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愛し子と樹海の王

クレイオスの昔語り side・レン

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 side・レン

 もう! なんなの?!
 むかつく・むかつく!

 ム・カ・ツ・クッ!!

 ゴトフリーの王様は馬鹿だし!!
 ロロシュはアホな。モラハラ野郎だし!!!

 あんのクソ野郎
 うちの大事なマークを泣かせやがって。

「クオン!ノワール!」

「は~い!」

「れんさま きたよ」

「二人とも、どこに居たの?」

「ん~?いろいろ」

「クレイオスさまに言われて、とぶれんしゅうしてた」

 そう言えば、擬態したまま飛ぶ練習をしろって、クレイオス様に言われたんだっけ。
 ドラゴンが飛んでたら、騒ぎになっちゃうからって。

「上手にできた?」

「うん!」

「だれもきづかなかった」

「そう。二人とも良い子ね」

 う~。かわいい~。
 ドラゴンの姿でも可愛いけど。
 こうやって人型で居るのも、また良し。

 クオンの真珠みたいに輝く白銀の髪も、ノワールの艶々サラサラな黒髪も、柔らかくて、撫でるだけで、ほんと癒されるわ~。

 言葉も大分流暢になって来たし、これもセルジュが一生懸命言葉を教えてくれたからよね。

 そのセルジュも最近、めっきり大人っぽくなって来ちゃって、侍従の自分に敬称はいらない、呼び捨てにしてくれ、なんて言って来て。

 大人ぶっちゃって可愛いったら、もう!

 子供の成長って、本当に早いのね。

 でも、セルジュが素直で良い子なのは、変わらないし。
 甘い物大好きで、この前も私が作ったどら焼きを、それはもう美味しそうに、もきゅもきゅ 食べてくれて。

 はあ~~~。
 ほんと、うちの子たちは、みんな可愛くて、マジ天使。

 そう・・・うちの子はみんな天使なの。
 それなのに・・・ロロシュめーーー!!

「れんさま、ようじ?」

「えっ? あぁ。そうだった。用事があって私はクレイオス様の所に居るから、二人にはロロシュさんを見つけて、私の所に連れてきて欲しいの」

「ろろしゅ?」

「あれくといっしょじゃないの?」

「一緒じゃないのよ?」

「なあに~。ろろしゅ、あれくをおこらせた?」

「よく分かったわね?」

「れんさまも、おこってる~」

「ははは・・・・」

 ドラゴンって、みんなこんなに鋭いのかしら?
 クレイオス様の方が、暢気な感じがするけど、あれってわざと隠しているのかしらね。

「れんさま、ひとりでへーき?」

「あれく、いないよ?」

「クレイオス様の天幕はすぐそこだし、アンを連れて行くから平気よ。じゃあ、ロロシュさんの事よろしくね」

「は~い」

 あらら、飛んで行ったのかしら?
 姿が見えなくなっちゃったけど。
 まあ、あの二人なら上手くやるでしょ。
 取り敢えず私は、話の続きをしないとね。


『レンや。天幕の周りが獣臭いのだが?』

「アン達が傍に居ますから、我慢してください」

『其方が、狼たちを引き連れて来るとはの。伴侶はどうした?』

「アレクは色々忙しいので、それよりさっきの首輪なのですが」

『奴隷の首輪だの?』

 そう言って、取り出した首輪をクレイオス様は、指でくるくる回して弄んでいるけれど、それの所為で貴方が創った獣人が苦しめられているって、分かっているのかしら?

「ゴトフリーの獣人は、5歳になると全員この首輪を付けられて、王家に隷属させられるそうです。クレイオス様はその事をご存じでしたか?」

『いや、知らなかった』

「アウラ様も?」

『我が知らぬと云う事は、アウラも知らぬだろう』

「どうして?神様は世界の全てを知っているんじゃないの?」

『うむ、知るべきではあるのだろうな・・・レンよ、其方ゴトフリーの事は、どれほど知っておる?』

「え?え~と。850年位前に、クレイオス王国の継承争いに敗れた王族が、逃げた先で興した国で、魔物が現れるようになって停戦協定を結ぶまで、国交も無く、凄く仲が悪い国だったと」

