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第1章
014 魔具研究
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「すいません、昨日の用事がまだ終わっていないんで、今日のお話は午後からでいいですか?」
食堂で朝食を食べ終わり、部屋に戻ってきたところへカルダールが現れた。
どうやら、溜まりに溜まっていた副宰相としての仕事が昨日1日では処理しきれなかったらしい。
「私もここ数日で教わったことを見直したり、少し図書館で本を読んでみたりしたいと思っていたところですので講義の再開は明日からにしませんか?私が学ばなければいけないことは一刻を争うような物ではありませんから、お仕事を優先させて下さい」
魔具の研究をしたいと思っていたところだし。
カルダールがすまなそうな顔をして、頭を掻く。
「よろしいのですか?フジノ殿も一刻も早く自由に動き回れるようになりたいでしょうし、私も色々と興味深い制度の話を聞けて楽しませて貰っているので、出来れば午後からこちらこそ頼んでお話を再開したいところなんですが・・・何故かここ数日の間に書類が自己繁殖してしまっていて」
書類とかメールってびっくりするぐらい早く自己繁殖するよね~。
メールが無いこの世界だったら書類だけ情け容赦なく積み上がって行くのかな?
「無理をしないで下さい。第一、魔術院で働くようになっても時々お会いしてお茶を飲んだり街の散策に付き合ったりして下さると言っていたじゃないですか。今日、無理する必要はありませんよ」
第一、基本はかなり抑えることが出来たと思うから、魔術院に行く前に魔術師対策やら魔術の練習やらを先にしておきたい。
「そうですね、では明日からまたよろしくお願いします」
私の言葉に安心したのか、にっこり笑いながらカルダールが出ていった。
この10日間の初期講習が終わってもそれなりに私と定期的に会って情報を引き出したり、私が極端に不満を抱いていないか等を把握したいところなのだろう。私も魔術院で働きはじめてからも彼と会う気が満々であることが分かって安心したようだ。
こちらとしても、住みやすい環境を整えるためにも政治の中枢である宰相と(多分)直結している彼とは長く付き合っていきたい。却ってあまり最初の10日でやるべきことを終わらせてしまわない方が長期的に付き合い続ける口実になって丁度いいだろう。
さて。
色々な魔法陣と言う物にも凄く気が惹かれるが、まずは先日買った『着用者の魔力を吸い取り、石に蓄積する』とかいうネックレスだ。
あれを大量に作って常時魔力をそちらに充電させていきたい。
変に警戒されたり、『やはり勇者として戦ってもらおう』などと思われない為にも、見た目の魔力を普通の魔術師よりちょっと上程度に抑えておきたいから、この魔具その為+非常時の動力源としてとても有望だと思う。
・・・考えてみたら、まだカルダールから魔物や魔族や魔王のことを全然聞いていないな。
そりゃあ、戦う気は無いとは明言しているけど、考えてみたらこの国の生活の基盤に重大なインパクトがあるならばいい加減話題に挙がって来てもおかしくないはず。
何でまだ話に上ってこないんだろ?
明日にでも、聞いてみよう。
初日に探り出した衛兵さんの情報によるとそれ程死者が出ている訳でもないみたいだし、街の様子を見ても戦時中という雰囲気でもないし、負傷者が沢山歩いている訳でもないからそれ程深刻な状況じゃあなさそうだけど。
奴隷制度も無いとの話だから、奴隷兵に戦わせて国民は優雅に安全な生活をしていると言う訳でもないだろうし。
「ま、明日聞きゃ分かることだし、いいか」
とりあえず考えても分からないことは切り捨て、ネックレスの方に集中だ。
ネックレスはここ数日つけっぱなしにしていた。
特に魔力を吸い取られているという負担感もない。
昨日一日で大分慣れてきた心眼を使ってネックレスを視てみると、石に私の魔力が少しずつ吸収されているのが視える。
ふむ。
魔力を吸う効果というのは、魔法陣と言うよりも石の特徴なのかな?
ここ数日、朝夕の散歩の際にさり気無く拾っていた小石を異次元収納から取り出し、それをネックレスの石へ『物を創り出す術』を利用して変質させる。
まず最初は、特に詳細条件をつけずに。
石は出来たが......特に魔力を吸う様子はない。
ということは、ネックレスに微かに付いている魔法陣が何らかの機能を果たしているのか。
分析魔法を呼び出して、魔方陣を解析してみる。
『魔石へ魔力の充填』とあった。と言うことは、この深い緑色の石が魔石なのか。
というか、魔石というのは魔力を蓄積できる石全般のことを言うらしいから、この宝石モドキに魔石としての機能が付いていると言うことなんだろうね。
更に集中すると、吸収のレートも設定されているのと、魔石がキャパシティ一杯になった時には機能が一時停止するようにも規定されているのが視える。
へ~。
ちゃんとVBAのマクロと同じで、詳細が色々決まっているんだね。
機能が停止するように設定していなかったらどうなるんだろ?
