48 / 524
アレクサンドル・クロムウェル
神託の愛し子 /仲直りと美の基準
しおりを挟む
レンが寝室に篭って、二刻近くになる。
このまま許して貰えなかったら、と思うと
体が地面にめり込みそうな程、気が重い
暫く今後のことを話していたウィリアムも、いつまでもレンが出てこない事に、気の毒そうな視線を向けて、「がんばって」と肩を叩いて、執務に戻っていった。
テーブルの上に置かれた、2枚の紙を見つめて、何度目かわからない溜息が漏れる。
グリーンヒルが置いていった、婚約申請書と、その許可証。この2枚にレンは、サインをしてくれるだろうか。
いや、すぐにサインをしてくれなくとも、レンには俺の婚約紋を、刻んである。少なくとも、他の奴等への、牽制にはなる筈だ。
それにレンは、聡明で優しい人だ、俺がきちんと話しをすれば、必ず分かってくれるだろう。
本当にそうか?
俺はレンの優しさに
甘えているだけではないのか?
「はあ・・・」
マークなら、こんな時、もっと上手く対処できるのだろうな、情けないが、恋愛初心者の俺では、番の心を掴むことすら難しい。
“カチャ”
寝室の鍵が開く音に、俺は飛び起きた。
扉の影から、そっとこちらを覗き込む、番の姿に涙が出そうだ。
「レン?」
「あっ、アレクさん?ずっと待っててくれたんですか?」
「君がいる所が、俺の居場所だ。他にどこにいけと?」
「ヴッ・・・・そう・・なんですね?」
レンは心臓の上に手を当てて
「アウラ様、私、本当に慣れるでしょうか?」
と祈るような小声を出した。
やはり、レンは神託や祈りとは別に、神と話すことが出来るのかもしれない。
「レンこちらで、少し話をしよう」
レンは素直に頷いて「私も大切なお話があるんです」と歩いてきた。
だが、レンがソファーの向かい側に、行こうとしているのを察知した俺は、慌てて腕を伸ばして、俺の膝の上に抱き上げた。
「またですか?」
「嫌か?」
嫌ではないけど、恥ずかしい。と答える番に「では、慣れてくれ」と懇願した。
「これは獣人の性だ。愛しい番とは、片時も離れたくない」
するとレンは「精進します」と頬を染めた。
番のつむじに顎を乗せて、芳しい香りを胸一杯に吸い込んだ。
幸せだ。
機嫌はもう治ったのかと聞くと
説明を省いたアウラに怒っただけで
俺の事は怒ってないと、言ってくれた。
「心配かけてごめんなさい」
「いや、俺の方こそデリカシーがたりなかっった」
お互い謝りあって、仲直りができた。
肩の荷が降りた気分だ。
よかった。やっと安心できる。
「お着替えの事は、看病の一環だから仕方がないって、分かってるんです。でも・・・」
言い難い事なのか、レンは両手の指を絡ませたり、離したりを繰り返している。
「でも?」
「・・・私と、アレクさん達男の人は、体が違うので、胸とか、その・・下の方・・・とかは、旦那様にしか見せてはいけないと、祖母に言われていまして」
「そうか・・・」
レンの祖母は、貞操観念が強いのだな。
こちらの世界も、ゆるい訳ではない。
だが、旦那になら見せて良いのなら
俺は見てもいいって事だな?
「それと、抱っことか色々、恋愛的なものには、あまり慣れていないので、出来ればお手柔らかにお願いしたいです」
「では、早く馴れるように、うんと甘やかしてあげよう」と俺がニヤリと笑うと。
レンは“ウッ”と息を止め「イケメンって怖い」とこぼした。
「そのイケメン、とはなんだ?」
俺の問いに、レンは「それ聞きます?」と慄いた顔をする。
何か、悪い意味なのだろうか。
「え?や・・あの違いますよ?変な意味じゃなくて・・・」
では、どんな意味かと問うと、レンはプイッとそっぽを向いた。
「レン?」
「・・・イケメンとは、カッコいいって意味です。・・・・わッ私は。アレクさんがカッコ良すぎて困ってるんです!!」
拳を握りしめて、一息で言い切ったレンは、顔を赤くして、肩で息をしている。
その姿は、とても愛らしい。
愛らしいのだが。
俺がかっこいい?
