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フォードの真意2
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「……アイリスに冷たく接するのは、キリルの血が流れているからですか?」
「違う。その理屈なら、半分はナイアの血だろう。俺がアイリスを憎むことはない」
フォードは首を横に振る。
「では、なぜですか?」
「俺があの男を問い詰めた結果、自死させた。ナイアも守ることができなかった。……アイリスの両親を奪ったのは俺だ。だからアイリスには俺を裁く権利がある。だが、俺が愛情をもって接すればアイリスの復讐心は鈍るだろう」
フォードの言葉を端的に要約する。
「アイリスが心置きなくフォード様に復讐できるようにするため、かかわりを絶っていると?」
「そうだ」
フォードは当然のように頷いた。
「アイリスはまだ幼いため、両親がいない理由を伝えていない。だが、いずれ教える時が来る。それまでアイリスとの関係はこのまま維持するのが望ましい。……納得できたなら、さっきのことについて、アイリスを誤魔化す手伝いをしてもらいたい」
説明は済んだとばかりに話を戻そうとするフォード。
いやいや。
いやいやいやいや。
「フォード様、失礼を承知で申し上げますが」
「何だ」
「間違っています」
「……何?」
スッと目を細めるフォードだけど、私は負けじと睨み返す。
「フォード様は責任の取り方を間違っています。アイリスの両親を奪ったとおっしゃるなら、代わりを務めるのが普通ではありませんか。アイリスを幸せにするのがフォード様の役目のはずです」
「俺に親代わりをしろと? そうすれば、アイリスの復讐心はどうなる? 家族を奪われた苦痛を俺はよく知っている。元凶を叩き潰さねばとても耐えられるものではない」
「アイリスが復讐をしたいなんて言ったんですか?」
「……事情を明かせば、俺を憎むはずだ」
「私はそうは思いません。というか、どう考えても悪いのはキリルやその家ではありませんか。フォード様は加害者ではなく、被害者です」
フォードの言っていることはどう考えてもおかしいのだ。
客観的に考えればフォードが悪くないことなんてわかりそうなものなのに。
「すべてフォード様の望みなのではありませんか。フォード様が、アイリスに、自分を罰してほしいのではありませんか?」
「――っ」
フォードは目を見開いた。
何か言おうとするけど、思いつかなかったように口を閉じる。
やがてフォードはかすれた声で言った。
「俺は……自分のためにアイリスを利用しようとしていたのか」
「ものすごく悪い言い方をすれば、そうなるかと」
「……そうか。そうだな。そうかもれしれないな……」
何度も繰り返すフォード。この様子……自分で気づいてなかったみたいだ。
「そういうわけで、私はアイリスを誤魔化すのは反対です。むしろフォード様にはアイリスへの態度を改めてもらうよう要求します」
私が言うと、フォードは自問するように呟いた。
「俺がアイリスの父親代わりになれると思うか?」
「なれるなれないじゃありません。なるんです」
「……その通りだな」
そう呟くと、フォードは立ち上がってテーブルを回り込んで私のそばに来る。
そして「失礼」と断りを入れてから、私の髪を持ち上げた。
え、何? 何!?
