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オウガ

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 オーガくらいなら別に戦ってもいいが、他の二人はどうだろう?

「あたしは別にいいわよ。オーガくらい」
「私も賛成。……行けばはっきりする」

 二人とも賛成のようだ。

「オウガくらい……なんて頼もしいのでしょうか! それでは参りましょう! みなさまこのあたりに手を置いてください!」

 ふわふわの手で青い光を示すリット。
 ふむ、これに触ればいいのか?
 手を伸ばす。

「そしてこの鈴を使うのです。これはかつて神託の勇者様が転移の扉をお造りになったとき、獣人族に与えてくださった鍵なのです。転移の扉に触れてこれを鳴らすことで――」

 パァアアアアア

 ……ん?
 俺が触れたらなんか青い光が大きくなり始めた。


「へ? ちょちょ、待ってほしいのです! なんで鈴を鳴らしてないのに転移の扉が……!? というかあなた、転移の扉が見えるし使えるのです!?」
「え、なんだ? これまずいのか?」
「まずいわけではないのですが……ま、まあいいのです。今は里に向かうのが優先ですので。みなさん手をかざしてほしいのです」

 なんだかわからないが転移の扉が起動したようだ。
 リットの様子を見た感じ、これは普通見えないし触れないらしい。
 なら、なんで俺が触れるんだ?
 謎過ぎる。

 やがて視界が晴れた先には、見慣れない集落があった。

 ここが獣人族の里か。
 俺はぐるりと辺りを見回す。

 周囲を大きな木々に囲まれ。
 頭上にはツリーハウスがいくつも並び。

『ギシャアアアアアアアアアアアアア!』

「くっ……! 怯むな! 戦え! ここを通せば里は終わりだああああああ!」
「「「うおおおおおおおおおおお!」」」

 数十メートル先では巨大な蛾の怪物と里の住人らしき人たちが戦っている。

 ってなんだこの状況!?
 あの巨大な蛾は初めて見るが、おそらく魔物だろう。
 それと戦っている住人たちは……獣人なのか?
 なんだかリットとは随分外見が違うな。
 耳や尻尾は生えているが、それ以外は普通の人間に見える。
 獣人にも種類があるのかもしれない。
 リットが膝をつく。

「ああ、リットが遅れたばかりにこんなことに……! オウガがこんなところまで」
「オーガ? いや、あの魔物のどこがオーガなんだ」
「オウガというのは、蛾の王のことなのです。巨大な羽から鱗粉によって状態異常を撒き散らし、森や生き物を腐らせます」

 蛾の王 → 王蛾(オウガ)。
 くそっ、全然オーガとは関係ないじゃないか!
 ようやく腑に落ちた。
 オーガのせいで森が壊滅なんておかしいと思ったんだ。
 とはいえ今さら逃げるわけにはいかない。

「「「ぎゃああああああああああ!」」」

 王蛾と戦っていた獣人たちがのたうち回る。
 王蛾が鱗粉によって毒を撒き散らしているのだ。

「【アンチドート】」

 すかさずルルが神聖魔術で解毒。

「な、なんだ」
「体が楽になったぞ」
「治ったらすぐにどいてくれ! 王蛾は俺たちがやる!」

 叫ぶと獣人たちは慌てて場所を空ける。

『ギシャアアアアアアアアアアッ!』
「【フレアボム】!」

 王蛾が撒き散らした毒鱗粉をサリアが爆発で吹き飛ばす。
 チャンスだ。

 ブンッ!

『ガ、ア……ッ!?』

 魔剣を投げつけ、王蛾の胴体を貫通させた。
 王蛾の胴に穴が開いて一撃で絶命する。
 ハーピィクイーンのときは周りに配下のハーピィがいたから、剣を投げる手が使えなかったんだよな。今回は相手が単独だから問題なかった。

 しゅわんっ。

 お、ステータス変化だ。
 なにか新しいスキルが手に入ったんだろうか?
 あとで確認しよう。

「た……倒したんですか? あの王蛾を、一撃で!?」

 リットが信じられないような声で叫んだ。
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