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紫藤 蓮(シトウ レン)
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今回の遠征は、討伐後の調査と必要なら浄化をする予定でした。
その為、部隊編成も小規模で、調査と浄化を終えたら、すぐに次の調査場所ブネへ移動する手筈になって居ました。
ですが、イマミアでは想定外の出来事が多くて、イマミアの漁村には一週間ほど滞在する事になりました。
入江の掃討戦では、重症者が2名出てしまいましたが、死傷者は出さずに済んだ事にホッとしました。
「閣下が参加する討伐は、危険度が高いものばかりですが、一番危険な所を閣下が引き受けてくださるので、遠征の内容と比較すると第二騎士団の死亡率は低いのですよ」
とマークさんが教えてくれました。
あの鬼神の様な闘いっぷりなら、然もありなん、さすが私のイケメン虎。
スパダリ最高~!と二度惚れ三度惚れする私の横で、ロロシュさんが「ただ暴れたいだけじゃねぇの?」と失礼な事を言って来たので、足の親指の先を踏んでおきました。
ロロシュさんは痛みに蹲って居ましたが、他人の伴侶となる人を馬鹿にするのが悪いのです。
最近ロロシュさんの事をちょこっと見直していたのですが、再評価が必要そうです。
話題のアレクさんは、ブネの調査依頼をしてきたモーガンさんと情報収集の為に連絡を取りあったり、第五騎士団にイマミアの現状報告と海岸洞窟の警備の手配をしたり、と忙しそうです。
一方私は、瘴気に当てられて病に罹った人達と、井戸の浄化に努めて居ました。
病が軽かった人達は、一度の浄化で元気を取り戻せたし、病が重かった人達も症状が軽減された事をとても喜んでくれたので、一安心です。
ですが病に罹った人達全ての快復まで、この村にとどまることは出来ません。
それにまだ騒ぎになって居ないだけで、他の場所でも、同じ病に罹っている人がいる可能性もあります。
そうなると、私達だけで解決できる問題では無くなってきます。
アレクさんも同じように考えて居たらしくて・・・・。
「ウィリアムと皇宮のジジイ共を働かせればいい。忙しくなれば少しは大人しくなるだろう」と言って居ました。
更に
「君一人で苦労する必要はないのだぞ?」
と頭を撫でられて。
優しいイケメンとか!
この人は天使なのではないでしょうか!!
呪具があった場所が場所だけに、海でとれた魚を食べている村の人達全員に影響が出ているのでは?
と心配しましたが、調べてみると共同井戸を利用していた人達に、若干の不調がみられた程度で、他に目立った影響はない様子でした。
呪具に込められた悪意に反し、洞窟内に瘴気溜まりも無く、海に流れ出していた川の水も殆ど瘴気が感じられませんでした。
茹でガニにされたブルークラブは、洞窟の滝壺を棲家にして居たので、瘴気の影響を強く受けて居た様ですが、それ以外の異変は確認できませんでした。
「やっぱり、流れがある所には瘴気は溜まらないという事でしょうか?」
「う~ん。それはアリだと思います。けど、目標物が違うのかもしれないですよ?」
「目標物ですか?」
「今までは神殿の泉を瘴気溜まりにして居ましたよね?産まれた魔物をどこかに転移させたり、本当は何がしたいのか、まだ理解できませんが、目に見えて強く影響が出てたのは泉の周辺だけでした。本当の目的は違うのかもしれません」
「違うのですか?」とマークさんは首を傾げています。
「アウラ様は神殿の泉を浄化したら、クレイオス様の力になるとおっしゃって居たので、一番の目的はクレイオス様のお力を削ぐ事だと思います」
「レン様は本当にアウラ神とお話ができるのですね」と感慨深気にして居ますが
マークさん?
そこは感心する所じゃないですよ?
