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紫藤 蓮(シトウ レン)
イマミア2
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「この魔晶石だけで足りるのか?」
「分りません。そもそもこの井戸の水が穢れた原因も分かりませんし」
「そうだな」
とアレクさんも思案顔です。
「ただ、呪具が投げ込まれたとかではなさそうですから、すぐに瘴気溜まりが出来る事はないと思う」
「川の水を利用していた者が無事、と言うのも不思議だ」
「川と井戸では、水源が違うからじゃないでしょうか」
「水源?」
村の内陸を振り返って、遠くに見える稜線を指差すと、アレクさんも同じように振り返りました。
「あの川の水源はあそこの山だと思うのですが、井戸水は地下から水を汲み上げているので、水源が違っていてもおかしくないですよね?」
「まあ、そうだな」
「川の水は高い所から低地に流れて行くので、流れを辿ればどこで瘴気が紛れたのか、見つけることが出来ます。地下水の場合はその流れがもっと複雑です。川の水源よりもっと内陸から繋がっている可能性だってあります。雨水だって水源と言えるので、複雑な流れの何処で瘴気が紛れ込んだか、確認するのは難しいと思います」
「ふむ。となると対処療法しかないと言うことだな?」
「はい。今の所は暫く様子を見てみないと何とも言えません」
「分かった」
案内役の村長さんを呼び押せて、アレクさんが状況を説明してくれています。
ここがラノベの世界で私が聖女なら、井戸も人も一気にパアーっと浄化して終わりなのかもしれません。
けれど私は愛し子で、聖女様では無いから、出来る事を一つづつ順に試していくしか無いのです。
加護 神聖力+85 の使い所だと思うので、一気にバビュンと浄化が出来れば良いのにな、と思ってしまいす。
次は重症の方のお宅を訪ねました。
宿まで来てくれた人たちは、お腹の辺りから、瘴気がじんわり漂っていましたが、この方はアレクさん達の目でも瘴気が見える程、全身から瘴気が湧き出していました。
病で歩けない何処ろか、意識も朦朧として、こちらの呼びかけにも反応がなく、この方の伴侶だと言う方も、顔色が良く有りません。
「レン、これを浄化するのは事だぞ?」
とアレクさんも心配してくれています。
「そうですね・・・でも凄く苦しそうです・・今は痛みを軽減できる程度に浄化をして、後は祝福と浄化の魔晶石を身につけてもらうのはどうでしょうか」
「この後も洞窟の浄化があるんだぞ?石だけで良く無いか?」
「でも、こんなに苦しんでいるのに、放っておけないでしょ?」
「それはそうだが・・・」
「洞窟の状態はまだわからないけど、洞窟の浄化が終わったら、この方だけじゃなく他の皆さんも浄化してあげたいです」
過保護なアレクさんは、ものすごく渋い顔をしていて、本気で心配してくれているのが伝わってきます。
でも瘴気は人の心を蝕むのです。
一刻も早く浄化してあげないと、体だけじゃなくて心も病んでしまう。これは私のやるべき事なのです。
「俺の番は、頑固だからな。ブネには到着が遅れると鳥を飛ばしておく」
心配をかけているのに、ため息と共に髪をかきあげるアレクさんの仕草と指の動きが、色気満載でかっこよくてドキドキします。
そんな自分に後ろめたい気分になりながら、息を整えて不埒な考えを押さえ込み、病人の手を取って、浄化して行きました。
この方は症状の割には、ローガンさんの時より瘴気が薄いように感じました。
時間をかけて蓄積された瘴気より、アガスが操った瘴気の方が濃いのなら、あの人はどうやって自我を保っているのでしょうか。
それとも自我なんて既に無いのでしょうか?
