1,010 / 1,038
卒業後
1009 星暦558年 藤の月 5日 棚以外にも使えるよね?(6)
しおりを挟む
「そっか、オルゴールも普通のはゼンマイバネで動いているんだな」
魔具で動かす赤ちゃん用オモチャの輪にオルゴールの銅板っぽいのを着けて鳴らすとして。
そのオルゴールの構造を確認しようとシャルロが持ってきた『お手軽』なオルゴールを分解してみたところ、中に魔術回路があってネジで回した力を何かに蓄積するのかと漠然と想像していたのだが、意外にも魔術回路は全くなかった。
単に伸縮性のある長い素材がぐるぐると中で巻かれているだけで、ネジを捻るとこのゼンマイバネに力が蓄えられ、それがオルゴールの銅板の筒を動かすようだ。
「魔具のオルゴールはネジを回さずとも軽く触れるだけで鳴りだして、魔石が切れるまで幾らでも音楽を奏で続けるんだ。
魔術回路でゼンマイを巻いてそれを解放する事で動くと言う機能を代替している感じだな」
アレクが教えてくれた。
なる程ね。
オルゴールなんて興味も縁も無かったから、どんな構造になっているか調べたことも無かった。
簡単に手で再現できないような難しい事をやっているんだから魔具だろうと思い込んでいたのだが、魔術回路を使わなくてもこんな風に機械的に動く仕組みがあるのか。
「・・・もしかして、時計も魔具じゃないのか??」
高いし壊れやすい精密な道具だしということで、当然魔具だと思っていたのだが。
「あれも魔具のもあるが、一番高級で正確な時計は魔具では無いな。
ああいう細かくて正確性が求められる道具はイマイチ魔具に向いていないらしい」
アレクが言った。
魔術師ってもっと原理とか新しい機能とかが好きな人間が多くて、果てしなくいつまでも変わらない正確性ってそれ程興味がない人間が多そうだからなぁ。
確実に正確な動きをする魔具を作るなんて言う根気のいる開発は向いていないのかも。
新しい魔術回路の開発だって根気が要るが・・・機能そのものが開発できたら満足しちゃって、細かい部分の確認作業を果てしなく繰り返して正確性を確認するのをちゃんとやる魔術師って少なそうだ。
それに、どの程度魔術回路で時計の構造を簡略化できるか知らないが、魔術回路を使って特許料を払い、魔術師の確認作業も必要となったら金がかかる。時計の中身を余程簡単に出来ない限り、今以上に高くなってしかも下手したら正確性に劣るとなったら誰も買わないだろう。
まあ、いつか研究してみても良いが・・・精密な仕組み動く道具を作る職人の商売を妨害するような魔具を造る価値があるかは微妙なところだな。
アファル王国の魔具が何かの理由で衰退しても問題がない様に、違う原理に基づく道具作りの技術が残る方が良い気がする。
まあ、その頃には俺はとっくのとうに死んでそうだから知ったこっちゃないが。
・・・もしかしたら俺とシェイラの子や孫がいる可能性はあるかも?
それはさておき。
「オルゴールのゼンマイを巻く部分を同調機能を使った魔具で周囲や乳母の魔力で行い、それで飾り紐とオルゴールの銅板を動かす感じにすればいいかな?
だとしたらかなり開発の手間が省けそうだ」
これを分解して赤ちゃんをあやす用の飾り紐を付けられる形にして、ゼンマイの部分に魔術回路をちょちょっと付けたら終わりか?
「いやいや、それじゃあ高くつき過ぎないか?
シャルロは『お手軽』と言ったが、そのオルゴールだってそれなりに高級品だぞ?」
アレクが呆れたように言った。
「オルゴールってなんの部分が高くつくんだ?
銅板部分?それともゼンマイ部分?
銅板部分だったら音楽をもっと単純な短いメロディーを繰り返すようにしたら良いんじゃないか?」
確かにオルゴールって高いという話だが。
「単純な同じメロディーがずっと続いていたら赤ちゃんも周囲の人間も飽きてうんざりするんじゃないか?」
アレクが疑わしげに聞いてくる。
まあ、確かに水滴が垂れるような同じ音がずっと続くのはイラつく。
音楽モドキなメロディーも同じ旋律がずっと続いたら気に障るかも?
「ゆっくり子守歌っぽいのが流れる感じにしたら良いかも?
そうしたら旋律部分をかなり単純に出来るんじゃないかな?
ゼンマイに関しては、ゼンマイが緩み切った場合でも大人が同調端末を手に取っていたらその魔力で動き続ける形にしたら、普通のオルゴール程ゼンマイ部分をしっかり大きく作らなくても済むから安上がりになる、とか」
赤ちゃんが寝ている間はゼンマイへ力をため込み、起きてオモチャを動かし始めてもオルゴールを動かすのと魔力でゼンマイを巻くのと同時にできないかな?
