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アレクサンドル・クロムウェル

紫藤 蓮/シトウ・レン ボイチャ

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「レン?呼んだ?」

 やっとアウラ様に繋がりました。
 なんか。ちょっと泣きそうです。

「アウラさま~。私どうしたら良いですかぁ」
 ステータス画面の向こうで、アウラ様が慌てた様子が伝わってきます。

「行ったばかりで、どうしたの?」
「ひどいじゃないですか。なんでBLせかいなんですかぁ」
「あぁ・・・・」
「それに、私こっちに来た時、死にかけで、アレクさんが死ぬ程驚いたって~」

 どうしましょう。
 本気で泣けてきました。

「あぁ、レン泣かないで」
「だってぇ・・・。アレクさん嘘みたいに、すっごくかっこいいんですよ?ウィリアムさんも、パフォスさんだって・・・。チラッと見た侍従さんだって、この世界イケメンしかいないんですか?・・私あっちの世界で、陰で、オタクとか喪女とか行き遅れ、とか言われてたのに。こんな、こんなキラキラした人ばっかりじゃ、眩しくて眼が潰れちゃいますよ~」
「なんだい、それは惚気てるの?それとも私を褒めてるの?」

 なんて、呑気な神様でしょう。

「本気で、困ってるんです!」

 ズビズビと鼻を啜る私に、アウラ様はため息を吐いています。

「女性がいないことを話さなかったのは、前回のヨシタカが、ずっと1人だったから忘れてしまってね」
 後半声が上擦ってますよ?

「・・・神様が、嘘ついて良いんですか?」
「嘘はついていないよ?」
「だって、マッチョとか美少年、推してたじゃないですか?」

 図星をさされて、アウラ様が息を飲みました。

「クッ・・・すまない・・・私が悪かった」
「私だって、アウラ様の趣味をとやかく言ってるんじゃないんですよ?でも教えてくれれば、覚悟だって、相談だって出来たのに・・・」
「どうしようか迷いはしたんだ、でも、君BL、そんなに好きじゃないでしょ?」

 なんで、そんなこと知ってるんですか?

「そういう、問題じゃないですよね?」
「君、世界を渡ることには、動揺しなかったのに・・・・」
「私の世界で、こんな綺麗な人たちは、二次元にしかいません!慣れてないんです」
「そこは、頑張って慣れようね」

 そりゃそうでしょう。
 今から世界中の人をブサイクにしろなんて 
 言ってませんよ?

「じゃあ、生理が来たらどうするんですか?男の人しかいないんですよ?生理用品なんて無いですよね?」
「えッ!・・・そこ?」
「女子には大事なことです」

 アウラ様の疲れた、長い溜息が聞こえてきます。

「ちゃんと説明するから、取り敢えず落ち着いて」
「ううう・・・・」
「ほら、泣くのやめなさい。目が腫れてしまうよ」

 すると、ステータス画面がキラキラ光って、ベショベショになった私の顔が、スッキリ綺麗になりました。

 神様ってすごい。

「まず、生理については心配ない。もう来ないから」
「えッ?」

 もうこない?
 私あがったの?
 赤ちゃん産めないの?

「あぁ、ちがう違う。君の身体を私の世界に合わせたんだ。こっちでは、魔力を練って子供を創るからね。生理は必要ないんだよ」
「えッ・・・あっ・・・なるほど?」

 なんだろ、めちゃくちゃ複雑な気分。

「それから、君が怪我したままだったのは、私が創ったことがあるのは、男だけだから、失敗しないように、君の元の身体を、再利用というか、コピーしたんだけれど。色々こちらに合わせるのが手間でね、傷を消すのが間に合わなかった」

 なんですか?
その納品日間違えた、業者みたいな言い訳。

「神様なのに?」
「私は、下っ端だからね」

 アウラ様の声が、自虐気味です。

「次に、アレクサンドルについてなんだけれど、獣人を創ったのは私ではなくて、クレイオスだ」
「クレイオス・・・?」

 ウィリアムさんと同じ名前ですけど、皇家の人でしょうか?

「クレイオスは、私の眷属のドラゴンだよ」

 ドラゴン?!
 またファンタジー要素が・・・。

「私とクレイオスは、それぞれ違う種族の人を創りはしたけれど、その心をいじったり、思い通りに変えたりする事はしない」
「出来ない。じゃなくて、しないんですね?」
「君は、そういう細かいことに、すぐ気付くね」

 アウラ様は、ため息を吐きたそうな声で仰います。

「なんでも思い通りの、人形を育てて、何が面白いんだい?」

 面白い・・・ですか。
 アウラ様は、私のいた世界に憧れがあって、サブカルチャー好きの、変わった神様だけれど、かみさまは、神様なんだ。

「話を戻すけど、アレクサンドルのだけじゃなく、獣人の、番云々に関して、私もクレイオスも関与していない。だから、彼の君への想いは本物だ」

 だから安心して。

 アウラ様の声が、とても優しくなりました。

 いくらラノベで、獣人とか、番の知識を、得ていても、所詮物語の中の話で、実際に生きている人とは違います。
 実際に当事者になってみたら、無条件で信じることは、難しくて、不安にだってなります。
 アウラ様は、私が、アレクさんの想いを、信じきれないでいるって、知っていたんですね?
 アウラ様は神様で、私達人とは、根本的に相容れない、何かがある気がします。
 でも、優しい方であることには、変わりはない気もします。

「私の世界の者たちの外見はね、魔族以外は、私の趣味。クレイオスも、私の趣味を知っていて、それに合わせて獣人を創ったんだ。所謂プレゼントだね。だから、レンも早く慣れてね?」

なんでしょう。
画面越しに、キランッ!って
星が飛んだ気がします。

「大丈夫。私の世界の基準だと、君も絶世の美女だ」
「絶世の・・・・・って、なんですかそれ?地味で平凡なOLですよ?」
「色々経験していけば、分かるよ。ヨシタカもそうだった」

ヨシタカって、先代の愛し子でしたか?

「・・・精進致します」
アウラ様が、満足そうにクスリ、と笑いました。

「それから、私を呼び出す前に、ステータス画面で、一回確認すること。いいね」
「・・・・はい」

「最後に一つ、神様っぽいことをしようかな」
アウラ様がそう言うと、部屋の空気が凛と張り詰めました。

『愛し子よ。これより汝に神託を与える。心して聴くように』

三月みつきのち 風花月ふうがづき
タマス平原の地下洞窟より
スタンピード起これり
怠り無く準備にかかれ

と威厳たっぷりに、神託を与えた後。
「じゃあ、またね」
とボイチャが切れました。

3ヶ月後?
大変です。アレクさんに知らせなきゃ!!
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