シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

336 星暦553年 黄の月 11日 ちょっと趣味に偏った依頼(18)

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結局、昨日は午前中一杯(とシャルロが優しいので午後も少し)かけて学者たちの樹木霊との話し合いの試みに協力したが、得たものはほぼ皆無だった。

『残りの日数全ての時間をかけて付き合えば、多分少しは興味深いことを聞けるかもしれませんが・・・固定化できる遺跡なり発見物の数が実質半減しますが、どうします?』とシャルロが聞いたところ、ツァレス達も諦めたようだ。

自分が興味があることに特定して質問するから、余計『覚えていない』と言ったようなどうしようもない返事が来るんだよなぁ。

まだ、何かもっと漠然としたことを質問したほうが樹木霊の方から面白いことを語ってくれる可能性があるだろう。
が。

そこまで割り切るには学者たちの思いいれが強すぎ、そして俺たちの時間は限られている。
なのでとりあえず、今まで通りに固定化の術をかけたり、魔術がかかっている(つまりフォラスタ文明の人間が意図的に作ったものであると思われる)物を見つけるのを優先的にしていくことになった。

まあ、シャルロは優しいから、ちょくちょく自由時間にでも暇があったら付き合ってあげるんだろうけど。

俺?
清流でもある程度協力は出来るんだけどね~。
あいつは若い(精霊としては!)し人間慣れしてないから、余計質疑応答の中継ぎには向いてないんだよね~ということでそ知らぬふりを決め込んでる。

俺自身が興味があることを質問したり、話を聞けるならまだしも、学者どもの質問にいつまでも付き合う暇はない。

アレクだって、ラフェーンなら樹木霊と意思疎通できるのにそんなことをは一言も言わずに、全部シャルロに押し付けてるし。

「ウィル!」
遺跡の中央テントに行ったら、シェイラが出てきて手を振った。

「おはよ」

「おはよう!
今日は北西の巨樹の確認したいの。お願いできる?」
いつの間にか、巨樹の周りを浮遊レヴィアで周って魔法陣や術がかけられた遺跡物捜索は俺とシェイラの役割になっていた。

なので毎朝俺がテントに行き、シェイラがあらかじめ他の学者連中と話し合って決めておいた巨樹周りの操作のために手をつないで出ていくことになる。

・・・なんか、みんなの目が生暖かいんだよなぁ。

まあ、俺もシェイラは気が合うと思うし。
自分が興味があることにはのめりこむ姿勢も良いと思うから、これからも仲良くやっていくのもいいと思うけどさぁ。

毎回手をつないで動き回ることにちょっと恥ずかしさを感じるんだよねぇ。
とは言え、それなりに広い遺跡の中を巨樹まで歩いていくよりは、浮遊レヴィアで行っちまう方から早いんでちょっと微妙な気分だからって態々歩く気はないが。

「お、そちらが貧乏発掘隊に協力してくれる、奇特な魔術師君かい?」
若い男がテントからた姿を現し、声を掛けてきた。

「そう言えば、こちらはデルバン。大学院での同期だったのよ。
今度こちらの発掘隊に加わることになったの
デルバン、こちらがウィル。3人来てくれている魔術師達の内の一人よ」
振り向いたシェイラがその男を紹介してきた。

へぇぇ。
シェイラは大学院まで行ったものの、飛び級をしまくったせいで俺とほぼ同い年だ。
このデルバンという男は飛び級をしなかったのか、もう少し年上だな。

が、他の学者連中に比べれば格段に若いし、身だしなみもまともだ。

・・・あまり、学者には見えないな。
商家の息子と言われても納得しそうだ。
「初めまして。
ウィル・ダントールです」

何とはなしに、シェイラのすぐ傍に立ってこちらに握手しようと手を差し出してきた男が気に障って不愛想に答えた。

大学院での知り合いだとしても、ちょっと近くに立ちすぎじゃないのかい、あんた?

「じゃあ、後でね、デルバン!」
明るく男に声をかけたシェイラは、俺の手を握って北西の方向を指した。

「さあ、行きましょう!
昨日はなんだかんだで一日つぶれてしまったから予定がずれ込んでいるのよね。
今日はガンガンやるわよ~!」
既に安全装置も身に着けてるし、さっさと行くか。

「それじゃ」
別れに手を挙げたデルバンに軽く頭を下げ、浮遊レヴィアの術をかけてシェイラの手を握ったまま移動を始める。

・・・なんか、視線を感じるな。
でも、振り向くのも疑っているようで変だし。

あのデルバンってどんな人間なんだ?


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唐変木なウィルにライバル出現?
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