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国がボロボロなのじゃ
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ふくは自室の隅の方で膝を抱えて座っていた。
先日の魔物の襲来で国民の家屋は倒壊し、数多くの避難民が城へ集まった。
流石に城の中へ国民を全て収容はできない為、城の周辺に木材と魔獣の皮を使った簡易テントで仮設の住宅を建て、避難生活をしていた。
仮設テントの案を出したのはポチおであり、比較的現代日本の生活をしていた彼はテントのつくり方や、木材や石材を使った建物のことを知っており、復興の立役者となっていた。
もちろん彼の出自が不明なことで最初のほうは警戒されていたが、なんとかこの国の仲間だと少しずつ認められていた。
にゃんはコミュニケーションをとるのが非常に得意なのか、ポチおより早く溶け込んでいた。
ライラは順調に出産に備えて生活しており、時折ガルドやポチおとともに魔道具を作り、生活に必要なインフラを構築していた。
非常に進みが良く、そんな状況でもふくの心は晴れることがなかった。
一つは野狐族のこと。
あれから彼らの動向を見張るが、通常の生活をしているようで、何一つ裏切るような動きをしていない。
そもそも、セイラが生きていたころの野狐族は友好的でセイラの助けになっていた。
そのためふくの気持ちに整理がつかずにいた。
「わしらを裏切ってなんのためになるのじゃ……?あのような真似をしたところであやつらにとって何一つ良きことにならぬはずじゃ……」
ふくは考えがぐちゃぐちゃになりかけた為、野狐族のことを考えるのをやめた。
そしてもう一つの悩みは、先日の襲来で魔力の発達が済んでいない若年層の死が多かったこと。
年を取り、成年期の国民は自身が死なないように魔物からの攻撃を退けたり、建物や瓦礫に押しつぶされてしまわないように魔力や魔法を使って生き延びてきた。
未熟な若年層は成年期との知識量に差がありすぎ、何もできずに蹂躙されたのだった。
ふくの中で若年層に対する知識不足を解消するための教育機関が必要だと考える。
ふくの人間時代は物事を学ぶということは人の上に立つための手段であり、農民などの下級の国民のすることではなかった。
しかし、それでも生きていくための知恵を成熟した人間が未熟な人間に対し教え、飢饉や疫病から身を守ってきた。
この国にはそれが足りないのだと痛感する。
そして、最後に大穴から出てくる魔物。
一番頭を悩ませる原因ではあるのだが、どうにかして魔物をこの世界に入れないようにする方法を模索していた。
地上世界から絶え間なく供給されているため非常に骨が折れるものだと感じる。
しかし、それをどうにかしてでも供給される魔物の数を減らしていかなければ、いつかふくとヴォルフですら倒せないものが現れてしまうことを考えるとゾッとしたのである。
扉がついていないふくの自室にヴォルフが入ってくる。
「ふく?」
「なんじゃ」
「大穴……もう一度潜ってみない?」
「……またお前があの鎖に縛られることはないのじゃろうか?」
「うーん、最近は【太陽】の調子がいいから、何とかなるんじゃない?」
ふくはゆっくりと立ち上がり、髪飾りの石を付ける。
それはコムギとチュータローの石であり、青みを帯びた綺麗な石であり、まるでふくの廻りを元気に走っているような輝きを放つ。
石を握り、眼を瞑る。
「わしを……ぼるふを守ってくれ……」
ふくはそう呟くと、ヴォルフの背中に乗り、城を出た。
道中、ガルドとライラ、ポチおとにゃんが集まっていたため、ふくたちは寄っていくことにした。
「ふく様、ヴォルフ様。どちらへ向かわれるのですか?」
「わしとぼるふは大穴へ向かうのじゃ。お前たちは国の復興に尽力しておくれ」
「ちょ、ちょっと!それは危ないよ!せめてウチとガルド君を連れて行かなきゃ……!」
「駄目じゃ。らいら、お前は身籠っておるじゃろう。そのような体で戦地へ出向くでない」
「じゃ、じゃあ……他の人を連れて行って……」
