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卒業後
1032 星暦558年 赤の月 11日 ちょっと想定外な流れ(7)
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パーティや娼館や愛人の元へ通うのに忙しい金持ちは昼よりも夜の方が留守なことが多いので、寝室にお邪魔するのも夜の方が都合がいい事が多い。
まあ、お邪魔している間に住民が帰ってきてもぽんっと首の後ろ辺りに一撃入れればそれで静かになるんだけどね。
もしくはちょっとした薬を沁み込ませた布で鼻を覆うとか。
寝ている場合だったら静かにしていれば大抵は起きないし。
社交界に余り出ない高位文官な貴族とかは、朝から王宮へ出仕するので夜も真面な時間にベッドに入って寝ている事が多い。しかも深酒していない上にちょくちょく政敵に狙われるのか眠りが浅いタイプも居て、そう言うのはお邪魔すると目覚めることもある。
そんな面倒そうなのは盗賊《シーフ》時代でも余程のことが無い限り請けなかったし、そう言う奴のところは本人が居ない昼にお邪魔する方がまだ安全だった。
ブラグナル男爵家の人間は借金漬けで本来は金持ちじゃあ無い筈なんだが、当然のごとく誰も家にいなかった。
というか、『流されやすくて弱いけど良い人っぽく見えたのよ~』とシェイラの友人の従姉妹が騙された時に言ったらしいが、夜な夜な遊び歩くってやっぱ『良い人』じゃあないんじゃないか?
第一、金がないのだ。
遊び歩くんじゃなくて真面目に働けよ。
領地で代官として働く才能がないなら、王宮で文官として働け。
下位文官だったらさして有能じゃなくてもそれなりに金は貰えるぜ?
夜な夜な出歩いて娼館とかで金を落としていないだけでも収支的には大幅にプラスだろうし。
まあ、それはともかく。
意外にも、次男が寝室として使っている部屋にも脅迫関連の手紙は無かった。
ここは両親の家で、こいつは次男なんだから長男よりも更にここに住む資格が無い筈なのに、もしかして書斎の主として君臨しているのかね??
もっとも、男爵も嫡男も全然仕事をしないのだったら書斎が次男の領域になるのかもだが。
ちゃんと働かない貴族からは、マジで領地を剥奪する制度でも作るべきじゃないかね?
国にとってもその方が税収が増えそうだし、領民にとっても無駄遣いされなくて助かると思うんだが。
まあ、誰も無駄遣いしないと王都の娼館マダムとかパーティ用の食材やドレスを造る業者が困るかも?
そんな事を考えながら次男の部屋を調べ終わり、一応長男の部屋も覗いてみる。
こちらにも隠し金庫も引き出しも無い。
次男の部屋には少なくとも床板の下の隠し場所に宝石や金貨がある程度隠してあったんだけどな。
長男はマジで全然資産も金も持っていないのだろうか?
貴族は基本的にツケで買い物をするから現金を持ち歩く必要は余りないが、それでもある程度の個人的な資産を持っておかないと不味くないのかね?
個人の資金が無いってことは、『いい儲け話』も親の金を家令にでも命じて払わせたのか?
だとしたら、何度も騙されている息子の投資関連の新しい支払いを一律拒否しろって親が家令に言いつければ良かったのに。
もしかしたら、長男がこれ以上勝手に『いい儲け話』に金を出さない様に次男が金を持たせない様に変えたのかも?
それに合意しちまう長男もどうなのかと思うが。
マジでしっかりした女性を妻に貰わないと、結局家の財産も自分の資産も全て弟に取られることになるだろうに。
まあ、脅迫なんて事に手を染め始めたのだ。
家その物がそのうち潰される可能性は高いか。
ブラグナル男爵の寝室には多少の宝石や金貨が隠されていたが、笑えることに次男の隠し資産よりも少なかった。
貴族の次男て部屋住みってことで嫡男が跡取りを生むまで飼い殺しにされるかなり悲惨な存在な筈なのに、家の中で一番財産を持っているって・・・。
何とも言えないこの家族間の関係に考えを馳せながら書斎へ向かい、隠し金庫とその他の隠し場所を探す。
普通の金庫には真面そうな領地関係の書類が入っていた。
ついでに長男とその婚約者との婚約に関連する契約書類も。
どうも借金のかたに結婚を合意したようだが、ずるずると引き延ばしているらしい。
商家の娘と結婚するのが嫌だとか言う以前に、『婚約者がいるけど解消に向けて頑張っているんだ』と言う方が『妻がいるけど愛は無いんだ』と言うよりもお人好しな女を釣りやすいということで結婚を遅らせているのかな?
