上 下
37 / 52
第2章〜少年と惑星〜

ep36. 少年は生き物と出会う

しおりを挟む

憂鬱ゆううつと言っていい精神状態の僕は、車から降りて鉛のように重い足取りで、苔が一面を覆っている水辺へと進んだ

もはや前へ進むしかなかった。……着いちゃったんだもん

うぅ……靴裏から伝わる感触が気持ち悪い。ふかってしてる。ふかって。うわっ……うぅ……苔には悪いけどさ、僕はこの感触がダメなタイプみたいです

パンに生えたカビの上を歩くと、こんな感じなんだろうね。気持ち悪さで鳥肌が立ってきたよ

早いとこ探索して、さっさと船に帰ろう。絶対、長居したくない!


そんな僕を横目に、エミリーはスタスタと進んでいる。ねぇ、エミリーさん。僕を抱っこしても良いんだよ?一人でさっさと前へ行かずにさ

……僕たち、仲間じゃないか。ねぇ、そうでしょ?


胸の内でブツブツと不平不満を並べながら、この不快な地面を歩いていると、前方にいるエミリーがギリギリ僕に聴こえるレベルの声量で呼びかけてきた


「ジェム君っ!早くこちらまで来てください!生体反応があります」

「待って、僕それどころじゃないから。たかが生体反応でしょ。たかが………生体反応っ!?ウソっ!今行くっ」


いや~さすが、僕の相棒であるエミリーさんですよ!僕より早く進んで、生き物の反応を探知してくれてるなんてさ

僕、彼女を頼りにしてたんだよね~

彼女の人間より優秀な視覚や嗅覚、聴覚、搭載しているレーダーを駆使して生命を見つけきれるだろうって

だから、僕より先に前へと進ませたのさ!これは作戦ですよ。作戦!!!

さて、呼ばれたからには急いで向かいますか!


「やっぱり、音を立てるのは良くないよね。そっと行こう。そっと……」


抜き足差し足忍び足ぃ~

そろり。そろり。そろり……

と言っても、エミリーとはそこまで離れてないんだよね。たかが5mぐらいだから、あっという間に着いちゃうの


はい。到着!! ね?あっという間でしょ

たった5mだけど、あの不快な感触は堪えるね。精神的にさ


ーーー彼女の側に立った僕は、囁くように声量をかなり抑えて尋ねてみた


「エミリー、生き物はどこにいるの?」

「これより2時方向3m先です。光沢のある緑がかった色をしているのが見えますでしょうか」

「うぅ~ん……キラキラしてるのは分かるけど、小さいのかハッキリはしないね。エミリーはしっかり見えてるの?」

「はい。私はくっきりと目視にて確認しております。……何やらトカゲのような形をしています。大きさは60cm程でしょうか」


優秀だよ。優秀過ぎるよエミリー!君が側に居る限り、僕の出る幕はたったの一つもないよ


「その大きさのものがよく見えるね。結構離れてるよ?目標も小さいしさ。エミリー、君ってホントすごいよ」

「そんなことありませんよ。ジェム君も大きくなると出来るようになりますよ!安心してください」


無理だぁああああ!!!

そんなの大人になっても無理だよ! 年齢関係ないからね!

ビックリする発言だよ。エミリーさん、そいつは人間には不可能です。


なんか、あのトカゲ?を捕獲して近くで観察したくなってきたな~


「あのさ、そのトカゲみたいな生き物を捕まえて良いかな?近くで観察してみたいんだよね~。この惑星に来て初めての生き物だからさ」

「危険が伴う可能性がありますので、私が捕獲致します。私の側で見守るのであれば大丈夫でしょう」


エミリーはそう言うと、ダッシュで車へ戻り捕獲後に獲物を入れる鋼鉄製の檻を持って戻ってきた


いざ、参る! トカゲ?捕獲作戦の開始だ!!!


僕は、目の前にいるトカゲ?に忍び足で近付こうと、片足を一歩へと踏み込んだ

たったそれだけの動作だったのに、ソイツは危機を感じたのか、サッと体の向きを変えると飛ぶように走り去っていった

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

『おっさんが二度も転移に巻き込まれた件』〜若返ったおっさんは異世界で無双する〜

たみぞう
ファンタジー
50歳のおっさんが事故でパラレルワールドに飛ばされて死ぬ……はずだったが十代の若い体を与えられ、彼が青春を生きた昭和の時代に戻ってくると……なんの因果か同級生と共にまたもや異世界転移に巻き込まれる。現代を生きたおっさんが、過去に生きる少女と誰がなんのために二人を呼んだのか?、そして戻ることはできるのか?  途中で出会う獣人さんやエルフさんを仲間にしながらテンプレ? 何それ美味しいの? そんなおっさん坊やが冒険の旅に出る……予定? ※※※小説家になろう様にも同じ内容で投稿しております。※※※

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

モニターに応募したら、系外惑星に来てしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。

津嶋朋靖(つしまともやす)
SF
近未来、物体の原子レベルまでの三次元構造を読みとるスキャナーが開発された。 とある企業で、そのスキャナーを使って人間の三次元データを集めるプロジェクトがスタートする。 主人公、北村海斗は、高額の報酬につられてデータを取るモニターに応募した。 スキャナーの中に入れられた海斗は、いつの間にか眠ってしまう。 そして、目が覚めた時、彼は見知らぬ世界にいたのだ。 いったい、寝ている間に何が起きたのか? 彼の前に現れたメイド姿のアンドロイドから、驚愕の事実を聞かされる。 ここは、二百年後の太陽系外の地球類似惑星。 そして、海斗は海斗であって海斗ではない。 二百年前にスキャナーで読み取られたデータを元に、三次元プリンターで作られたコピー人間だったのだ。 この惑星で生きていかざるを得なくなった海斗は、次第にこの惑星での争いに巻き込まれていく。 (この作品は小説家になろうとマグネットにも投稿してます)

処理中です...