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紫藤 蓮(シトウ レン)
ブネ1
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イマミアでは色々な事が有りました。
ブネへの出発前夜、村の人達がお別れ会というのでしょうか、村の広場でちょっとした宴を開いて、遠征隊との別れを惜しんでくれました。
その宴で、遠征隊の人達が村の綺麗何処と踊っていたのですが、ムキムキマッチョな二人が抱き合うように踊る姿は、どうにも違和感が・・・。
・・・大人の良い雰囲気を醸し出されると、目のやり場が・・・。
婚約式の時もこんな感じだったけど、あの時は、この国では割と小柄で丸ぽちゃなおじさん二人が、転がる様に踊ってたっけ。
あれは可愛かったんだけどなぁ。
村の大事な収入源のブルークラブはもう獲れないかも知れません。
それでも病が癒えれば漁に出られるから問題ないと、村長さんはブルークラブの事はあまり気にしていない様で、ホッとしました。
翌朝、村を出発する私達を村の人達が見送ってくれました。
私は早めに宿に帰りましたが、その後も宴の賑やかな声が聞こえていました。
あれだけ飲んで歌って踊ってたのに、眠くないのでしょうか?
何はともあれ、みなさんがお元気で良かったです。
◇◇
イマミアからブネへの移動はゼクトバとアイオスのポータルを経由しても4日掛かりました。
アレクさん達が、辺境を転戦していた頃はポータルなど無くて、街から街への移動も、もっと時間が掛かっていて。
街道の整備とポータルの設置。魔鳥を利用した郵便事業は、ウィリアムさんが即位後、特に注力した事業なのだそうです。
「その前はポータルはなかったの?」
「いや?あったのだが、殆どが戦争用の簡易的なもので、皇都からの片道しか使えない物が多くてな。それも征服が済むと撤去されてしまった」
「へぇ~」
叛逆者が皇都に攻め込まないようにって事なんでしょうか?
自国民を信用できない皇帝って・・・。
やっぱり武力による侵略なんて、碌なもんじゃないんだなぁ。
「あの頃、移動もキツかったが、食う物も情報も無かった事が、ウィリアムには堪えたんだろう。皇都に溢れていた避難民や、食い詰めた流人に農地の開墾と、街道整備の仕事を与えて一挙両得だと言っていた」
「そうなんだ・・・」
私は皇帝の仮面を脱いだ、ウィリアムさんの姿の方が見慣れているけど、皇帝としては有能なんですね。
「もうすぐブネだ。モーガンも部隊を連れて先乗りしている。急ぐぞ」
それ迄も結構な速さで走っていたブルーベルちゃんが、脇腹に鎧あてられると一気に加速して、周りの景色が飛ぶように流れていきます。
車くらいスピード出てない?
高速道路走ってる時みたいに、景色が流れていくけど大丈夫なのこれ?
アレクさんとブルーベルちゃんは、皇都とザンド村間の最速走破記録を持っているそうなので、今までは私に気を使って、ゆっくり走ってくれていたのでしょう。
アップダウンが続く街道は、まるでジェットコースターに乗ってる気分です。
ブルーベルちゃんを驚かせたくなくて、歯を食いしばって声を出すのを堪えましたが、ショートカットのつもりか、ちょっとした崖から猛スピードで飛び降りられた時は、落下系が苦手な私は、流石に堪えきれず “ぎいやあぁーーーー!!” とあられもない悲鳴を上げてしまいました。
それを聞いたアレクさんは楽しそうに笑っていましたが、普通三階建の家の屋根から飛び降りたりしませんからね?
こっちは死ぬ思いですよ?
くっそ~~。イケメンだからってなんでも許されると思わないでよね!?
もう!!
これからトラ吉って呼んでやる~~!!
って。
だ・か・ら!!
飛び降りるのやめてってば~~~!!