そろそろ結婚の準備を始めないのかという催促の手紙を、なんだかんだと理由を付けて次男がいなしているようだ。
隠し金庫にはちょっとした裏帳簿と金貨が少量。
どちらも同じ筆跡だったから次男が管理しているのだろう。
で。
立派そうな書斎机の天板の裏を抉って作られた収納場所にはそこそこの枚数の手紙があった。
シェイラの友人の従姉妹が書いた手紙らしきもの(少なくとも文末のイニシャルは言われていたものと一致した)はあっさり見つかった。
他にも何通か似たり寄ったりなちょっとお花畑な女性からのラブレターっぽい手紙もしまってある。
ざっと読んだところ、別にそれ程不味い事は書いていないんだから、脅されても『結婚に悩んでいる人の相談に乗っていただけです』で言い抜けられそうなのが多かったが・・・男に惚れたという弱みがあると本人的に思っていると、脅された時もビシッと言い返せないんだろうなぁ。
まあ、それはともかく。
ちょっと不味いんじゃね??と思う手紙も含まれていたんだが。
どうすっかね。
まあ、お邪魔している間に住民が帰ってきてもぽんっと首の後ろ辺りに一撃入れればそれで静かになるんだけどね。
もしくはちょっとした薬を沁み込ませた布で鼻を覆うとか。
寝ている場合だったら静かにしていれば大抵は起きないし。
社交界に余り出ない高位文官な貴族とかは、朝から王宮へ出仕するので夜も真面な時間にベッドに入って寝ている事が多い。しかも深酒していない上にちょくちょく政敵に狙われるのか眠りが浅いタイプも居て、そう言うのはお邪魔すると目覚めることもある。
そんな面倒そうなのは盗賊《シーフ》時代でも余程のことが無い限り請けなかったし、そう言う奴のところは本人が居ない昼にお邪魔する方がまだ安全だった。
ブラグナル男爵家の人間は借金漬けで本来は金持ちじゃあ無い筈なんだが、当然のごとく誰も家にいなかった。
というか、『流されやすくて弱いけど良い人っぽく見えたのよ~』とシェイラの友人の従姉妹が騙された時に言ったらしいが、夜な夜な遊び歩くってやっぱ『良い人』じゃあないんじゃないか?
第一、金がないのだ。
遊び歩くんじゃなくて真面目に働けよ。
領地で代官として働く才能がないなら、王宮で文官として働け。
下位文官だったらさして有能じゃなくてもそれなりに金は貰えるぜ?
夜な夜な出歩いて娼館とかで金を落としていないだけでも収支的には大幅にプラスだろうし。
まあ、それはともかく。
意外にも、次男が寝室として使っている部屋にも脅迫関連の手紙は無かった。
ここは両親の家で、こいつは次男なんだから長男よりも更にここに住む資格が無い筈なのに、もしかして書斎の主として君臨しているのかね??
もっとも、男爵も嫡男も全然仕事をしないのだったら書斎が次男の領域になるのかもだが。
ちゃんと働かない貴族からは、マジで領地を剥奪する制度でも作るべきじゃないかね?
国にとってもその方が税収が増えそうだし、領民にとっても無駄遣いされなくて助かると思うんだが。
まあ、誰も無駄遣いしないと王都の娼館マダムとかパーティ用の食材やドレスを造る業者が困るかも?
そんな事を考えながら次男の部屋を調べ終わり、一応長男の部屋も覗いてみる。
こちらにも隠し金庫も引き出しも無い。
次男の部屋には少なくとも床板の下の隠し場所に宝石や金貨がある程度隠してあったんだけどな。
長男はマジで全然資産も金も持っていないのだろうか?
貴族は基本的にツケで買い物をするから現金を持ち歩く必要は余りないが、それでもある程度の個人的な資産を持っておかないと不味くないのかね?
個人の資金が無いってことは、『いい儲け話』も親の金を家令にでも命じて払わせたのか?
だとしたら、何度も騙されている息子の投資関連の新しい支払いを一律拒否しろって親が家令に言いつければ良かったのに。
もしかしたら、長男がこれ以上勝手に『いい儲け話』に金を出さない様に次男が金を持たせない様に変えたのかも?
それに合意しちまう長男もどうなのかと思うが。
マジでしっかりした女性を妻に貰わないと、結局家の財産も自分の資産も全て弟に取られることになるだろうに。
まあ、脅迫なんて事に手を染め始めたのだ。
家その物がそのうち潰される可能性は高いか。
ブラグナル男爵の寝室には多少の宝石や金貨が隠されていたが、笑えることに次男の隠し資産よりも少なかった。
貴族の次男て部屋住みってことで嫡男が跡取りを生むまで飼い殺しにされるかなり悲惨な存在な筈なのに、家の中で一番財産を持っているって・・・。
何とも言えないこの家族間の関係に考えを馳せながら書斎へ向かい、隠し金庫とその他の隠し場所を探す。
普通の金庫には真面そうな領地関係の書類が入っていた。
ついでに長男とその婚約者との婚約に関連する契約書類も。
どうも借金のかたに結婚を合意したようだが、ずるずると引き延ばしているらしい。
商家の娘と結婚するのが嫌だとか言う以前に、『婚約者がいるけど解消に向けて頑張っているんだ』と言う方が『妻がいるけど愛は無いんだ』と言うよりもお人好しな女を釣りやすいということで結婚を遅らせているのかな?
そろそろ結婚の準備を始めないのかという催促の手紙を、なんだかんだと理由を付けて次男がいなしているようだ。
隠し金庫にはちょっとした裏帳簿と金貨が少量。
どちらも同じ筆跡だったから次男が管理しているのだろう。
で。
立派そうな書斎机の天板の裏を抉って作られた収納場所にはそこそこの枚数の手紙があった。
シェイラの友人の従姉妹が書いた手紙らしきもの(少なくとも文末のイニシャルは言われていたものと一致した)はあっさり見つかった。
他にも何通か似たり寄ったりなちょっとお花畑な女性からのラブレターっぽい手紙もしまってある。
ざっと読んだところ、別にそれ程不味い事は書いていないんだから、脅されても『結婚に悩んでいる人の相談に乗っていただけです』で言い抜けられそうなのが多かったが・・・男に惚れたという弱みがあると本人的に思っていると、脅された時もビシッと言い返せないんだろうなぁ。
まあ、それはともかく。
ちょっと不味いんじゃね??と思う手紙も含まれていたんだが。
どうすっかね。
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