「ここの呪具は、あの洞窟で瘴気溜まりを作りたかったのでは無く、もっと先の海を目標にしていたのかなって思うんです」
「海ですか・・・確かにあのサハギンの量は異常でしたね」
「本当にね・・・」
結界に張り付いていた、ホラーなサハギンを思い出して鳥肌が立ってしまいました。
「それでちょっと思い付いたのだけど、泉の水も途中で消えてなくなったりはしませんよね?」
「それはそうですね、どこかで川と合流するか、地下に流れて行くか・・・まさか・・」
そこでマークさんは私が言いたいことにピンと来た様です。
「泉の瘴気は物凄く濃い状態でしたが、流れていくうちにだんだん薄れてはいくでしょう。でもその影響がなくなるとは思えない。泉で作られた瘴気が、川や地下水脈に紛れて流れていって、ただ流れていくだけなら、その場に影響はないかもしれませんが、川の水を引き込んで池を造れば、そこに瘴気がたまるかもしれない。地下水だってただ流れている訳では無くて、地底湖に溜まるだろうし、井戸の様に水を留めて置く場所も多いでしょ?そして最後は海に流れ着く」
「・・・仰る通りです」
「水が無ければ人は生きていけません。ですが水の流れを留めると言うなら、人の体も同じ事。もしかしたら、私達全員が何らかの瘴気の影響を受けている可能性はあるのではないでしょうか」
「・・・・・・」
あらら。
黙っちゃった。
「ごめんね、怖がらせるつもりはなかったの。ただの思いつきだから、気にしないでね?」
「いえ・・・一考に値するご意見だと思います」
マークさんはそう言ってくれましたが、その後も顔色は優れなくて、悪いことをしてしまったと後悔しました。
後になって分かったのですが、マークさんからこの話を報告されたアレクさんは、遠征中の飲み水は、全て魔法で出したものを飲むか、水筒の中に浄化の魔晶石を入れる様に指示したのだそうです。
柘榴宮に帰ってから、申し訳なさそうに拳ほども有る数個の魔晶石に “浄化を付与してくれないか?” と頼んできたのも、柘榴宮、皇帝用の厨房と第2騎士団の詰所等の水の浄化に利用する為だったそうです。
「君や皇帝の身の安全に気を配るのは当然だ。注意して損をすることはないだろう?」
とアレクさんは言ってくれましたが、ただの思い付きで騒ぎを大きくしてしまった申し訳なさが減ることはありませんでした。
やっぱり思いついたことを、ペラペラ喋る癖をどうにかしないといけませんね。
その為、部隊編成も小規模で、調査と浄化を終えたら、すぐに次の調査場所ブネへ移動する手筈になって居ました。
ですが、イマミアでは想定外の出来事が多くて、イマミアの漁村には一週間ほど滞在する事になりました。
入江の掃討戦では、重症者が2名出てしまいましたが、死傷者は出さずに済んだ事にホッとしました。
「閣下が参加する討伐は、危険度が高いものばかりですが、一番危険な所を閣下が引き受けてくださるので、遠征の内容と比較すると第二騎士団の死亡率は低いのですよ」
とマークさんが教えてくれました。
あの鬼神の様な闘いっぷりなら、然もありなん、さすが私のイケメン虎。
スパダリ最高~!と二度惚れ三度惚れする私の横で、ロロシュさんが「ただ暴れたいだけじゃねぇの?」と失礼な事を言って来たので、足の親指の先を踏んでおきました。
ロロシュさんは痛みに蹲って居ましたが、他人の伴侶となる人を馬鹿にするのが悪いのです。
最近ロロシュさんの事をちょこっと見直していたのですが、再評価が必要そうです。
話題のアレクさんは、ブネの調査依頼をしてきたモーガンさんと情報収集の為に連絡を取りあったり、第五騎士団にイマミアの現状報告と海岸洞窟の警備の手配をしたり、と忙しそうです。
一方私は、瘴気に当てられて病に罹った人達と、井戸の浄化に努めて居ました。
病が軽かった人達は、一度の浄化で元気を取り戻せたし、病が重かった人達も症状が軽減された事をとても喜んでくれたので、一安心です。
ですが病に罹った人達全ての快復まで、この村にとどまることは出来ません。
それにまだ騒ぎになって居ないだけで、他の場所でも、同じ病に罹っている人がいる可能性もあります。
そうなると、私達だけで解決できる問題では無くなってきます。
アレクさんも同じように考えて居たらしくて・・・・。
「ウィリアムと皇宮のジジイ共を働かせればいい。忙しくなれば少しは大人しくなるだろう」と言って居ました。
更に
「君一人で苦労する必要はないのだぞ?」
と頭を撫でられて。
優しいイケメンとか!
