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アレクサンドル・クロムウェル
邂逅/ 邂逅2
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なんだかんだとロロシュは不満そうだが、結果オーライ、任務遂行が最優先だ。
奥の院の中に入ると、入り口近くに小部屋が二つ。
おそらく控えの間として使われていたのだろう。
小部屋の壁面に窓は無かったが、天井部に嵌め込まれた、クリスタル製の明かり取りのおかげで、内部の明るさは十分だった。
控えの間を通り過ぎ、さらに奥へと向かうと、木製の大きな扉に突き当たった。
一枚板で作られたそれは、天井に届くほど長大で、今まで見てきた他の扉と同じ様に精密な彫刻が施されていた。
ただし内容は違うようだ。
本殿の扉には創世神話の内容が彫られている様だったが、こちらの扉の彫刻は、アウラ神とドラゴンが、戯れているように見える。
俺は神話も美術も齧った程度だから、あくまでも憶測に過ぎない。
そう言えば、他の神殿でドラゴンをモチーフにした装飾は見たことがないな。
竜の遊び場と言うだけあって、この神殿は他の神殿よりもドラゴンへの信仰がより強く、大切なものとなっているようだ。
しかしやはりと言うべきなのか、この扉も封じられていたため、シッチンとロロシュに調べさせた。
「普通に鍵が掛かってるだけだな。これなら直ぐにあけ……ちょっとッ!?」
鍵が掛かっているだけなら造作もない。
俺は腰に佩いた愛刀を引き抜き、扉の隙間に突き立てて、一気に下へ引き下ろした。
腰高のあたりで微かに引っ掛かりがあったが軽く力を加えるてやる。
ギャリリと金属同士が擦れ合う音を立てた後、扉がゆらりと開いたのを見届けてから剣を鞘に戻した。
「おわっ!」
「マジかよ?!」
「団長すっげえ!!」
「カッケー!!」
「あんたほんっと!ばかだろ?!馬鹿なんだな?!鍵なんて、壊さなくても簡単に開けられんだよ!」
賞賛は団員の、非難の声は勿論ロロシュだ。
大した事でもないのに、一々騒ぎすぎだ。
そもそも俺たちが帰還した後は、誰もこの地に入ることが出来ないのだから、鍵が一つ壊れたくらい、なんの問題もないのではないか?
そう反論すると、ロロシュは一瞬鼻白んだ顔になったが「そう言う問題じゃない」と姦しいことこの上ない。
そんなロロシュの小言の合間に、薄く開いた扉の隙間から、甘く芳しい香りが流れてきた。
甘い香りに誘われるように、俺は扉を押し広げ、騒がしい奴らを置き去りにして、洗礼の間へと進んだ。
薄暗い廊下の先に広がっていたのは、天上世界はかくありきとういう光景だった。
洗礼の間で最初に目に入るのは、咆哮する巨大なドラゴンに護られた、アウラ神の神像だ。
控えの間よりも、大きな天井の明かり取りから差し込む陽の光が、クリスタルを透してそこ此処に虹を作り出し、アウラ神とドラゴンを眩く浮かび上がらせている。
神像の前には、アウラの足元から混々と湧き出す、清らかな水を受けた泉があり、泉の中には白蓮の花が咲き誇っている。
泉から溢れた流れは、大理石の床に施された水路へと導かれ、床の上を蛇行しながら奥の院の外へと流れていく。
白蓮の花は、水路の中にも無数に浮かんで、そのその両岸に、ホワイトリリーが群咲いて、甘い香りを漂わせていた。
扉の前で感じた香りは、この清らかな花々の香りだった。
芳しい香りに陶然としていると、水の流れとは違う音に気が付いた。
音の源を探して視線を巡らせると、泉の淵に置かれた色とりどりの壺が、湧き出した流れを弾いて、楽の音を奏でていた。
これが神殿としての本来あるべき姿なのか、この神殿だからこそなのかは判らないが、今自分が立っている場所は、言葉では言い尽くせない程、幻想的で荘厳且つ清廉な空間だった。
「天国って、こういう処っすか?」
素に戻ったシッチンが無意識に漏らした言葉だった。
他の者も感嘆と、感動の声をあげているが、どれもこの場の雰囲気に圧倒されているのか、ヒソヒソと遠慮がちだ。
愛し子の招来の地として、この幻想的な空間よりもふさわしい場所があるとは思えない。
この美しい場所が、愛し子を招来するためだけに用意された。と言われても、きっと納得してしまうだろう。
神託の中に、愛し子招来の正確な日時は無かった。
しかし、おれはこの刻、愛し子は今宵この場に招来されるだろうと、確信したのだった。
奥の院の中に入ると、入り口近くに小部屋が二つ。
おそらく控えの間として使われていたのだろう。
小部屋の壁面に窓は無かったが、天井部に嵌め込まれた、クリスタル製の明かり取りのおかげで、内部の明るさは十分だった。
控えの間を通り過ぎ、さらに奥へと向かうと、木製の大きな扉に突き当たった。
一枚板で作られたそれは、天井に届くほど長大で、今まで見てきた他の扉と同じ様に精密な彫刻が施されていた。
ただし内容は違うようだ。
本殿の扉には創世神話の内容が彫られている様だったが、こちらの扉の彫刻は、アウラ神とドラゴンが、戯れているように見える。
俺は神話も美術も齧った程度だから、あくまでも憶測に過ぎない。
そう言えば、他の神殿でドラゴンをモチーフにした装飾は見たことがないな。
竜の遊び場と言うだけあって、この神殿は他の神殿よりもドラゴンへの信仰がより強く、大切なものとなっているようだ。
しかしやはりと言うべきなのか、この扉も封じられていたため、シッチンとロロシュに調べさせた。
「普通に鍵が掛かってるだけだな。これなら直ぐにあけ……ちょっとッ!?」
鍵が掛かっているだけなら造作もない。
俺は腰に佩いた愛刀を引き抜き、扉の隙間に突き立てて、一気に下へ引き下ろした。
腰高のあたりで微かに引っ掛かりがあったが軽く力を加えるてやる。
ギャリリと金属同士が擦れ合う音を立てた後、扉がゆらりと開いたのを見届けてから剣を鞘に戻した。
「おわっ!」
「マジかよ?!」
「団長すっげえ!!」
「カッケー!!」
「あんたほんっと!ばかだろ?!馬鹿なんだな?!鍵なんて、壊さなくても簡単に開けられんだよ!」
賞賛は団員の、非難の声は勿論ロロシュだ。
大した事でもないのに、一々騒ぎすぎだ。
そもそも俺たちが帰還した後は、誰もこの地に入ることが出来ないのだから、鍵が一つ壊れたくらい、なんの問題もないのではないか?
そう反論すると、ロロシュは一瞬鼻白んだ顔になったが「そう言う問題じゃない」と姦しいことこの上ない。
そんなロロシュの小言の合間に、薄く開いた扉の隙間から、甘く芳しい香りが流れてきた。
甘い香りに誘われるように、俺は扉を押し広げ、騒がしい奴らを置き去りにして、洗礼の間へと進んだ。
薄暗い廊下の先に広がっていたのは、天上世界はかくありきとういう光景だった。
洗礼の間で最初に目に入るのは、咆哮する巨大なドラゴンに護られた、アウラ神の神像だ。
控えの間よりも、大きな天井の明かり取りから差し込む陽の光が、クリスタルを透してそこ此処に虹を作り出し、アウラ神とドラゴンを眩く浮かび上がらせている。
神像の前には、アウラの足元から混々と湧き出す、清らかな水を受けた泉があり、泉の中には白蓮の花が咲き誇っている。
泉から溢れた流れは、大理石の床に施された水路へと導かれ、床の上を蛇行しながら奥の院の外へと流れていく。
白蓮の花は、水路の中にも無数に浮かんで、そのその両岸に、ホワイトリリーが群咲いて、甘い香りを漂わせていた。
扉の前で感じた香りは、この清らかな花々の香りだった。
芳しい香りに陶然としていると、水の流れとは違う音に気が付いた。
音の源を探して視線を巡らせると、泉の淵に置かれた色とりどりの壺が、湧き出した流れを弾いて、楽の音を奏でていた。
これが神殿としての本来あるべき姿なのか、この神殿だからこそなのかは判らないが、今自分が立っている場所は、言葉では言い尽くせない程、幻想的で荘厳且つ清廉な空間だった。
「天国って、こういう処っすか?」
素に戻ったシッチンが無意識に漏らした言葉だった。
他の者も感嘆と、感動の声をあげているが、どれもこの場の雰囲気に圧倒されているのか、ヒソヒソと遠慮がちだ。
愛し子の招来の地として、この幻想的な空間よりもふさわしい場所があるとは思えない。
この美しい場所が、愛し子を招来するためだけに用意された。と言われても、きっと納得してしまうだろう。
神託の中に、愛し子招来の正確な日時は無かった。
しかし、おれはこの刻、愛し子は今宵この場に招来されるだろうと、確信したのだった。
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