◇◇
そんなこんなで、ブネの町に到着した私は、息も絶え絶え、膝はガクガク、歩くこともままならず。そのままモーガンさんが用意してくれた宿のベットに直行です。
「すまん、楽しくなってやり過ぎた」と、うちのトラ吉は萎れていましたが、怒る気力もないので、放置です。
しょんぼり項垂れたアレクさんは、モーガンさんと話に出ていきました。
偶に子供っぽい悪戯をするのは許せるのですが、何せ相手は世界最強の白虎。
悪戯の仕方が、ちょっとね・・・。
もう少し常人に合わせていただきたいです。
だけど、本人に自覚はないみたいだけど、こういう所がジルベール様に似ている様に思います。
ベットの上で小一時間ゴロゴロして、気力を取り戻した私は、部屋のソファーに移動してマークさんの入れてくれたお茶を二人で飲んでいます。
「閣下も悪気はないので勘弁してください」
「マークさんが、謝る事ではないですよ?何度もやられたら困りますが、今回はいざというときの訓練だとおもって我慢します」
「はは。訓練ですか?」
そう思わなきゃやってられないですよね?
最後の崖なんてフリーホールくらいの高さがありましたよ?
あれ、完全に生身で飛び降りちゃいけない高さですよね?
「まぁ。閣下ですから」ってマークさんも遠い目をしていますね?
うちのトラ吉が苦労をおかけして申し訳ございません。
心の中で第二騎士団全員に頭を下げていると、アレクさんとモーガンさんがやって来ました。
「もう大丈夫か?」
「・・・・平気です」
ジト目の私にモーガンさんが不思議そうな目を向けて来ますが、説明はトラ吉君から受けてください。
「あ~。ではモーガンが森に案内してくれるから、移動しよう」
「分かりました・・・。モーガンさん」
「はい。なんでしょう」
「森までの道に、崖とか無いですよね?」
「崖ですか?ある事は有りますが、崖に用事でも?」
「いえ・・崖から飛び降りなきゃいけない、なんてことは無いですよね?」
「ははは。道が有るのにわざわざそんなこ・・とは・・・」
疑いの目でアレクさんを見てますね?
その通りなのですよ。
やってくれたのですよ。そのトラ吉は。
「コホッ・・・我々第3騎士団が、警護の任にあたりますので、道中のご心配は要りません」
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
おっと・・・頭は下げちゃいけないんだった。ほんと貴族って面倒です。
モーガンさんの目があるからか、森までの移動は平穏そのもの。
ブネの森はギルドの人達がよく利用する森なので、大型の魔獣や魔物は発見も早く、討伐もしっかりされるそうで、見かける魔物もコネリと言うツノが生えたうさぎや、ツーホーンと呼ばれる二本角の狐くらいでした。
今までツノが生えた魔物は見たことが有りませんでしたが、この国の魔獣は生息域によって毒持ちが多かったり、ツノが生えていたりと特徴が変わってくるのだそうです。
アレクさんとモーガンさんから、魔物の雑学を教えてもらいなが移動すること3時間、やっとブネの森に到着です。
ベニ卵ダケとレッドベアーの名前から、赤い葉っぱの木が多いのかと勝手に想像していましたが、実際は極々普通の緑豊かな森でした。
「ここから三刻ほど進んだ所に問題の池が有ります。森の中は見通しが悪いので、レン様も注意してください」
モーガンさんの注意を受け、森の中を進んで行くと、徐々に森の様子が変わっていきました。
「モーガンさん、今日は森で野営になりますよね?」
「ええ、そうなります」
「でしたらこれ以上進むのは、お勧めできません」
「・・・分かりました。では少し戻ることになりますが、ギルドの者が利用している野営地が有ります。今夜はそこで休むことにしましょう」
ギルドの人が利用している野営地は、想像していたより広くて驚きました。
その広い野営地に魔物が近寄らないように魔晶石を使って結界を張り、天幕を立て・・・いつも思うのですが騎士の皆さんの手際の良さに脱帽です。
騎士の皆さんはキラキラした方ばかりですし、日本だったら女子にモテモテなんだろうな。
念の為結界内も浄化して、安全確保も済みました。あとはご飯を食べて寝るだけです。
名目は調査でも、森の様子から明日も池で浄化をすることになるでしょう。
できることなら、イマミアのような邪魔が入らないことを願いたい。
明日に備えて早めに寝袋に潜り込んだ私ですが、なかなか眠りにつくことが出来ずにいると、アレクさんが寝袋ごと抱き抱えてくれて、ポカポカの温もりにようやく眠りにつくことが出来たのでした。
ブネへの出発前夜、村の人達がお別れ会というのでしょうか、村の広場でちょっとした宴を開いて、遠征隊との別れを惜しんでくれました。
その宴で、遠征隊の人達が村の綺麗何処と踊っていたのですが、ムキムキマッチョな二人が抱き合うように踊る姿は、どうにも違和感が・・・。
・・・大人の良い雰囲気を醸し出されると、目のやり場が・・・。
婚約式の時もこんな感じだったけど、あの時は、この国では割と小柄で丸ぽちゃなおじさん二人が、転がる様に踊ってたっけ。
あれは可愛かったんだけどなぁ。
村の大事な収入源のブルークラブはもう獲れないかも知れません。
それでも病が癒えれば漁に出られるから問題ないと、村長さんはブルークラブの事はあまり気にしていない様で、ホッとしました。
翌朝、村を出発する私達を村の人達が見送ってくれました。
私は早めに宿に帰りましたが、その後も宴の賑やかな声が聞こえていました。
あれだけ飲んで歌って踊ってたのに、眠くないのでしょうか?
