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第1章 開拓村と死霊術師
プロローグ 死霊術とは
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端的に言えば、死霊術ことネクロマンシーは不人気魔術である。
火の魔法なら、戦闘ではもちろん役に立つし、見た目もカッコいい。
水の魔法なら、速度こそ問題視されるが、それ以上の利便性が感じられる。
なんなら、普通の召還術ならば、見た目カワイイ獣からかっこいい竜まで呼び出すことができる。
だが、死霊術はひたすらに不便だ。
呼び出される死霊は意思を持っているがゆえに制御は困難。
死霊は存在自体が不吉とされ、召喚するだけで周りから忌避される。
さらには、極めると死霊から情報を抜けるため悪人からも嫌われるときたもんだ。
それが、死霊術と呼ばれる技術だ。
だからこそ、自分がこんな技術をわざわざ学んでいるのは単純に適性があったからにすぎない。
もちろん、長いことこのネクロマンシーについて学んで、鍛えた愛着こそある。
が、それでももし過去の自分にであったのなら、才能があっても別の魔術を学べとアドバイスするつもりだ。
それこそそこそこの才能でも、普通の魔術を学んだほうがいいよと。
★☆★☆
「じゃぁ、やっぱり君がこの開拓団に参加した理由も、故郷で差別されたからとか?
ネクロマンサー故の迫害とか、ネクロマンサーでも生きやすい街づくりとか、そういうののため?」
「いや、自分の場合は、両親がダブル不倫しててさ。
しかも、痴情のもつれで両親が死んだからねぇ。
いろんな意味で、王都にいにくくなったのが原因だね」
「えぇ~……」
質問した彼は、自分の回答に対して微妙な表情をする。
いや、そんな顔をしたくなる気持ちはわかる。
だって前振りとしてネクロマンシーとしての苦労やらを話した後だ。
その結末が、痴情のもつれなんて、おもわず文句の一つも言いたくなるだろう。
「でも、そんなこと言って便利なこともあるんでしょう?」
「まぁ、こうやって旅の途中で馬が死んでも、疑似的に蘇生できるところとか?
もっとも、インスタントな蘇生だから、到着後成仏させるつもりだけど」
「はえ~」
ぱかりぱかりと、夜の街道を馬でかける。
視界は最悪、道はデコボコ。
その上、足である馬はすでに死んでおり、血と腐敗の匂いがわずかに漂う。
もっとも季節は夏に近いため、この屍馬の冷たい肌触り自体はいうほど苦痛でもないが、それでもなお、乗り心地がいいとは口が裂けても言えない。
それでも、長旅を徒歩で行くよりは数百倍マシだといえるだろう。
「ところで、視界のほうは大丈夫か?
こっちは、魔力感知で大丈夫だけどそちらは?」
「わ、私は生まれつき夜目が利くので……」
「もちろん僕も大丈夫さ!
アルダート流剣術は、夜の戦闘にもばっちり対応してる!
流石に死んでいる馬に乗っての戦闘はやったことがないけど、それでもおおよそ問題ないさ!」
今回の旅の道連れは、偶然同じ馬車に乗り合わせた冒険者であるが、どうやら彼らはそれなりにできるほうの冒険者であったらしい。
まぁ、でなきゃお値段中グレードの馬車という冒険者にとっては絶妙に高い値段の馬車に乗ってないか。
「前方にグールの群れが要るっぽいけどどうする?
迂回する?それとも突っ込む?
数は……まぁ、10はいない程度だけど。」
「なら蹴散らしていこうよ!
ここで放置したらもしかしたら、見知らぬ人を襲っちゃうかも知れないだろう?
なら、ボクが軽ーく蹴散らしてくるよ」
「な、なら私も行きます!
わ、私ならちゃんとグールの事が見えますし……。
流石に一人で行かせるわけには……」
まじで?こいつらお人よし過ぎだろ。
グールとか、一般冒険者にとって、倒すだけ収支がマイナスになるクソ魔物代表と聞いていたのだが。
個人的には、この2人が反対すると思って聞いたのだが、どうやら自分の予想は外れてしまったらしい。
流石に3人中2人が戦うと宣言している中、自分だけが戦わないというわけにもいかず。
せめてもの抵抗というわけではないが、後ろからの援護に努めると宣言する。
「というわけで、行ってこいトガちゃん」
「……ゔ」
前衛タイプ故に突っ込んでいく剣士一人と自分の使役霊である鎧霊をグールの群れに突っ込ませる。
自分の使役している鎧霊は、元々はそこそこ強かった騎士。
本人は自身の性別すら忘れてしまったそうだが、それでもメイスや鎧による戦い方を忘れておらず、グールに取りつかれる前に、その手に持つ鈍器で次々と引きつぶしていった。
「よいしょー!」
そして、前線に突っ込んでいった剣士のほうも、無理なくグールの首と腕を両断。
横切るついでにその体を切り刻む様は、まるで舞踏のようであった。
「はわ、はわわわ……」
なお、自称夜目が利く娘は、そこまでだ。
弓で援護をしようとしているらしいが、未だまともに矢を放てていない。
一応視界が利くのはほんとうらしいが、乱戦での弓の扱いはやったことがないようだ。
おそらくは、元狩人かな?
