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第2章
053 開業準備?(3)
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「思うに、折角となりで焼き菓子も作る店があるんだから、窯の熱を利用するべきでしょ?」
私たちはシャルノに軽い夜食を作ってもらいながら喫茶店について色々議論を交わしていた。
それなりに盛り上がっていたのでいつの間にか丁寧語も吹っ飛んでいて、中々楽しい。
ちなみに、難しい資金提供の話に関しては、論点をまとめて後日改めて説明することになった。
『ついでに知り合いにも話を聞かせたいんだけど、いい?』と聞いたら構わないと言われたのでカルダールも誘おう。
株式と云う制度を説明するいい機会だ。
コンセプトとして説明するだけでなく、起業する側に説明する場を利用することで現実的な突っ込みも来るだろうし。
ハシャーナには式を飛ばして夕食いらないって連絡した。
折り鶴が飛んできて目の前で手紙に変わったら驚いたかもしれないけど、夕食を作ってもらっといてすっぽかすよりは良いだろう。
「キーシュを作るのには使わせてもらうつもりよ?」
シャルノは紅茶を楽しむ喫茶店にしたいので、提供する軽食はあまり匂いのしないキーシュとサンドイッチのみと考えているらしい。
あとは勿論、ミズバンのところのお菓子ね。
そこに私はホットサンドを売り込んでいる訳だ。
パンとかチーズの香りとかがするかもしれないけど、食事だったら軽くても暖かい物が欲しいと思う人がいると思うんだよね。
あの香りは紅茶の匂いとぶつからないと思うし。
正直言うと、ホットサンドが食べられる店を確保したいんだよね。
日本にいた時に親が引き出物か何かで貰ったホットサンド・メーカーを持っていたんだけど、面倒で殆ど使っていなかった。
いつか暇な時にでも活用しようと思っていたんだけど・・・『いつか』が来る前に死んじゃったし。
ここで出してくれればスイーツを食べる際にホットサンドも楽しむことが出来て、一石二鳥だ。
隣に窯があるんだから、手軽に準備出来ると思うし。
百聞は一見にしかずと云うことで、サンドイッチメーカーモドキを創って見せることにした。
異次元収納から砂利を幾つか取り出し、それを三角形を二つ合わせた鉄版のケースみたいな形に変える。
「こんな感じの鉄型をいくつか作っておいて、それにチーズサンドとかハムサンドを挟んで窯の中のあまり熱くないところに置いておくの。
きっとアツアツの美味しいホットサンドが出来るわ」
密封形だったら暫く窯で熱しても大丈夫だろうから、そこそこコンスタントにオーダーが見込める感じになったら常に窯に1、2個入れておけばオーダーしたら直ぐに熱いのが食べられて人気商品になると思うな。
「サンドイッチを焼くの?」
「美味しいわよ~」
こちらはあまりそう云う食べ方はしないのか、シャルノはイマイチぴんとこないようだ。
そこで、シャルノが作ってくれたサンドイッチを鉄版に挟んで、魔術で熱を加えて焼いた。
・・・うっかり、鉄版を置いていたカウンタートップを焦がしたのは、御愛嬌。(汗)
何分焼くのが分からなかったが、とりあえずパンが焼ける良いにおいがしてきたので出して、半分シャルノに差しだす。
ミズバンが物欲しげな顔をしていたけど、見なかった振り。
欲しかったら、シャルノから半分貰って。私のはこれ以上、あげないよ。
ぱくり。
うん、美味しい。
このパンって食パンのトーストというよりも、パニーニみたいかな。でも、それはそれで有りな感じ。
「・・・美味しい」
恐る恐るホットサンドを齧ってみたシャルノが驚いたように呟いた。
「俺にもくれ」
ミズバンがさっとシャルノからホットサンドをかすめ取り、一口(かなり大きく)かぶりついた。
「美味い!」
ふふふ。
美味かろ~?
「これはこの店の『売り』になるわね」
きらりん。
シャルノの目が光った・・・かもしれない。
「どうせだったら、セットメニューも提供しようよ。ホットサンドとスイーツと飲み物とで、単品買うよりも安い目にするの。
そうしたらホットサンドを食べに来た人にもスイーツを広められるし、スイーツを食べに来た人にもホットサンドの良さをアピール出来るし」
やはりキャンペーンと云えば、セット割引だよね。
ホットサンドっていい匂いがするから、ランチ時なんかはきっとそれなりに客の吸引力があると思う。
「何で客が食べたい物を頼んだだけなのに、割引しなくちゃいけないんだ?」
ミズバンが不思議そうな顔をした。
「店に来た人が必ずしもホットサンドとスイーツの両方を食べたいと思っているとは限らないでしょ?