ベットに力無く横たわる病人の、全ての瘴気を浄化することは出来そうに有りません。
まだ半分くらい瘴気が残っていましたが、この後のことも考え、ここで一旦終わりにしました。
多少ふらつきますが、回復薬を飲めばなんとかなりそうです。
ベットの上の人も全快とは言えませんが、顔色が良くなった様子に、伴侶の方も喜んでくれています。
「大丈夫か?」
「へへ。大丈夫ですよ? でも思ったより時間がかかっちゃいました」
「そんなことは気するな。洞窟に行くのは明日にするか?」
「回復薬を飲めば大丈夫そうです」
抱き上げられて近くなった顔が、不安気に私の目を覗き込んで、青灰色の瞳が揺れています。
「ほんとうに?」
「本当に。大丈夫」
「・・・・浜に行くのは午後からにしよう」
「えっ?でも遅くなっちゃいますよ?」
「浜までは遠くないからな。少しくらい遅れても問題はない。しっかり休んで、メシを食って体力を回復してからだ」
「・・・はい」
段々瞳孔が開いて来てます。
これは逆らってはいけないやつです。
私の我儘に付き合ってもらったのだし、アレクさんの言う通りにした方が良さそうです。
村で唯一のレストラン&居酒屋を兼ねている宿屋に引き返し、みんなが見ている前でお腹がポンポコリンになるまで、アレクさんにガッツリお給仕された私は、ブルークラブのいる浜に向かう、エンラの上で爆睡してしまいました。
アレクさんのエンラのブルーベルちゃんは、恐竜のパラサウロロフス(ジュラシックな映画に出てくる恐竜です)に似ていますが、穏やかな性格でとても頭の良い子です。
私にもよく懐いてくれて、水色の大きな目がチャームポイントです。
この子が戦闘になると、魔物に怯えることもなく、アレクさんと一緒に戦場を駆け回るのですから、勇敢な子でもあるのです。
お腹はいっぱい、アレクさんにくっついている背中はポカポカ暖かく、ブルーベルちゃんから安定した振動が伝わってきて、襲ってくる睡魔に勝つことが出来ませんでした。
浜の手前でアレクさんに起こされましたが、周りに居るマークさん達の生暖かい視線に、思わず涎が垂れていないか確認してしまいました。
幸い私の涎でアレクさんの袖を濡らすような失態は犯さずに済んで一安心です。
安心したはずなのですが・・・・。
「あれがブルークラブ?」
「そうだが、どうかしたか?」
「どうかしたって・・・」
ブルークラブって・・こんなに大きいの?
魔物だから、サイズが違ってもしょうがないけど、これは流石に・・・。
甲羅だけでも、校庭の体育倉庫くらい有るけど・・・・。
幾ら何でも大きすぎない?
あのハサミ、指じゃなくて胴体切れちゃうでしょ。
甲羅の色おかしいよね?
トルコブルーなのは良いですよ?
ブルークラブなんだから。
けど何でピンクの水玉の方が目立ってるの?
ブルーっていうより、ドットピンクじゃ無いですか?
見た目全然美味しくなさそうなのに、あれが本当にあの美味しいカニ?
「ブルークラブはデカいが、こっちがちょっかいを掛けなければ、大人しい魔物だから心配しなくてもいいぞ?」
「ちょっかいをかけたらどうなるの?」
「暴れ狂って、面倒だな」
「・・・でしょうね・・討伐する時はどうするの?」
「ん? 下っ腹の辺りが急所だから、そこを狙う」
そこは普通のカニと一緒なんだ。
カニの褌の事でしょう?
「今日は討伐目的では無いからな。刺激しないように、静かに洞窟まで移動するぞ?」
「はい」
静かに移動って、私は抱っこ移動なんですよ?
私の安全はアレクさんに掛かってますよ?
タマスの巨大蜘蛛もトラウマ級でしたが、この巨大ガニも絵面的には引けを取りません。
今は、甲羅干しみたいにじっとしてますが、これであのカニに追いかけ回されたら、暫く夢に出て来る事確定です。
アレクさん本当によろしくお願いしますね?