後で実験してみよう。
とりあえずは、同じような魔法陣の複製だな。
先日図書館から借りた本によると、魔力で陣を刻むとのこと。
その本によると、全ての術は術者が呪文を唱えて魔力を注ぐうちに魔力が陣を形成するから、それを注意深く観察して術が完成した瞬間の陣を複製することで魔法陣となると書いてあった。
自力で魔力を刻むと言うのも面白そうだが、まずはチート出来るか確認。
脳裏の検索スクリーンに『魔法陣の作成』と入力。
幾つか出てきた。
●術を指定して魔法陣を作成する
●視えている魔法陣をコピーして作成する
●周囲から魔力を吸収して自動的に完成する魔法陣の作成
なんか最後のこれって怖そうだぞ。
悪用すれば、自分がいないところで勝手に完成するような爆破テロも出来ちゃいそうじゃない。
願わくはこんな術は既に失われていると期待しよう。
とりあえず、視えている魔法陣をコピーと言うのを使ってみよう。
ちょっと太めのブレスレットを創り、それに先ほどの魔石コピーを取り付け、そこへネックレスの魔法陣をコピー。
一瞬ブレスレットが光り、術が完成した。
今までの術って別に外に光が出たりしなかったけど、魔法陣っていうのは魔力が陣を描く際に一瞬光るみたい?
中々興味深いところだ。
ブレスレットを手にとって集中してみる。
うん、ネックレスと同じ感じに魔力が吸われている。
うっし。
じゃあ、ネックレスの魔力が一杯になったらこれを使おう。
・・・というか、考えてみたらこのネックレスやブレスレット程度の吸収じゃあ私の魔力の偽装には不十分かな?普通の人なり魔術師なりがこのネックレスをつけていて問題が無かったらしいから、魔王にも勝てるぐらい魔力があるらしい私には足りないかもしれない。
ネックレスと両用した方がいいか。
次は自力で魔法陣を作る際に吸収レートを少し高めに設定してみよう。
ノートにブレスレットの魔法陣を移しだす。
そんでもって・・・ここが吸収速度の設定か。解析の術を掛けているままの心眼でじっくり魔法陣を研究し、吸収速度を倍に書きなおしてみる。
で、これに魔力を刻み込むっと。
・・・刻まなくっても流すだけじゃあ駄目なのかね?
鉛筆の線に魔力を流すのを意識しながら魔法陣をイメージしていく。
全部のラインをなぞるのにそれなりに時間がかかったが、15分程度で大体魔力が通った魔法陣のような物が出来あがった。
紙だけど。
それに魔石を乗せ、手を当てる。
うん、魔力が吸われている。
魔力で彫刻みたいに刻まなくっても、下書きしてそれに魔力でなぞっても良いんだね。
この方がずっと簡単なのに、何だって本には刻むとしか書いてないんだろ?
・・・もしかして、態と難しくすることで魔術師のサービス価格を吊り上げているとか?
とりあえず、魔術院の研究所に行った際にさり気無く他の人にも出来るのか試してみよう。
私にだけしか出来ないんだったら、下手に魔法陣を簡単に作れるなんて事を知られない方がいい。だけど、他の人も容易に真似が出来るんだったら皆に広げて魔具の流通価格を下げたい。
さて。
この紙で作った魔法陣はどうしようかな。
別にネックレスとブレスレットはつけていても負担はないから、寝る間の吸収道具として使うか。
紙を布に変質させ、引き延ばしてシーツの上に重ねる。ついでに魔石は端っこに縫い込んだような形にした。流石に石の上に寝るのは痛そうだ。
幾つか魔力吸収アクセサリーのスペアを作ろうかと思ったが、考えてみたら魔石を入れ変えれば良いことに気付き、空っぽの魔石を大量に作り出して異次元収納にしまい込んだ。
とりあえず、これで暫くは持つでしょう。
次は、本格的に魔具の研究だ。
・・・とは言え、何を作るかねぇ?
