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第2章〜少年と惑星〜
ep36. 少年は生き物と出会う
しおりを挟む憂鬱と言っていい精神状態の僕は、車から降りて鉛のように重い足取りで、苔が一面を覆っている水辺へと進んだ
もはや前へ進むしかなかった。……着いちゃったんだもん
うぅ……靴裏から伝わる感触が気持ち悪い。ふかってしてる。ふかって。うわっ……うぅ……苔には悪いけどさ、僕はこの感触がダメなタイプみたいです
パンに生えたカビの上を歩くと、こんな感じなんだろうね。気持ち悪さで鳥肌が立ってきたよ
早いとこ探索して、さっさと船に帰ろう。絶対、長居したくない!
そんな僕を横目に、エミリーはスタスタと進んでいる。ねぇ、エミリーさん。僕を抱っこしても良いんだよ?一人でさっさと前へ行かずにさ
……僕たち、仲間じゃないか。ねぇ、そうでしょ?
胸の内でブツブツと不平不満を並べながら、この不快な地面を歩いていると、前方にいるエミリーがギリギリ僕に聴こえるレベルの声量で呼びかけてきた
「ジェム君っ!早くこちらまで来てください!生体反応があります」
「待って、僕それどころじゃないから。たかが生体反応でしょ。たかが………生体反応っ!?ウソっ!今行くっ」
いや~さすが、僕の相棒であるエミリーさんですよ!僕より早く進んで、生き物の反応を探知してくれてるなんてさ
僕、彼女を頼りにしてたんだよね~
彼女の人間より優秀な視覚や嗅覚、聴覚、搭載しているレーダーを駆使して生命を見つけきれるだろうって
だから、僕より先に前へと進ませたのさ!これは作戦ですよ。作戦!!!
さて、呼ばれたからには急いで向かいますか!
「やっぱり、音を立てるのは良くないよね。そっと行こう。そっと……」
抜き足差し足忍び足ぃ~
そろり。そろり。そろり……
と言っても、エミリーとはそこまで離れてないんだよね。たかが5mぐらいだから、あっという間に着いちゃうの
はい。到着!! ね?あっという間でしょ
たった5mだけど、あの不快な感触は堪えるね。精神的にさ
ーーー彼女の側に立った僕は、囁くように声量をかなり抑えて尋ねてみた
「エミリー、生き物はどこにいるの?」
「これより2時方向3m先です。光沢のある緑がかった色をしているのが見えますでしょうか」
「うぅ~ん……キラキラしてるのは分かるけど、小さいのかハッキリはしないね。エミリーはしっかり見えてるの?」
「はい。私はくっきりと目視にて確認しております。……何やらトカゲのような形をしています。大きさは60cm程でしょうか」
優秀だよ。優秀過ぎるよエミリー!君が側に居る限り、僕の出る幕はたったの一つもないよ
「その大きさのものがよく見えるね。結構離れてるよ?目標も小さいしさ。エミリー、君ってホントすごいよ」
「そんなことありませんよ。ジェム君も大きくなると出来るようになりますよ!安心してください」
無理だぁああああ!!!
そんなの大人になっても無理だよ! 年齢関係ないからね!
ビックリする発言だよ。エミリーさん、そいつは人間には不可能です。
なんか、あのトカゲ?を捕獲して近くで観察したくなってきたな~
「あのさ、そのトカゲみたいな生き物を捕まえて良いかな?近くで観察してみたいんだよね~。この惑星に来て初めての生き物だからさ」
「危険が伴う可能性がありますので、私が捕獲致します。私の側で見守るのであれば大丈夫でしょう」
エミリーはそう言うと、ダッシュで車へ戻り捕獲後に獲物を入れる鋼鉄製の檻を持って戻ってきた
いざ、参る! トカゲ?捕獲作戦の開始だ!!!
僕は、目の前にいるトカゲ?に忍び足で近付こうと、片足を一歩前へと踏み込んだ
たったそれだけの動作だったのに、ソイツは危機を感じたのか、サッと体の向きを変えると飛ぶように走り去っていった
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