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卒業後
1038 星暦558年 赤の月 25日 音にも色々あり
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「これなんて便利そ~・・・でも廃れちゃったんだね」
魔術回路の特許資料を色々と漁っていたら、シャルロが何やら面白そうな魔術回路を見つけた。
片方向にだけ音を消すという結界を造る魔術回路なので、正しく赤ちゃんが周囲の音で泣かなくなる様にするのに良さげな気がするが・・・廃れたのか。
「まあ・・・結局赤子というのは周囲が煩かろうが静かだろうが、目が覚めたら泣くことが多いからなぁ。
赤子に届く音を消しても結局泣くことに変わりはないなら、態々高額な魔具を買う程の事もないとなったんじゃないか?
もっとも、最初にこれを開発した人間は別に赤子用として作った訳では無い可能性も高いと思うが」
アレクが指摘した。
へぇぇ。
赤ちゃんってちゃんと世話をしていても目が覚めたら泣く生き物なんだ?
孤児院でひたすら泣きまくっていたのは飢えていたからなのかと思っていたが、基本的に泣く存在なのか。
まあ、確かにあれだけの量のオムツを濡らしているのだ。
オムツが濡れるたびに泣くだろうし、腹が減った時にも泣くだろうし、周囲に人が居なくて退屈したり寂しく思った時にも泣くかもと思ったら、確かに音を防ぐ程度じゃあ大して役には立たないか。
「赤ちゃんの泣き声は完全に消し去っちゃったら可哀想だし、場合によっては危険だしねぇ」
シャルロがちょっと考えこむ。
元々、最初は赤ちゃんの泣き声を防ぐために防音結界的な魔具があったら便利かもと話していたのだが、赤ちゃんの声が聞こえなくっちゃ駄目だろうとパディン夫人に指摘されて、せめて赤ちゃんが煩い音で目が覚めて泣くのだけでも防げないかと探していたのだがそっちも結局駄目っぽい。
「だったら赤ちゃんが泣いていても乳母が何とかするだろうと放置して他の人が眠れる程度に音量を下げれば良いのか?」
とは言え、乳母がいる家だったら赤ちゃんを他の人の部屋から少し話した部屋で世話をすればいいだけな気もするな。
乳母がいない家だったら、泣いている赤ちゃんを放置して親が寝ていたら危険そうだ。
「・・・赤子関連で音を消したりする魔具に関しては、諦めないか?
完全に防音してはいけないとなった時点で、あまり出来ることは無い。
それよりは煩い場所での会話をしやすくしたり、会議や重要な相談を盗み聞きしにくい様にする魔具を造る方が良いのでは?」
アレクが方向転換を提案してきた。
人に聞かれたくない話なんぞ他の人の目があるところでしちゃ駄目だと思うんだけどねぇ。
唇の動きを読めればそれなりに何を言っているか分かるし。
とは言え、向き合って座っている人間の唇を読む場合って一人だったら両方の唇は読めないことが多いから、会話の内容がすべては分からないという意味で言えば音が漏れるのを防げばかなり話の内容は周囲から分からなくなるかな。
「煩い場所で話しやすくするとすると、防音結界を向き合った相手との間で展開するだけで良くない?」
シャルロが指摘する。
「結界の展開サイズを選べるようにすれば会議室とかの音漏れも防げるだろうな。
ただ・・・完全に音を消す形にすると、会議室とかで突然誰かが暴れ出した場合にも周囲に音が漏れなくて参加者の助けを求める声が聞こえなくて危険かもだが。
そんな可能性ってどの程度ありそうかな?」
貴族とかだったらどうせ護衛が同じ部屋の中に居るからそいつらで足りない状況が起きた場合は外へ助けを求めても手遅れなことに変わりは無い気はするけど。
「まあ・・・下手に誰かが興奮しすぎた時にそれとなく第三者が割って入る方が良い状況も無きにしも非ずってところかな」
アレクがちょっと顔をしかめながら言った。
「誰かが興奮しすぎる程度だったら、商家のおっさんが偶に取っ組み合いをしてうっぷん晴らしをする方がが良くないか?」
流石に老人とかを命に関わる程ぶちのめすようなことは無いだろ?
「いや、考えてみたら女性が助けを求める声を出した際にそれを防げるような魔具は持ち込み禁止される場所が多くなるかもしれない。
だから完全に音を消すのは良くないな」
アレクが首を横に振った。
うげ~。
夜会だけじゃなくって商業ギルドとかでもそう言うことを気にしなきゃいけないんか。
女に生まれるって大変だね。
まあ、女は女で色々と男を食い物にする怖いのもいるけど。
「う~ん、煩い所で周囲の音があまり入らない様に少し外から入る音を消す効果と、内側の音が外に出るのを特定の音だけ打ち消して会話の内容は分からないけど助けを求めるような悲鳴とか普通じゃないような怒声は伝わるような効果が欲しい感じ?」
シャルロが指を降りながら求める効果を纏めた。
「シャルロが見つけたその魔術回路で強度を下げたら周囲からの音をある程度打ち消すって言うのは可能なんじゃないか?