基本的に魔術を唱えれば大抵のことは出来るんだから、物にそれを刻み込むメリットってあまりない気がする。
売るんだったら魔術師じゃない人でも魔術の便利さを享受できるが、私としてはあまりマジックアイテム作成者として財を成す気はない。私個人の手作りとなるとどうしても作れる数に限りがあり、買う人は貴族になってしまうことが多いだろう。
それでは平民の経済力と地位向上を狙いたい私の目的と下手したら反対方向に物事が動くかもしれない。
だけど折角だったら魔具を作ってみたい。
とりあえず、魔法のランプでも作るか。光の魔術は毎晩読書やら研究やらの際に使っているんだし。
・・・考えてみたら、私にとって頻繁に使う魔術を魔具にするメリットと言うのは、魔術を検索せずに実行出来ることだ。
だったら、最初から魔力を通せば魔術を使えるように、所謂魔術のショートカットとして利用してはどうだろう?
照明とか、飲み物の保温とか、毒検索とか、魔術の分析。
攻撃魔術からの防御、物理的な攻撃やこないだの事故みたいなものを防ぐために、物の停止。
姿を隠す目晦ましの術も良いかもしれない。
後は治療の術も必要ね。
とりあえず、この8つは慌てていても直ぐに使えるように、ショートカット機能があればきっと便利だろう。
持ち歩いていても目立たないように、ブレスレットの飾りみたいな形で魔法陣を作り込み、魔力を通せば直ぐに魔術が起動するように出来ないかな?
普段は魔力が通っていなければ魔具として認識されず、警戒されないかもしれないし。
ついでに、魔具の製造方法も普通の職人が魔法陣を何かに作り付けて、それに魔石を使って魔力を与える形にすれば魔術師じゃなくっても作れないかな?
この方法の方が、技術水準がかなり怪しげなこの世界で機械を生産しようとするよりも簡単に平民の生産性を上げ、経済力を向上できるかもしれない。
ネックになるかもしれないのは、魔術師からの妨害と、魔石の値段というところか。
それこそ、魔術師には魔法陣を新しく造り上げたら特許権でお金を貰えるようにしたら、もっとそちらの研究に打ち込むようになって国全体の経済にとってもプラスになるんじゃないかな?
まあ、これは魔術院で働きはじめてから周りの状況を確認しないと実現性は分からないけど。
とりあえずは、ショートカット用魔具の作成から始めよう。
食堂で朝食を食べ終わり、部屋に戻ってきたところへカルダールが現れた。
どうやら、溜まりに溜まっていた副宰相としての仕事が昨日1日では処理しきれなかったらしい。
「私もここ数日で教わったことを見直したり、少し図書館で本を読んでみたりしたいと思っていたところですので講義の再開は明日からにしませんか?私が学ばなければいけないことは一刻を争うような物ではありませんから、お仕事を優先させて下さい」
魔具の研究をしたいと思っていたところだし。
カルダールがすまなそうな顔をして、頭を掻く。
「よろしいのですか?フジノ殿も一刻も早く自由に動き回れるようになりたいでしょうし、私も色々と興味深い制度の話を聞けて楽しませて貰っているので、出来れば午後からこちらこそ頼んでお話を再開したいところなんですが・・・何故かここ数日の間に書類が自己繁殖してしまっていて」
書類とかメールってびっくりするぐらい早く自己繁殖するよね~。
メールが無いこの世界だったら書類だけ情け容赦なく積み上がって行くのかな?
「無理をしないで下さい。第一、魔術院で働くようになっても時々お会いしてお茶を飲んだり街の散策に付き合ったりして下さると言っていたじゃないですか。今日、無理する必要はありませんよ」
第一、基本はかなり抑えることが出来たと思うから、魔術院に行く前に魔術師対策やら魔術の練習やらを先にしておきたい。
「そうですね、では明日からまたよろしくお願いします」
私の言葉に安心したのか、にっこり笑いながらカルダールが出ていった。
この10日間の初期講習が終わってもそれなりに私と定期的に会って情報を引き出したり、私が極端に不満を抱いていないか等を把握したいところなのだろう。私も魔術院で働きはじめてからも彼と会う気が満々であることが分かって安心したようだ。
こちらとしても、住みやすい環境を整えるためにも政治の中枢である宰相と(多分)直結している彼とは長く付き合っていきたい。却ってあまり最初の10日でやるべきことを終わらせてしまわない方が長期的に付き合い続ける口実になって丁度いいだろう。
さて。
色々な魔法陣と言う物にも凄く気が惹かれるが、まずは先日買った『着用者の魔力を吸い取り、石に蓄積する』とかいうネックレスだ。
あれを大量に作って常時魔力をそちらに充電させていきたい。
変に警戒されたり、『やはり勇者として戦ってもらおう』などと思われない為にも、見た目の魔力を普通の魔術師よりちょっと上程度に抑えておきたいから、この魔具その為+非常時の動力源としてとても有望だと思う。
・・・考えてみたら、まだカルダールから魔物や魔族や魔王のことを全然聞いていないな。
そりゃあ、戦う気は無いとは明言しているけど、考えてみたらこの国の生活の基盤に重大なインパクトがあるならばいい加減話題に挙がって来てもおかしくないはず。
何でまだ話に上ってこないんだろ?
