痛くなってきてしまいました。

 それにしても、自分はアウラ様の御子だ、なんてよく言えますよね?

 アウラ様も、クレイオス様も、目が潰れるんじゃないかって言うくらい、お美しい方なのに、そのDNAを全く感じませんが?

 どっちかって言うと、通勤電車の中のおじさん達に近いと思うのは、気の所為じゃないと思いますけど?

 大体ですね。
 獣人族の事を、汚らわしい獣だとか?
 理性の欠片も無い、人族より劣った種族だとか?

 言いたい放題言ってますけど、自分がやって来た事は人としてどうなのよ?

 あんまり頭に来たから、ミニ雷撃を王様のすぐ横に、バチバチッ って落としてやりましたとも。

 あぁ。いけない、いけない。
 また大人の女の余裕を忘れてしまいました。

 でも、余りにも、聞くに堪えない暴言ばかりなんですよ?

 この人からは、有益な話なんて聞けそうもないですね。

 なので早々に、お引き取り頂いた方が良いと思います。

 アレクさんも同じ気持ちだったのか、騎士さん達に連れて行くように指示を出していました。

 その時立ち上がった、王様達の足元で魔法陣が浮かび上がり、邪法特有の紫色の光がどんどん強くなって行きます。

 異変を目にした、アレクさんと騎士さん達が、王様に駆け寄った瞬間。

 私の体も同じ光に包まれました。

 これヤバイかも!!

 そう思ったと同時に、スクロールと同じ、体の中が裏返るような感覚と、私を呼ぶアレクさんの悲痛な声を最後に、気付けば私は、この場所に飛ばされて居ました。

 幸い、と言っていいのでしょうか。

 魔法陣は玉座の周囲2m位を、転移の対象としていた為、玉座の両脇に立っていたクオンとノワール。私の後ろでお座りしていたアンと、足元に伏せていた太郎と次郎も一緒に転移してきています。

 一人ぼっちで、何処かも分からない場所に飛ばされるのよりか、何億倍もマシだし、とっても心強いですが、アレクさんと離れ離れ、しかも念話も通じないなんて・・・・。

「・・・心配してるだろうな」

「れんさま、だいじょうぶ~?」

「アレク、いなくてさみし~の?」

 いけない。 
 ドラゴンとは言っても、まだ子供の二人に心配かけちゃダメよね?

「アレクが居なくて寂しいけど、大丈夫よ?でも、ここが何処だか分からないけど、早くお外に出ないとね?」

「「は~い!」」

 はあ~~~。
 うちのキッズは、なんでこんなに可愛いのかしら?
 こんな、訳の分からない状況なのに、そろって手を上げて、元気にお返事してくれるなんて。

 ほんと、良い子!

 あれ?
 どうしたのかしら?
 2人ともなんだか急に、困ってるみたいだけど

「2人ともどうしたの? 怖くなっちゃった?」

「ちがうよ!」

「こわくないよ!」

 あらら。怒られちゃった。
 プライドを傷つけちゃったのかしら?

「ごめんね。何を困ってるの?」

「おそとが、どっちかわかんない」

「え?」
 
 そりゃね。明り取りも無い、洞窟っぽい岩壁に囲まれて、ギリシャっぽい柱が岩に直接彫り込まれてる部屋に、いきなり放り込まれて、どっちが外か、なんて分かる人はいないわよ?

「そうね? 私も分からないのよ?」

「でも! ぼくたちはドラゴンだから!」

「すご~~く とおくにいても、みやがどっちにあるか、いつもわかるのに、なんにも、わからないんだ」

 所謂 帰巣本能 って、やつでしょうか?
 帰巣本能って、地磁気を感知するのよね?
 
 それが感知できないって事は、この場所はそういう類をブロックするって事? その所為で、アレクさんとの念話も、ボイチャの呼び出しも、出来ないのかしら?
 
 やだな、この壁から変な電波とか出ているのでしょうか?
 アルミホイルの帽子を、被った方が良いのかしら?

 って、映画の見すぎですね。

「そっかあ。じゃあ、みんなで探検してみよっか!」

「たんけん?」

「たんけん、ってなあに?」

 あれ~?ちょっと難しかった?

「え~とね。何があるかなあ?どんな所かなあ?って見て回る事よ? 探検したら外への出口も見つかるかもしれないし、宝箱もあるかもしれないわね」

「たからばこ?」

「キラキラいっぱい?」

 凄い食いつき。

 そう言えば、ドラゴンって金銀財宝を、寝床に溜め込むのが好きなんだっけ?

「キラキラが、いっぱい有るといいねぇ~」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)

るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。 エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_ 発情/甘々?/若干無理矢理/

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【R18】転生したら異酒屋でイキ放題されるなんて聞いてません!

梅乃なごみ
恋愛
限界社畜・ヒマリは焼き鳥を喉に詰まらせ窒息し、異世界へ転生した。 13代目の聖女? 運命の王太子? そんなことより生ビールが飲めず死んでしまったことのほうが重要だ。 王宮へ召喚? いいえ、飲み屋街へ直行し早速居酒屋で生ビールを……え? 即求婚&クンニってどういうことですか? えっちメイン。ふんわり設定。さくっと読めます。 🍺全5話 完結投稿予約済🍺

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』 色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

処理中です...