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卒業後
1002 星暦557年 桃の月 24日 家族(?)サービス期間(26)
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「久しぶり・・・でもないか。
ケッパッサはどうだった?」
蚤市とジルダスの店の散策を大体終え、最後にゼブに会いに来た。
シェイラは布を色々と小売りしている気に入った店へ生地や染色に関して色々と相談しに行った。
一応異国なので万全を期すためにバルダンに付き添いも頼んである。
王都ならば十分シェイラだけでなんとでもなるし、シェイラが個人で旅行に行ったのだったら彼女も自分で護衛や案内人を手配しただろうが、今回は俺の誘いで来たので一応俺が安全に関して手配した方が良いだろうと頼んでおいたのだ。
それにあちこち他にも回りたくなった時に、地元に詳しい人間が居る方が便利だろうし。
「中々面白かったな。
そう言えば、あそこの毒探知の魔具は持っていないのか?
以前変な薬を盛られていた時に気付かなかったようだが、あの指輪は簡単には騙せないだろうに」
それとも微量で徐々に思考能力を落としていくような薬だと引っかからないのだろうか?
微量な薬や毒系はそれ程しっかり確認出来てないんだよなぁ。
まあ、過敏《アレルギー》体質安全用魔具として売り出したんだから引っかからなくても俺たちは責められないが。
「持っていたんだがすり替えられていたんだよ」
顔をしかめながらゼブが言った。
どうやって指にはめている魔具をすり替えたのか、興味があるところだが・・・誰かが裏切ったのだろうからこちらから突っ込んで聞かない方が良いだろう。
別に背景を知ったところでこちらに得る物はないし、相手を不快にさせるだけだ。
「そう言えば、あれと交換で中々良い魔具を渡したらしいな?
女に渡したら物凄く喜ばれたとザグルに自慢されたぞ」
じろりとこちらを見ながらゼブが言った。
「・・・ゼブにもご機嫌を取りたい女性が居るのか?
だったらまあ、情報と交換で一つ持ってきて売ってやっても良いが」
流石に転移門で遊びに来ている休暇に美顔用魔具は持ってきていないから後日になるが。
「そうだな。
自分では必要無くても、大抵の人間は大切な女がどこかに居るもんだ。
きっと役に立つ」
にっかり笑いながらゼブが応じる。
「じゃあ、明日にでも持ってくるよ。
ところで聞きたいんだが、ザグルが気に入っていた女が持ってきたって話の香辛料の苗の栽培を断ったらしいが、どうしてなのか教えてくれないか?」
それなりに人気がある香辛料にもなる果物だ。
栽培を持ち掛けてきたということなら、相手はちゃんと育てる知識を持った人間も苗と一緒に提供する気があっただろうに、何故断ったのか気になる。
「・・・あれは精製の方法次第で麻薬になる。
あの果物の汁そのものは便利だし味も悪くないから、栽培が広がったら根絶やしにするのは無理だろう。
呪具で変な風に歪んだこの地方が、麻薬で更に滅茶苦茶になるのは遠慮したいからな。
ギュームの奴も断ったって話だ。
誰かが受けただろうが、近いうちに潰す」
ゼブが静かに宣言した。
なるほど。
やはりあれは麻薬になるのか。
しかも栽培した木の実そのものは普通の食材としても人気があるから、一般に広がったら栽培を止めるのは難しく・・・大量に栽培されるようになったらこっそりそれを精製して麻薬にするのを止めるのも難しいのだろう。
麻薬を売らないだけで無く、意外と真面目に取り締まっているんだな。
「裏社会では麻薬を売りさばく人間も多いんじゃないか?」
裏社会であろうと大きな組織は人間の忠誠も知性も崩し去っていく麻薬を嫌うが、金さえ儲ければ良いという考え足らずは常にどこの社会でも存在する。
この街だってそれなりに麻薬の売買がある筈なのに、意外なほどにはっきりと嫌っているようだ。
「あれは精神的な依存性がやたらめったら高い上に、見た目がそれ程やつれなくても気が付いたら人が変わった様に考え方が短絡的になっていて危険なんだ。
部下に使われたりしたら面倒極まりない」
顔をしかめながらゼブが言った。
なる程。
身体がボロボロになる普通の麻薬はやっていたらそのうち見た目から明らかに異常なのが分かるが、見た目が普通で、普段よりちょっと張り切っているかなって程度にしか分からないのに実は麻薬の為に幾らでも仲間や組織を売るようになっているなんて状態は怖すぎるな。
・・・敵国にばら撒くのに凄く便利そうだが、ザルガ共和国とかは使っていないのか?
