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アレクサンドル・クロムウェル

皇宮入りと婚約と/ カンバセーショーン🎵

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「改めまして。ウィリアム・ネルソン・クレイオス。この国で皇帝をやってます」

 ウィリアムが、胸に手を当てて礼をとる。

「ご丁寧に痛み入ります。私は紫藤蓮と申します。この度は、ご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません」
 とレンは頭を深く下げた。

「やだっ!なにこの子!めちゃくちゃ礼儀正しいよ?」
 丁寧な挨拶に、ウィリアムは感動しているようだ。

「こんなに小さいのに偉いねえ。僕の事はウィリアムでもウィルでも、できたら"お兄ちゃん"がいいんだけど、好きに呼んでね」
 完全に口調が、子供に対するそれになっている。

「レンは身体は小さいが、25歳だそうだ」
 ウィリアムはポカンとした顔になり、一瞬で驚きの声を上げた。

「うそッ!!僕達と3つしか違わないじゃない?」
「あの・・・私の国の人は、よその国の方より幼く見える民族らしいのですが、本当に25歳ですよ?6歳から16年学校にも通いましたし、ちゃんと成人もして、22歳からはお仕事もしています」
 
 学校とは何かと聞くと、行政や個人が運営する教育機関で、6歳からの9年間は、全ての子供が教育を受ける権利があり、親や行政には、教育を受けさせる義務、があるのだそうだ。
 それ以降の教育は、レンのような希望者が教育を受ける事になる。

 そのお陰かレンの国では、国民のほぼ全てが、読み書き算術ができるらしい。

「凄いね。僕たちも見習わなきゃ」
「あちらの権力者の方の中には、衆愚政治のほうが、楽でいいって考え方の人もいるようなんですが。私は国力を強くするのは、教育が一番だと思います」

 思った通り、俺の番は聡明な人だった。
 ウィリアムも感動しているのか、いつものおふざけがなりを潜めている。

「レン。一つ聞いていいか?」

 レンは俺を見上げて、どうぞ、と微笑んだ。

 その仕草の愛らしさに、キスがしたくなった。だがレンは恥ずかしがり屋だから、ウィリアムの前でキスをしたら、怒られそうで、物凄く辛いが、グッと堪えることにした。

「君は、神殿で友人のことを聞いたきり、他の事は、あまり気にしていないように見える。自分の置かれた状況に、恐れや戸惑いが見えないのは何故だ?」

 レンは、はて?と言う表情で拳を顎に当ててしばし考え込んだ。

「この世界に来てから、ほんのちょっとしか時間は立っていないけど、戸惑うことばかりですよ?」

 これとか。と俺が刻んだ婚約紋を指差し。
 それを見たウィリアムが、息を呑んで俺とレンを見比べている。

「でも、そう見えないなら、私の国には、郷に入りては郷に従え。という格言があって、知らない国や土地に行ったら、それぞれ固有の風習や決まり事が有るから、それに従いなさいって意味なんですけど、私はそれに倣っているんです」
「へえ。いい言葉だね。なんか争いが減りそう」

 感心するウィリアムに、レンは、ですよね。と優しく笑いかけた。

「後は、自分の尊厳に関わる事。理不尽で、受け入れられ無い事。以外は、まずは一旦受け入れなさい。受け入れた後でどうするべきか、どうしてそうなったのか、を考えなさい。って祖父に躾けられたので」
「成る程、お祖父様は人格者なんだね」

 そうなんです。とレンは少し寂しそうだ。

「でも、一番大きな理由は、ここに来る前にアウラ様と、お話できたからだと思います」

「?!・・・アウラ神と話したあ?!」

 ウィリアムの出した大声に、レンが驚いて、薄い肩が跳ねた。

「おい。レンを驚かすな」
「ごめん。びっくりしちゃって」

 俺が低い声を出すと、ウィリアムは素直に謝ったが、創世神との会話とは、俺も驚きだ。

「今度の神託だって、久しぶりなのに、創世神と話しただなんて、やっぱり愛し子は特別なんだねえ」
 ウィリアムは、感慨深気に呟いた。

「アウラ様は、神官の人たちが言うことを聞いてくれないって、言ってましたよ」
「そんなことまで、話したの?!」

 驚愕するウィリアムにレンは「ええ。まぁ、色々と」と困った表情を浮かべた。

「コイツの事は気にしなくていい。アウラ神は他に、なんと言っていた?」

 レンは話を纏める為か、少し考え込んでから、口を開いた。

 アウラ様は、この世界の魂を成長させるために、定期的に他の世界から、強い魂をこちらの世界に連れて来ているそうです。
 それが愛し子のことなんだと思います。

 私のことも、愛し子って呼んでましたし、とてもお優しい方でしたよ?

 今までの愛し子は、特別何かをする必要はなくて、こちらで暮らすついでに、技術とか、世界の発展に繋がる知識があれば、それを広めるだけでよかったらしいです。

 私は、一つだけお願いされたことがあるんですけど、それ以外は好きにしてて良い、て言われています。

 ただアウラ様は、地上の出来事に、あまり介入出来ないそうなんです、それに過保護は良くないって、仰って。だから問題があっても、こちらの世界の方々に、委ねられてるそうなんですけど・・・。
 神官の人達が、アウラ様の言うことを、素直に聞いてくれないので、困ってるご様子でした。

 そこまで話して息をついたレンに、茶を渡すと「ありがとう」と美味そうに茶を啜っている。

 しかし、ここまで神と、具体的な話しが出来るものなのか?

 やはり、愛し子は神殿の奴らとは、比べ物にならないし。絶対あいつらに、レンを渡してはいけない。と心に誓い直した。

 愛し子を手に入れた、神殿の奴等が、レンになにをするか、想像するのも悍ましい。

 脂肪で膨れたアガスの顔を思い出すと、吐き気がする。

 神官達を叩き潰す、何かいい口実はないだろうか。
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