「まあ、取り敢えず試作品を造ってみるか。
流石にそのオルゴールの銅板を切り刻む訳にはいかないから、後でシェフィート商会から子守歌のオルゴールを作る工房でも教わってそこから銅板だけでも入手できないか、聞いてみよう」
アレクが言った。
「ついでにゼンマイバネも安いのを入手できないか聞いてくれ。
俺の腕じゃあしっかりいいのが作れるか、怪しい」
鍛冶師ならバネを作れなきゃいけないんだが・・・俺は鍛冶師見習いモドキと言っても実質武器特化だからなぁ。
魔具で動かす赤ちゃん用オモチャの輪にオルゴールの銅板っぽいのを着けて鳴らすとして。
そのオルゴールの構造を確認しようとシャルロが持ってきた『お手軽』なオルゴールを分解してみたところ、中に魔術回路があってネジで回した力を何かに蓄積するのかと漠然と想像していたのだが、意外にも魔術回路は全くなかった。
単に伸縮性のある長い素材がぐるぐると中で巻かれているだけで、ネジを捻るとこのゼンマイバネに力が蓄えられ、それがオルゴールの銅板の筒を動かすようだ。
「魔具のオルゴールはネジを回さずとも軽く触れるだけで鳴りだして、魔石が切れるまで幾らでも音楽を奏で続けるんだ。
魔術回路でゼンマイを巻いてそれを解放する事で動くと言う機能を代替している感じだな」
アレクが教えてくれた。
なる程ね。
オルゴールなんて興味も縁も無かったから、どんな構造になっているか調べたことも無かった。
簡単に手で再現できないような難しい事をやっているんだから魔具だろうと思い込んでいたのだが、魔術回路を使わなくてもこんな風に機械的に動く仕組みがあるのか。
「・・・もしかして、時計も魔具じゃないのか??」
高いし壊れやすい精密な道具だしということで、当然魔具だと思っていたのだが。
「あれも魔具のもあるが、一番高級で正確な時計は魔具では無いな。
ああいう細かくて正確性が求められる道具はイマイチ魔具に向いていないらしい」
アレクが言った。
魔術師ってもっと原理とか新しい機能とかが好きな人間が多くて、果てしなくいつまでも変わらない正確性ってそれ程興味がない人間が多そうだからなぁ。
確実に正確な動きをする魔具を作るなんて言う根気のいる開発は向いていないのかも。
新しい魔術回路の開発だって根気が要るが・・・機能そのものが開発できたら満足しちゃって、細かい部分の確認作業を果てしなく繰り返して正確性を確認するのをちゃんとやる魔術師って少なそうだ。
それに、どの程度魔術回路で時計の構造を簡略化できるか知らないが、魔術回路を使って特許料を払い、魔術師の確認作業も必要となったら金がかかる。時計の中身を余程簡単に出来ない限り、今以上に高くなってしかも下手したら正確性に劣るとなったら誰も買わないだろう。
まあ、いつか研究してみても良いが・・・精密な仕組み動く道具を作る職人の商売を妨害するような魔具を造る価値があるかは微妙なところだな。
アファル王国の魔具が何かの理由で衰退しても問題がない様に、違う原理に基づく道具作りの技術が残る方が良い気がする。
まあ、その頃には俺はとっくのとうに死んでそうだから知ったこっちゃないが。
・・・もしかしたら俺とシェイラの子や孫がいる可能性はあるかも?
それはさておき。
「オルゴールのゼンマイを巻く部分を同調機能を使った魔具で周囲や乳母の魔力で行い、それで飾り紐とオルゴールの銅板を動かす感じにすればいいかな?
だとしたらかなり開発の手間が省けそうだ」
これを分解して赤ちゃんをあやす用の飾り紐を付けられる形にして、ゼンマイの部分に魔術回路をちょちょっと付けたら終わりか?
「いやいや、それじゃあ高くつき過ぎないか?
シャルロは『お手軽』と言ったが、そのオルゴールだってそれなりに高級品だぞ?」
アレクが呆れたように言った。
「オルゴールってなんの部分が高くつくんだ?
銅板部分?それともゼンマイ部分?
銅板部分だったら音楽をもっと単純な短いメロディーを繰り返すようにしたら良いんじゃないか?」
確かにオルゴールって高いという話だが。
「単純な同じメロディーがずっと続いていたら赤ちゃんも周囲の人間も飽きてうんざりするんじゃないか?」
アレクが疑わしげに聞いてくる。
まあ、確かに水滴が垂れるような同じ音がずっと続くのはイラつく。
音楽モドキなメロディーも同じ旋律がずっと続いたら気に障るかも?
「ゆっくり子守歌っぽいのが流れる感じにしたら良いかも?
そうしたら旋律部分をかなり単純に出来るんじゃないかな?
ゼンマイに関しては、ゼンマイが緩み切った場合でも大人が同調端末を手に取っていたらその魔力で動き続ける形にしたら、普通のオルゴール程ゼンマイ部分をしっかり大きく作らなくても済むから安上がりになる、とか」
赤ちゃんが寝ている間はゼンマイへ力をため込み、起きてオモチャを動かし始めてもオルゴールを動かすのと魔力でゼンマイを巻くのと同時にできないかな?
「まあ、取り敢えず試作品を造ってみるか。
流石にそのオルゴールの銅板を切り刻む訳にはいかないから、後でシェフィート商会から子守歌のオルゴールを作る工房でも教わってそこから銅板だけでも入手できないか、聞いてみよう」
アレクが言った。
「ついでにゼンマイバネも安いのを入手できないか聞いてくれ。
俺の腕じゃあしっかりいいのが作れるか、怪しい」
鍛冶師ならバネを作れなきゃいけないんだが・・・俺は鍛冶師見習いモドキと言っても実質武器特化だからなぁ。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる