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エンドロールの後も人生は続きます

挙式前夜 side・レン

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『どれ、うまく行った様だの』

「えっ? 今のなんですか? ノワールの時も光ってましたよね?」

 そしてノワールに名前をつけるように言ったのも、クレイオス様だ。

「ひょっとして何か企んでます?」

 つまんだ顎を人差し指で撫でながら、美麗なお顔で見下ろされると、目のやり場に困ってしまいます。

 慣れて来たとは言え、誰も彼もイケメンすぎて、目と心臓に優しくない。
 特に完璧超人のクレイオス様なんて、ほんとに、もう・・・ね。

 はぁー。何処かに目に優しい平凡、塩顔の人っていないのでしょうか?
 
 偶には、劣等感を感じないで話せる相手が欲しい、と思ってしまうのは、贅沢でしょうか。

『ふむ。企んではいるが。其方の為だぞ?』

「はい?」

『其方、スキルに魅了が付いたであろう?』

「確かに、レベルUPで魅了って付きましたけど・・・なんでクレイオス様が知ってるんですか?」

『ふふん。これでも神の眷属ぞ?』

 うわぁ。またドヤってる~。
 なんだろ、今日はそういう日なのかしら?

「あぁ。はい。そうですね。でも魅了と言っても、今の所変化はないみたいですよ?」

『其れは、其方がまだ生娘だからだ』

「はあ? きっ・・きっ・・?」

 やだ、セクハラ!? 最低~!!

 そんな私に気付いているのか、居ないのか。クレイオス様はお構い無しに、話しを続けています。

『其方と王が交尾をすると、体が変化するわけだが、そうすると、其方の体臭も変わって来る。その変化した体臭に魅了効果が有る、と言う訳だな』

「えぇ~?!」

 そんな臆面もなく。
 とんだエロおやじだ!

『人、動物、魔物、その全てではないが、其方の香りに誘われ、魅了されるものが増えるだろう。其れこそ、満開の花に群がる羽虫の様にな?』

 羽虫?  言い方!!
 せめて蝶とか蜂とか!

「結婚した後に、誰を魅了しろって言うんですか?そんなスキル入りません!元に戻して下さい!!」

『そうは言っても、我にはどうも出来んぞ?其れにアウラにも、考えがあっての事だろうし』

「ただ、面白がってるだけだと思いますけど? わらわら寄ってこられて、逆ハーでも作れって言うんですか?! 絶対無理!!お断りです!!」

『ふむ・・・樹海の王の性格を考えたら。逆ハー設定は無いと思うが・・・』

 じゃあ、なんの為の魅了なのよ?!

 って言うか、なんで逆ハー設定とか、普通に話が通じてるの?
 まさかアウラ様と一緒に、TLとか読んだわけ?
 ヤベちゃんの薄い本とか、読んだりして無いよね?

「アレク以外いりません!!」

『魅了と言っても、恋愛感情とは限らんだろ。治世において、絶対的な服従が必要ではないのか?』

「そんな、魔法とかスキルとかで操られた精神こころに、なんの価値があるんです?其れに私は、王様でもないし、世界征服とか、考えて居ないので」

『ふむ、ならばアウラに直接頼めば良い。まぁ、一度与えた加護を取り上げるのは容易なことでは無いし、あれの性格からして、無駄だと思うがな?』

「そんなぁ」

『兎に角、そのスキルがある以上、種族関係なく、有象無象が寄って来るようになる。その虫除けにノワールとクオンが必要だ』

「虫除けって・・・」
 
 さっきから羽虫とか・・・虫から離れてくれないかな。

『其方はクオンとノワールに名を与え、あれらは名を受け入れた。あの光は其方の眷属になるという魔法契約なのだ』

「眷属・・・? 私、人ですよ?」

『人だが、愛し子だ。それも歴代最強のな。アウラに魅了を消させたとして、眷属の契約は取り消せん。可愛がってやるのだぞ?』

「・・・・・」

 クオンもノワールも、元々可愛いから、そこは全然問題ないですよ?

 でもなぁ・・・・。
 
 クレイオス様もアウラ様に頼めって言ってたし、これは直接文句を言った方がいいですよね?

 あれ? って事は・・・。

「アウラ様と、お話しできるのですか?」

『うむ・・・あれは今、全能の神の座すおわす本殿にて治療と、再教育を受けている。だが、其方と樹海の王は、世界を救った最大の功労者で有るからな、特別に面会が許可されたのだ』

「面会許可・・・?」

 入院してる様なものかしら?

