30 / 491
アレクサンドル・クロムウェル
皇宮入りと婚約と/皇宮へ
しおりを挟む
最も信頼する、腹心の部下2人に後を任せ、俺はレンを連れて森の神殿を後にした。
森に繋がるポータルから出ると、ミーネの森の様子は一変していた。
神殿を探して、彷徨い歩いた3日間は、拍子抜けするほど穏やかだったが、今は街道へ抜けるまでの間に、ライノの群れに遭遇し、興奮しきったジャイアントボアに追いかけ回された。
やって殺れない相手ではないが、レンを連れている以上無理はできない。
ライノの群れには、ポータルから出て直ぐに、まるで待ち構えていたかのように、一瞬で取り囲まれた。
ライノは一頭の大きさが、乗合馬車の荷台ほども有り、更に鼻の上に伸びた角から、魔力の斬撃を飛ばして来る、厄介な魔獣だ。
しかも単体でいる事は稀で、10頭前後の群れを作っている。
厄介な相手だったが、頭から三番目までの、体の大きなライノを雷撃で丸焦げにしてやると、統率するものを失い、群れの動きが鈍った所で、ブルーベルの脚で逃げ切った。
群れのリーダーと、序列高位と見られる個体を失ったライノの群れは、暫くの間は、リーダー争いで忙しくなるはずだ。
そうなれば、後に残したマーク達も討伐がやり易くなるだろう。
一息着く間も無く、現れた巨大なジャイアントボアは、ライノの群れより面倒だった。
通常ジャイアントボアは、余程飢えていない限り、こちらが交戦の意思を見せなければ、深追いをしてこないものだ。
しかしコイツは腹が減っているのか、余程気に食わないことが有ったのか、執拗に俺たちの後を追って来る。
魔獣を見慣れた俺の目にも、その姿は異様に映った。
皇都までの道のりは長く、こんな所でブルーベルを疲れさせる訳には行かない。
森の開けた場所に出た俺は、ブルーベルを反転させて、追ってくる巨獣と対峙した。
巨躯の割に、つぶらな瞳を持つジャイアントボアだが、今は二つの目を赤い攻撃色に光らせ、荒い息と共に、涎を垂れ流す姿は、やはり異様だった。
残して来た団員達の手間を考えると、コイツも此処で仕留めてしまった方がいいだろう。
腰から剣を抜き、つかに嵌め込んだ魔晶石に魔力を込める。
間合いを測るかの様に、前足で土を掻いていた巨獣が、身を躍らせて突進してきた。
3ミーロ迄近づいた所で、剣に貯めた魔力を解放する。
空気が凍り、ジャイアントボアの体毛に霜が降りる。
己の身に起こった異変に気付いたのか、慌てて足を止めたジャイアントボアだが、もう遅い。
俺の可愛い番を、危険に晒すヤツを、俺が簡単に許すとでも?
伸ばした左腕の掌をぐっと握り込むと、凍てついた空気が一気に巨獣へと集まり、ギチッと音を立てて、巨大な氷の塊に変化した。
氷漬けジャイアントボアの完成だ。
今の季節なら、氷が溶けるまで3.4日と言ったところか。
それ迄生きていられるかは、コイツ次第だが、俺の番に手を出す様な奴に、掛ける情けなど無い。
加えてザンド村への被害を考えると、こんな気性の荒いヤツを放置も出来ない。
ジャイアントボアから採れる素材は貴重だが、後々の憂いとならぬ様、氷ごと打ち砕いて、息の根を止めてやった。
街道に出てからの道行は、森での襲撃が嘘の様に順調だった。
ブルーベルが疲れを見せると、休憩をとり。俺はレンの寝顔を思う存分堪能して、英気を養った。
本音を言えば、あのキラキラした黒い瞳で見つめて欲しかったし、涼やかな声も聞きたかった。
だが、眠っているお陰で無駄に怖い思いをさせる事もなく、俺が抱える事で、エンラでの移動の負担も少ない筈だ。
ふと、このまま二度と目覚めなかったら?
と嫌な考えが頭を過ぎり、肝が冷える事もあったが、あれ程の深傷を負った上で、魔力切れを起こしたのだから、今は回復の為に眠っているだけだと、自分に言い聞かせ、ブルーベルを走らせ続けた。
そんな俺の心情を察してか、ブルーベルの足取りは軽く、後続を気にする必要も無かったお陰で、行きに2日かかった行程を、1日半で駆け抜けることが出来た。
これは歴代早駆け記録1位となり、俺が死ぬ迄、この記録が塗り替えられることは無かった。
最速で皇宮に入った俺は、出迎えた侍従にブルーベルを任せ、腕に抱いたレンと共に、皇宮内の自室へと足を向けた。
気が急いて、大股で自室に向かう俺の後ろを、慌ただしい足音が追い掛けて来た。
何事かと振り向くと、現れたのはグリーンヒルだった。
「閣下・・・どちらに・・・・行かれるおつもりです?」
中腰で膝に手を当てた体勢で、ゼエゼエと荒い息を吐くグリーンヒルが問うて来た。
「俺の部屋だ」
文句があるか?と見下ろす俺に、ズレたメガネを直しながら、グリーヒルが舌打ちをした。
幾ら宰相といえど、位格は俺の方が上なのに、失礼すぎないか?
「陛下から話を伺った時は、まさか、と思いましたが、少しは物を考えて行動してもらえませんか?」
宰相殿は何を言っているんだ?
俺は番を休ませてあげたいだけなのだが?