後は特定の音だけ適当に打ち消せる魔術回路を探し出して、それらを組み合わせた魔具を造ってみるか?」
需要がどの程度あるか、かなり微妙な気がしないでもないが。
魔術回路の特許資料を色々と漁っていたら、シャルロが何やら面白そうな魔術回路を見つけた。
片方向にだけ音を消すという結界を造る魔術回路なので、正しく赤ちゃんが周囲の音で泣かなくなる様にするのに良さげな気がするが・・・廃れたのか。
「まあ・・・結局赤子というのは周囲が煩かろうが静かだろうが、目が覚めたら泣くことが多いからなぁ。
赤子に届く音を消しても結局泣くことに変わりはないなら、態々高額な魔具を買う程の事もないとなったんじゃないか?
もっとも、最初にこれを開発した人間は別に赤子用として作った訳では無い可能性も高いと思うが」
アレクが指摘した。
へぇぇ。
赤ちゃんってちゃんと世話をしていても目が覚めたら泣く生き物なんだ?
孤児院でひたすら泣きまくっていたのは飢えていたからなのかと思っていたが、基本的に泣く存在なのか。
まあ、確かにあれだけの量のオムツを濡らしているのだ。
オムツが濡れるたびに泣くだろうし、腹が減った時にも泣くだろうし、周囲に人が居なくて退屈したり寂しく思った時にも泣くかもと思ったら、確かに音を防ぐ程度じゃあ大して役には立たないか。
「赤ちゃんの泣き声は完全に消し去っちゃったら可哀想だし、場合によっては危険だしねぇ」
シャルロがちょっと考えこむ。
元々、最初は赤ちゃんの泣き声を防ぐために防音結界的な魔具があったら便利かもと話していたのだが、赤ちゃんの声が聞こえなくっちゃ駄目だろうとパディン夫人に指摘されて、せめて赤ちゃんが煩い音で目が覚めて泣くのだけでも防げないかと探していたのだがそっちも結局駄目っぽい。
「だったら赤ちゃんが泣いていても乳母が何とかするだろうと放置して他の人が眠れる程度に音量を下げれば良いのか?」
とは言え、乳母がいる家だったら赤ちゃんを他の人の部屋から少し話した部屋で世話をすればいいだけな気もするな。
乳母がいない家だったら、泣いている赤ちゃんを放置して親が寝ていたら危険そうだ。
「・・・赤子関連で音を消したりする魔具に関しては、諦めないか?
完全に防音してはいけないとなった時点で、あまり出来ることは無い。
それよりは煩い場所での会話をしやすくしたり、会議や重要な相談を盗み聞きしにくい様にする魔具を造る方が良いのでは?」
アレクが方向転換を提案してきた。
人に聞かれたくない話なんぞ他の人の目があるところでしちゃ駄目だと思うんだけどねぇ。
唇の動きを読めればそれなりに何を言っているか分かるし。
とは言え、向き合って座っている人間の唇を読む場合って一人だったら両方の唇は読めないことが多いから、会話の内容がすべては分からないという意味で言えば音が漏れるのを防げばかなり話の内容は周囲から分からなくなるかな。
「煩い場所で話しやすくするとすると、防音結界を向き合った相手との間で展開するだけで良くない?」
シャルロが指摘する。
「結界の展開サイズを選べるようにすれば会議室とかの音漏れも防げるだろうな。
ただ・・・完全に音を消す形にすると、会議室とかで突然誰かが暴れ出した場合にも周囲に音が漏れなくて参加者の助けを求める声が聞こえなくて危険かもだが。
そんな可能性ってどの程度ありそうかな?」
貴族とかだったらどうせ護衛が同じ部屋の中に居るからそいつらで足りない状況が起きた場合は外へ助けを求めても手遅れなことに変わりは無い気はするけど。
「まあ・・・下手に誰かが興奮しすぎた時にそれとなく第三者が割って入る方が良い状況も無きにしも非ずってところかな」
アレクがちょっと顔をしかめながら言った。
「誰かが興奮しすぎる程度だったら、商家のおっさんが偶に取っ組み合いをしてうっぷん晴らしをする方がが良くないか?」
流石に老人とかを命に関わる程ぶちのめすようなことは無いだろ?
「いや、考えてみたら女性が助けを求める声を出した際にそれを防げるような魔具は持ち込み禁止される場所が多くなるかもしれない。
だから完全に音を消すのは良くないな」
アレクが首を横に振った。
うげ~。
夜会だけじゃなくって商業ギルドとかでもそう言うことを気にしなきゃいけないんか。
女に生まれるって大変だね。
まあ、女は女で色々と男を食い物にする怖いのもいるけど。
「う~ん、煩い所で周囲の音があまり入らない様に少し外から入る音を消す効果と、内側の音が外に出るのを特定の音だけ打ち消して会話の内容は分からないけど助けを求めるような悲鳴とか普通じゃないような怒声は伝わるような効果が欲しい感じ?」
シャルロが指を降りながら求める効果を纏めた。
「シャルロが見つけたその魔術回路で強度を下げたら周囲からの音をある程度打ち消すって言うのは可能なんじゃないか?
後は特定の音だけ適当に打ち消せる魔術回路を探し出して、それらを組み合わせた魔具を造ってみるか?」
需要がどの程度あるか、かなり微妙な気がしないでもないが。
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