死神さんのお仕事

ミミココ

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ベクター「…それは………死神が自分の命に代えても護りたい命ができた時のためなんだよ」

ベクター「俺がなんで死神になったか、話したよな?」

ベクター「でさ…俺…やっとわかったよ」

ベクター「親父は、こんなにも誇らしい気持ちで死んだんだなって」

ベクター「美穂…教えてくれてありがとう」

美穂「ベクターさん......」ヒグッ エグッ 

ベクター「たく、お前ホント泣き虫だな!ほら、俺の胸で泣けー」

美穂「うぇぇぇぇぇええん!やだよぉ、ベクターさんとお別れするなんて、やだよぉ!」

ベクター「…ごめんな」

美穂「」ヒグッ エグッ

ベクター「………」

美穂「ベクターさん…」

ベクター「……なんだ?」

チュッ

ベクター「なっ!!」

美穂「私の....ファーストキス...です」グスッ

ベクター「はっ、はっはっは!こりゃとんだ不意打ちを食らったな」

ベクター「いい、冥土の土産になるよ」

美穂「……ベクターさん」

ベクター「………さて……そろそろ時間だ」

ベクター「ありがとうな…美穂」

美穂「ベクターさん………またいつか……きっとどこかで会えますよね?」

ベクター「まったく…死神に会いたいなんて相変わらず変わってるなお前は」














そう言うとベクターさんは姿を消した






















~10年後~

アシスタント「先生、アニメ化おめでとうとございます!」

美穂「ありがとうー!」

アシスタント「いやぁ、ホントおめでたいですよ!」

アシスタント「この作品に参加できて、光栄です!」

美穂「そんな大げさな...でも…私もこの作品はすっごく大事な作品だったから、ホント嬉しい」

アシスタント「もしかして、モデルとかいたりするんですか?」

美穂「…実は、このヒロインのモデル、私なの」

アシスタント「そうだったんですか!?」 

美穂「そうなの、この娘は死んじゃうけど、私はこの娘とだいたい同じくらいの時に奇跡的にドナーが見つかってね」

アシスタント「…昔からいろいろ苦労なさってたんですねぇ」

アシスタント「で、この死神のモデルは?」

美穂「あぁ、それは......誰だったかな?」

アシスタント「え~思い出せないんですか?」

美穂「いやね、確かに昔居た人だと思うんだけど、思い出せないんだよね...」 


美穂「私ね、19の時なんだけど、7日間だけぽっかり記憶が抜けてるのよね。それで、気付けばこの漫画の元となるものが家に置いてあったの」

美穂「描いたのは確かに私なんだけど、私だけじゃなかったような気がするのよね」

美穂「その人が、確かこの、死神みたいな感じの人だったような気がするの」

アシスタント「へぇ~なんだか、ホラーですね」

美穂「もしかしたら、この死神は見た目は怖いけど、すごく優しい人だったかも」

アシスタント「先生…」

美穂「ん?どうしたの?」

アシスタント「いや、凄く優しい笑顔だなぁと思って」

美穂「私、今そんな顔してた?」

アシスタント「はい」

美穂「ふふっ、ありがと」 

バタンッ

娘「おかあさ~ん!」ヒグッ エグッ

美穂「あらあら、どうしたのそんな顔して~」

娘「陸くんにイジメられた~」フエェン

美穂「あなた達はホント仲良いのか、悪いのか分からないわね」ハァ

美穂「ほら、私の胸で泣けー」

娘「うわああぁぁぁぁあああん!」

アシスタント「先生の描いた漫画にも出てきますけど、なんですか、それ?」

美穂「…わかんない。けど、私も泣いた時こうしてもらったら凄く気分が落ち着いたことを思い出して」

アシスタント「親御さんにですか?」

美穂「ううん、違う人、かな?」 






















私は19歳の頃のとある1週間の記憶が丸々ない

当時の私は絵を書くぐらいのことしかできなくて、毎日絵を描いていた

当然、その1週間の間も描かれていたのだが、何故かズダボロのローブを着た死神のようなガイコツが、7日間描かれていた

途中で何枚か見覚えのないイケメンはいたが、そのスケッチブックにはその日の出来事に基づく事しか描かないので、死神のようなものは描かれるはずがないのだ

だけど、そこに死神は描かれている。もしかすると、本当に私はその7日間を死神と過ごしたのかもしれない

“いろんなものを見て、感じて、いろんな人に出会って、たくさんのことを学べ”

私が今も大事にしている言葉だ

誰かに言われた言葉なのはわかっているのだが、誰に言われたのか、私は思い出せないでいる

もしかしたら、その死神に言われたのかもしれない

私がさっき娘にした行為も、死神が私にしてくれた行為なのかもしれない

やりたい事を見失っていた私だが、記憶が丸々ない1週間の後、何故か次々とやりたい事ができて、次々とこなしていった

だけど、余命は半年だと宣告されていた身体だったので、半年を越えて、1年は持ちこたえたのだが、限界が来た

だけど、間一髪のところでドナーが見つかったのだ

そのおかげで、今はこうして長年の夢だった漫画家をやっている

私のスケッチブックに描かれている死神は、私の妄想なのか、はたまた実際にいたのか、結局のところ私にはわからない

だが、私の中にあるいろいろなかけがえのない物を、記憶のない1週間の内に、今は居ないその人にもらったと考えると、案外辻褄があったりする

実際に居たかどうかは本当にわからないのだが、感謝はしてるし、その人をモデルにしている漫画まで出してしまっている

名前はわからないので、私が描いた漫画のヒロインが呼んでいる名前で感謝の言葉を告げようと思う















ありがとう   ベクターさん

END











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