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卒業後
329 星暦553年 黄の月 7日 ちょっと趣味に偏った依頼(11)
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ウィルの視点に戻っています。
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「素晴らしい!!!
素晴らしいよ、これは!」
記録用魔道具に撮った階段の残骸の映像の周りを踊るように動き回りながら、ツァレスが時々興奮したようにこちらの手を握ってぶんぶん振り回す。
「最近になって完成して、シェフィート商会から売り出し始めた魔道具です。
こういう遺跡の発掘現場に良いかな?と思って持ってきたのですが、役に立つようでしたら是非シェフィート商会から購入して下さい」
この興奮具合だったら良い得意先になりそうかな?
喜びに踊り狂っていたツァレスが少し落ち着き、魔道具を手に取ってしげしげと映像を色んな角度から観察し始めた。
「う~ん、素晴らしい。
遺跡の発掘現場ではどういう形で遺跡が見つかったかというのも重要な情報なんだが、現場を動かさずに遺跡にある物を調べることが出来ないからねぇ。
この矛盾は本当に切ない問題だったんだが、この魔道具があれば現場の状態が完璧に記録できる。
ちょっと絵心がある人間にスケッチして貰うなんていうのとは次元が違う記録保存が出来そうだ!!」
スケッチかぁ。
絵が上手な人間が考古学に興味を持つとは限らないし、正確で詳細に描写するスケッチを描こうと思ったら時間が掛るし。
熱心な考古学者が歴史的な発見を前にノンビリとスケッチが出来上がるのを待つのは難しいだろうから、発見現場の状態の記録保存というのは至難の業だったんじゃないか?
俺たちの記録用魔道具だったら時間も掛らないし、理想的だな。
とは言え。
俺たちへの指名依頼をあれだけケチった歴史学会に、どれ程の魔道具を買う予算があるのかは知らんが。
魔道具だけでなく、記録媒体として魔石も必要だしなぁ。
「ちなみに、これって幾らぐらいするんだい?」
ツァレスが階段の残骸の映像から目を離さずに尋ねてきた。
「記録用と再生用の魔道具がセットで銀貨8枚ぐらいと聞いたような気がしますね。
詳しい話はシェフィート商会に聞いて下さい。生産して値付けをするのは彼らなので。
記録媒体用の魔石は、5つ映像が撮れる程度の魔石なら2つで銀貨1枚程度だと思いますよ」
魔石はピンキリだからなぁ。
魔石は、小さいのを幾つ合わせても大きな魔石のような瞬間出力を出せないので、大きい物は単純に小さい魔石を足し合わせた値段とはならない。
だから記録用魔道具に使う魔石は小さ目の魔石を多く買う方が経済的だろう。
かさばるとは思うが。
「ウィル、記録用の魔石はもっとある?
あるんだったら、記録用魔道具の方を持って、この巨木の周りの確認作業に戻りましょう」
興奮してあまりこちらの言うことが耳に入っていないっぽいツァレスは放置して、シェイラは現場に戻りたいようだ。
まあ、俺も他に何か発見があるんだったらさっさと見つけたいしな。
記録用魔道具の売り込みは後でアレクにでも任せておこう。
「了解。
じゃ、また後で」
ツァレスに声を掛けてさっさと上にあがる。
「ちなみに、歴史学会に魔道具を買う予算ってありそう?」
シェイラの手を握って上空へ上がりながら尋ねる。
何か、シェイラの手を握るのにも慣れてきたな。
「う~ん、どうかしら。
ちゃんとしたスケッチを描いて貰うことにかける人件費を考えると魔道具を買う方が効率的なんだけど、お金が無いとスケッチの質を下げて適当に発掘隊のメンバーが自分で描くから、現実的には実質タダでやっているのよねぇ。
それこそ、この遺跡でウィル達がお金になる魔術陣とかを発見できたら、歴史学会に入る分の収入をあの魔道具と魔石で貰うなんて言うのも、ありかもね」
肩を竦めながらシェイラが答えた。
ふむ。
本当に質の良い魔術陣や魔術が見つかった場合は、かなりの金になるはずだから記録用魔道具が山ほど買えると思うけどな。
それだけ良い物だったら、当然俺たちもウハウハになる。
・・・そんな都合のいい話はあまり確率が高くないかな。
考えてみたら、別に魔道具を製造販売しているのは魔術院じゃあないから、特許料に現物での支払を求めたところでお得にはならない。
まあ、何が見つかるかはまだ分からないから、もう少し分かってきてから考えれば良いか。
場合によっては、俺たちが身内価格で割引して売って貰ってそれをシェイラ達に渡しても良いし。
俺たちがシェフィート商会から買うなら、シェフィート商会から俺たちへの支払分(と多分シェフィート商会の利益分の一部)が掛らないので割り引き出来るはず・・・だと思うんだよねぇ。
アレクとシャルロが合意したら、だけど。
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ちなみに、金貨1枚は6万円ぐらい。
銀貨10枚で金貨1枚。銀貨1枚=6000円ぐらいの想定です。
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「素晴らしい!!!
