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5話
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7時を過ぎた瞬間、目の前の景色が真っ暗になったと思ったら家のベッドにいた。終わったのだ、地獄の夜が。
これで3日経過だ。夢のような生活も終わってしまったわけだ。あの様な光景がもう見られないと思うととてつもない寂寥感に襲われた。俺は今後どうしたらいい。また腐りきった生活に戻ってしまった。涙の出そうな気分を持ちながらスマートフォンを何気なしに開く。その時、画面に表示されたものを見て固まってしまった。
また9月14日なのである。何故だ。あのボタンの効果は3日で切れるはず。今日は9月15日を迎えるはずなのだ。
「ーーあの機械の日付は」
思い出して転がっている機械へ咄嗟に視線を変えた。それが表す数字は0ではなくーー何故か-1になっていた。
「マイナス1……?」
その意味が全く理解出来なかった。説明書きをもう一度見直してもマイナスの数値の説明なんて記載されていない。どういうことだ。
ひとまずカラカラの喉を潤そうと水に手を伸ばした。ペットボトルのキャップを外して口に運ぼうとした刹那、手が意図せぬ方へ動きだしたのである。
「は」
意志とは真逆に手が勝手に動いているのである。なんとも言えぬ恐怖に襲われて鼓動が早くなる。手が行き着いた先は薬の瓶だった。今は薬など飲みたい気分ではない。なのに指は命を持ったように瓶の蓋を開けて錠剤を手のひらに乗せ始めた。
「どうなってる。やめろ」
叫んでも手は止まる気配がない。俺は白い粒を口に入れて水で流し込んでいた。結局1瓶丸々飲んでしまい、やがて薬が効き始める。
何かが変だ。何がどうなってる。動こうとしても体が石のように重く身動きが取れない。数時間抗ったが結果何も出来ず、俺は深い眠りについた。
目が覚めた。すぐさま体が自由か確かめる。すると今度は意志の通りに動かせた。いつさっきのようになるか分からないので急いでスマートフォンを見る。するとやはり日付は9月14日のままであった。昨日と同じように機械の方を向くと-2になっていた。
「は?」
気が狂いそうだ。何故日が進まない。とりあえずトイレに向かおうとする。次の瞬間、また体の自由が利かなくなった。体は俺の意志を無視して白いパーカーとパンツを取り出して着替え始める。そして出たくもない外へ真っ先に進んでいく。
「なんだ、なんだ」
何故だか焦りが止まらない。嫌な、嫌な予感がするのだ。冷や汗が服にべったりと張り付いて気持ちが悪い。
外へ出た俺はそのまままっすぐどこかへ向かいだした。もう自分の力ではどうにもできないことを理解したので俺はただ自分を見ることしか出来なかった。ふと後ろを向きだす。少し離れたところで小太りの中年男性がニヤケながら俺をまじまじと見ていた。
「やばい」
本能が逃げろと言っている。それを察知したかのように俺は一目散に走り出した。足音が少し離れたところから聞こえてくる。追いかけてきてる。何故かあの男は俺を捕まえようとしてる。とにかく走れ。とにかく、あいつから逃げろ。俺の体はとにかく走り続けた。しかしある地点でどうしようもない絶望を感じた。
あの森の道だ。逃げろ、逃げろ。俺はとにかく祈り続けたがあえなく男に追いつかれた。後ろから肩を掴まれる。心臓がこれでもかと跳ね上がる。気づいた時にはもう地面に倒れていた。足からはどす黒い血がダラダラと垂れ出した。熱い。痛い。怖い。
男はそんな俺には構わず森の奥へと引きづりこんでいく。ロープを取り出して太い木へ俺を縛り付ける。腹に感じるロープの感触で俺はようやく、今更ながらに分かってしまったのだ。
これは俺が2日目にあの少女へやった行いと同じだ、と。この男は当時の俺と同じことをしようとしてるのか?何故?いや、今はそんなことどうでもいい。同じことをするってことはーー
「楽しみだよな、なぁ」
男はヨダレを拭いながら下品に笑った。
「なんでこんなことするんだよ」
「自分でやっといてそれはねえだろ、なぁ」
男は腹を抱えて挑発する。どうしてこいつは俺が少女にやったことを知っている。
「なんでだろうなぁ」
言葉を失った。心の声まで聞こえているのか。何者だ。人間とは思えない。
「まあまあそんな話は置いといて、そんじゃ、行くよ」
鼻歌を歌いながら俺の物のはずであるリュックから鉈を出す。男はそれを優しく俺の左腕にあてがった。
「やめろ!頼む、俺が悪かった。なんでもするからやめてくれ!」
そんな願いも虚しく、刃は皮をいとも容易く裂いていく。
「ハハハハハ!綺麗だぞぉ、お前」
腕の神経が1つずつ壊れていくのを感じる。喉が裂けるくらいに叫ぶが痛みは収まるばかりか増していく一方だった。
「ごめんなさい、許して、誰か助けて」