『ヴァラクの呪いの所為で、面倒なことになっての』

「大丈夫・・・なんですよね?」

『神とその眷属が揃って、害された訳だからの、色々とな・・・暫くは、様子を見る他ないのだよ』

 だから、クレイオス様は、アウラ様の元に帰らないと言うか、帰れなかったのね。

『今からでも、アウラは呼びかけに応えると思うが、どうする?』

「では、直ぐにお話ししたいです」

 魅了を抜きにしても、アウラ様とは沢山お話したい事が有るのです。時間を無駄にしたくありません。

 クレイオス様は一つ頷くと、指を鳴らし、カウチを一台出してくれました。

『床に跪くより、この方が楽であろう? クオンとノワールはここに残して行くが、誰にも邪魔はさせぬ故。存分に語らうが良い』

 クレイオス様に促され、カウチに横になると、アレクさんとは違う大きな手が、私の額と両眼を覆い隠しました。

『眼を閉じて、アウラの元へ導いてやろう』

「アウラ様に伝言は?」

『・・・早く逢いたいと』

 リリ・・・リィン・・・・
 懐かしい鈴の音が・・・・・・・。

 ◇◇


「・・・ン・・・レン・・・」

「・・・・・・あ?」

 ぼんやりと開いた目に映るのは、真っ白な空間。
 アウラ様のお庭じゃないのね。

「レン? レン起きた?」

「はっ! アウラ様!?」

 腹筋でガバッと起き上がった、目の前に、アウラ様の美麗なお顔が有りました。

「どうしたの?」

 神様なのに、なんでこんなに窶れちゃって居るのでしょうか?
 サラサラ、とぅるんとぅるんだった髪も、パッサパサじゃないですか。

「うっ・・」

「う・・・?」

 首を傾げたはずみで、アウラ様の髪が、パサリと肩から、胸に落ちて来ました。

 その一房に手を伸ばし、掬い上げ・・・。
 
 サラサラじゃない。

 その窶れたお姿が悲しくて。

「うぅ・・・うぇ・・うぇぇーーーん!!」

 アウラ様の薄くなってしまった体にしがみ付き、私は子供の様にぎゃん泣きです。

「レン?・・・ごめんね。辛かったよね」

「ううぇぇーーーちっちがうぅっぅ」

「嗚呼、こんな私の為に泣いてくれるの?どうしてこの子は、こんなに優しいのだろうね」

 優しいのはアウラ様です。
 ギャン泣きで、鼻水まで流し放題の私の背中を、落ち着かせるように、アウラ様は何度もトントンと叩き、撫でてくれます。

 子供の頃、親無しと虐められ、おばあちゃんの前で泣いた時みたい。
 
「もう泣かないで、レンの話を聞かせてくれる?」

「ゔぇ・・・ばぁい・・・」

 アウラ様が、何処からか取り出したティッシュで鼻をかみ、タオルでべしょべしょの顔を拭ってもらっても、次から次へと涙が溢れてきて止まりません。

 つっかえつっかえ、マイオールから皇都での出来事を話し、何度もアウラ様に話しかけたのだと、訴えました。

「グレイオスざばぼ~ばやく会いたいってぇ。私もしっん、心配してたんですぅぅ、」

 ズビズビと鼻を鳴らす私の頭を、アウラ様は優しく撫でてくれました。

「アヴラ・・・ざまの様子・・が変だったから・・・」

 顔はぐちゃぐちゃ、鼻が詰まって、まともに話せない私の言葉を、アウラ様は辛抱強く聞いて下さいます。

「すまなかった。あの時は呪いの影響が大きくてね。本当に心配をかけたね」

「いまっ今は?」

「ずいぶん良くなったよ。ありがとう。でも暫くは、クレイオスにあの世界の事を、任せるしかなさそうだ」

「良くなりますか?」

「ちょっと時間が掛かるけどね。全能の神。大神様にも叱られてしまった。危うく降格される所だったよ」

 降格?
 会社員みたいに?

「ふふふ。でもレンと樹海の王を見出した功績で、見逃してもらえた感じかな?」

「アレクさんと私?」

「そう。次代の神様候補を見つけたからね」

「神様・・・? えっ?」

「天地を創造し、世界を大きく広げるのは、私たちの大事な仕事。新しい世界を創造する神候補を探すのもね」

 天界は 絶賛 神様募集中! とか、巫山戯てる場合ですか?

「そんな・・・・・無理・・・です」

「そう? 私でも出来たよ? 色々足りないところはあるけどね? 其れに今直ぐに、と言う訳でもない。あくまで候補だから。あとは大神様次第かな」
 
「いや・・・無理ですって」

「ふふふ。ゆっくり考えてって、言いたいところだけど、これは天界の秘密だらか、このことは帰ったら忘れてしまうよ?」

 窶れていても、相変わらず目に優しくない、綺麗な笑顔だ事。

「そう・・・なんですね?」

「そう。だから他に聞きたい事はある?」

 ほか? 他に聞きたいこと・・・。

「はっ! 魅了! 魅了のスキル消して下さい!!」
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