この人は天使なのではないでしょうか!!
呪具があった場所が場所だけに、海でとれた魚を食べている村の人達全員に影響が出ているのでは?
と心配しましたが、調べてみると共同井戸を利用していた人達に、若干の不調がみられた程度で、他に目立った影響はない様子でした。
呪具に込められた悪意に反し、洞窟内に瘴気溜まりも無く、海に流れ出していた川の水も殆ど瘴気が感じられませんでした。
茹でガニにされたブルークラブは、洞窟の滝壺を棲家にして居たので、瘴気の影響を強く受けて居た様ですが、それ以外の異変は確認できませんでした。
「やっぱり、流れがある所には瘴気は溜まらないという事でしょうか?」
「う~ん。それはアリだと思います。けど、目標物が違うのかもしれないですよ?」
「目標物ですか?」
「今までは神殿の泉を瘴気溜まりにして居ましたよね?産まれた魔物をどこかに転移させたり、本当は何がしたいのか、まだ理解できませんが、目に見えて強く影響が出てたのは泉の周辺だけでした。本当の目的は違うのかもしれません」
「違うのですか?」とマークさんは首を傾げています。
「アウラ様は神殿の泉を浄化したら、クレイオス様の力になるとおっしゃって居たので、一番の目的はクレイオス様のお力を削ぐ事だと思います」
「レン様は本当にアウラ神とお話ができるのですね」と感慨深気にして居ますが
マークさん?
そこは感心する所じゃないですよ?
「ここの呪具は、あの洞窟で瘴気溜まりを作りたかったのでは無く、もっと先の海を目標にしていたのかなって思うんです」
「海ですか・・・確かにあのサハギンの量は異常でしたね」
「本当にね・・・」
結界に張り付いていた、ホラーなサハギンを思い出して鳥肌が立ってしまいました。
「それでちょっと思い付いたのだけど、泉の水も途中で消えてなくなったりはしませんよね?」
「それはそうですね、どこかで川と合流するか、地下に流れて行くか・・・まさか・・」
そこでマークさんは私が言いたいことにピンと来た様です。
「泉の瘴気は物凄く濃い状態でしたが、流れていくうちにだんだん薄れてはいくでしょう。でもその影響がなくなるとは思えない。泉で作られた瘴気が、川や地下水脈に紛れて流れていって、ただ流れていくだけなら、その場に影響はないかもしれませんが、川の水を引き込んで池を造れば、そこに瘴気がたまるかもしれない。地下水だってただ流れている訳では無くて、地底湖に溜まるだろうし、井戸の様に水を留めて置く場所も多いでしょ?そして最後は海に流れ着く」
「・・・仰る通りです」
「水が無ければ人は生きていけません。ですが水の流れを留めると言うなら、人の体も同じ事。もしかしたら、私達全員が何らかの瘴気の影響を受けている可能性はあるのではないでしょうか」
「・・・・・・」
あらら。
黙っちゃった。
「ごめんね、怖がらせるつもりはなかったの。ただの思いつきだから、気にしないでね?」
「いえ・・・一考に値するご意見だと思います」
マークさんはそう言ってくれましたが、その後も顔色は優れなくて、悪いことをしてしまったと後悔しました。
後になって分かったのですが、マークさんからこの話を報告されたアレクさんは、遠征中の飲み水は、全て魔法で出したものを飲むか、水筒の中に浄化の魔晶石を入れる様に指示したのだそうです。
柘榴宮に帰ってから、申し訳なさそうに拳ほども有る数個の魔晶石に “浄化を付与してくれないか?” と頼んできたのも、柘榴宮、皇帝用の厨房と第2騎士団の詰所等の水の浄化に利用する為だったそうです。
「君や皇帝の身の安全に気を配るのは当然だ。注意して損をすることはないだろう?」
とアレクさんは言ってくれましたが、ただの思い付きで騒ぎを大きくしてしまった申し訳なさが減ることはありませんでした。
やっぱり思いついたことを、ペラペラ喋る癖をどうにかしないといけませんね。
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