素晴らしいよ、これは!」
記録用魔道具に撮った階段の残骸の映像の周りを踊るように動き回りながら、ツァレスが時々興奮したようにこちらの手を握ってぶんぶん振り回す。
「最近になって完成して、シェフィート商会から売り出し始めた魔道具です。
こういう遺跡の発掘現場に良いかな?と思って持ってきたのですが、役に立つようでしたら是非シェフィート商会から購入して下さい」
この興奮具合だったら良い得意先になりそうかな?
喜びに踊り狂っていたツァレスが少し落ち着き、魔道具を手に取ってしげしげと映像を色んな角度から観察し始めた。
「う~ん、素晴らしい。
遺跡の発掘現場ではどういう形で遺跡が見つかったかというのも重要な情報なんだが、現場を動かさずに遺跡にある物を調べることが出来ないからねぇ。
この矛盾は本当に切ない問題だったんだが、この魔道具があれば現場の状態が完璧に記録できる。
ちょっと絵心がある人間にスケッチして貰うなんていうのとは次元が違う記録保存が出来そうだ!!」
スケッチかぁ。
絵が上手な人間が考古学に興味を持つとは限らないし、正確で詳細に描写するスケッチを描こうと思ったら時間が掛るし。
熱心な考古学者が歴史的な発見を前にノンビリとスケッチが出来上がるのを待つのは難しいだろうから、発見現場の状態の記録保存というのは至難の業だったんじゃないか?
俺たちの記録用魔道具だったら時間も掛らないし、理想的だな。
とは言え。
俺たちへの指名依頼をあれだけケチった歴史学会に、どれ程の魔道具を買う予算があるのかは知らんが。
魔道具だけでなく、記録媒体として魔石も必要だしなぁ。
「ちなみに、これって幾らぐらいするんだい?」
ツァレスが階段の残骸の映像から目を離さずに尋ねてきた。
「記録用と再生用の魔道具がセットで銀貨8枚ぐらいと聞いたような気がしますね。
詳しい話はシェフィート商会に聞いて下さい。生産して値付けをするのは彼らなので。
記録媒体用の魔石は、5つ映像が撮れる程度の魔石なら2つで銀貨1枚程度だと思いますよ」
魔石はピンキリだからなぁ。
魔石は、小さいのを幾つ合わせても大きな魔石のような瞬間出力を出せないので、大きい物は単純に小さい魔石を足し合わせた値段とはならない。
だから記録用魔道具に使う魔石は小さ目の魔石を多く買う方が経済的だろう。
かさばるとは思うが。
「ウィル、記録用の魔石はもっとある?
あるんだったら、記録用魔道具の方を持って、この巨木の周りの確認作業に戻りましょう」
興奮してあまりこちらの言うことが耳に入っていないっぽいツァレスは放置して、シェイラは現場に戻りたいようだ。
まあ、俺も他に何か発見があるんだったらさっさと見つけたいしな。
記録用魔道具の売り込みは後でアレクにでも任せておこう。
「了解。
じゃ、また後で」
ツァレスに声を掛けてさっさと上にあがる。
「ちなみに、歴史学会に魔道具を買う予算ってありそう?」
シェイラの手を握って上空へ上がりながら尋ねる。
何か、シェイラの手を握るのにも慣れてきたな。
「う~ん、どうかしら。
ちゃんとしたスケッチを描いて貰うことにかける人件費を考えると魔道具を買う方が効率的なんだけど、お金が無いとスケッチの質を下げて適当に発掘隊のメンバーが自分で描くから、現実的には実質タダでやっているのよねぇ。
それこそ、この遺跡でウィル達がお金になる魔術陣とかを発見できたら、歴史学会に入る分の収入をあの魔道具と魔石で貰うなんて言うのも、ありかもね」
肩を竦めながらシェイラが答えた。
ふむ。
本当に質の良い魔術陣や魔術が見つかった場合は、かなりの金になるはずだから記録用魔道具が山ほど買えると思うけどな。
それだけ良い物だったら、当然俺たちもウハウハになる。
・・・そんな都合のいい話はあまり確率が高くないかな。
考えてみたら、別に魔道具を製造販売しているのは魔術院じゃあないから、特許料に現物での支払を求めたところでお得にはならない。
まあ、何が見つかるかはまだ分からないから、もう少し分かってきてから考えれば良いか。
場合によっては、俺たちが身内価格で割引して売って貰ってそれをシェイラ達に渡しても良いし。
俺たちがシェフィート商会から買うなら、シェフィート商会から俺たちへの支払分(と多分シェフィート商会の利益分の一部)が掛らないので割り引き出来るはず・・・だと思うんだよねぇ。
アレクとシャルロが合意したら、だけど。
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ちなみに、金貨1枚は6万円ぐらい。
銀貨10枚で金貨1枚。銀貨1枚=6000円ぐらいの想定です。
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