だけどどちらかだけを食べに来た人に、折角だからもう一方もオーダーしたら割引になりますよ~って勧めたら買う人も出てくると思うんだよね。
ホットサンドもスイーツも、まだあまり知られていない物だから、固定客が付くまでは割引してでも知名度を上げていく価値はあると思うな」
第一、客単価が上がれば、ちょっとぐらい割引してもペイするだろうし。
「確かにね」
シャルノが頷く。
ちなみに、こちらはコーヒー(らしき)物も有るらしいが、高くて一般人向けの喫茶店で気軽に出せる値段では無いそうだ。
同じく南国で作っているイメージがあるカカオの方はそこまでは高くないらしい。
不思議だ。
カカオを砂糖と混ぜてミルクたっぷりに作るホットココアも提案したら、試飲したシャルノは非常に気にいったようだ。
スイーツに使うチョコレートはまだイマイチ成功していないのだが、飲む方のココアとしては売り出せそう。
ふふふ~。
「ちなみに、牛乳を冷蔵庫で冷やしておいて、カカオと砂糖は少なめのお湯で溶かしたあとに冷たいミルクを入れると美味しいアイスココアになるよ」
夏は絶対アイスココアよ!
紅茶はあまりアイスで飲んで美味しいとは思わないんだけど、アイスココアは最高だ。
まあ、クーラーが無いこの国だったら流石に夏に暑い紅茶を飲むのは辛いかもしれないが。
シャルノはハーブティーとかも出すつもりらしいから、水出しのアイスティーもありかもしれない。
「とりあえず、フジノが金を出すことで喫茶店を始めると言うことは確定でいいんだな?」
お茶を飲み終えたミズバンが我々の顔を見ながら確認してきた。
「いいよね?」
「よろしく!」
「じゃあ、シャルノは早速工事の手配をしてくれ。壁を壊す時期になったらこっちも数日閉店になるから、いつぐらいになるかはっきりしたら教えろ」
うん?
閉店しちゃうの?
スイーツの開発中も頑張って、睡眠時間を削りながらも焼き菓子作って開店していたのに。
「ミズバンも手伝うの?」
「は?」
「いや、閉店するっていうからさ」
ミズバンが苦い顔をした。
「工事をしている間にどれだけ砂埃が舞うと思っているんだ。幾ら工事をする時間を避けて準備すると言っても菓子に砂埃が入るのは避けられん。
幾ら念入りに掃除しても、工事の後も暫くは埃っぽくて頭がいたい事になるだろうな・・・」
ああ。
確かにね。
掃除機なんて言う便利な物がある日本でも、新築のマンションなんて最初は床を拭くと雑巾が真っ黒になるっていう話だし。
「だったら、埃が飛んでこないように結界を張ろうか?」
人間は通れるようにしないといけないし、スレッジハンマーとかを振り回せるように大きさのあるものは通れるようにしないと不便だが、それこそ下宿先に張った小動物禁止の結界の応用版で拳サイズよりも大きな物の移動を禁止すれば埃は動かないだろう。
定期的にその小さな埃をかき集めて捨てる為に結界を解除しないと壊した壁を撤去できなくなるが。
と云うか、小さな物は全て裏庭のゴミ箱にでも直行するような結界に出来ないかな?
じゃないと足の踏み場も無くなりそうだ。
そんでもってゴミ箱そのものにも同じような結界を張っておいて、最後にその箱ごと捨てちゃえばいいんだし。
「それ、喫茶店側にも張れる?!」
ミズバンよりも早く、シャルノが反応してきた。
「そこの壁の両側30センチずつぐらいに、結界を張ろうか?」
「「是非!!」」
と云うことで工事にも関与することになってしまった。
ま、工事なんてモノは貴族様とかも自分の家のリフォームとか有るだろうから、凄く役に立ちそうだったら今後の新しい魔術師の収入源となるかもしれないし。
◆◆◆
「あれ??」
家に帰ってから色々考えておいた埃防止結界を、朝一にミズバンのところの裏庭で埃防止結界を張ってみた。
一握りの土を投げつけたら、見事結界のところで姿を消してゴミ箱に現れる。
おっしゃ~と思っていたら・・・ゴミ箱にイアリングが現れた。
振り返ったら、ちょうどシャルノがその結界を突っ切ってこちらに来たところだった。
おいおい。
人体に悪影響は無いはずだけど、一応先に私が試しておこうと思ったのに。
ま、それはともかく。
このイアリングってさっきまでシャルノがしていた奴だよね??