狩人上がりの冒険者は珍しいものでもないし、今回の行先的には需要があるのだろう。
「おつかれちゃーん!
……それじゃぁ、さっそく埋葬を……ってなにやってるの!?
さすがに死体漁りはだめだよ!」
「死体漁りじゃない。
単なる解呪作業だ」
戦闘があっさり終わりはしたものの、戦闘後に鎧霊にグールの体を漁らせていたのに仲間からひと言注意が走る。
が、これは遺品漁りではないし、解呪後に埋葬はするがゆえにここでもめ事は勘弁してほしい。
「え~っと、それは?」
「これはグールの魔石。
死霊が土塊や死体から甦るときに核になる部分。
陰の魔力の結晶だな」
討伐したグールの体から取り出した、魔石を屍馬達に向かって投げつける。
すると、その屍馬はまるで氷をかみ砕くかのようにそのグールの魔石をかみ砕き、飲み込んだ。
「う、うええぇぇ!馬が石を食べた!?
あれ、大丈夫なの!?」
「大丈夫大丈夫。
あれは魔力の塊でそこまで硬いものでもないし。
死霊にとっての餌みたいなものだからな。
これで、もう少し魔力を節約して移動できそうだからな」
自分の中に残された魔力と、屍馬に残った魔力量を確認する。
うむうむ、これならもう少し速度を出して移動しても大丈夫そうだな。
途中で襲撃さえなければ、明後日になる前には目的地に到着できそうだ。
「え!?この屍馬って、アンデッドらしく疲れない無限のスタミナを持っているとかじゃないの!?」
「お前はアンデッドを何だと思ってる」
かくして我々は、そのグールたちを埋葬後、再び屍馬に乗り、旅の歩みを進めた。
もっとも、私の予想に反して、途中で狼の群れやゴブリンと遭遇し、さらに到着が遅れることになるのだが……またそれは別のお話である。
火の魔法なら、戦闘ではもちろん役に立つし、見た目もカッコいい。
水の魔法なら、速度こそ問題視されるが、それ以上の利便性が感じられる。
なんなら、普通の召還術ならば、見た目カワイイ獣からかっこいい竜まで呼び出すことができる。
だが、死霊術はひたすらに不便だ。
呼び出される死霊は意思を持っているがゆえに制御は困難。
死霊は存在自体が不吉とされ、召喚するだけで周りから忌避される。
さらには、極めると死霊から情報を抜けるため悪人からも嫌われるときたもんだ。
それが、死霊術と呼ばれる技術だ。
だからこそ、自分がこんな技術をわざわざ学んでいるのは単純に適性があったからにすぎない。
もちろん、長いことこのネクロマンシーについて学んで、鍛えた愛着こそある。
が、それでももし過去の自分にであったのなら、才能があっても別の魔術を学べとアドバイスするつもりだ。
それこそそこそこの才能でも、普通の魔術を学んだほうがいいよと。
★☆★☆
「じゃぁ、やっぱり君がこの開拓団に参加した理由も、故郷で差別されたからとか?
ネクロマンサー故の迫害とか、ネクロマンサーでも生きやすい街づくりとか、そういうののため?」
「いや、自分の場合は、両親がダブル不倫しててさ。
しかも、痴情のもつれで両親が死んだからねぇ。
いろんな意味で、王都にいにくくなったのが原因だね」
「えぇ~……」
質問した彼は、自分の回答に対して微妙な表情をする。
いや、そんな顔をしたくなる気持ちはわかる。
だって前振りとしてネクロマンシーとしての苦労やらを話した後だ。
その結末が、痴情のもつれなんて、おもわず文句の一つも言いたくなるだろう。
「でも、そんなこと言って便利なこともあるんでしょう?」
「まぁ、こうやって旅の途中で馬が死んでも、疑似的に蘇生できるところとか?
もっとも、インスタントな蘇生だから、到着後成仏させるつもりだけど」
「はえ~」
ぱかりぱかりと、夜の街道を馬でかける。
視界は最悪、道はデコボコ。
その上、足である馬はすでに死んでおり、血と腐敗の匂いがわずかに漂う。
もっとも季節は夏に近いため、この屍馬の冷たい肌触り自体はいうほど苦痛でもないが、それでもなお、乗り心地がいいとは口が裂けても言えない。
それでも、長旅を徒歩で行くよりは数百倍マシだといえるだろう。
「ところで、視界のほうは大丈夫か?