明日にでも、聞いてみよう。
初日に探り出した衛兵さんの情報によるとそれ程死者が出ている訳でもないみたいだし、街の様子を見ても戦時中という雰囲気でもないし、負傷者が沢山歩いている訳でもないからそれ程深刻な状況じゃあなさそうだけど。
奴隷制度も無いとの話だから、奴隷兵に戦わせて国民は優雅に安全な生活をしていると言う訳でもないだろうし。
「ま、明日聞きゃ分かることだし、いいか」
とりあえず考えても分からないことは切り捨て、ネックレスの方に集中だ。
ネックレスはここ数日つけっぱなしにしていた。
特に魔力を吸い取られているという負担感もない。
昨日一日で大分慣れてきた心眼を使ってネックレスを視てみると、石に私の魔力が少しずつ吸収されているのが視える。
ふむ。
魔力を吸う効果というのは、魔法陣と言うよりも石の特徴なのかな?
ここ数日、朝夕の散歩の際にさり気無く拾っていた小石を異次元収納から取り出し、それをネックレスの石へ『物を創り出す術』を利用して変質させる。
まず最初は、特に詳細条件をつけずに。
石は出来たが......特に魔力を吸う様子はない。
ということは、ネックレスに微かに付いている魔法陣が何らかの機能を果たしているのか。
分析魔法を呼び出して、魔方陣を解析してみる。
『魔石へ魔力の充填』とあった。と言うことは、この深い緑色の石が魔石なのか。
というか、魔石というのは魔力を蓄積できる石全般のことを言うらしいから、この宝石モドキに魔石としての機能が付いていると言うことなんだろうね。
更に集中すると、吸収のレートも設定されているのと、魔石がキャパシティ一杯になった時には機能が一時停止するようにも規定されているのが視える。
へ~。
ちゃんとVBAのマクロと同じで、詳細が色々決まっているんだね。
機能が停止するように設定していなかったらどうなるんだろ?
後で実験してみよう。
とりあえずは、同じような魔法陣の複製だな。
先日図書館から借りた本によると、魔力で陣を刻むとのこと。
その本によると、全ての術は術者が呪文を唱えて魔力を注ぐうちに魔力が陣を形成するから、それを注意深く観察して術が完成した瞬間の陣を複製することで魔法陣となると書いてあった。
自力で魔力を刻むと言うのも面白そうだが、まずはチート出来るか確認。
脳裏の検索スクリーンに『魔法陣の作成』と入力。
幾つか出てきた。
●術を指定して魔法陣を作成する
●視えている魔法陣をコピーして作成する
●周囲から魔力を吸収して自動的に完成する魔法陣の作成
なんか最後のこれって怖そうだぞ。
悪用すれば、自分がいないところで勝手に完成するような爆破テロも出来ちゃいそうじゃない。
願わくはこんな術は既に失われていると期待しよう。
とりあえず、視えている魔法陣をコピーと言うのを使ってみよう。
ちょっと太めのブレスレットを創り、それに先ほどの魔石コピーを取り付け、そこへネックレスの魔法陣をコピー。
一瞬ブレスレットが光り、術が完成した。
今までの術って別に外に光が出たりしなかったけど、魔法陣っていうのは魔力が陣を描く際に一瞬光るみたい?
中々興味深いところだ。
ブレスレットを手にとって集中してみる。
うん、ネックレスと同じ感じに魔力が吸われている。
うっし。
じゃあ、ネックレスの魔力が一杯になったらこれを使おう。
・・・というか、考えてみたらこのネックレスやブレスレット程度の吸収じゃあ私の魔力の偽装には不十分かな?普通の人なり魔術師なりがこのネックレスをつけていて問題が無かったらしいから、魔王にも勝てるぐらい魔力があるらしい私には足りないかもしれない。
ネックレスと両用した方がいいか。
次は自力で魔法陣を作る際に吸収レートを少し高めに設定してみよう。
ノートにブレスレットの魔法陣を移しだす。
そんでもって・・・ここが吸収速度の設定か。解析の術を掛けているままの心眼でじっくり魔法陣を研究し、吸収速度を倍に書きなおしてみる。
で、これに魔力を刻み込むっと。
・・・刻まなくっても流すだけじゃあ駄目なのかね?
