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卒業後
1061 星暦558年 紫の月 23日 音にも色々あり(24)
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「オムレツは素晴らしいが、キッシュも美味しかったな」
今日は早速呼び出し用のベル音を記録した魔具を4つ程作って昼食後の時間を狙って持って言ったら賄いにキッシュが出た。
もう一度オムレツを食べたいと思っていたのでちょっと内心失望を感じていたのだが・・・キッシュを一口食べたらその思いは吹き飛んだ。
オムレツのとろっとした美味しさと食感も良いが、キッシュのさくっとしたパイ生地ととろっとはしていないんだけどふわっと柔らかい具?中身?上の部分?のコンビも素晴らしかった。
上の部分には卵と野菜と肉が入っていたっぽいが、普段は余り美味しいと思わないほうれん草すらアクセントになって美味しさを際立たせるなんて、流石はドリアス。
ドリアーナの賄いは誰が作っても美味しいんだが、ドリアスが試作している時はことさら素晴らしい。
・・・こっそりゼナか給仕係の誰かに袖の下を渡して、ドリアスが賄いを作る日を教えて貰おうかな?
丁度いい試作品が無かったら、『何か改善したい点はないですか~?』って聞きに行くだけでも良いだろうし、なんだったら魔石の魔力充填の為に来ましたって顔をするのも有りだろう。
まあ、他の開発作業が忙しくなるとそんな暇は無くなるんだけどね。
今は軍部の方が盗聴防止用魔具に関してちょくちょく改善点とかを言ってくるからまだ完全に新しい製品の開発には移れないので、微妙に終わったような終わってないような中途半端な状態なんだよなぁ。
俺たちとしても冷風機と併用した場合の効果の確認とかはあるから、やるべきことはまだ多少は残っているし。
だから呑気に細かい修正や改善をしつつ、ドリアーナへタイミングを見計らって訪れる事が出来ている。
「うん、やっぱドリアスは流石って感じだよね~。
パディン夫人もデルブ夫人も、普通の街中の食事処に負けないぐらい美味しい食事を作ってくれるんだけど、ドリアーナの食事は賄いでも別格って感じ」
シャルロもキッシュの味を思い出しているようなふわ~っとした表情で応じた。
「入っている材料どころか調味料もほぼ同じだと思うんだが、絶妙に何か違うのが料理の不思議なところだよな。
魔術だったら誰がやっても多少の違いがあっても似たり寄ったりな結果になるのに」
アレクが言う。
「まあ、魔術は術って言う形に当てはめて魔力を使っているからね~。
ある意味、ドリアスの料理って魔術師が水関連の魔術を放つのと、水精霊に同じような効果を頼む場合のとの違いっぽいかも?
どちらも目的とする結果は似たり寄ったりだけど、明らかに何かが違うんだよね」
シャルロがシェフィート商会から提供された冷風機の初期製品を棚から取り出しながら分析した。
あ~。
確かに水精霊のお手伝い(悪戯も)と魔術師の術って、狙った結果は同じで過程だって同じように魔力と水を使っている場合でも、明らかに煌きというか正確性というか華やかさというか・・・何かが絶対的に違うんだよね。
蒼流の様な高位精霊や清早の様な中位精霊でなく、下っ端の精霊でもそうなのだ。
まあ、元より精霊を魔術師の術を比べるのが間違っているという気もするが。
流石に普通に料理する人とドリアスの関係を魔術師と精霊の違いと比べるのはちょっときつすぎるんじゃないかな?
そこまで根本的な違いじゃあないと思う。
それとも、料理する側にしてみたらその位絶望的に届かない違いなのかな?
まあ、料理って作った人の腕だけじゃなくってレシピも重要だしな。
工夫と試行錯誤を繰り返して新しいレシピを編み出せるのもドリアスの強みだが、そのレシピを教わればパディン夫人でもかなりドリアーナのレベルに近い料理を作れるんじゃないかね?
同じにはならないだろうが、水精霊と魔術師の術の差よりは近付けるだろう。
多分。
「まあ、取り敢えず。
我々はしっかり便利な魔具を提供して美味しい賄いを食べられればいいんだ。
まずは窓を開けて風が吹いている場合に話し声が盗み聞き防止用魔具から漏れやすくなるかを確認して、次に窓を閉めて冷風機を使った場合の効果を試してみよう」
アレクが盗み聞き防止用魔具の試作品を取り出しながら言った。
「誰かが本でも朗読して、どの程度内容が判別できるかに違いが出るかを順番に確認しようか」
声の質や高さによっても魔具による効果が微妙に違うんだよな。
なので特定の声質だったら窓を開けると盗み聞きがしやすくなるなんてことがあっても困るから、取り敢えず3人の声を別々に試してみよう。
どうせだったらジジイとかおっさんの声も試したいところなんだが・・・パディン夫人の旦那にでもちょっと参加して貰えないか、聞いてみようか。
でもあの人ってかなり無口だから、朗読なんてさせたら声が枯れちゃうか?