「分りません。そもそもこの井戸の水が穢れた原因も分かりませんし」
「そうだな」
とアレクさんも思案顔です。
「ただ、呪具が投げ込まれたとかではなさそうですから、すぐに瘴気溜まりが出来る事はないと思う」
「川の水を利用していた者が無事、と言うのも不思議だ」
「川と井戸では、水源が違うからじゃないでしょうか」
「水源?」
村の内陸を振り返って、遠くに見える稜線を指差すと、アレクさんも同じように振り返りました。
「あの川の水源はあそこの山だと思うのですが、井戸水は地下から水を汲み上げているので、水源が違っていてもおかしくないですよね?」
「まあ、そうだな」
「川の水は高い所から低地に流れて行くので、流れを辿ればどこで瘴気が紛れたのか、見つけることが出来ます。地下水の場合はその流れがもっと複雑です。川の水源よりもっと内陸から繋がっている可能性だってあります。雨水だって水源と言えるので、複雑な流れの何処で瘴気が紛れ込んだか、確認するのは難しいと思います」
「ふむ。となると対処療法しかないと言うことだな?」
「はい。今の所は暫く様子を見てみないと何とも言えません」
「分かった」
案内役の村長さんを呼び押せて、アレクさんが状況を説明してくれています。
ここがラノベの世界で私が聖女なら、井戸も人も一気にパアーっと浄化して終わりなのかもしれません。
けれど私は愛し子で、聖女様では無いから、出来る事を一つづつ順に試していくしか無いのです。
加護 神聖力+85 の使い所だと思うので、一気にバビュンと浄化が出来れば良いのにな、と思ってしまいす。
次は重症の方のお宅を訪ねました。
宿まで来てくれた人たちは、お腹の辺りから、瘴気がじんわり漂っていましたが、この方はアレクさん達の目でも瘴気が見える程、全身から瘴気が湧き出していました。
病で歩けない何処ろか、意識も朦朧として、こちらの呼びかけにも反応がなく、この方の伴侶だと言う方も、顔色が良く有りません。
「レン、これを浄化するのは事だぞ?」
とアレクさんも心配してくれています。
「そうですね・・・でも凄く苦しそうです・・今は痛みを軽減できる程度に浄化をして、後は祝福と浄化の魔晶石を身につけてもらうのはどうでしょうか」
「この後も洞窟の浄化があるんだぞ?石だけで良く無いか?」
「でも、こんなに苦しんでいるのに、放っておけないでしょ?」
「それはそうだが・・・」
「洞窟の状態はまだわからないけど、洞窟の浄化が終わったら、この方だけじゃなく他の皆さんも浄化してあげたいです」
過保護なアレクさんは、ものすごく渋い顔をしていて、本気で心配してくれているのが伝わってきます。
でも瘴気は人の心を蝕むのです。
一刻も早く浄化してあげないと、体だけじゃなくて心も病んでしまう。これは私のやるべき事なのです。
「俺の番は、頑固だからな。ブネには到着が遅れると鳥を飛ばしておく」
心配をかけているのに、ため息と共に髪をかきあげるアレクさんの仕草と指の動きが、色気満載でかっこよくてドキドキします。
そんな自分に後ろめたい気分になりながら、息を整えて不埒な考えを押さえ込み、病人の手を取って、浄化して行きました。
この方は症状の割には、ローガンさんの時より瘴気が薄いように感じました。
時間をかけて蓄積された瘴気より、アガスが操った瘴気の方が濃いのなら、あの人はどうやって自我を保っているのでしょうか。
それとも自我なんて既に無いのでしょうか?