耐えられない。腕が熱くてどうしようもない。ただ叫んだ。叫び続けた。視界が段々と暗くなる。
これで3日経過だ。夢のような生活も終わってしまったわけだ。あの様な光景がもう見られないと思うととてつもない寂寥感に襲われた。俺は今後どうしたらいい。また腐りきった生活に戻ってしまった。涙の出そうな気分を持ちながらスマートフォンを何気なしに開く。その時、画面に表示されたものを見て固まってしまった。
また9月14日なのである。何故だ。あのボタンの効果は3日で切れるはず。今日は9月15日を迎えるはずなのだ。
「ーーあの機械の日付は」
思い出して転がっている機械へ咄嗟に視線を変えた。それが表す数字は0ではなくーー何故か-1になっていた。
「マイナス1……?」
その意味が全く理解出来なかった。説明書きをもう一度見直してもマイナスの数値の説明なんて記載されていない。どういうことだ。
ひとまずカラカラの喉を潤そうと水に手を伸ばした。ペットボトルのキャップを外して口に運ぼうとした刹那、手が意図せぬ方へ動きだしたのである。
「は」
意志とは真逆に手が勝手に動いているのである。なんとも言えぬ恐怖に襲われて鼓動が早くなる。手が行き着いた先は薬の瓶だった。今は薬など飲みたい気分ではない。なのに指は命を持ったように瓶の蓋を開けて錠剤を手のひらに乗せ始めた。
「どうなってる。やめろ」
叫んでも手は止まる気配がない。俺は白い粒を口に入れて水で流し込んでいた。結局1瓶丸々飲んでしまい、やがて薬が効き始める。
何かが変だ。何がどうなってる。動こうとしても体が石のように重く身動きが取れない。数時間抗ったが結果何も出来ず、俺は深い眠りについた。
目が覚めた。すぐさま体が自由か確かめる。すると今度は意志の通りに動かせた。いつさっきのようになるか分からないので急いでスマートフォンを見る。するとやはり日付は9月14日のままであった。昨日と同じように機械の方を向くと-2になっていた。
「は?」
気が狂いそうだ。何故日が進まない。とりあえずトイレに向かおうとする。次の瞬間、また体の自由が利かなくなった。体は俺の意志を無視して白いパーカーとパンツを取り出して着替え始める。そして出たくもない外へ真っ先に進んでいく。
「なんだ、なんだ」
何故だか焦りが止まらない。嫌な、嫌な予感がするのだ。冷や汗が服にべったりと張り付いて気持ちが悪い。
外へ出た俺はそのまままっすぐどこかへ向かいだした。もう自分の力ではどうにもできないことを理解したので俺はただ自分を見ることしか出来なかった。ふと後ろを向きだす。少し離れたところで小太りの中年男性がニヤケながら俺をまじまじと見ていた。
「やばい」
本能が逃げろと言っている。それを察知したかのように俺は一目散に走り出した。足音が少し離れたところから聞こえてくる。追いかけてきてる。何故かあの男は俺を捕まえようとしてる。とにかく走れ。とにかく、あいつから逃げろ。俺の体はとにかく走り続けた。しかしある地点でどうしようもない絶望を感じた。
あの森の道だ。逃げろ、逃げろ。俺はとにかく祈り続けたがあえなく男に追いつかれた。後ろから肩を掴まれる。心臓がこれでもかと跳ね上がる。気づいた時にはもう地面に倒れていた。足からはどす黒い血がダラダラと垂れ出した。熱い。痛い。怖い。
男はそんな俺には構わず森の奥へと引きづりこんでいく。ロープを取り出して太い木へ俺を縛り付ける。腹に感じるロープの感触で俺はようやく、今更ながらに分かってしまったのだ。
これは俺が2日目にあの少女へやった行いと同じだ、と。この男は当時の俺と同じことをしようとしてるのか?何故?いや、今はそんなことどうでもいい。同じことをするってことはーー
「楽しみだよな、なぁ」
男はヨダレを拭いながら下品に笑った。
「なんでこんなことするんだよ」
「自分でやっといてそれはねえだろ、なぁ」
男は腹を抱えて挑発する。どうしてこいつは俺が少女にやったことを知っている。
「なんでだろうなぁ」
言葉を失った。心の声まで聞こえているのか。何者だ。人間とは思えない。
「まあまあそんな話は置いといて、そんじゃ、行くよ」
鼻歌を歌いながら俺の物のはずであるリュックから鉈を出す。男はそれを優しく俺の左腕にあてがった。
「やめろ!頼む、俺が悪かった。なんでもするからやめてくれ!」
そんな願いも虚しく、刃は皮をいとも容易く裂いていく。
「ハハハハハ!綺麗だぞぉ、お前」
腕の神経が1つずつ壊れていくのを感じる。喉が裂けるくらいに叫ぶが痛みは収まるばかりか増していく一方だった。
「ごめんなさい、許して、誰か助けて」
耐えられない。腕が熱くてどうしようもない。ただ叫んだ。叫び続けた。視界が段々と暗くなる。
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