泣いて謝られても教会には戻りません! ~追放された元聖女候補ですが、同じく追放された『剣神』さまと意気投合したので第二の人生を始めてます~

ヒツキノドカ

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教皇様と話し合い

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「セルビア。それに『剣神』殿。お久しぶりですね」
「お久しぶりです、教皇様」

 場所は変わって教会の執務室。
 そこで私たちは教皇ヨハン様とそんなやり取りをした。

 教皇様は私とハルクさんからレベッカたちに視線を移す。

「そちらの二人が『神造鍛冶師』の方と結界に詳しい学者の方ですか?」
「ああ、あたしはレベッカ。『神造鍛冶師』だ」
「オズワルドだ」
「レベッカとオズワルドですね。私はラスティア教の教皇ヨハン・ベルノルト。以後よろしくお願いします」

 教皇様とレベッカたちが挨拶を交わす。

「早速ですが教皇猊下、報告を」
「ああ、お待ちください。その前に……」

 教皇様は執務机に乗っていた水晶玉のようなものに手をかざした。すると玉から紫色の光が放たれ、部屋全体に広がっていく。

「防音効果のある結界か」

 オズワルドさんが即座にその紫色の光の正体を見抜く。

「その通りです。これからの話は教会の関係者には極力聞かれたくありませんからね」
「……んん? 魔神を倒すってのは教会全体で決まったことじゃねえのか?」
「残念ながらそう思わない派閥も教会の中にはあるのです」

 以前私とハルクさんは聞いたことだけど、教会の中には魔神討伐をよしとしない人たちもいるらしい。
 そういう人たちに教皇様が魔神討伐の準備を進めていることが知られれば、最悪教皇の立場を失う可能性もあるんだとか。

「特に最近は私を怪しむ教会の幹部もいます。皆さんもできれば人の目のある場所では、魔神討伐についての会話は控えるようにしてください」

 教皇様の言葉に私たちは頷いた。

「前置きが長くなりました。では、報告をお願いします」
「わかりました」

 全員を代表して私が、王都を出て以降のことを教皇様に伝える。

 一応たびたび魔晶石で報告はしていたけど、それはそれだ。
 こうして直接話すことで、何か気づくこともあるかもしれない。

 報告を聞き終えた教皇様は言った。

「――なるほど。『剣神』殿、宝剣を見せていただけますか?」
「これです」

 ハルクさんが宝剣を腰のベルトから鞘ごと外して教皇様に渡す。

「これが、かつて魔神の封印をなした剣士の使った剣ですか。……まさか私が実物に触れることになるとは」
「効果はあたしが保証するぜ、教皇さん。あたしが見たのは一度だけだが、迷宮の影響を受けたでかい魔物を一瞬で消し飛ばしてた。魔神相手でも通用するはずだ」
「効果は実証済み、ということですか。頼もしい限りです」

 教皇様は頷き、ハルクさんに宝剣を返す。

 私は教皇様に尋ねた。

「『堕ちた聖女』シャノンについて、教皇様はどう思われますか?」
「彼女が冥神エルシュの力を得てよみがえったと聞いた時は驚きましたが、同時に彼女なら有り得るとも思いました。長いラスティア教の歴史の中でも、悪い意味で彼女は特別な存在ですから」
「……そうですね。直接話した私も、彼女はとても恐ろしい存在だと感じました」
「あのような危険な存在を野放しにはできません。教会の情報網を使い居場所を突き止め、可能な限り早く捕らえることにしましょう」

 ラスティア教は世界中に支部を持つ大宗教だ。その力を使えば、シャノンを補足することもできるかもれしない。

 シャノンはロゼたちから集めた魔力で何か企んでいるようだったし、できる限り早く動きを封じたいところだ。

「報告についてはもういいだろう。本題だが、魔神の影響を封じる結界を作るための調査を行いたい。許可をくれ」

 オズワルドさんが教皇様に対してそう告げる。

「魔神の影響を封じる結界、ですか。話には聞いていましたが、本当にそんなものを作ることができるのですか?」
「まだわからない。すべては魔神の封印とやらを見てからだ」

 ふむ、と教皇様は考え込むような仕草をする。

「もちろんです、と言いたいところですが……残念ながらこの教会の地下にある封印の祭壇には皆さんを行かせることはできません」
「この部屋に防音の魔道具を使っているのと同じ理由か?」
「ええ。少なくとも今はまだ、私が魔神討伐のために動いていると知られてはなりません」

 封印の祭壇には常に聖女候補や見張りの修道士がいる。

 そんな彼らの目の前で封印の調査なんてしていたら怪しまれるだけだ。

「そこで提案です。封印の祭壇は教会だけでなく、王城の地下にも存在します。そこでなら教会の関係者にみられることなく調査を行うことができるでしょう」

 教皇様がそんなことを言った。

「王城の地下? 魔神が封印されてるのは教会の地下だけじゃねえのか?」
「レベッカには説明していませんでしたね。魔神には二つの頭部があって、そのうちの片方が王城の地下にある祭壇に封じられているんです」

 レベッカは私の説明を聞いてさらに首を傾げる。

「でも結局封印の祭壇なら、そっちにも教会の人間がいるんじゃねえの?」
「いえ、王城の方の封印にはそこまでの力は必要ありません。基本的には聖女様一人で管理できるとされています」

 そして聖女エリザ様は、私たちが魔神討伐のために動いていることをすでに知っている。

 彼女になら封印の祭壇を調査している姿を見られても問題ない。

「国王夫妻には私から連絡を入れておきましょう。明日には祭壇への立ち入り許可が下りるはずです」

 教皇様のそんな言葉で、私たちの次の目的が決まるのだった。
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