こっちは、魔力感知で大丈夫だけどそちらは?」
「わ、私は生まれつき夜目が利くので……」
「もちろん僕も大丈夫さ!
アルダート流剣術は、夜の戦闘にもばっちり対応してる!
流石に死んでいる馬に乗っての戦闘はやったことがないけど、それでもおおよそ問題ないさ!」
今回の旅の道連れは、偶然同じ馬車に乗り合わせた冒険者であるが、どうやら彼らはそれなりにできるほうの冒険者であったらしい。
まぁ、でなきゃお値段中グレードの馬車という冒険者にとっては絶妙に高い値段の馬車に乗ってないか。
「前方にグールの群れが要るっぽいけどどうする?
迂回する?それとも突っ込む?
数は……まぁ、10はいない程度だけど。」
「なら蹴散らしていこうよ!
ここで放置したらもしかしたら、見知らぬ人を襲っちゃうかも知れないだろう?
なら、ボクが軽ーく蹴散らしてくるよ」
「な、なら私も行きます!
わ、私ならちゃんとグールの事が見えますし……。
流石に一人で行かせるわけには……」
まじで?こいつらお人よし過ぎだろ。
グールとか、一般冒険者にとって、倒すだけ収支がマイナスになるクソ魔物代表と聞いていたのだが。
個人的には、この2人が反対すると思って聞いたのだが、どうやら自分の予想は外れてしまったらしい。
流石に3人中2人が戦うと宣言している中、自分だけが戦わないというわけにもいかず。
せめてもの抵抗というわけではないが、後ろからの援護に努めると宣言する。
「というわけで、行ってこいトガちゃん」
「……ゔ」
前衛タイプ故に突っ込んでいく剣士一人と自分の使役霊である鎧霊をグールの群れに突っ込ませる。
自分の使役している鎧霊は、元々はそこそこ強かった騎士。
本人は自身の性別すら忘れてしまったそうだが、それでもメイスや鎧による戦い方を忘れておらず、グールに取りつかれる前に、その手に持つ鈍器で次々と引きつぶしていった。
「よいしょー!」
そして、前線に突っ込んでいった剣士のほうも、無理なくグールの首と腕を両断。
横切るついでにその体を切り刻む様は、まるで舞踏のようであった。
「はわ、はわわわ……」
なお、自称夜目が利く娘は、そこまでだ。
弓で援護をしようとしているらしいが、未だまともに矢を放てていない。
一応視界が利くのはほんとうらしいが、乱戦での弓の扱いはやったことがないようだ。
おそらくは、元狩人かな?
狩人上がりの冒険者は珍しいものでもないし、今回の行先的には需要があるのだろう。
「おつかれちゃーん!
……それじゃぁ、さっそく埋葬を……ってなにやってるの!?
さすがに死体漁りはだめだよ!」
「死体漁りじゃない。
単なる解呪作業だ」
戦闘があっさり終わりはしたものの、戦闘後に鎧霊にグールの体を漁らせていたのに仲間からひと言注意が走る。
が、これは遺品漁りではないし、解呪後に埋葬はするがゆえにここでもめ事は勘弁してほしい。
「え~っと、それは?」
「これはグールの魔石。
死霊が土塊や死体から甦るときに核になる部分。
陰の魔力の結晶だな」
討伐したグールの体から取り出した、魔石を屍馬達に向かって投げつける。
すると、その屍馬はまるで氷をかみ砕くかのようにそのグールの魔石をかみ砕き、飲み込んだ。
「う、うええぇぇ!馬が石を食べた!?
あれ、大丈夫なの!?」
「大丈夫大丈夫。
あれは魔力の塊でそこまで硬いものでもないし。
死霊にとっての餌みたいなものだからな。
これで、もう少し魔力を節約して移動できそうだからな」
自分の中に残された魔力と、屍馬に残った魔力量を確認する。
うむうむ、これならもう少し速度を出して移動しても大丈夫そうだな。
途中で襲撃さえなければ、明後日になる前には目的地に到着できそうだ。
「え!?この屍馬って、アンデッドらしく疲れない無限のスタミナを持っているとかじゃないの!?」
「お前はアンデッドを何だと思ってる」
かくして我々は、そのグールたちを埋葬後、再び屍馬に乗り、旅の歩みを進めた。
もっとも、私の予想に反して、途中で狼の群れやゴブリンと遭遇し、さらに到着が遅れることになるのだが……またそれは別のお話である。
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