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加護

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 褒美。
 急にそんなことを言われても。

「なんだ、何か欲しいものはないのか? 金か? それとも名誉か?」
「どちらも興味はありませんが、今は強さが欲しいですね」
「は?」
「……?」
「二人ともそんな目で見ないでください。私には私で思うところがあるのです」

 リオはごほんと咳ばらいをした。

「そ、そういうことなら特別だ。貴様には我の『加護』を授けよう」
「加護?」
「見たところ、貴様は魔力が少ないようだな。しかし安心するがいい。このリオの力を分け与えることで、そんじょそこらの人間には負けん魔力を得られるであろう」

 魔力。
 それは今の私に絶対的に足りないものだ。それがもらえるならこんなに嬉しいことはない。

「お、お願いします」
「よかろう。ではいくぞ(ガブッ)」

 まさかこの流れで腕を噛まれるとは思わなかった。

「って、こ、これは――!」

 しかしその瞬間、湧き上がる力の波動。体の中心が火を点けられたように熱くなり、迸る何かが全身を内側から暴れ回る。体内をエネルギーが満ちているのを感じる。

 懐かしい感覚だった。
 これは確かに魔力だ。

 しかも下手をすれば前世の私以上の膨大な魔力。それが体中にみなぎっている。

「ほ、本当に魔力を与えられたのですか」
「与えたのは加護だがな。魔力はその副産物に過ぎん。わははは、感謝しろ小娘よ! 我の加護を得られるなど、貴様の人生最高の幸福だろうな!」

 小さな体を揺らして得意げに言うリオ。確かにこれはすごい。

「いちおう聞いておきますが、加護というのは」
「精霊が気に入った相手に、直接力を分け与える行為だ。通常の人間よりもはるかに強力な魔力を得ることができる。ついでに精霊魔術――貴様らが『属性魔術』と呼んどるアレも強化される」

 リオから加護に関する説明を受ける。

 精霊が気に入った相手に施すもの。加護を受けた人間は強力な魔力を得るが、特にデメリットはないらしい。
 ちなみに加護持ちはこの世界で他にも存在するとのこと。

 リオは、「まあ精霊王の直系から加護を受けた人間などそうそうおらんだろうがな!」と言っていた。

「属性魔術、ですか」

 私はふと前世のことを思い出す。

 リオは炎精霊をまとめる精霊王の息子だと言っていた。となると加護で強化される属性は炎だろう。炎魔術は私が生前得意としていたものでもある。

 私は手を空に掲げた。

「【火弾フレアショット】!」

 瞬間。
 私の手から放たれた直系一Мほどの火の玉が撃ち出され――ドォンッ! と上空で弾けた。

 距離はじゅうぶんあっただろうに、衝撃がここまで届いてくる。

「わぷっ!」
「熱っつ……」

 リオはひっくり返り、ノアは熱波に顔をしかめる。

 私はというと、思わず感動していた。本当に属性魔術が使えるようになっている。魔力が少なすぎて、今世では一度も成功していなかったのに!

「これは凄いですね! リオ、ありがとうございます」
「ふ、ふん、我の凄さがようやくわかったか!」

 体を起こしながら言ってくるリオ。

 魔力が強化されたということは、身体強化の効果も大きくなるということ。これは私にとってはこのうえないプレゼントだ。
 感動する私をよそに、リオは次にノアへと視線を向けた。

「ではそっちの水色頭。貴様、何か欲しいものはあるのか」

 どうやらノアにも褒美をくれるようだ。

「言っておくが、貴様には加護は無理だからな」
「……それはもしかして、私に先に与えてしまったからですか?」
「いや、関係ない。こやつ、なんか魂にへんなもんくっつけられとるからな……我が加護を与えようとしても弾かれるであろうよ」

 魂にへんなもん? 一体なんのことだろうか。
 相性の悪さとか、そういう話でもないようだし。
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