何はともあれ、みなさんがお元気で良かったです。
◇◇
イマミアからブネへの移動はゼクトバとアイオスのポータルを経由しても4日掛かりました。
アレクさん達が、辺境を転戦していた頃はポータルなど無くて、街から街への移動も、もっと時間が掛かっていて。
街道の整備とポータルの設置。魔鳥を利用した郵便事業は、ウィリアムさんが即位後、特に注力した事業なのだそうです。
「その前はポータルはなかったの?」
「いや?あったのだが、殆どが戦争用の簡易的なもので、皇都からの片道しか使えない物が多くてな。それも征服が済むと撤去されてしまった」
「へぇ~」
叛逆者が皇都に攻め込まないようにって事なんでしょうか?
自国民を信用できない皇帝って・・・。
やっぱり武力による侵略なんて、碌なもんじゃないんだなぁ。
「あの頃、移動もキツかったが、食う物も情報も無かった事が、ウィリアムには堪えたんだろう。皇都に溢れていた避難民や、食い詰めた流人に農地の開墾と、街道整備の仕事を与えて一挙両得だと言っていた」
「そうなんだ・・・」
私は皇帝の仮面を脱いだ、ウィリアムさんの姿の方が見慣れているけど、皇帝としては有能なんですね。
「もうすぐブネだ。モーガンも部隊を連れて先乗りしている。急ぐぞ」
それ迄も結構な速さで走っていたブルーベルちゃんが、脇腹に鎧あてられると一気に加速して、周りの景色が飛ぶように流れていきます。
車くらいスピード出てない?
高速道路走ってる時みたいに、景色が流れていくけど大丈夫なのこれ?
アレクさんとブルーベルちゃんは、皇都とザンド村間の最速走破記録を持っているそうなので、今までは私に気を使って、ゆっくり走ってくれていたのでしょう。
アップダウンが続く街道は、まるでジェットコースターに乗ってる気分です。
ブルーベルちゃんを驚かせたくなくて、歯を食いしばって声を出すのを堪えましたが、ショートカットのつもりか、ちょっとした崖から猛スピードで飛び降りられた時は、落下系が苦手な私は、流石に堪えきれず “ぎいやあぁーーーー!!” とあられもない悲鳴を上げてしまいました。
それを聞いたアレクさんは楽しそうに笑っていましたが、普通三階建の家の屋根から飛び降りたりしませんからね?
こっちは死ぬ思いですよ?
くっそ~~。イケメンだからってなんでも許されると思わないでよね!?
もう!!
これからトラ吉って呼んでやる~~!!
って。
だ・か・ら!!
飛び降りるのやめてってば~~~!!