「君は、何を言ってるんだ?」
俺の言葉に、レンは不思議そうな顔で振り向いた。
「何って・・・アレクさんのお顔がとても綺麗で、お姿も素敵だって話ですよ?」
「・・・君は目が悪いのか?」
「いえ。目はいい方ですけど」
「「うん?」」
俺たち2人は、頭の上にクエスチョンマークを浮かべて、お互いを見つめあった。
「あ~。一旦整理しよう。君は神殿でも、俺のことを綺麗だと言ったな?そして、今もかっこいいと思ってる」
あってるか?との問いに、レンは頬を染めて頷いた。
「レンがそう思ってくれているのは、嬉しい。とても嬉しいんだが・・・俺は醜男で有名でな?」
レンは大きく目を見開いて、ピキリと固まって、次にヘニャリと笑った。
「うそだあ。もう、アレクさんてば、またまた~」と冗談だと思ったのか、顔の前で手を振りながら笑っている。
「いや、自分でいうのも情けない話だが、本当の事だぞ?」と言うと、笑いを引っ込めたレンは、困惑で眉を顰めた。
「なんで?」
こんなにかっこいいのに?と首を捻る姿は、嘘をついたり、俺に気を遣っているようには見えない。
「こんな醜男の俺を、君が特に嫌がるでもなく、受け入れてくれて、とても嬉しい。が驚いてもいる。と言うのが本音だな」
「すみません。ちょっと理解できないです」
頭痛を堪えるように、こめかみを押さえる様子は、本当に理解できないからだろう。
「多分認識の差だな。だが君は、文句なく美しいぞ」
「??・・・私は平凡な地味顔ですよ?」
「君が、地味で平凡?それはない」
再び、お互いを見つめる視線は、困惑の一言だ。
「ちょっと待ってください。こちらの美の基準って、どうなってるんですか?」
美の基準と言われて、思い浮かんだのは、マークだった。
このまま許して貰えなかったら、と思うと
体が地面にめり込みそうな程、気が重い
暫く今後のことを話していたウィリアムも、いつまでもレンが出てこない事に、気の毒そうな視線を向けて、「がんばって」と肩を叩いて、執務に戻っていった。
テーブルの上に置かれた、2枚の紙を見つめて、何度目かわからない溜息が漏れる。
グリーンヒルが置いていった、婚約申請書と、その許可証。この2枚にレンは、サインをしてくれるだろうか。
いや、すぐにサインをしてくれなくとも、レンには俺の婚約紋を、刻んである。少なくとも、他の奴等への、牽制にはなる筈だ。
それにレンは、聡明で優しい人だ、俺がきちんと話しをすれば、必ず分かってくれるだろう。
本当にそうか?
俺はレンの優しさに
甘えているだけではないのか?
「はあ・・・」
マークなら、こんな時、もっと上手く対処できるのだろうな、情けないが、恋愛初心者の俺では、番の心を掴むことすら難しい。
“カチャ”
寝室の鍵が開く音に、俺は飛び起きた。
扉の影から、そっとこちらを覗き込む、番の姿に涙が出そうだ。
「レン?」
「あっ、アレクさん?ずっと待っててくれたんですか?」
「君がいる所が、俺の居場所だ。他にどこにいけと?」
「ヴッ・・・・そう・・なんですね?」
レンは心臓の上に手を当てて
「アウラ様、私、本当に慣れるでしょうか?」
と祈るような小声を出した。
やはり、レンは神託や祈りとは別に、神と話すことが出来るのかもしれない。
「レンこちらで、少し話をしよう」
レンは素直に頷いて「私も大切なお話があるんです」と歩いてきた。
だが、レンがソファーの向かい側に、行こうとしているのを察知した俺は、慌てて腕を伸ばして、俺の膝の上に抱き上げた。
「またですか?」
「嫌か?」
嫌ではないけど、恥ずかしい。と答える番に「では、慣れてくれ」と懇願した。
「これは獣人の性だ。愛しい番とは、片時も離れたくない」
するとレンは「精進します」と頬を染めた。
番のつむじに顎を乗せて、芳しい香りを胸一杯に吸い込んだ。
幸せだ。
機嫌はもう治ったのかと聞くと
説明を省いたアウラに怒っただけで
俺の事は怒ってないと、言ってくれた。
「心配かけてごめんなさい」
「いや、俺の方こそデリカシーがたりなかっった」
お互い謝りあって、仲直りができた。
肩の荷が降りた気分だ。
よかった。やっと安心できる。
「お着替えの事は、看病の一環だから仕方がないって、分かってるんです。でも・・・」
言い難い事なのか、レンは両手の指を絡ませたり、離したりを繰り返している。
「でも?」
「・・・私と、アレクさん達男の人は、体が違うので、胸とか、その・・下の方・・・とかは、旦那様にしか見せてはいけないと、祖母に言われていまして」
「そうか・・・」
レンの祖母は、貞操観念が強いのだな。
こちらの世界も、ゆるい訳ではない。
だが、旦那になら見せて良いのなら
俺は見てもいいって事だな?
