あまみつつき君

さんといち

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二章 天満月くんの秘密

8.〈本気〉の告白

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「………え」

 天満月くんは、私が何を言いたいのか理解してくれたと思う。

 だけど返事はすぐにもらえなくて、硬い表情になってしまっていた。
 ここは押していかないと…!

「教室に来てよ。分身じゃなくて、本物の天満月くんが」
「やだ」

 うっ、即拒否…。
 「友達になって」ってお願いを断られたも同然だけど…、落ち込むのはまだ早い(と言い聞かせる)。

「中学から分身に任せてサボってたんでしょ? 久しぶりなら楽しく思えるかもしれないよ。登校してるってことは、本当は」
「家の人にうるさく言われないよう来てるだけだ」
「……」

 本当は教室に行きたいんじゃ、と言いたかったのに封じられた。これは想像以上に頑固かも…。

 私を無視するように、天満月くんはお菓子に手をつけ始める。それ、私が食べるはずだったチョコクラだけど!

「引きこもってお菓子食べて、楽しそうだね」
「残念だったな、あんたは分身作る力がなくて」
「皮肉で言ったの」
「何回説得されようが、俺はここから出るつもりはない。できることならとっくに放り出したのに…」

 ぶつぶつ言いながら、天満月くんはお菓子を持っていない左手を握ったり広げたりしている。
 広げる度に、金色の炎みたいなのがぽっと出てはすぐ弱まって消えた。

「…まさかとは思うけど、さっきから私を術で追い出せないかこっそり試してた…?」
「………」

 あっ、黙った。絶対そうだ。

『性格悪イ』
『顔ダケ男』

 妖精からひそひそ言われても、天満月くんは知らん顔。

『気ニスルナ美紀菜。君ニハ全ク効カナインダカラ』
 でも狐がこう言った時、片方の眉毛がぴんとつり上がる。

 …そうだ、私は彼にとって想定外の存在なんだ。
 そこを利用すれば……。

「ふーん、天満月くんは分身生活続けるつもりなんだ」
「……だったら何」
「いいのかなー? 私、明日——……」
「……?」

 天満月くんは細い眉毛同士を近づけた。私が急に黙ったから、不思議そうに。

 明日、天満月くんの秘密を学校中にばらしちゃうよ——そう言おうと思った。

 でも途中で気づいてしまった、それは無意味だ。

 私や清華ちゃんが七不思議を疑ったみたいに、信じない人はたぶんたくさんいる。
 鈴ちゃんみたいにすぐ受け入れてくれそうな子でも、天満月くんの術で信じないように変えることができるかもしれない。
 とすると言いふらしたら終わるのは私の学校生活だ……どうしよう。

 天満月くんだけに影響がある、都合のいい方法なんてのは………

 あ!

 あるじゃん。パッと思いつくくらい、簡単な作戦。

 仕切り直して、もう一度目を合わせる。
 …やっぱり、ちょっとは緊張するね。

「明日——も、天満月くんに告白するっ」
「なっ…!」

 ぽろっ、と天満月くんの手からチョコレートが落ちた。
 床にぶつかって欠けて、コロコロとテーブルの下へ。

 それを拾う様子はなくて、彼は瞳をゆらゆらさせながら私を凝視している。
 ほんのり顔が赤いのが…、私にもうつってしまいそう…。

『キャー、大胆』
『ドキドキ』

 妖精たちはみんなテーブルに下ろした。…余計に身体が熱くなりそうだったので。

「わ、わかってると思うけど、分身に告白するの。そうすれば消えちゃうから、天満月くんはどうしても教室に来なきゃいけない。分身作るのに回数制限がなくても、何度だって言うよ。明後日あさっても、明々後日しあさっても」

 そう宣言したら、しばらくしてから重いため息を吐かれた。
 呆れたようにも、自分を落ち着かせるようにも見えた。

「…あんた、面倒見のいい人だな」
「そのほめ言葉は初めて」
「皮肉で言ったんだよ」

 天満月くんは上半身をかがめて、テーブルの下に手を伸ばす。落ちたチョコレートを拾うらしい。

「言いかえる、迷惑なおせっかいだ」
「…っ」

「俺が学校に来なくたって、あんたには関係な」
「関係ある!」
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