◇◇
そんなこんなで、ブネの町に到着した私は、息も絶え絶え、膝はガクガク、歩くこともままならず。そのままモーガンさんが用意してくれた宿のベットに直行です。
「すまん、楽しくなってやり過ぎた」と、うちのトラ吉は萎れていましたが、怒る気力もないので、放置です。
しょんぼり項垂れたアレクさんは、モーガンさんと話に出ていきました。
偶に子供っぽい悪戯をするのは許せるのですが、何せ相手は世界最強の白虎。
悪戯の仕方が、ちょっとね・・・。
もう少し常人に合わせていただきたいです。
だけど、本人に自覚はないみたいだけど、こういう所がジルベール様に似ている様に思います。
ベットの上で小一時間ゴロゴロして、気力を取り戻した私は、部屋のソファーに移動してマークさんの入れてくれたお茶を二人で飲んでいます。
「閣下も悪気はないので勘弁してください」
「マークさんが、謝る事ではないですよ?何度もやられたら困りますが、今回はいざというときの訓練だとおもって我慢します」
「はは。訓練ですか?」
そう思わなきゃやってられないですよね?
最後の崖なんてフリーホールくらいの高さがありましたよ?
あれ、完全に生身で飛び降りちゃいけない高さですよね?
「まぁ。閣下ですから」ってマークさんも遠い目をしていますね?
うちのトラ吉が苦労をおかけして申し訳ございません。
心の中で第二騎士団全員に頭を下げていると、アレクさんとモーガンさんがやって来ました。
「もう大丈夫か?」
「・・・・平気です」
ジト目の私にモーガンさんが不思議そうな目を向けて来ますが、説明はトラ吉君から受けてください。
「あ~。ではモーガンが森に案内してくれるから、移動しよう」
「分かりました・・・。モーガンさん」
「はい。なんでしょう」
「森までの道に、崖とか無いですよね?」
「崖ですか?ある事は有りますが、崖に用事でも?」
「いえ・・崖から飛び降りなきゃいけない、なんてことは無いですよね?」
「ははは。道が有るのにわざわざそんなこ・・とは・・・」
疑いの目でアレクさんを見てますね?
その通りなのですよ。
やってくれたのですよ。そのトラ吉は。
「コホッ・・・我々第3騎士団が、警護の任にあたりますので、道中のご心配は要りません」
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
おっと・・・頭は下げちゃいけないんだった。ほんと貴族って面倒です。
モーガンさんの目があるからか、森までの移動は平穏そのもの。
ブネの森はギルドの人達がよく利用する森なので、大型の魔獣や魔物は発見も早く、討伐もしっかりされるそうで、見かける魔物もコネリと言うツノが生えたうさぎや、ツーホーンと呼ばれる二本角の狐くらいでした。
今までツノが生えた魔物は見たことが有りませんでしたが、この国の魔獣は生息域によって毒持ちが多かったり、ツノが生えていたりと特徴が変わってくるのだそうです。
アレクさんとモーガンさんから、魔物の雑学を教えてもらいなが移動すること3時間、やっとブネの森に到着です。
ベニ卵ダケとレッドベアーの名前から、赤い葉っぱの木が多いのかと勝手に想像していましたが、実際は極々普通の緑豊かな森でした。
「ここから三刻ほど進んだ所に問題の池が有ります。森の中は見通しが悪いので、レン様も注意してください」
モーガンさんの注意を受け、森の中を進んで行くと、徐々に森の様子が変わっていきました。
「モーガンさん、今日は森で野営になりますよね?」
「ええ、そうなります」
「でしたらこれ以上進むのは、お勧めできません」
「・・・分かりました。では少し戻ることになりますが、ギルドの者が利用している野営地が有ります。今夜はそこで休むことにしましょう」
ギルドの人が利用している野営地は、想像していたより広くて驚きました。
その広い野営地に魔物が近寄らないように魔晶石を使って結界を張り、天幕を立て・・・いつも思うのですが騎士の皆さんの手際の良さに脱帽です。
騎士の皆さんはキラキラした方ばかりですし、日本だったら女子にモテモテなんだろうな。
念の為結界内も浄化して、安全確保も済みました。あとはご飯を食べて寝るだけです。
名目は調査でも、森の様子から明日も池で浄化をすることになるでしょう。
できることなら、イマミアのような邪魔が入らないことを願いたい。
明日に備えて早めに寝袋に潜り込んだ私ですが、なかなか眠りにつくことが出来ずにいると、アレクさんが寝袋ごと抱き抱えてくれて、ポカポカの温もりにようやく眠りにつくことが出来たのでした。
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