「これ落とした??」
ゴミ箱から拾ってイアリングをシャルノに渡そうとするが、結界に止められてしまう。
そうか。
拳サイズって指定しているからアクセサリーとかも小さいと砂埃と同じ扱いになっちゃうんだ。
「あれ??落とした??」
シャルノが驚いたように耳に手をやる。
「違う、埃防止の結界だわ。拳サイズって指定したから、身に付けている小さな物も全部排除されちゃうみたい」
ゴミ箱の結界を解除してイアリングを取り出し、渡す。
「あら。だとしたら、指輪とか小銭も排除される訳?」
おっと。
アクセサリーは所有者がはっきりするだろうが、小銭まで全部こちらに集められちゃったら困るな。
「拳サイズじゃなくって、指輪よりも小さなサイズって指定した方が良さそうだね」
それでもスタッド・ピアスなんてしていたら排除されちゃうが。
「基本的に小さな物は身に付けて来ないでくれって関係者皆に伝えておいた方がいいか。
そんでもって最後にこのゴミ箱を確認する必要もあるわね」
シャルノが小さくため息をつきながら言った。
世の中、万能な訳にはいかないんだね。
特定の物を指定して結界に影響されないようにするのは可能だけど、壁の漆喰もレンガの欠片も宝石も、鉱物ベースの無機物と云うことに変わりは無い。だから見知らぬ誰かが『身に付けているかもしれない』アクセサリーを全て引っかからないように指定するのは難しい。
今日は工務店の人とシャルノが細かい打ち合わせをして、明日から工事をするらしいから明日の午後にまた寄ることにするか。
とりあえず、私は魔術院に行って空飛ぶ絨毯を渡して金を貰ってこないと。
私たちはシャルノに軽い夜食を作ってもらいながら喫茶店について色々議論を交わしていた。
それなりに盛り上がっていたのでいつの間にか丁寧語も吹っ飛んでいて、中々楽しい。
ちなみに、難しい資金提供の話に関しては、論点をまとめて後日改めて説明することになった。
『ついでに知り合いにも話を聞かせたいんだけど、いい?』と聞いたら構わないと言われたのでカルダールも誘おう。
株式と云う制度を説明するいい機会だ。
コンセプトとして説明するだけでなく、起業する側に説明する場を利用することで現実的な突っ込みも来るだろうし。
ハシャーナには式を飛ばして夕食いらないって連絡した。
折り鶴が飛んできて目の前で手紙に変わったら驚いたかもしれないけど、夕食を作ってもらっといてすっぽかすよりは良いだろう。
「キーシュを作るのには使わせてもらうつもりよ?」
シャルノは紅茶を楽しむ喫茶店にしたいので、提供する軽食はあまり匂いのしないキーシュとサンドイッチのみと考えているらしい。
あとは勿論、ミズバンのところのお菓子ね。
そこに私はホットサンドを売り込んでいる訳だ。
パンとかチーズの香りとかがするかもしれないけど、食事だったら軽くても暖かい物が欲しいと思う人がいると思うんだよね。
あの香りは紅茶の匂いとぶつからないと思うし。
正直言うと、ホットサンドが食べられる店を確保したいんだよね。
日本にいた時に親が引き出物か何かで貰ったホットサンド・メーカーを持っていたんだけど、面倒で殆ど使っていなかった。
いつか暇な時にでも活用しようと思っていたんだけど・・・『いつか』が来る前に死んじゃったし。
ここで出してくれればスイーツを食べる際にホットサンドも楽しむことが出来て、一石二鳥だ。
隣に窯があるんだから、手軽に準備出来ると思うし。
百聞は一見にしかずと云うことで、サンドイッチメーカーモドキを創って見せることにした。
異次元収納から砂利を幾つか取り出し、それを三角形を二つ合わせた鉄版のケースみたいな形に変える。
「こんな感じの鉄型をいくつか作っておいて、それにチーズサンドとかハムサンドを挟んで窯の中のあまり熱くないところに置いておくの。
きっとアツアツの美味しいホットサンドが出来るわ」
