上 下
368 / 535
愛し子と樹海の王

ここはどこ?

しおりを挟む
 side・レン


 え~~と。
 ここは何処でしょう?

 ざっと見まわして、天井まで15mくらいある、30m四方の、洞窟遺跡・・・かな?

 柱とか壁の装飾は、ギリシャとかローマの大理石っぽい感じです。

 外界に通じる窓も無し。
 松明や燭台がある訳でもないのに、明るいのは、天井近くで発光している魔晶石と、建材は不明ですが、壁自体が光っているからですね。

 何に邪魔されているのかは、分かりませんが、アレクさんとの念話も不通。

 ダメもとで試した、アウラ様とのボイチャは呼び出し音すら鳴りません。

 これは困りました。
 ここが何処なのか、誰が、なんのために転移させたのか、全く分かりません。

 こう言うのって、転移した先で、悪の秘密結社的な人が、怪し気なローブ姿で、手にはランタンとか、蝋燭の灯った燭台を持って、待ち構えてるものじゃないの?

 あ~もう! こんな事になるなら、ゴトフリーの王様と会うのだって、もっと気を付けたのに!!

 って、後悔は後でするから後悔なのよね。


 ◇◇


 私達は予定通り、クレイオス様に魔法陣を書き換えて貰い、結界をこじ開け、王都へ入りました。

 結界の中に入った瞬間、私とクレイオス様は、神殿から湧き出す瘴気が放つ悪臭に悩まされることになりました。

 途中で我慢しきれなくなったクレイオス様は、 ”臭過ぎてかなわん! ちょっと行って掃除しれくる故。其方達はこのまま、王城へ向かうのだ!“

 神殿に向かうクレイオス様を見送り、私達は、王城へ直行。

 アレクさん達が、場内を制圧している間、私は危険だからと言われて、アンに乗ったまま、太郎と次郎に乗った、クオンとノワールに挟まれ、更にその周りを護衛の騎士さん達にぐるりと囲まれて、王城の前で待機していました。

 予想通りと言うか、アレクさんと騎士団の皆は、あっという間に王城内を制圧してしまいましたが、アレクさんに呼ばれ、私が王城に入れたのは、陽が傾きかける頃でした。

 脚を踏み入れた城内は、装飾過多で、お世辞にも、センスが良いとは言えない建物でしたが、お金を掛けているのは分かります。

 そして、お城の中を進む私とクオン達は、アンと太郎と次郎に乗ったままなのですが、シッチンさん曰く。

「城には秘密通路があるのが常識です、何時死角か襲われるか分かりませんから、団長の所につくまでは、安全の為、フェンリルに乗ったままでいて下さい」だそうです。

 シッチンさんに案内されて、進むお城の中は、あちこちに焼け焦げと、血しぶきの痕が見えました。

 多分、迎えに来るのが遅れたのは、私に見せたくない物を、片付けてくれていたからなのだと思います。

 シッチンさんが案内してくれたのは、お城の謁見室。
 玉座の前にはアレクさんが立っていました。

 半日ぶりに見るアレクさんは、少し疲れているように見えました。
 
 それでも、私が謁見の間に入ると、足早に迎えてくれたアレクさんは、いつもの様に私を抱き上げてくれました。

 そして、これからゴトフリーの王様の話を聞くところだと言って、私を玉座に座らせてくれたのです。

 それから少しして、ゴトフリー王家の全員が、騎士さん達に引き出されて来たのですが、何と言うか、ゴトフリーと言う国では、偉い人は小太りがデフォらしいです。

 そして、この王家の人達は、大変目に優しい仕様となっておりました。


 引き出された王家の人達は、怯えて青い顔をしていましたが、一旦口を開いたら、しゃべること喋る事、しかも男の人なのに、裏返った甲高い声でピーチクパーチク。

 コケコケ、コケコケと。
 ここは養鶏場ですか?

 普段私の周りに居る人達は、イケボのイケメンばかり。

 心地良い声に慣れ過ぎてしまった私は、耳障りな王様達の声で、頭が痛くなってきてしまいました。

 それにしても、自分はアウラ様の御子だ、なんてよく言えますよね?

 アウラ様も、クレイオス様も、目が潰れるんじゃないかって言うくらい、お美しい方なのに、そのDNAを全く感じませんが?

 どっちかって言うと、通勤電車の中のおじさん達に近いと思うのは、気の所為じゃないと思いますけど?