「――傷はついていないな」
「え? あ、ああ……さっきの廊下でのことですか」
魔術で巨大な刃を首元に突きつけられたっけ。どうやらフォードはそれで私の肌に傷がついていないか確認しているようだ。
急に接近されたからびっくりした。
フォードは一歩下がり、静かに頭を下げた。
「先ほどは魔術を向けてしまい、申し訳なかった。並びに感謝を。俺の間違いに気付かせてくれたこと、礼を言う」
「あ、頭を上げてください!」
王国有数の名門貴族を率いる人物に頭を下げられるなんて、もはや恐怖だ。
「私はフォード様がアイリスと仲良くしてくれればそれでいいですから」
「これは前から疑問だったのだが、どうしてお前はそこまでアイリスを溺愛する? この屋敷に来るまで面識はなかったんだろう?」
フォードの言葉に私は苦笑した。
「あー……まあ、アイリスには苦しんでいた時に救ってもらったというか……私が勝手に恩を感じているだけですから。アイリスは知らないことですけど」
「……? そうか」
私の言葉に目を瞬かせつつも、フォードはそれ以上追及してくることはなかった。
「違う。その理屈なら、半分はナイアの血だろう。俺がアイリスを憎むことはない」
フォードは首を横に振る。
「では、なぜですか?」
「俺があの男を問い詰めた結果、自死させた。ナイアも守ることができなかった。……アイリスの両親を奪ったのは俺だ。だからアイリスには俺を裁く権利がある。だが、俺が愛情をもって接すればアイリスの復讐心は鈍るだろう」
フォードの言葉を端的に要約する。
「アイリスが心置きなくフォード様に復讐できるようにするため、かかわりを絶っていると?」
「そうだ」
フォードは当然のように頷いた。
「アイリスはまだ幼いため、両親がいない理由を伝えていない。だが、いずれ教える時が来る。それまでアイリスとの関係はこのまま維持するのが望ましい。……納得できたなら、さっきのことについて、アイリスを誤魔化す手伝いをしてもらいたい」
説明は済んだとばかりに話を戻そうとするフォード。
いやいや。
いやいやいやいや。
「フォード様、失礼を承知で申し上げますが」
「何だ」
「間違っています」
「……何?」
スッと目を細めるフォードだけど、私は負けじと睨み返す。
「フォード様は責任の取り方を間違っています。アイリスの両親を奪ったとおっしゃるなら、代わりを務めるのが普通ではありませんか。アイリスを幸せにするのがフォード様の役目のはずです」
「俺に親代わりをしろと? そうすれば、アイリスの復讐心はどうなる? 家族を奪われた苦痛を俺はよく知っている。元凶を叩き潰さねばとても耐えられるものではない」
「アイリスが復讐をしたいなんて言ったんですか?」
「……事情を明かせば、俺を憎むはずだ」
「私はそうは思いません。というか、どう考えても悪いのはキリルやその家ではありませんか。フォード様は加害者ではなく、被害者です」
フォードの言っていることはどう考えてもおかしいのだ。
客観的に考えればフォードが悪くないことなんてわかりそうなものなのに。
「すべてフォード様の望みなのではありませんか。フォード様が、アイリスに、自分を罰してほしいのではありませんか?」
「――っ」
フォードは目を見開いた。
何か言おうとするけど、思いつかなかったように口を閉じる。
やがてフォードはかすれた声で言った。
「俺は……自分のためにアイリスを利用しようとしていたのか」
「ものすごく悪い言い方をすれば、そうなるかと」
「……そうか。そうだな。そうかもれしれないな……」
何度も繰り返すフォード。この様子……自分で気づいてなかったみたいだ。
「そういうわけで、私はアイリスを誤魔化すのは反対です。むしろフォード様にはアイリスへの態度を改めてもらうよう要求します」
私が言うと、フォードは自問するように呟いた。
「俺がアイリスの父親代わりになれると思うか?」
「なれるなれないじゃありません。なるんです」
「……その通りだな」
そう呟くと、フォードは立ち上がってテーブルを回り込んで私のそばに来る。
そして「失礼」と断りを入れてから、私の髪を持ち上げた。
え、何? 何!?
「――傷はついていないな」
「え? あ、ああ……さっきの廊下でのことですか」
魔術で巨大な刃を首元に突きつけられたっけ。どうやらフォードはそれで私の肌に傷がついていないか確認しているようだ。
急に接近されたからびっくりした。
フォードは一歩下がり、静かに頭を下げた。
「先ほどは魔術を向けてしまい、申し訳なかった。並びに感謝を。俺の間違いに気付かせてくれたこと、礼を言う」
「あ、頭を上げてください!」
王国有数の名門貴族を率いる人物に頭を下げられるなんて、もはや恐怖だ。
「私はフォード様がアイリスと仲良くしてくれればそれでいいですから」
「これは前から疑問だったのだが、どうしてお前はそこまでアイリスを溺愛する? この屋敷に来るまで面識はなかったんだろう?」
フォードの言葉に私は苦笑した。
「あー……まあ、アイリスには苦しんでいた時に救ってもらったというか……私が勝手に恩を感じているだけですから。アイリスは知らないことですけど」
「……? そうか」
私の言葉に目を瞬かせつつも、フォードはそれ以上追及してくることはなかった。
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