可憐な花は咲き乱れる

翠恋 暁

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突然の開花

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 あれから1日が経つ。朝日が僕の目にはとても痛かった。桜の花びらも風に吹かれチラチラと舞っている中、今日からの学校生活に期待すると同時になんとも言えない感情がかせのごとく僕にまとわりつく。
 何で高校生活の最初っからこんな気持ちじゃないといけないんだ。誰がこんな高校生活に期待しただろうか。誰も期待なんてしないだろう。誰か代わってくれませんかね。僕はもう疲れました。
「……はぁ~」
 意図しなくてもそんなため息がこぼれ落ちる。一体何回ついたのか自分でも分からない。
「朝から何回ため息つくのよ、何かあったの?」
 そんな声が聞こえてくる。でも少なくとも、あなたがそんなこと言える立場じゃないんですよ花凛かりんさん。あなたのせいでこっちは色々あったんですから。でも、そんなことを言ったらどうなるのかは目に見えている。
「いや別に……あ、そうだ。今日の放課後暇だよな?」
「特に予定はなかったわね、何かするの?」
「あのな、店で働くって言って働けるわけじゃないんだぞ」
 何を言いだすかと思えばこれまたすっとんきょうな事を言う。まるで昨日のことを忘れているようだった。
「……あぁ~あ、わかってるわよ、放課後でしょ、うん、大丈夫」
 実際に忘れていたようだ。本当に気楽な人だ。僕はそのことを考えて全然寝られなかったっていうのに。
「本当に大丈夫だろうね、次はないからな」
 そう念を押しておくが、やはり放課後にもう一度彼女のところへ行くのが妥当だろう。本当に面倒な役回りだ。

 僕のクラスは12HR。花凛も同じである。なんだかんだで彼女とは事あるごとに同じになるのだ。腐れ縁ってやつなんだろう。正直言ってそろそろ別にしてくれてもいいんじゃないですかって神様に祈りたい。懇願こんがんしたい。
「なぁ、おい、お前音無花凛の知り合いか?」
 そう、前の席の男子が問いかけてきた。
「あぁ、知り合いも何も幼馴染だよ」
「……う、うらやましいな」
 それは、彼女のことを何も知らないから言える事ですよ。少なくとも長年一緒にいた後にそんなことは口が裂けても言えないだろう。
 でも確かに顔立ちは悪くないし、優しそうな雰囲気は出て……いや、出しているか。うん、やっぱり僕には羨ましくない。というかどうにかしてほしい。
「俺は我流雅人がりゅうまさと。音無さんの情報待ってるぜ!」
 なんだかすんごいのに絡まれたな。てか、最近こんなことがよくある。よくわからないやつによく絡まれる。昨日も……(中略)……だったんだからな。大変なんてもんじゃないさ。
「……あぁ、僕は佐々木望ささきのぞむ。よろしく」
 ガラガラと教室前方の扉が開いた。
「ほらお前ら、席につけ。朝のHRを始める。まず最初に出欠を取るぞ。青木……」
 そう、点呼がされた。流石に今日を休むような人はおらず、全員が出席していた。

 このあと何事もなく、無事放課後を迎えた。とは言ってもいまだに高校に入ったという実感があまりしない。確かに周りの人や場所、雰囲気なんかは全て違っているんだけどそれでも、今でも中学の生活を重ねているのかもしれない。
 中学はこうだった、あれが面白かった、つまらなかった、そんな一種の願望を叶えようとしている。いや、押し付けているのか。こうだったからこうなるのは嫌だ。あれが面白かったからこれは面白い。なんていう、自分の意見の押し付けだ。そんなことをしても何にもならない。そんなことはわかっている。
 でも、やっぱり慣れ親しんだ生活が惜しいという感情は少なくともある。ま、慣れればいいんだよな。そればかりは慣れるしかない。
「ほら、行くんじゃないの?」
「あぁ、それじゃ行くか」
 そうして2人で廊下を歩いていく。
 さっきも言ったように花凛は外見だけなら本当に美少女だ。そんな彼女と歩いていればどうなるか。
 言うまでもないだろう。
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