 大体ですね。
 獣人族の事を、汚らわしい獣だとか?
 理性の欠片も無い、人族より劣った種族だとか?

 言いたい放題言ってますけど、自分がやって来た事は人としてどうなのよ?

 あんまり頭に来たから、ミニ雷撃を王様のすぐ横に、バチバチッ って落としてやりましたとも。

 あぁ。いけない、いけない。
 また大人の女の余裕を忘れてしまいました。

 でも、余りにも、聞くに堪えない暴言ばかりなんですよ?

 この人からは、有益な話なんて聞けそうもないですね。

 なので早々に、お引き取り頂いた方が良いと思います。

 アレクさんも同じ気持ちだったのか、騎士さん達に連れて行くように指示を出していました。

 その時立ち上がった、王様達の足元で魔法陣が浮かび上がり、邪法特有の紫色の光がどんどん強くなって行きます。

 異変を目にした、アレクさんと騎士さん達が、王様に駆け寄った瞬間。

 私の体も同じ光に包まれました。

 これヤバイかも!!

 そう思ったと同時に、スクロールと同じ、体の中が裏返るような感覚と、私を呼ぶアレクさんの悲痛な声を最後に、気付けば私は、この場所に飛ばされて居ました。

 幸い、と言っていいのでしょうか。

 魔法陣は玉座の周囲2m位を、転移の対象としていた為、玉座の両脇に立っていたクオンとノワール。私の後ろでお座りしていたアンと、足元に伏せていた太郎と次郎も一緒に転移してきています。

 一人ぼっちで、何処かも分からない場所に飛ばされるのよりか、何億倍もマシだし、とっても心強いですが、アレクさんと離れ離れ、しかも念話も通じないなんて・・・・。

「・・・心配してるだろうな」

「れんさま、だいじょうぶ~?」

「アレク、いなくてさみし~の?」

 いけない。 
 ドラゴンとは言っても、まだ子供の二人に心配かけちゃダメよね?

「アレクが居なくて寂しいけど、大丈夫よ?でも、ここが何処だか分からないけど、早くお外に出ないとね?」

「「は~い!」」

 はあ~~~。
 うちのキッズは、なんでこんなに可愛いのかしら?
 こんな、訳の分からない状況なのに、そろって手を上げて、元気にお返事してくれるなんて。

 ほんと、良い子!

 あれ?
 どうしたのかしら?
 2人ともなんだか急に、困ってるみたいだけど

「2人ともどうしたの? 怖くなっちゃった?」

「ちがうよ!」

「こわくないよ!」

 あらら。怒られちゃった。
 プライドを傷つけちゃったのかしら?

「ごめんね。何を困ってるの?」

「おそとが、どっちかわかんない」

「え?」
 
 そりゃね。明り取りも無い、洞窟っぽい岩壁に囲まれて、ギリシャっぽい柱が岩に直接彫り込まれてる部屋に、いきなり放り込まれて、どっちが外か、なんて分かる人はいないわよ?

「そうね? 私も分からないのよ?」

「でも! ぼくたちはドラゴンだから!」

「すご~~く とおくにいても、みやがどっちにあるか、いつもわかるのに、なんにも、わからないんだ」

 所謂 帰巣本能 って、やつでしょうか?
 帰巣本能って、地磁気を感知するのよね?
 
 それが感知できないって事は、この場所はそういう類をブロックするって事? その所為で、アレクさんとの念話も、ボイチャの呼び出しも、出来ないのかしら?
 
 やだな、この壁から変な電波とか出ているのでしょうか?
 アルミホイルの帽子を、被った方が良いのかしら?

 って、映画の見すぎですね。

「そっかあ。じゃあ、みんなで探検してみよっか!」

「たんけん?」

「たんけん、ってなあに?」

 あれ~?ちょっと難しかった?

「え~とね。何があるかなあ?どんな所かなあ?って見て回る事よ? 探検したら外への出口も見つかるかもしれないし、宝箱もあるかもしれないわね」

「たからばこ?」

「キラキラいっぱい?」

 凄い食いつき。

 そう言えば、ドラゴンって金銀財宝を、寝床に溜め込むのが好きなんだっけ?

「キラキラが、いっぱい有るといいねぇ~」
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

獅子の最愛〜獣人団長の執着〜

水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。 目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。 女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。 素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。 謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は… ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

処理中です...