森に繋がるポータルから出ると、ミーネの森の様子は一変していた。
神殿を探して、彷徨い歩いた3日間は、拍子抜けするほど穏やかだったが、今は街道へ抜けるまでの間に、ライノの群れに遭遇し、興奮しきったジャイアントボアに追いかけ回された。
やって殺れない相手ではないが、レンを連れている以上無理はできない。
ライノの群れには、ポータルから出て直ぐに、まるで待ち構えていたかのように、一瞬で取り囲まれた。
ライノは一頭の大きさが、乗合馬車の荷台ほども有り、更に鼻の上に伸びた角から、魔力の斬撃を飛ばして来る、厄介な魔獣だ。
しかも単体でいる事は稀で、10頭前後の群れを作っている。
厄介な相手だったが、頭から三番目までの、体の大きなライノを雷撃で丸焦げにしてやると、統率するものを失い、群れの動きが鈍った所で、ブルーベルの脚で逃げ切った。
群れのリーダーと、序列高位と見られる個体を失ったライノの群れは、暫くの間は、リーダー争いで忙しくなるはずだ。
そうなれば、後に残したマーク達も討伐がやり易くなるだろう。
一息着く間も無く、現れた巨大なジャイアントボアは、ライノの群れより面倒だった。
通常ジャイアントボアは、余程飢えていない限り、こちらが交戦の意思を見せなければ、深追いをしてこないものだ。
しかしコイツは腹が減っているのか、余程気に食わないことが有ったのか、執拗に俺たちの後を追って来る。
魔獣を見慣れた俺の目にも、その姿は異様に映った。
皇都までの道のりは長く、こんな所でブルーベルを疲れさせる訳には行かない。
森の開けた場所に出た俺は、ブルーベルを反転させて、追ってくる巨獣と対峙した。
巨躯の割に、つぶらな瞳を持つジャイアントボアだが、今は二つの目を赤い攻撃色に光らせ、荒い息と共に、涎を垂れ流す姿は、やはり異様だった。
残して来た団員達の手間を考えると、コイツも此処で仕留めてしまった方がいいだろう。
腰から剣を抜き、つかに嵌め込んだ魔晶石に魔力を込める。
間合いを測るかの様に、前足で土を掻いていた巨獣が、身を躍らせて突進してきた。
3ミーロ迄近づいた所で、剣に貯めた魔力を解放する。
空気が凍り、ジャイアントボアの体毛に霜が降りる。
己の身に起こった異変に気付いたのか、慌てて足を止めたジャイアントボアだが、もう遅い。
俺の可愛い番を、危険に晒すヤツを、俺が簡単に許すとでも?
伸ばした左腕の掌をぐっと握り込むと、凍てついた空気が一気に巨獣へと集まり、ギチッと音を立てて、巨大な氷の塊に変化した。
氷漬けジャイアントボアの完成だ。
今の季節なら、氷が溶けるまで3.4日と言ったところか。
それ迄生きていられるかは、コイツ次第だが、俺の番に手を出す様な奴に、掛ける情けなど無い。
加えてザンド村への被害を考えると、こんな気性の荒いヤツを放置も出来ない。
ジャイアントボアから採れる素材は貴重だが、後々の憂いとならぬ様、氷ごと打ち砕いて、息の根を止めてやった。
街道に出てからの道行は、森での襲撃が嘘の様に順調だった。
ブルーベルが疲れを見せると、休憩をとり。俺はレンの寝顔を思う存分堪能して、英気を養った。
本音を言えば、あのキラキラした黒い瞳で見つめて欲しかったし、涼やかな声も聞きたかった。
だが、眠っているお陰で無駄に怖い思いをさせる事もなく、俺が抱える事で、エンラでの移動の負担も少ない筈だ。
ふと、このまま二度と目覚めなかったら?
と嫌な考えが頭を過ぎり、肝が冷える事もあったが、あれ程の深傷を負った上で、魔力切れを起こしたのだから、今は回復の為に眠っているだけだと、自分に言い聞かせ、ブルーベルを走らせ続けた。
そんな俺の心情を察してか、ブルーベルの足取りは軽く、後続を気にする必要も無かったお陰で、行きに2日かかった行程を、1日半で駆け抜けることが出来た。
これは歴代早駆け記録1位となり、俺が死ぬ迄、この記録が塗り替えられることは無かった。
最速で皇宮に入った俺は、出迎えた侍従にブルーベルを任せ、腕に抱いたレンと共に、皇宮内の自室へと足を向けた。
気が急いて、大股で自室に向かう俺の後ろを、慌ただしい足音が追い掛けて来た。
何事かと振り向くと、現れたのはグリーンヒルだった。
「閣下・・・どちらに・・・・行かれるおつもりです?」
中腰で膝に手を当てた体勢で、ゼエゼエと荒い息を吐くグリーンヒルが問うて来た。
「俺の部屋だ」
文句があるか?と見下ろす俺に、ズレたメガネを直しながら、グリーヒルが舌打ちをした。
幾ら宰相といえど、位格は俺の方が上なのに、失礼すぎないか?
「陛下から話を伺った時は、まさか、と思いましたが、少しは物を考えて行動してもらえませんか?」
宰相殿は何を言っているんだ?
俺は番を休ませてあげたいだけなのだが?
76
お気に入りに追加
1,297
あなたにおすすめの小説
迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)
るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。
エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_
発情/甘々?/若干無理矢理/
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【R18】転生したら異酒屋でイキ放題されるなんて聞いてません!
梅乃なごみ
恋愛
限界社畜・ヒマリは焼き鳥を喉に詰まらせ窒息し、異世界へ転生した。
13代目の聖女? 運命の王太子?
そんなことより生ビールが飲めず死んでしまったことのほうが重要だ。
王宮へ召喚?
いいえ、飲み屋街へ直行し早速居酒屋で生ビールを……え?
即求婚&クンニってどういうことですか?
えっちメイン。ふんわり設定。さくっと読めます。
🍺全5話 完結投稿予約済🍺
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる