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第4話
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王子side
むしゃくしゃする……。
女が大人しくなったと思って優しくしれやれば、突然、馬車から飛び降りようとした。城に着き女を担いで要りれば、同行した役人どもがあれこれと口やかましいことを言ってきた。王族の俺に従わないとは皆、不敬だ。
女は俺の私室に放り込んで外から鍵をかけた。メイドや近衛兵に監視するように言いつけたから、鍵がなくても部屋から出られないが念のためだ。
「殿下、女を連れ帰ったそうですが」
幼馴染で側近のチャーリーが寄ってくる。気心が知れた相手が護衛だと堅苦しさがなくていいと、俺が近衛に抜擢したのだ。俺ほどではなくても顔が良く、常に女を切らさない。
「ああ、鄙には不釣り合いの良い女だったからな、召し上げてやった」
俺はにやりと笑って返す。
「いいですね。もし飽きたら……」
「判ってる。払い下げてやるから安心しろ」
女を共有する趣味は無いが、下賜なら時々する。自分から言い寄られる立場だからこそ、たまには男に花開かされ匂い立つイイ女になるようなタイプを味見したくなるのだ。
俺もチャーリーも忙しい身だから、そういう女を探す時間を多く取れない。だからこその下賜だ。チャーリーが見つけた場合は、俺に献上してから下賜されるのを待つ。幼馴染で気の置けない親友だが、よく弁えている。
「一杯やろうか?」
まだ空は明るく、晩餐まで時間がある。
俺はチャーリーと他の側近を呼び寄せ、女の話でもしようと決めたのだった。
ほろ酔い気分になった俺は部屋に戻る。
良い酒と良い女がいれば、人は幸せになれるものだ。
俺は謙虚だから多くは望まない。良い為政者というものは強欲では駄目だ。その点、俺は良い王になれるだろう。
「いい加減に泣き止んだか」
環境の変化についていけない女に、俺は優しく声をかけてやる。寵愛を受ければ惚れられ、しなだれかかるようになるのは判り切っているが、今はまだ手をつけてもない状況だ。
少しは心を解してやる必要がある。
しかし俺の気配りを無にするように女は否定する。
「帰してください……」
「ならん、お前はもう俺のものだ。ここで俺を慰めるのが仕事になったのだ」
カっとなた俺は、引きずるようにして女を寝室に連れ込み、ベッドの上に投げた。
ドサリという音がして女は突っ伏した。
この俺の情けを無下にするとはけしからん奴だ。少し仕置きが必要だろう。
だからベッドに投げた後、直ぐに女にのしかかってやった。
本来のおれはこんなに性急にコトに及んだりはしない。緊張を解いてやり、酒でも交わしながら優しく抱いてやるのだ。
そうすれば女は俺に感謝し、身も心も捧げようという気になるのだ。
しかし目の前の女は拒絶する。王子たる俺を拒むなど許される筈も無い。己の立場というのを分からせる必要があった。
「やめてくださいっ! やめて……!」
叫ぶ女の腕をシーツに縫い留めながら、もう片方の手で胸元に手をかけ一気に引き裂いてやった。
「イヤーッ!!」
部屋中に響くほどの絶叫が女の喉から迸った。
これほどの拒絶とは、調教のしがいがある。
俺は女の胸に舌を這わせた。
否、這わせようとした……。
「帰りたい!」
叫んだ直後、女が消えうせたのだ。
――どういうことだ?
辺りを見回すが、シーツの窪み以外に女が居た痕跡はない。
逃げたか……しかしどうやって?
女の周りに妖精はいなかった。光の塊が見えなかったのだから間違いはない。
分からないがとりあえず探そう。
そう思いながらベッドを降りたところで強い衝撃が俺を襲い視界が暗転した。
むしゃくしゃする……。
女が大人しくなったと思って優しくしれやれば、突然、馬車から飛び降りようとした。城に着き女を担いで要りれば、同行した役人どもがあれこれと口やかましいことを言ってきた。王族の俺に従わないとは皆、不敬だ。
女は俺の私室に放り込んで外から鍵をかけた。メイドや近衛兵に監視するように言いつけたから、鍵がなくても部屋から出られないが念のためだ。
「殿下、女を連れ帰ったそうですが」
幼馴染で側近のチャーリーが寄ってくる。気心が知れた相手が護衛だと堅苦しさがなくていいと、俺が近衛に抜擢したのだ。俺ほどではなくても顔が良く、常に女を切らさない。
「ああ、鄙には不釣り合いの良い女だったからな、召し上げてやった」
俺はにやりと笑って返す。
「いいですね。もし飽きたら……」
「判ってる。払い下げてやるから安心しろ」
女を共有する趣味は無いが、下賜なら時々する。自分から言い寄られる立場だからこそ、たまには男に花開かされ匂い立つイイ女になるようなタイプを味見したくなるのだ。
俺もチャーリーも忙しい身だから、そういう女を探す時間を多く取れない。だからこその下賜だ。チャーリーが見つけた場合は、俺に献上してから下賜されるのを待つ。幼馴染で気の置けない親友だが、よく弁えている。
「一杯やろうか?」
まだ空は明るく、晩餐まで時間がある。
俺はチャーリーと他の側近を呼び寄せ、女の話でもしようと決めたのだった。
ほろ酔い気分になった俺は部屋に戻る。
良い酒と良い女がいれば、人は幸せになれるものだ。
俺は謙虚だから多くは望まない。良い為政者というものは強欲では駄目だ。その点、俺は良い王になれるだろう。
「いい加減に泣き止んだか」
環境の変化についていけない女に、俺は優しく声をかけてやる。寵愛を受ければ惚れられ、しなだれかかるようになるのは判り切っているが、今はまだ手をつけてもない状況だ。
少しは心を解してやる必要がある。
しかし俺の気配りを無にするように女は否定する。
「帰してください……」
「ならん、お前はもう俺のものだ。ここで俺を慰めるのが仕事になったのだ」
カっとなた俺は、引きずるようにして女を寝室に連れ込み、ベッドの上に投げた。
ドサリという音がして女は突っ伏した。
この俺の情けを無下にするとはけしからん奴だ。少し仕置きが必要だろう。
だからベッドに投げた後、直ぐに女にのしかかってやった。
本来のおれはこんなに性急にコトに及んだりはしない。緊張を解いてやり、酒でも交わしながら優しく抱いてやるのだ。
そうすれば女は俺に感謝し、身も心も捧げようという気になるのだ。
しかし目の前の女は拒絶する。王子たる俺を拒むなど許される筈も無い。己の立場というのを分からせる必要があった。
「やめてくださいっ! やめて……!」
叫ぶ女の腕をシーツに縫い留めながら、もう片方の手で胸元に手をかけ一気に引き裂いてやった。
「イヤーッ!!」
部屋中に響くほどの絶叫が女の喉から迸った。
これほどの拒絶とは、調教のしがいがある。
俺は女の胸に舌を這わせた。
否、這わせようとした……。
「帰りたい!」
叫んだ直後、女が消えうせたのだ。
――どういうことだ?
辺りを見回すが、シーツの窪み以外に女が居た痕跡はない。
逃げたか……しかしどうやって?
女の周りに妖精はいなかった。光の塊が見えなかったのだから間違いはない。
分からないがとりあえず探そう。
そう思いながらベッドを降りたところで強い衝撃が俺を襲い視界が暗転した。
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