無口な人って沢山声を出させるとお喋りな人より早く声が枯れるのかね?
今日は早速呼び出し用のベル音を記録した魔具を4つ程作って昼食後の時間を狙って持って言ったら賄いにキッシュが出た。
もう一度オムレツを食べたいと思っていたのでちょっと内心失望を感じていたのだが・・・キッシュを一口食べたらその思いは吹き飛んだ。
オムレツのとろっとした美味しさと食感も良いが、キッシュのさくっとしたパイ生地ととろっとはしていないんだけどふわっと柔らかい具?中身?上の部分?のコンビも素晴らしかった。
上の部分には卵と野菜と肉が入っていたっぽいが、普段は余り美味しいと思わないほうれん草すらアクセントになって美味しさを際立たせるなんて、流石はドリアス。
ドリアーナの賄いは誰が作っても美味しいんだが、ドリアスが試作している時はことさら素晴らしい。
・・・こっそりゼナか給仕係の誰かに袖の下を渡して、ドリアスが賄いを作る日を教えて貰おうかな?
丁度いい試作品が無かったら、『何か改善したい点はないですか~?』って聞きに行くだけでも良いだろうし、なんだったら魔石の魔力充填の為に来ましたって顔をするのも有りだろう。
まあ、他の開発作業が忙しくなるとそんな暇は無くなるんだけどね。
今は軍部の方が盗聴防止用魔具に関してちょくちょく改善点とかを言ってくるからまだ完全に新しい製品の開発には移れないので、微妙に終わったような終わってないような中途半端な状態なんだよなぁ。
俺たちとしても冷風機と併用した場合の効果の確認とかはあるから、やるべきことはまだ多少は残っているし。
だから呑気に細かい修正や改善をしつつ、ドリアーナへタイミングを見計らって訪れる事が出来ている。
「うん、やっぱドリアスは流石って感じだよね~。
パディン夫人もデルブ夫人も、普通の街中の食事処に負けないぐらい美味しい食事を作ってくれるんだけど、ドリアーナの食事は賄いでも別格って感じ」
シャルロもキッシュの味を思い出しているようなふわ~っとした表情で応じた。
「入っている材料どころか調味料もほぼ同じだと思うんだが、絶妙に何か違うのが料理の不思議なところだよな。
魔術だったら誰がやっても多少の違いがあっても似たり寄ったりな結果になるのに」
アレクが言う。
「まあ、魔術は術って言う形に当てはめて魔力を使っているからね~。
ある意味、ドリアスの料理って魔術師が水関連の魔術を放つのと、水精霊に同じような効果を頼む場合のとの違いっぽいかも?
どちらも目的とする結果は似たり寄ったりだけど、明らかに何かが違うんだよね」
シャルロがシェフィート商会から提供された冷風機の初期製品を棚から取り出しながら分析した。
あ~。
確かに水精霊のお手伝い(悪戯も)と魔術師の術って、狙った結果は同じで過程だって同じように魔力と水を使っている場合でも、明らかに煌きというか正確性というか華やかさというか・・・何かが絶対的に違うんだよね。
蒼流の様な高位精霊や清早の様な中位精霊でなく、下っ端の精霊でもそうなのだ。
まあ、元より精霊を魔術師の術を比べるのが間違っているという気もするが。
流石に普通に料理する人とドリアスの関係を魔術師と精霊の違いと比べるのはちょっときつすぎるんじゃないかな?
そこまで根本的な違いじゃあないと思う。
それとも、料理する側にしてみたらその位絶望的に届かない違いなのかな?
まあ、料理って作った人の腕だけじゃなくってレシピも重要だしな。
工夫と試行錯誤を繰り返して新しいレシピを編み出せるのもドリアスの強みだが、そのレシピを教わればパディン夫人でもかなりドリアーナのレベルに近い料理を作れるんじゃないかね?
同じにはならないだろうが、水精霊と魔術師の術の差よりは近付けるだろう。
多分。
「まあ、取り敢えず。
我々はしっかり便利な魔具を提供して美味しい賄いを食べられればいいんだ。
まずは窓を開けて風が吹いている場合に話し声が盗み聞き防止用魔具から漏れやすくなるかを確認して、次に窓を閉めて冷風機を使った場合の効果を試してみよう」
アレクが盗み聞き防止用魔具の試作品を取り出しながら言った。
「誰かが本でも朗読して、どの程度内容が判別できるかに違いが出るかを順番に確認しようか」
声の質や高さによっても魔具による効果が微妙に違うんだよな。
なので特定の声質だったら窓を開けると盗み聞きがしやすくなるなんてことがあっても困るから、取り敢えず3人の声を別々に試してみよう。
どうせだったらジジイとかおっさんの声も試したいところなんだが・・・パディン夫人の旦那にでもちょっと参加して貰えないか、聞いてみようか。
でもあの人ってかなり無口だから、朗読なんてさせたら声が枯れちゃうか?
無口な人って沢山声を出させるとお喋りな人より早く声が枯れるのかね?
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