「足手まといだ」
ヴォルフの一言が全員に突き刺さる。
ライラとガルドはこの国の中では指折りの実力者であるのだが、ふく達と比べると力の差がはっきりとわかる。
そして、普通の魔物を倒すことができたところで、言葉を話すことができる魔物に対しては全く歯が立たないと思っていた。
それはヴォルフの【絶対】やふくの【浄化】に対して抵抗できるほどの魔力と【暗黒】の強さに対抗できる力を持っていないことも事実であった。
「ふ、ふく様の盾に位は――」
「ならぬ!」
ふくは大きな声をあげてライラを睨みつける。
鋭い目力にひるんでライラは俯く。
「わしたちが戻らなければ……お前たちがこの国を続けるのじゃ」
「わるいな。でもこれがオレたちにできることなんだ」
二人はそう言ってその場から消えた。
取り残されたライラたちは無言で俯いていた。
ライラは涙をポロポロと流し、地面に染みを作っていく。
「ふく様……ヴォルフ様……!」
「随分勝手なんだな、あの二人は」
「実際、あの二人でしかこの件は対応できないでしょうから……」
「……なら、二人が帰ってきたときに驚かせてあげましょ?」
にゃんがそういうと、視線がにゃんに集まる。
両手をぎゅっと握って口を開く。
「大穴って深いでしょ?なら、しばらく戻ってこないんだろうし、その間に国民全員で町を元通りにして、オクト……じゃなくてポチお君とガルド君の魔道具を普及させて便利な国になったところを見せて驚いてもらおうって話!」
それを聞いたライラはにゃんの作戦が面白く感じたのか、涙をぬぐって両手をぐっと握り締めてやる気を出す。
「よーし!にゃんちゃんの作戦にいっちょ乗ってやりますか!」
「だね。あの二人を見返してやらないとな」
「インフラをちゃちゃっと整備しますかねぇ!」
各々やる気を出して歩いていくと、ライラは突然その場に立ち止まる。
皆がライラに視線を向けると、ライラは申し訳なさそうな顔をする。
「ごめん……産まれる……!」
「「「ええぇぇぇ!?」」」
ライラの衝撃発言で急いでお産の準備を始めるのであった。
そしてその日のうちに、新たな命が産声を上げるのであった。
先日の魔物の襲来で国民の家屋は倒壊し、数多くの避難民が城へ集まった。
流石に城の中へ国民を全て収容はできない為、城の周辺に木材と魔獣の皮を使った簡易テントで仮設の住宅を建て、避難生活をしていた。
仮設テントの案を出したのはポチおであり、比較的現代日本の生活をしていた彼はテントのつくり方や、木材や石材を使った建物のことを知っており、復興の立役者となっていた。
もちろん彼の出自が不明なことで最初のほうは警戒されていたが、なんとかこの国の仲間だと少しずつ認められていた。
にゃんはコミュニケーションをとるのが非常に得意なのか、ポチおより早く溶け込んでいた。
ライラは順調に出産に備えて生活しており、時折ガルドやポチおとともに魔道具を作り、生活に必要なインフラを構築していた。
非常に進みが良く、そんな状況でもふくの心は晴れることがなかった。
一つは野狐族のこと。
あれから彼らの動向を見張るが、通常の生活をしているようで、何一つ裏切るような動きをしていない。
そもそも、セイラが生きていたころの野狐族は友好的でセイラの助けになっていた。
そのためふくの気持ちに整理がつかずにいた。
「わしらを裏切ってなんのためになるのじゃ……?あのような真似をしたところであやつらにとって何一つ良きことにならぬはずじゃ……」
ふくは考えがぐちゃぐちゃになりかけた為、野狐族のことを考えるのをやめた。
そしてもう一つの悩みは、先日の襲来で魔力の発達が済んでいない若年層の死が多かったこと。
年を取り、成年期の国民は自身が死なないように魔物からの攻撃を退けたり、建物や瓦礫に押しつぶされてしまわないように魔力や魔法を使って生き延びてきた。
未熟な若年層は成年期との知識量に差がありすぎ、何もできずに蹂躙されたのだった。
ふくの中で若年層に対する知識不足を解消するための教育機関が必要だと考える。
ふくの人間時代は物事を学ぶということは人の上に立つための手段であり、農民などの下級の国民のすることではなかった。
しかし、それでも生きていくための知恵を成熟した人間が未熟な人間に対し教え、飢饉や疫病から身を守ってきた。
この国にはそれが足りないのだと痛感する。
そして、最後に大穴から出てくる魔物。
一番頭を悩ませる原因ではあるのだが、どうにかして魔物をこの世界に入れないようにする方法を模索していた。
地上世界から絶え間なく供給されているため非常に骨が折れるものだと感じる。
しかし、それをどうにかしてでも供給される魔物の数を減らしていかなければ、いつかふくとヴォルフですら倒せないものが現れてしまうことを考えるとゾッとしたのである。
扉がついていないふくの自室にヴォルフが入ってくる。
「ふく?」
「なんじゃ」
「大穴……もう一度潜ってみない?」
「……またお前があの鎖に縛られることはないのじゃろうか?」
「うーん、最近は【太陽】の調子がいいから、何とかなるんじゃない?」
ふくはゆっくりと立ち上がり、髪飾りの石を付ける。
それはコムギとチュータローの石であり、青みを帯びた綺麗な石であり、まるでふくの廻りを元気に走っているような輝きを放つ。
石を握り、眼を瞑る。
「わしを……ぼるふを守ってくれ……」
ふくはそう呟くと、ヴォルフの背中に乗り、城を出た。
道中、ガルドとライラ、ポチおとにゃんが集まっていたため、ふくたちは寄っていくことにした。
「ふく様、ヴォルフ様。どちらへ向かわれるのですか?」
「わしとぼるふは大穴へ向かうのじゃ。お前たちは国の復興に尽力しておくれ」
「ちょ、ちょっと!それは危ないよ!せめてウチとガルド君を連れて行かなきゃ……!」
「駄目じゃ。らいら、お前は身籠っておるじゃろう。そのような体で戦地へ出向くでない」
「じゃ、じゃあ……他の人を連れて行って……」
「足手まといだ」
ヴォルフの一言が全員に突き刺さる。
ライラとガルドはこの国の中では指折りの実力者であるのだが、ふく達と比べると力の差がはっきりとわかる。
そして、普通の魔物を倒すことができたところで、言葉を話すことができる魔物に対しては全く歯が立たないと思っていた。
それはヴォルフの【絶対】やふくの【浄化】に対して抵抗できるほどの魔力と【暗黒】の強さに対抗できる力を持っていないことも事実であった。
「ふ、ふく様の盾に位は――」
「ならぬ!」
ふくは大きな声をあげてライラを睨みつける。
鋭い目力にひるんでライラは俯く。
「わしたちが戻らなければ……お前たちがこの国を続けるのじゃ」
「わるいな。でもこれがオレたちにできることなんだ」
二人はそう言ってその場から消えた。
取り残されたライラたちは無言で俯いていた。
ライラは涙をポロポロと流し、地面に染みを作っていく。
「ふく様……ヴォルフ様……!」
「随分勝手なんだな、あの二人は」
「実際、あの二人でしかこの件は対応できないでしょうから……」
「……なら、二人が帰ってきたときに驚かせてあげましょ?」
にゃんがそういうと、視線がにゃんに集まる。
両手をぎゅっと握って口を開く。
「大穴って深いでしょ?なら、しばらく戻ってこないんだろうし、その間に国民全員で町を元通りにして、オクト……じゃなくてポチお君とガルド君の魔道具を普及させて便利な国になったところを見せて驚いてもらおうって話!」
それを聞いたライラはにゃんの作戦が面白く感じたのか、涙をぬぐって両手をぐっと握り締めてやる気を出す。
「よーし!にゃんちゃんの作戦にいっちょ乗ってやりますか!」
「だね。あの二人を見返してやらないとな」
「インフラをちゃちゃっと整備しますかねぇ!」
各々やる気を出して歩いていくと、ライラは突然その場に立ち止まる。
皆がライラに視線を向けると、ライラは申し訳なさそうな顔をする。
「ごめん……産まれる……!」
「「「ええぇぇぇ!?」」」
ライラの衝撃発言で急いでお産の準備を始めるのであった。
そしてその日のうちに、新たな命が産声を上げるのであった。
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