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第2章〜少年と惑星〜

ep41. 少年と手作り料理 I

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「エミリー!!!着いたよぉー!」


しゃがみ込んでいるエミリーの後方100mほどの地点で車を停車させた僕は、大声でそう叫びながら駆け足で彼女の下へと向かった

何故だろう……?不思議と向かいから、鉄のようなニオイが漂ってくる

彼女との距離が近づいていくにつれて、それが血の匂いであることに気がついた


「っ!エミリー、怪我でもしたの!?大丈……ん?」


後ろから近づいているせいで、彼女が何をしているか全く分からないが、肩が忙しなく動いている様子を見ると何の問題もなさそうだ


いったい、彼女が何をしているのか気になって仕方がない。僕は、そっと彼女に近づいて背中から覗き込もうと一歩足を忍ばせるとーーー



ピチャッ



水溜まりに足を踏み入れたような音が、僕の耳へと入ってきた

………おかしい。

ここは乾燥帯で、水が滅多に地表へは現れない環境だったはず

だから僕とエミリーは、水辺を探して船から何キロも離れたこの地点まで、わざわざ遠出をしてきたのに

それなのに、足元から水の音が聞こえた。どうして?

それに、尋常じゃない血生臭さが鼻を抜ける

だからかな?なんだか気分が悪くなってきた……


「エ、エミリーさん……少し良いですか?いったい何をされてるのでございます?」

「あっ!ジェム君。わざわざお越し頂きありがとうございます」

「いや、そんなのは良いから、君は何をしてるのかな?手を真っ赤に染めてさ。こんな所で染物って訳ではないでしょ?」

「ッ!?こ、これはお見苦しいところをお見せしました。誠に申し訳ございません。は、早く手についた血を流さないと……」


待て待て待て!今、「血」って聞こえたけど気のせいだよね!?「血を流さないと」って言っちゃったよね!?

あなた、いったい何をしてるんですかぁあああああ!!!!!

いったい何をあやめたんですかぁああああ!!!!!

今さっき、足を踏み込んだ水溜りって、やっぱり血溜まりだったのか……

「水」じゃなくて「血」ですか。はぁ……マジか。マジかぁ~


「エミリーさん、1つだけ質問しても良いかな?……いや、1つじゃ足りない気もするけど、とりあえずは1つね」

「はい!もちろんです。質問とは何ですか?」

「………OK。そこにある生き物は、何のために殺めたの?」

「あっ、コレのことですか?それはもちろん、ジェム君に召し上がって頂くためです!」


おうおうおう。このAI、とんでもないこと言いやがったよ

満遍の笑みを浮かべているかのように見えるけど、その口から物凄く恐ろしいこと言っちゃってるよ!

ソレ肉塊の側にあるのは、もしかして臓器ですか?ソレの内臓ですか?

どこから待ってきたか分からないけど、綺麗な容器に大事そうに入れてるのは内臓ですよね!?

その隣の別容器に、頭からお尻にかけて綺麗に剥がされた毛皮もありますけど……


ん?エミリーさん、腰の容器にある赤い液体ってもしかして……


「よし。一旦落ち着くんだ僕……。これは夢だ。さっきのフィールドワークで疲れた為に眠っちゃったんだ。そう、これは疲れのせいで観ている物騒な夢なんだ」

「ジェム君、混乱しないでください。それに、この生き物、毒は持ってないようですし、人間が食べても害はないようです。至って無害な食料です!」

「はぁ…………やっぱり現実かぁ~。夢だったらどんなに良かったんだろう。それより、エミリーさん……これは僕が食べるんですか?」

「えっ、それはもちろんです。私が食べたところで意味はありませんからね。ジェム君は成長期なんですから、いっぱい栄養のあるものを召し上らなければなりませんよ?」


あんなの見た後に食べるのか……

あんなグロいの見た後なのに!?


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