「それと、抱っことか色々、恋愛的なものには、あまり慣れていないので、出来ればお手柔らかにお願いしたいです」
「では、早く馴れるように、うんと甘やかしてあげよう」と俺がニヤリと笑うと。
レンは“ウッ”と息を止め「イケメンって怖い」とこぼした。
「そのイケメン、とはなんだ?」
俺の問いに、レンは「それ聞きます?」と慄いた顔をする。
何か、悪い意味なのだろうか。
「え?や・・あの違いますよ?変な意味じゃなくて・・・」
では、どんな意味かと問うと、レンはプイッとそっぽを向いた。
「レン?」
「・・・イケメンとは、カッコいいって意味です。・・・・わッ私は。アレクさんがカッコ良すぎて困ってるんです!!」
拳を握りしめて、一息で言い切ったレンは、顔を赤くして、肩で息をしている。
その姿は、とても愛らしい。
愛らしいのだが。
俺がかっこいい?
「君は、何を言ってるんだ?」
俺の言葉に、レンは不思議そうな顔で振り向いた。
「何って・・・アレクさんのお顔がとても綺麗で、お姿も素敵だって話ですよ?」
「・・・君は目が悪いのか?」
「いえ。目はいい方ですけど」
「「うん?」」
俺たち2人は、頭の上にクエスチョンマークを浮かべて、お互いを見つめあった。
「あ~。一旦整理しよう。君は神殿でも、俺のことを綺麗だと言ったな?そして、今もかっこいいと思ってる」
あってるか?との問いに、レンは頬を染めて頷いた。
「レンがそう思ってくれているのは、嬉しい。とても嬉しいんだが・・・俺は醜男で有名でな?」
レンは大きく目を見開いて、ピキリと固まって、次にヘニャリと笑った。
「うそだあ。もう、アレクさんてば、またまた~」と冗談だと思ったのか、顔の前で手を振りながら笑っている。
「いや、自分でいうのも情けない話だが、本当の事だぞ?」と言うと、笑いを引っ込めたレンは、困惑で眉を顰めた。
「なんで?」
こんなにかっこいいのに?と首を捻る姿は、嘘をついたり、俺に気を遣っているようには見えない。
「こんな醜男の俺を、君が特に嫌がるでもなく、受け入れてくれて、とても嬉しい。が驚いてもいる。と言うのが本音だな」
「すみません。ちょっと理解できないです」
頭痛を堪えるように、こめかみを押さえる様子は、本当に理解できないからだろう。
「多分認識の差だな。だが君は、文句なく美しいぞ」
「??・・・私は平凡な地味顔ですよ?」
「君が、地味で平凡?それはない」
再び、お互いを見つめる視線は、困惑の一言だ。
「ちょっと待ってください。こちらの美の基準って、どうなってるんですか?」
美の基準と言われて、思い浮かんだのは、マークだった。
73
お気に入りに追加
1,316
あなたにおすすめの小説
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
この誓いを違えぬと
豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」
──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。
なろう様でも公開中です。
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる