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作家の消失
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「さとて、これから緊急会議を開きまーす。従業員は全員集合」
そんな千春さんの掛け声で僕たちはスタッフルームに集まった。いや集められた。
「よし、全員揃ったね。では、事件の内容をどうぞ」
「……僕ですか?」
一体全体どういう風の吹き回しなのだろうか。突然の突風が僕に向かって吹き荒れる。
「そうだよ、他にいないよ」
早く早くと目で催促されては仕方なく渋々と内容を語り始める。
「えぇ、今回の事件はこの街にある酔野坂で起きました」
ちょっとだけ憧れがあったドラマ風に切り出す。
「えぇ、それでは調査状況の報告をします」
そうそう、報告がある刑事がそう言って……
千春さん、居ても立っても居られなくなったんだろう。途中で俺の説明を区切り自ら話し始めた。にしても早くないですか、まだどこで起きたのかしか言ってないですよ。最初から自分で言えばいいのに。
「事件が起きたのは、酔野坂一丁目35-1、被害者は神崎豊さんで35歳、奥さんと息子さんの三人暮らし、あ、それから……」
「毒の林檎は未来の先駆け……」
「あら? 花凛ちゃん知ってた?」
へぇ、意外だな。被害者の豊さんは作家だ、普通の作家ではなく今や日本を代表する文学、ライトノベルの作家、そして今出てきた毒林檎や桜咲く桜の坂、なんかかなりのヒット作を世に送り出している。
「知ってるも何も私が一番好きなラノベ作家ですもん、それで豊さんがどうかしたんですか?」
花凛ラノベ読むんだな、興味ないと思ってた。
「それについては僕が、事件はある昼下がりの昼……」
「昼下がりなのに昼? どういうこと?」
ちょっと千春さん水を差さないでください。言った後おかしいって気づいたんですから。
「事件はある昼下がり、午後2時頃に起きた」
「……何もなかったことにした」
そんな声が聞こえた気がした。
「被害者自宅の前で何かが倒れるような大きな音がして奥さんが外に出てみると玄関の前に手紙が置かれていたそうだ、これが実物」
そうして、チャック付きの袋に入った手紙を机の上に置いた。
「……これ、私たちが持ってていいの?」
「あぁ~、そこはよくわからない千春さんの権限で、というかこの事件僕たちに一任された」
「そういうことだから頑張ろうね花凛ちゃん」
ファイト、と軽く拳を握りガッツポーズを取る千春さん。
「そんなのでいいのかな、日本の警察は……」
「僕もそう思ったんだけど、実は千春さん凄いらしいんだ」
「凄い?」
「うん、今まで何度か事件を解決しているらしい」
どうりであの信頼度か、と思うところはいくつかあった。じゃないと捜査の詳細や証拠品を渡してはくれないよな。
「中でも有名なのが光が丘連続殺傷事件の解決」
「え、あの時効間近だった未解決事件?」
「そう、その事件を解決しているらしい」
さっき来た刑事さんが教えてくれた。自信満々で自分のことのように……ほんとそれでいいんすか。西園寺さん。
「あれは私じゃなくて私の友達が解決したようなものだよ、私はそんな大したことはしてないよ」
「でもあれ、警察官が凶器を発見してそこから犯人にたどり着いたんじゃ?」
「表向きにはそうなってる、というかそうしてもらったの、だって実際凶器なんて見つかってないもの、友達の能力で犯人を見つけたなんて言えないでしょ、言ったとしても誰も信じない」
でも、未解決事件の凶器がそんなに簡単に見つかったら未解決じゃないんだよな、という感想はなんとか口を出る前に飲み込めた。
「ま、ちーさんのことはわかった。それで事件の詳細は」
いつから花凛は千春さんのことをちーさんと呼ぶようになったのだろうか。僕もそうお呼びしたい。ま、今はそれより事件だ。事件なんだけど。
「うんそれがさ、色々と面倒くさいんだよ」
そんな千春さんの掛け声で僕たちはスタッフルームに集まった。いや集められた。
「よし、全員揃ったね。では、事件の内容をどうぞ」
「……僕ですか?」
一体全体どういう風の吹き回しなのだろうか。突然の突風が僕に向かって吹き荒れる。
「そうだよ、他にいないよ」
早く早くと目で催促されては仕方なく渋々と内容を語り始める。
「えぇ、今回の事件はこの街にある酔野坂で起きました」
ちょっとだけ憧れがあったドラマ風に切り出す。
「えぇ、それでは調査状況の報告をします」
そうそう、報告がある刑事がそう言って……
千春さん、居ても立っても居られなくなったんだろう。途中で俺の説明を区切り自ら話し始めた。にしても早くないですか、まだどこで起きたのかしか言ってないですよ。最初から自分で言えばいいのに。
「事件が起きたのは、酔野坂一丁目35-1、被害者は神崎豊さんで35歳、奥さんと息子さんの三人暮らし、あ、それから……」
「毒の林檎は未来の先駆け……」
「あら? 花凛ちゃん知ってた?」
へぇ、意外だな。被害者の豊さんは作家だ、普通の作家ではなく今や日本を代表する文学、ライトノベルの作家、そして今出てきた毒林檎や桜咲く桜の坂、なんかかなりのヒット作を世に送り出している。
「知ってるも何も私が一番好きなラノベ作家ですもん、それで豊さんがどうかしたんですか?」
花凛ラノベ読むんだな、興味ないと思ってた。
「それについては僕が、事件はある昼下がりの昼……」
「昼下がりなのに昼? どういうこと?」
ちょっと千春さん水を差さないでください。言った後おかしいって気づいたんですから。
「事件はある昼下がり、午後2時頃に起きた」
「……何もなかったことにした」
そんな声が聞こえた気がした。
「被害者自宅の前で何かが倒れるような大きな音がして奥さんが外に出てみると玄関の前に手紙が置かれていたそうだ、これが実物」
そうして、チャック付きの袋に入った手紙を机の上に置いた。
「……これ、私たちが持ってていいの?」
「あぁ~、そこはよくわからない千春さんの権限で、というかこの事件僕たちに一任された」
「そういうことだから頑張ろうね花凛ちゃん」
ファイト、と軽く拳を握りガッツポーズを取る千春さん。
「そんなのでいいのかな、日本の警察は……」
「僕もそう思ったんだけど、実は千春さん凄いらしいんだ」
「凄い?」
「うん、今まで何度か事件を解決しているらしい」
どうりであの信頼度か、と思うところはいくつかあった。じゃないと捜査の詳細や証拠品を渡してはくれないよな。
「中でも有名なのが光が丘連続殺傷事件の解決」
「え、あの時効間近だった未解決事件?」
「そう、その事件を解決しているらしい」
さっき来た刑事さんが教えてくれた。自信満々で自分のことのように……ほんとそれでいいんすか。西園寺さん。
「あれは私じゃなくて私の友達が解決したようなものだよ、私はそんな大したことはしてないよ」
「でもあれ、警察官が凶器を発見してそこから犯人にたどり着いたんじゃ?」
「表向きにはそうなってる、というかそうしてもらったの、だって実際凶器なんて見つかってないもの、友達の能力で犯人を見つけたなんて言えないでしょ、言ったとしても誰も信じない」
でも、未解決事件の凶器がそんなに簡単に見つかったら未解決じゃないんだよな、という感想はなんとか口を出る前に飲み込めた。
「ま、ちーさんのことはわかった。それで事件の詳細は」
いつから花凛は千春さんのことをちーさんと呼ぶようになったのだろうか。僕もそうお呼びしたい。ま、今はそれより事件だ。事件なんだけど。
「うんそれがさ、色々と面倒くさいんだよ」
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