貴方と何故こうなった

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日課の散歩

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湖で再会してから、お祖父様の別荘は賑やかになっていた。

騎士団の数名は気さくな方ばかりで、使用人逹とも楽しく数日を過ごしていた。

お祖父様には手紙も出せたし母様にもお祖父様経由で手紙を渡した。

早くジークフリート様の事を母様に語りたい。

そんな数日の中、湖の散歩にはジークフリート様が必ず一緒に居てくれている

何故か再会した日から彼は私を“サナ”と呼ぶようになっていた

恥ずかしいが嬉しくて受け入れているが彼は再会した日言った言葉を覚えていないかもしれないと思えた。

だって、普通過ぎるもの!

「サナ、湖へ散歩へ行かないかい?」

さりげなく誘ってくれる

「よろしくお願いいたします」

笑顔で手を差し出され、私も笑顔で差し出された手に自分の手を預けた

彼は軽く握りエスコートしてくれるのだ

今日こそ散歩中にあの日の発言での真相を確認しなくては

難しい顔をしていたのか彼が聞いてきた

「何か悩み事?」

「いいえ」

「そう?考え込んでいる様な顔していたよ」

「・・・あの、ジークフリート様に聞きたい事があります」

「ん?何かな?答えれる事柄なら答えるよ」

騎士団隊長とは秘密保持で発言が制限されているそうで再会した際も詳しい説明は私ではなくお祖父様にされていた。

「あ、あの・・・再会された時おっしゃった事覚えていらっしゃいますか?」

「えっと、どの発言の事?」

あぁ、これは希望が薄いとわかり気持ちが凹んでしまった。

「もう大丈夫です。すみませんでした。」

「なに?えっ?サナ、待ってサナ!」

次の言葉を口に出す勇気もない私には聞く権利はない
もし、彼が好いていると思ったら自ずと伝えてくれるだろう。
自分からは言えないクセに彼から「好き」と聞きたいなど浅ましい気持ちに覆われ手を放し1人歩き出した。

今は泣きそうな顔になっている、見られたくない!
うつむき早足でその場を離れようとするが、騎士がそこいらにいる小娘に追い付けない筈もなく

「サナ!」

腕を掴まれたが

「すみません、少し頭を冷やして参ります。」

掴まれていた手を放させ振り向く事なく離れた。

彼はどんな顔をされてるのかしら、呆れたかしら、何も言われなければ判らないのに、私は一方的に振り払い逃げてしまった。

思い込み激しいのは父様譲りね・・・。

せっかく再会出来て散歩にも誘ってもらえたのに、意気地無しな自分が嫌い

ジークフリート様ともう逢えないと思った時伝えれない事が辛かったのに

ああ、伝えてないまま離れてまた逢えない事態に陥ったら、後悔して自分を許せるかしら

ダメよ!勇気を出さなくては!

決意をし顔をあげ振り替えると

「っ!」

少し離れた所で悲痛な表情でこちらを見守る彼と目が合った。

『やっぱり私は彼が好き』

ドキドキしながら近付く

「ジークフリート様」

「サナ、何が聞きたい?俺は何を言えばいい?」

首を左右に振り見つめる

「すみませんでした、私は弱虫です」

「ん?」

「あの日再会出来て、ジークフリート様から夢のような事を言われ」

「ん?ん?!」

「1人舞い上がってました。」

「ちょっと待って!」

「待ちません、もう悔いたくないので」

「サナ!待って!」

ガシッと両肩を掴まれ

「・・・だって、ジークフリート様はお忘れでしょ・・・」

途端に我慢していた色々な感情が溢れてしまった。
淑女としてあるまじき失態だが、感情が抑えられなくなっていた

「えっ?あっ?ちょっ!サナ、泣かないで!ごめん痛かった?サナ!」

あたふたしている彼が可愛いとさえ思えた瞬間ふわりと彼の香りに包まれた

「忘れてるって、え?夢じゃなかった?」
ブツブツ何か呟いているがハッキリは聞こえない
彼の心音が心地よく、このままでも幸せと思えた

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