ベットに力無く横たわる病人の、全ての瘴気を浄化することは出来そうに有りません。
まだ半分くらい瘴気が残っていましたが、この後のことも考え、ここで一旦終わりにしました。
多少ふらつきますが、回復薬を飲めばなんとかなりそうです。
ベットの上の人も全快とは言えませんが、顔色が良くなった様子に、伴侶の方も喜んでくれています。
「大丈夫か?」
「へへ。大丈夫ですよ? でも思ったより時間がかかっちゃいました」
「そんなことは気するな。洞窟に行くのは明日にするか?」
「回復薬を飲めば大丈夫そうです」
抱き上げられて近くなった顔が、不安気に私の目を覗き込んで、青灰色の瞳が揺れています。
「ほんとうに?」
「本当に。大丈夫」
「・・・・浜に行くのは午後からにしよう」
「えっ?でも遅くなっちゃいますよ?」
「浜までは遠くないからな。少しくらい遅れても問題はない。しっかり休んで、メシを食って体力を回復してからだ」
「・・・はい」
段々瞳孔が開いて来てます。
これは逆らってはいけないやつです。
私の我儘に付き合ってもらったのだし、アレクさんの言う通りにした方が良さそうです。
村で唯一のレストラン&居酒屋を兼ねている宿屋に引き返し、みんなが見ている前でお腹がポンポコリンになるまで、アレクさんにガッツリお給仕された私は、ブルークラブのいる浜に向かう、エンラの上で爆睡してしまいました。
アレクさんのエンラのブルーベルちゃんは、恐竜のパラサウロロフス(ジュラシックな映画に出てくる恐竜です)に似ていますが、穏やかな性格でとても頭の良い子です。
私にもよく懐いてくれて、水色の大きな目がチャームポイントです。
この子が戦闘になると、魔物に怯えることもなく、アレクさんと一緒に戦場を駆け回るのですから、勇敢な子でもあるのです。
お腹はいっぱい、アレクさんにくっついている背中はポカポカ暖かく、ブルーベルちゃんから安定した振動が伝わってきて、襲ってくる睡魔に勝つことが出来ませんでした。
浜の手前でアレクさんに起こされましたが、周りに居るマークさん達の生暖かい視線に、思わず涎が垂れていないか確認してしまいました。
幸い私の涎でアレクさんの袖を濡らすような失態は犯さずに済んで一安心です。
安心したはずなのですが・・・・。
「あれがブルークラブ?」
「そうだが、どうかしたか?」
「どうかしたって・・・」
ブルークラブって・・こんなに大きいの?
魔物だから、サイズが違ってもしょうがないけど、これは流石に・・・。
甲羅だけでも、校庭の体育倉庫くらい有るけど・・・・。
幾ら何でも大きすぎない?
あのハサミ、指じゃなくて胴体切れちゃうでしょ。
甲羅の色おかしいよね?
トルコブルーなのは良いですよ?
ブルークラブなんだから。
けど何でピンクの水玉の方が目立ってるの?
ブルーっていうより、ドットピンクじゃ無いですか?
見た目全然美味しくなさそうなのに、あれが本当にあの美味しいカニ?
「ブルークラブはデカいが、こっちがちょっかいを掛けなければ、大人しい魔物だから心配しなくてもいいぞ?」
「ちょっかいをかけたらどうなるの?」
「暴れ狂って、面倒だな」
「・・・でしょうね・・討伐する時はどうするの?」
「ん? 下っ腹の辺りが急所だから、そこを狙う」
そこは普通のカニと一緒なんだ。
カニの褌の事でしょう?
「今日は討伐目的では無いからな。刺激しないように、静かに洞窟まで移動するぞ?」
「はい」
静かに移動って、私は抱っこ移動なんですよ?
私の安全はアレクさんに掛かってますよ?
タマスの巨大蜘蛛もトラウマ級でしたが、この巨大ガニも絵面的には引けを取りません。
今は、甲羅干しみたいにじっとしてますが、これであのカニに追いかけ回されたら、暫く夢に出て来る事確定です。
アレクさん本当によろしくお願いしますね?
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