ちょっと意外だな。
まあどちらにせよ、誰かがそれを商売として育てて広めようとしているかもってウォレン爺に言っておくか。
素材になる果物とその果汁そのものは害がなく、程よく美味しく効果も緩やかながらも有益となると、うっかりしたら国内でも誰か南部の方で普通に栽培を始めかねない。
麻薬の元だと周知して禁じると意図的に手を出す人間が出てきそうだが、何か良い理由をでっち上げて規制しないとヤバいかもだろ。
どうやるかはお偉いさんに悩んで貰おう。
ケッパッサはどうだった?」
蚤市とジルダスの店の散策を大体終え、最後にゼブに会いに来た。
シェイラは布を色々と小売りしている気に入った店へ生地や染色に関して色々と相談しに行った。
一応異国なので万全を期すためにバルダンに付き添いも頼んである。
王都ならば十分シェイラだけでなんとでもなるし、シェイラが個人で旅行に行ったのだったら彼女も自分で護衛や案内人を手配しただろうが、今回は俺の誘いで来たので一応俺が安全に関して手配した方が良いだろうと頼んでおいたのだ。
それにあちこち他にも回りたくなった時に、地元に詳しい人間が居る方が便利だろうし。
「中々面白かったな。
そう言えば、あそこの毒探知の魔具は持っていないのか?
以前変な薬を盛られていた時に気付かなかったようだが、あの指輪は簡単には騙せないだろうに」
それとも微量で徐々に思考能力を落としていくような薬だと引っかからないのだろうか?
微量な薬や毒系はそれ程しっかり確認出来てないんだよなぁ。
まあ、過敏《アレルギー》体質安全用魔具として売り出したんだから引っかからなくても俺たちは責められないが。
「持っていたんだがすり替えられていたんだよ」
顔をしかめながらゼブが言った。
どうやって指にはめている魔具をすり替えたのか、興味があるところだが・・・誰かが裏切ったのだろうからこちらから突っ込んで聞かない方が良いだろう。
別に背景を知ったところでこちらに得る物はないし、相手を不快にさせるだけだ。
「そう言えば、あれと交換で中々良い魔具を渡したらしいな?
女に渡したら物凄く喜ばれたとザグルに自慢されたぞ」
じろりとこちらを見ながらゼブが言った。
「・・・ゼブにもご機嫌を取りたい女性が居るのか?
だったらまあ、情報と交換で一つ持ってきて売ってやっても良いが」
流石に転移門で遊びに来ている休暇に美顔用魔具は持ってきていないから後日になるが。
「そうだな。
自分では必要無くても、大抵の人間は大切な女がどこかに居るもんだ。
きっと役に立つ」
にっかり笑いながらゼブが応じる。
「じゃあ、明日にでも持ってくるよ。
ところで聞きたいんだが、ザグルが気に入っていた女が持ってきたって話の香辛料の苗の栽培を断ったらしいが、どうしてなのか教えてくれないか?」
それなりに人気がある香辛料にもなる果物だ。
栽培を持ち掛けてきたということなら、相手はちゃんと育てる知識を持った人間も苗と一緒に提供する気があっただろうに、何故断ったのか気になる。
「・・・あれは精製の方法次第で麻薬になる。
あの果物の汁そのものは便利だし味も悪くないから、栽培が広がったら根絶やしにするのは無理だろう。
呪具で変な風に歪んだこの地方が、麻薬で更に滅茶苦茶になるのは遠慮したいからな。
ギュームの奴も断ったって話だ。
誰かが受けただろうが、近いうちに潰す」
ゼブが静かに宣言した。
なるほど。
やはりあれは麻薬になるのか。
しかも栽培した木の実そのものは普通の食材としても人気があるから、一般に広がったら栽培を止めるのは難しく・・・大量に栽培されるようになったらこっそりそれを精製して麻薬にするのを止めるのも難しいのだろう。
麻薬を売らないだけで無く、意外と真面目に取り締まっているんだな。
「裏社会では麻薬を売りさばく人間も多いんじゃないか?」
裏社会であろうと大きな組織は人間の忠誠も知性も崩し去っていく麻薬を嫌うが、金さえ儲ければ良いという考え足らずは常にどこの社会でも存在する。
この街だってそれなりに麻薬の売買がある筈なのに、意外なほどにはっきりと嫌っているようだ。
「あれは精神的な依存性がやたらめったら高い上に、見た目がそれ程やつれなくても気が付いたら人が変わった様に考え方が短絡的になっていて危険なんだ。
部下に使われたりしたら面倒極まりない」
顔をしかめながらゼブが言った。
なる程。
身体がボロボロになる普通の麻薬はやっていたらそのうち見た目から明らかに異常なのが分かるが、見た目が普通で、普段よりちょっと張り切っているかなって程度にしか分からないのに実は麻薬の為に幾らでも仲間や組織を売るようになっているなんて状態は怖すぎるな。
・・・敵国にばら撒くのに凄く便利そうだが、ザルガ共和国とかは使っていないのか?
ちょっと意外だな。
まあどちらにせよ、誰かがそれを商売として育てて広めようとしているかもってウォレン爺に言っておくか。
素材になる果物とその果汁そのものは害がなく、程よく美味しく効果も緩やかながらも有益となると、うっかりしたら国内でも誰か南部の方で普通に栽培を始めかねない。
麻薬の元だと周知して禁じると意図的に手を出す人間が出てきそうだが、何か良い理由をでっち上げて規制しないとヤバいかもだろ。
どうやるかはお偉いさんに悩んで貰おう。
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