鉛筆の線に魔力を流すのを意識しながら魔法陣をイメージしていく。
全部のラインをなぞるのにそれなりに時間がかかったが、15分程度で大体魔力が通った魔法陣のような物が出来あがった。
紙だけど。
それに魔石を乗せ、手を当てる。
うん、魔力が吸われている。
魔力で彫刻みたいに刻まなくっても、下書きしてそれに魔力でなぞっても良いんだね。
この方がずっと簡単なのに、何だって本には刻むとしか書いてないんだろ?
・・・もしかして、態と難しくすることで魔術師のサービス価格を吊り上げているとか?
とりあえず、魔術院の研究所に行った際にさり気無く他の人にも出来るのか試してみよう。
私にだけしか出来ないんだったら、下手に魔法陣を簡単に作れるなんて事を知られない方がいい。だけど、他の人も容易に真似が出来るんだったら皆に広げて魔具の流通価格を下げたい。
さて。
この紙で作った魔法陣はどうしようかな。
別にネックレスとブレスレットはつけていても負担はないから、寝る間の吸収道具として使うか。
紙を布に変質させ、引き延ばしてシーツの上に重ねる。ついでに魔石は端っこに縫い込んだような形にした。流石に石の上に寝るのは痛そうだ。
幾つか魔力吸収アクセサリーのスペアを作ろうかと思ったが、考えてみたら魔石を入れ変えれば良いことに気付き、空っぽの魔石を大量に作り出して異次元収納にしまい込んだ。
とりあえず、これで暫くは持つでしょう。
次は、本格的に魔具の研究だ。
・・・とは言え、何を作るかねぇ?
基本的に魔術を唱えれば大抵のことは出来るんだから、物にそれを刻み込むメリットってあまりない気がする。
売るんだったら魔術師じゃない人でも魔術の便利さを享受できるが、私としてはあまりマジックアイテム作成者として財を成す気はない。私個人の手作りとなるとどうしても作れる数に限りがあり、買う人は貴族になってしまうことが多いだろう。
それでは平民の経済力と地位向上を狙いたい私の目的と下手したら反対方向に物事が動くかもしれない。
だけど折角だったら魔具を作ってみたい。
とりあえず、魔法のランプでも作るか。光の魔術は毎晩読書やら研究やらの際に使っているんだし。
・・・考えてみたら、私にとって頻繁に使う魔術を魔具にするメリットと言うのは、魔術を検索せずに実行出来ることだ。
だったら、最初から魔力を通せば魔術を使えるように、所謂魔術のショートカットとして利用してはどうだろう?
照明とか、飲み物の保温とか、毒検索とか、魔術の分析。
攻撃魔術からの防御、物理的な攻撃やこないだの事故みたいなものを防ぐために、物の停止。
姿を隠す目晦ましの術も良いかもしれない。
後は治療の術も必要ね。
とりあえず、この8つは慌てていても直ぐに使えるように、ショートカット機能があればきっと便利だろう。
持ち歩いていても目立たないように、ブレスレットの飾りみたいな形で魔法陣を作り込み、魔力を通せば直ぐに魔術が起動するように出来ないかな?
普段は魔力が通っていなければ魔具として認識されず、警戒されないかもしれないし。
ついでに、魔具の製造方法も普通の職人が魔法陣を何かに作り付けて、それに魔石を使って魔力を与える形にすれば魔術師じゃなくっても作れないかな?
この方法の方が、技術水準がかなり怪しげなこの世界で機械を生産しようとするよりも簡単に平民の生産性を上げ、経済力を向上できるかもしれない。
ネックになるかもしれないのは、魔術師からの妨害と、魔石の値段というところか。
それこそ、魔術師には魔法陣を新しく造り上げたら特許権でお金を貰えるようにしたら、もっとそちらの研究に打ち込むようになって国全体の経済にとってもプラスになるんじゃないかな?
まあ、これは魔術院で働きはじめてから周りの状況を確認しないと実現性は分からないけど。
とりあえずは、ショートカット用魔具の作成から始めよう。
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