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出発
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二日後、フランツさんから連絡が来た。
『風竜たちの滞在が認められたよ! まあ街に近付かないことや家畜・人に手を出さないことは約束してもらうことになるけどね』
虚空に映し出されたフランツさんに対して風竜の長が頷く。
『わかった。人間と距離を置くよう注意を払う』
『あと、近くに魔物の出る森があるから、そこの魔物を間引いてもらうのが条件に追加されたけど……』
『問題ない。どうせ自分たちの食うものも確保しなくてはならないからな』
……という感じでフランツさんと風竜の長が交渉を行い、無事風竜たちはユグド鉱山への滞在を認められた。
こういう交渉があるから、竜の長たちは人間の言葉を覚えているんだろう。
こうなってくると、もう人間同士の話し合いとあまり変わらない気がする。
フランツさんとの話し合いの後、風竜の長は仲間を連れて出発の準備を始めた。
「風竜の長。ロニ大森林に着いた後、困ったことがあれば聖大樹のベルタさんや狼人族のルガンさんたちを頼ってください。私たちの名前を出せば、色々と便宜を図ってくれると思います」
『わかった。感謝する、人間の少女よ。先代の魂を救ってくれたことも含めてな』
「私はそこまで大きなことをしてはいませんよ」
『そんなことはない。お前がいなければ我らは滅んでいたかもしれん。……困ったことがあれば、我らを頼ってくれ。できる限り力になろう』
私にそう告げてから、風竜の長は火竜の長の元へと向かった。
『……世話になった、火竜の長』
『フン、さっさと行きな。よそものがいなくなってせいせいするよ』
火竜の長へと挨拶を済ませると、風竜たちは去っていった。
彼らはユグド鉱山を経由して、ロニ大森林に向かうことになる。あそこには強力な魔物がいるけれど、万全の風竜たちなら問題ないはずだ。
これで私も先代の風竜の長との約束を果たせたことになるだろう。
「すみませんでした、火竜の長。私のわがままのせいで風竜たちをしばらく滞在させることになってしまって」
『まったくだよ。――と言いたいとこだが、今はそこまで気にしちゃいないよ』
「え?」
私が目を瞬かせると、火竜の長は落ち着いた声で言った。
『やつらは私の同胞を何匹も殺した仇だ。そのことは一生許さない。……けど、私も風竜の長と同じ立場だったら、群れを生かすためにどんなことでもしただろう。そう思ったら、なんだか恨む気になれなくてね』
火竜の長にとって風竜たちのことは他人事ではない。
そのことが、火竜の長の怒りを鎮めたのだ。
「それでは、私たちももう行きます」
元々私たちが岩竜山脈に残っていたのは、火竜と風竜が争わないための抑止力の意味があったからだ。
風竜が去った今、私たちがここにいる理由はもうない
。
『そうかい。気をつけるんだよ――私の同胞を無駄に傷つけたらタダじゃおかないからね』
「そ、そっちでしたか。もちろん気をつけます」
『冗談だ。まあ、仲良くやりな。娘と息子を頼んだよ』
「もちろんで――え? 娘?」
『さあ、行った行った』
火竜の長の娘と息子……って、まさかシャンとタックのことですか!?
そう言えば確かにシャンと火竜の長はどことなく似ているような気もする。
でもなぜこのタイミングで……!
……あ、もしかして『子どもをよろしく頼む』とはっきりとは言いにくかったんだろうか。
素直じゃないというか、照れ屋というか。
まあ、シャンたちが誰の子どもでも、私にとって大切な竜であることに変わりはないけれど。
そんな意外な真実の暴露を最後に、私たちは岩竜山脈を後にするのだった。
『風竜たちの滞在が認められたよ! まあ街に近付かないことや家畜・人に手を出さないことは約束してもらうことになるけどね』
虚空に映し出されたフランツさんに対して風竜の長が頷く。
『わかった。人間と距離を置くよう注意を払う』
『あと、近くに魔物の出る森があるから、そこの魔物を間引いてもらうのが条件に追加されたけど……』
『問題ない。どうせ自分たちの食うものも確保しなくてはならないからな』
……という感じでフランツさんと風竜の長が交渉を行い、無事風竜たちはユグド鉱山への滞在を認められた。
こういう交渉があるから、竜の長たちは人間の言葉を覚えているんだろう。
こうなってくると、もう人間同士の話し合いとあまり変わらない気がする。
フランツさんとの話し合いの後、風竜の長は仲間を連れて出発の準備を始めた。
「風竜の長。ロニ大森林に着いた後、困ったことがあれば聖大樹のベルタさんや狼人族のルガンさんたちを頼ってください。私たちの名前を出せば、色々と便宜を図ってくれると思います」
『わかった。感謝する、人間の少女よ。先代の魂を救ってくれたことも含めてな』
「私はそこまで大きなことをしてはいませんよ」
『そんなことはない。お前がいなければ我らは滅んでいたかもしれん。……困ったことがあれば、我らを頼ってくれ。できる限り力になろう』
私にそう告げてから、風竜の長は火竜の長の元へと向かった。
『……世話になった、火竜の長』
『フン、さっさと行きな。よそものがいなくなってせいせいするよ』
火竜の長へと挨拶を済ませると、風竜たちは去っていった。
彼らはユグド鉱山を経由して、ロニ大森林に向かうことになる。あそこには強力な魔物がいるけれど、万全の風竜たちなら問題ないはずだ。
これで私も先代の風竜の長との約束を果たせたことになるだろう。
「すみませんでした、火竜の長。私のわがままのせいで風竜たちをしばらく滞在させることになってしまって」
『まったくだよ。――と言いたいとこだが、今はそこまで気にしちゃいないよ』
「え?」
私が目を瞬かせると、火竜の長は落ち着いた声で言った。
『やつらは私の同胞を何匹も殺した仇だ。そのことは一生許さない。……けど、私も風竜の長と同じ立場だったら、群れを生かすためにどんなことでもしただろう。そう思ったら、なんだか恨む気になれなくてね』
火竜の長にとって風竜たちのことは他人事ではない。
そのことが、火竜の長の怒りを鎮めたのだ。
「それでは、私たちももう行きます」
元々私たちが岩竜山脈に残っていたのは、火竜と風竜が争わないための抑止力の意味があったからだ。
風竜が去った今、私たちがここにいる理由はもうない
。
『そうかい。気をつけるんだよ――私の同胞を無駄に傷つけたらタダじゃおかないからね』
「そ、そっちでしたか。もちろん気をつけます」
『冗談だ。まあ、仲良くやりな。娘と息子を頼んだよ』
「もちろんで――え? 娘?」
『さあ、行った行った』
火竜の長の娘と息子……って、まさかシャンとタックのことですか!?
そう言えば確かにシャンと火竜の長はどことなく似ているような気もする。
でもなぜこのタイミングで……!
……あ、もしかして『子どもをよろしく頼む』とはっきりとは言いにくかったんだろうか。
素直じゃないというか、照れ屋というか。
まあ、シャンたちが誰の子どもでも、私にとって大切な竜であることに変わりはないけれど。
そんな意外な真実の暴露を最後に、私たちは岩竜山脈を後にするのだった。
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