『うむ、よく勉強しているな。他には?』

「ほか?・・・山や森が多い土地で、耕作には向いていないとか、ですか?」

『ふむ。国交がなければその程度であろうな。では少し講義をしようかの』

 そう言って、ワイングラスをテーブルに置く姿も優雅です。

 以前私に叱られてから、お酒の量は激減したけれど、アウラ様の庭で採れた葡萄で作った、このワインだけは、クレイオス様が神聖力を生み出すために必要、と言う事でお酒の中にカウントしないことになりました。

『まず、大前提として、我とアウラに対する信仰心の無い者達の声は、我等には届かぬ事を覚えておくのだぞ』

 そう言って、クレイオス様は、ゴトフリー王国について話してくれました。
 
 850年ほど昔、クレイオス王家には3人の王子がいた。

 王太子となった第一王子とその弟が二人。王太子と第三王子は王配の同腹だったが、第二王子は妾腹だった。

 順当に第一王子が即位すれば問題は無かったのだろうが、ある日王太子が馬車の事故で儚くなってしまっての?

 そこから、継承争いが起こったのだ。
 王配の産んだ弟か、妾の産んだ兄かで揉めに揉めての。

 最終的に小規模だが武力衝突になり、結果破れた第二王子が国を逃げ出し、落ち着いた先で興したのが、ゴトフリーだ。

 第二王子の敗因は、純粋に武力の差。
 第三王子の配下には獣人が多かったのだ。

 第二王子の性格が悪かったからなのか、単に恨みを抱いたからのかは分からんが、第二王子は、捕らえた獣人の騎士に奴隷の首輪を嵌め、連れまわした。

 敗走を重ね、次々に手勢を失っていった第二王子は、行く先々で獣人を捕え、奴隷に仕立て上げて、自らを守らせたのだ。

 奴隷にした獣人達の力で、ガルスタ山脈を越えた第二王子は、そこで自分の名を冠した王国、ゴトフリーを興した。
 
 あの国の獣人は、奴隷として連れて来られた獣人の子孫になるのだ。

 国を興したと言っても、何もない山の中の小さな集落に過ぎない。

 一握りの臣下を喰わせるのもままならん。
 食料を得るための畑の開墾も、易く出来るものではないからな?

 そこでゴトフリー王が、手っ取り早く金を手に入れるために、手を出したのが人身売買だ。

 当時は、自然と共に生きる事を望む獣人も多くてな、近隣に獣人の作った小さな集落がいくつもあったのだ。

 ゴトフリーはそう言った集落を襲っては、捕らえた獣人を他国に売り渡し、財を築き国を大きくしていった。

 ん? そんなのは王様じゃないと?
 その通りだ。
 あれは唯の人攫いの盗賊だ。

 だがな、人の欲望とは恐ろしいものでな?
 あんな人でなしの元へ、利権を狙った人間達が集まり始めたのだ。

 その頃は、我に助けを求める獣人達の声が、頭の中に響く日々でな。

 我は幾度も、獣人を助け出しにゴトフリーに向かったのだが、助け出す傍から、新しく囚われる獣人が、後を絶たなかった。

 そうこうする内に、我はミーネで石にされてしまい。
 絶望し信仰を失ったゴトフリーの獣人達の声も、次第に聞こえなくなった。

 だが我も、彼の国の事を忘れた訳ではないのだぞ?

 自由の身になり、何度か彼の国の様子も見に行ったのだがな。
 あの国では、初代王が神として崇められているのだ。
 それもアウラの子としてだ。

 心優しく気の弱いアウラの子を、あの残忍な王が僭称するなど許すまじき蛮行だ。さらにヴァラク教の影響を受け、獣人達への差別と弾圧も目に余るものがある。

 腹立ちまぎれに、大きな神殿を二つほど叩き潰してやったのだが、大した痛手にはなっておらん様だ。

 それにな、我の行いが大神にばれての、お叱りを受けたばかりなのだ。

「叱られちゃったんですか。大丈夫なの?」

『叱られちゃったが、我は神に類する者で、神では無いからの?今の所は問題ないの』

 なんかおちゃめな振りして話してますけど、本当にいいのかなぁ・・・。

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