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アレクサンドル・クロムウェル

討伐とお留守番 /朝チュンではなく

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 ギョア”ァァ~

 あの後、泣き腫らしたレンの目に、冷やしたタオルで湿布しながら、子供の頃のジルベールの話をした。

 ジルベールは木登りが上手くて、いたずら好きで、兎に角じっとしていられない子供だった。

「これやるよ」
 ある時、ジルベールがウィリアムにあめの瓶を渡した事があった。
 別腹の俺は、たまにしか2人と一緒にいられなかったから、それを見て、羨ましいと思ったよ。

 だが、貰った瓶を見たウィリアムは
「きゅぅぅ・・」と奇妙な声を上げて倒れてしまったんだ。
 これに気付いた大人達が大騒ぎになって、気を失ったウィリアムは、子供部屋に運ばれてな。
 侍従の1人がウィリアムが落とした瓶を拾い上げ、中身を見て「ギイャ~~!!」と叫んで逃げてしまった。

 気になった俺は、瓶の中身を見たんだが、中には小さなライムフロッグが、詰め込まれていた。

 白い腹をヘコヘコ動かすライムフロッグが、ガラスにビッシリ張り付いていて、あれは本当に気持ち悪かったな。

 本能的に、これは見つかったらまずい、と思った俺は、瓶の蓋を開けて、植え込みの下に蹴り込んだ。

 子供だったから、完全な証拠隠滅だと胸を撫で下ろしたが、先に侍従に見られていたから、ジルベールは後で侍従長に、こっ酷く叱られていたな。

 ウィリアムは、ショックで熱を出し、3日も寝込んだ。
 流石にやり過ぎたと思ったのか、ウィリアムの熱が下がるまで、ジルベールは菓子とか絵本で、ウィリアムのご機嫌取りをしていた。
 だが、暫く大人しくしていたジルベールも、熱りが冷めると虫が騒ぐのか、何かしらの悪戯を繰り返す、そんな子供だったよ。

「アレクさんも何かされた?」
「そうだなぁ。デカい虫を服に付けられるのは、しょっちゅうだったな、枝いっぱいに巻きつけた蜘蛛の糸を、頭から塗りたくられたり、生きた魚を、背中に入れられた事もあったな」
「うわぁ・・・なんか、もう・・・ね」

「ジルベールの悪戯は酷かったが、俺はどうやって、悪戯の材料を集めてるのか、そっちの方が不思議でな?」
「あぁ、たしかにライムフロッグ?とか蜘蛛の糸とか、集めるの大変そうですよね?」
「だろう?だから一度聞いたことがあるのだが、ジルベールはニヤニヤ笑って、教えてくれなかったな」

「ジルベールが通った後は、何かしら騒ぎが起きていてな、マシュー様が“あの子は嵐と同じです。通り過ぎるのを、じっと待ちましょう”と、侍従と話していたな」

「それって、相当ですね」
「だがな、悪戯好きだったが、落ち着いている時のジルベールは、優しい兄だったんだ」

 コツ・コツ
 グガア~~~

 そんな風に夜通しレンと話して、そのままソファーで寝てしまったが・・・。

 今は、スッキリした気分だ。
 それに・・・・。

 なんか、これいいな!

 一つのソファーに2人で寝るって
 俺の上で番が寝てるとか・・・
 暖かくて、重さも絶妙だ

 グラァァ・・・・

 もう少しこのまま・・・・。

 ゴツ・ゴツゴツ・ゴン!
 ギョワ~~~・・・・

「・・・・・・うるさいっ!!」

 なんなんだ?!
 もっと、余韻に浸らせろよ!!

「ふぁっ・・。おはようございます?」
「あぁ。すまない。おこしてしまったな」

 大声のせいで、レンを起こしてしまった。

 寝起きでボーッとしてるのも
 かわいいな。

 ゴン!ゴン!ゴツゴゴ・・・

「?・・・なんですか?・・・・あれ」

 レンが指差したのは、バルコニーに続く扉の向こうで、奇声を上げ、狂った様にガラスを啄くダンプティーだった。

「あ~。通信鳥のダンプティーだ。マークかミュラーからの連絡だろう」
「通信鳥?・・・伝書鳩にしては・・・」

 レンを抱えて腹筋で起き上がり。
 そのまま左腕にレンを座らせて
 バルコニーに向かった。

 ゴルワァァァ

「うるさいぞ。静かにしろ!」

 ガラス戸を開けると、バサバサと羽音を立て、舞い上がったダンプティーが、俺の右腕に留まった。

「おっ!ぶさかわ」
「むっ?・・あ~すまん。手紙を受け取りたいから、ちょっと手を出してもらえるか?」
「あっはい。手が塞がってますもんね?」

 レンはダンプティーの前に、両手を揃えて差し出した。

 ゴエェェ

「うっ?」
「うえええ?!なっなにこれ??ヤダあ!!」

 レンは、ダンプティーが体の倍の長さがある、巻紙を吐き出す姿に驚いている。

 俺は見慣れているから、なんともないが。
 たしかに、初見では、驚く光景かもしれない。

「アレクさ~ん。これ、どうするんですかぁ~?」
 と両手に乗った巻紙を、腕をいっぱいに伸ばし、涙目で体から遠ざけようとしている。

 今日のレンも、安定のかわいさだ。

「いや。そんな汚くないぞ?魔力で守られてるから、濡れたりしてないだろう?」
「へっ?あっ・・・ほんとだ、サラサラ」
「なっ!」
 動揺するレンを宥めて、ソファーに降ろした。

 俺が手紙に目を通す間、レンはテーブルに留まった、ダンプティーの頭を指で撫でながら
「君は、ぶさかわなのに、他に手紙の受け渡し方法は無いの?ビジュアル的にちょっと、あれですよ?」

 と優しく話し掛けていた。

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