密封形だったら暫く窯で熱しても大丈夫だろうから、そこそこコンスタントにオーダーが見込める感じになったら常に窯に1、2個入れておけばオーダーしたら直ぐに熱いのが食べられて人気商品になると思うな。
「サンドイッチを焼くの?」
「美味しいわよ~」
こちらはあまりそう云う食べ方はしないのか、シャルノはイマイチぴんとこないようだ。
そこで、シャルノが作ってくれたサンドイッチを鉄版に挟んで、魔術で熱を加えて焼いた。
・・・うっかり、鉄版を置いていたカウンタートップを焦がしたのは、御愛嬌。(汗)
何分焼くのが分からなかったが、とりあえずパンが焼ける良いにおいがしてきたので出して、半分シャルノに差しだす。
ミズバンが物欲しげな顔をしていたけど、見なかった振り。
欲しかったら、シャルノから半分貰って。私のはこれ以上、あげないよ。
ぱくり。
うん、美味しい。
このパンって食パンのトーストというよりも、パニーニみたいかな。でも、それはそれで有りな感じ。
「・・・美味しい」
恐る恐るホットサンドを齧ってみたシャルノが驚いたように呟いた。
「俺にもくれ」
ミズバンがさっとシャルノからホットサンドをかすめ取り、一口(かなり大きく)かぶりついた。
「美味い!」
ふふふ。
美味かろ~?
「これはこの店の『売り』になるわね」
きらりん。
シャルノの目が光った・・・かもしれない。
「どうせだったら、セットメニューも提供しようよ。ホットサンドとスイーツと飲み物とで、単品買うよりも安い目にするの。
そうしたらホットサンドを食べに来た人にもスイーツを広められるし、スイーツを食べに来た人にもホットサンドの良さをアピール出来るし」
やはりキャンペーンと云えば、セット割引だよね。
ホットサンドっていい匂いがするから、ランチ時なんかはきっとそれなりに客の吸引力があると思う。
「何で客が食べたい物を頼んだだけなのに、割引しなくちゃいけないんだ?」
ミズバンが不思議そうな顔をした。
「店に来た人が必ずしもホットサンドとスイーツの両方を食べたいと思っているとは限らないでしょ?
だけどどちらかだけを食べに来た人に、折角だからもう一方もオーダーしたら割引になりますよ~って勧めたら買う人も出てくると思うんだよね。
ホットサンドもスイーツも、まだあまり知られていない物だから、固定客が付くまでは割引してでも知名度を上げていく価値はあると思うな」
第一、客単価が上がれば、ちょっとぐらい割引してもペイするだろうし。
「確かにね」
シャルノが頷く。
ちなみに、こちらはコーヒー(らしき)物も有るらしいが、高くて一般人向けの喫茶店で気軽に出せる値段では無いそうだ。
同じく南国で作っているイメージがあるカカオの方はそこまでは高くないらしい。
不思議だ。
カカオを砂糖と混ぜてミルクたっぷりに作るホットココアも提案したら、試飲したシャルノは非常に気にいったようだ。
スイーツに使うチョコレートはまだイマイチ成功していないのだが、飲む方のココアとしては売り出せそう。
ふふふ~。
「ちなみに、牛乳を冷蔵庫で冷やしておいて、カカオと砂糖は少なめのお湯で溶かしたあとに冷たいミルクを入れると美味しいアイスココアになるよ」
夏は絶対アイスココアよ!
紅茶はあまりアイスで飲んで美味しいとは思わないんだけど、アイスココアは最高だ。
まあ、クーラーが無いこの国だったら流石に夏に暑い紅茶を飲むのは辛いかもしれないが。
シャルノはハーブティーとかも出すつもりらしいから、水出しのアイスティーもありかもしれない。
「とりあえず、フジノが金を出すことで喫茶店を始めると言うことは確定でいいんだな?」
お茶を飲み終えたミズバンが我々の顔を見ながら確認してきた。
「いいよね?」
「よろしく!」
「じゃあ、シャルノは早速工事の手配をしてくれ。壁を壊す時期になったらこっちも数日閉店になるから、いつぐらいになるかはっきりしたら教えろ」
うん?
