つくも神と腐れオタク

20 驚異の電源フルタワーＰＣ

　本日のまかないは揚げ物だ。ただ、大きなどんぶりにお野菜と肉団子がごろごろつまったお味噌汁がある。

「うほ……いいかほり」

　ちゃんこ料理屋だけあり、汁物が最高なのだ。むしろ鍋の延長らしきものがついてないと寂しいまである。
　藤原の実子２人も、従業員と同じまかないなのを見た慧が不思議がる。

「ご家族は好きなもの注文するんじゃないんですねぃ」
「まさか。家で作って食べたりしてますよ」
「いただきまィーす！」

　鈴がパワフルな胃袋を見せつけていると、杏花梨が２人に聞いてきた。

「２人とも、何でウチでバイトしてるんです？」
「同人誌を出すためです！」
「印刷代？」
「それも含め。考えたら、印刷代以外にも沢山お金がかかるなって気が付いたのです……」

　鈴が膨らませた頬のおいしい物をごくりと飲み込み、続ける。

「まあ一番の原因はぱしょこんなのですけどね……。すごいやつをもらったのですが、周辺機器を揃えるのが大変すぎてしまって……」
「あーっ、それはキツイわ。すごいやつって、タワー？」
「タワー？」

　大地が説明に加わる。

「タワー形パソコン。タブレット、ノート以外の、箱形のことだ」
「ああ、そう。それです。四角くて巨大な、慧が入れそうな箱」
「入れねぃって」
「そんな大きいやつもらったの!?」
「田辺が入れそうな大きさというなら、フルタワーだろう。初心者が扱う代物ではないな」
「それ言われた。藤原クンぱしょこん詳しいんだ？」
「人並みくらいの知識はある」
「機械類大好きなくせに」

　杏花梨が失笑したのを弟は横目で睨み、どんぶりから味噌汁を飲む。

「確かに物入りだな。その大きさなら電気代もかかるだろうし、全部自分の金で回すとすれば、高校生では維持するのも一苦労だ」
「電気代!?」

　思わず鈴と慧が身を乗り出して大地を見る。

「電気代かかるって……どゆこと!?」
「電気で動くものなんだから当たり前だろう」
「そんなかかるの!?」
「フルタワーなら普通の電源では動作が不安定になるだろうから、電圧の高いものが積んであるはずだ。通常500Ｗを６時間稼働させたとして、一ヶ月大体1,000円ちょっと。850Ｗから上を積んでいるとすれば、まあ2,500円から3,000円くらいだな」

　ザブッと音がして隣を見れば、鈴がどんぶりに顔をつけて俯いていた。

「す……鈴ちゃ……」
「12月まで……一月3,000円かかるとしたら……」
「12,000円だ」
「ウボァ……！」
「付け加えて言っておくが、あくまでもこれはパソコンに対する金額だぞ。モニタはまた別だ」
「うぎゃあああ!?」
「も、もしかして、周辺機器を繋げていったら……」
「相対的に加算される」
「ぎゃあああ!!」

　ご安心ください。ちゃんこ料理藤原は全席個室なので、中の人が何をやっているかは見えません。