閉店しちゃうの?
スイーツの開発中も頑張って、睡眠時間を削りながらも焼き菓子作って開店していたのに。
「ミズバンも手伝うの?」
「は?」
「いや、閉店するっていうからさ」
ミズバンが苦い顔をした。
「工事をしている間にどれだけ砂埃が舞うと思っているんだ。幾ら工事をする時間を避けて準備すると言っても菓子に砂埃が入るのは避けられん。
幾ら念入りに掃除しても、工事の後も暫くは埃っぽくて頭がいたい事になるだろうな・・・」
ああ。
確かにね。
掃除機なんて言う便利な物がある日本でも、新築のマンションなんて最初は床を拭くと雑巾が真っ黒になるっていう話だし。
「だったら、埃が飛んでこないように結界を張ろうか?」
人間は通れるようにしないといけないし、スレッジハンマーとかを振り回せるように大きさのあるものは通れるようにしないと不便だが、それこそ下宿先に張った小動物禁止の結界の応用版で拳サイズよりも大きな物の移動を禁止すれば埃は動かないだろう。
定期的にその小さな埃をかき集めて捨てる為に結界を解除しないと壊した壁を撤去できなくなるが。
と云うか、小さな物は全て裏庭のゴミ箱にでも直行するような結界に出来ないかな?
じゃないと足の踏み場も無くなりそうだ。
そんでもってゴミ箱そのものにも同じような結界を張っておいて、最後にその箱ごと捨てちゃえばいいんだし。
「それ、喫茶店側にも張れる?!」
ミズバンよりも早く、シャルノが反応してきた。
「そこの壁の両側30センチずつぐらいに、結界を張ろうか?」
「「是非!!」」
と云うことで工事にも関与することになってしまった。
ま、工事なんてモノは貴族様とかも自分の家のリフォームとか有るだろうから、凄く役に立ちそうだったら今後の新しい魔術師の収入源となるかもしれないし。
◆◆◆
「あれ??」
家に帰ってから色々考えておいた埃防止結界を、朝一にミズバンのところの裏庭で埃防止結界を張ってみた。
一握りの土を投げつけたら、見事結界のところで姿を消してゴミ箱に現れる。
おっしゃ~と思っていたら・・・ゴミ箱にイアリングが現れた。
振り返ったら、ちょうどシャルノがその結界を突っ切ってこちらに来たところだった。
おいおい。
人体に悪影響は無いはずだけど、一応先に私が試しておこうと思ったのに。
ま、それはともかく。
このイアリングってさっきまでシャルノがしていた奴だよね??
「これ落とした??」
ゴミ箱から拾ってイアリングをシャルノに渡そうとするが、結界に止められてしまう。
そうか。
拳サイズって指定しているからアクセサリーとかも小さいと砂埃と同じ扱いになっちゃうんだ。
「あれ??落とした??」
シャルノが驚いたように耳に手をやる。
「違う、埃防止の結界だわ。拳サイズって指定したから、身に付けている小さな物も全部排除されちゃうみたい」
ゴミ箱の結界を解除してイアリングを取り出し、渡す。
「あら。だとしたら、指輪とか小銭も排除される訳?」
おっと。
アクセサリーは所有者がはっきりするだろうが、小銭まで全部こちらに集められちゃったら困るな。
「拳サイズじゃなくって、指輪よりも小さなサイズって指定した方が良さそうだね」
それでもスタッド・ピアスなんてしていたら排除されちゃうが。
「基本的に小さな物は身に付けて来ないでくれって関係者皆に伝えておいた方がいいか。
そんでもって最後にこのゴミ箱を確認する必要もあるわね」
シャルノが小さくため息をつきながら言った。
世の中、万能な訳にはいかないんだね。
特定の物を指定して結界に影響されないようにするのは可能だけど、壁の漆喰もレンガの欠片も宝石も、鉱物ベースの無機物と云うことに変わりは無い。だから見知らぬ誰かが『身に付けているかもしれない』アクセサリーを全て引っかからないように指定するのは難しい。
今日は工務店の人とシャルノが細かい打ち合わせをして、明日から工事をするらしいから明日の午後にまた寄ることにするか。
とりあえず、私は魔術院に行って空飛ぶ絨毯を渡して金を貰ってこないと。
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